会議は業界特有の古い慣習を打ち破るカギ【スマート会議術第17回】

会議は業界特有の古い慣習を打ち破るカギ【スマート会議術第17回】株式会社Fan's 取締役・企画本部本部長 田中 雄一郎 氏

投資用に特化した不動産事業を展開する株式会社Fan's。投資用ワンルームマンション事業を中心に、積み上げてきたノウハウとAI(人工知能)、ウェブサービスを融合。ITの力を使い、より業務を効率化させる事業を展開し、不動産業界に新風を吹き込む。

今回はFan'sでさまざまな組織改革を訴え、次々と体質改善を進め、若くして企画本部 本部長、取締役に抜擢された田中雄一郎氏にお話を伺った。

目次

キャッチコピーは「IT×不動産」

――御社の事業についてお教えください。
不動産の中でも投資用の不動産に特化した事業を行っています。メインの事業は投資用のワンルームマンションの販売になります。
弊社は、「IT×不動産」をキャッチコピーに事業展開していることもあり、営業や集客は基本的にウェブのインバウンドのみでやっています。AI(人工知能)で物件の価格を自動で査定し、査定した金額で折り合いがつけば買い取るというサービスも展開しています。

「情報共有」会議を減らし、「企画立案」会議を増やす

――会議には主に「意思決定」「企画立案」「情報共有」の3つの目的がありますが、それぞれで工夫をされていることはありますか。
「情報共有」の会議に関しては、大きく見直しを行っているところですね。特に営業部門では無駄な会議が多い印象があったので。
――無駄というのは、どんな点ですか。
たとえば営業が電話で話した顧客情報は、各自が見込み帳やお客さまノートなどに書いていました。でも、それでは電話で話した本人しかわからない。他の人に営業に行ってもらうとしても、そのお客さまとどんな商談状況なのか、共有しないとわからない。だから情報を共有するために都度会議をしなければならなかった。それが結構無駄だと思っていたんです。
今は営業管理ツールを取り入れて、お客さまのステータスや営業資料をテンプレート化しています。その都度会議で共有しなくても、その情報を見ればお客さまがどういう状況なのか可視化されるようになりました。結果として長い時間を使っていた情報共有の会議を減らすことができました。
――「企画立案」では、どうでしょうか。
「企画立案」の会議には、以前から多くの時間を割いていますね。特に企画本部では、どんどん新しいことを企画していかなければいけないので。
「会議HACK!」に「博報堂は会議が多く、しかも雑談だらけ…。その理由は)」という記事がありましたが、弊社のマーケティングチームの部長が博報堂出身なんです。ブレスト会議をよくするのですが、やはり博報堂のDNAを受け継いでいるなと思いました。ブレスト会議にはかなり時間を割きますし、数多くすることで新しいアイデアが出てきていますね。

会議の時間短縮のためにしたこと

――会議の時間については、何かルールを設けられていますか。
会議の初めに、「終わり」のルールを決めるようにしています。会議で何を決めるか、どういうアイデアがいくつ出たら終わりにするのか、どの状態までいったら終わりなのかを最初に明確にしてから会議を始めるんです。
定期的に会議をやっていると、議題と違う話も混ざって60分が90分に延びたりすることも多いんです。本来話したかった議題がちゃんと話せなくて、次の会議に持ち越されたり。でも次の会議でもまた新しい話が出てきて。それはちょっとまずいと思い、会議を始める前に「議題と終わり」を明確に決めることにしました。
――議題、時間、会議の数を決めることで、具体的に変わったことはありますか。
会議を減らしたことで、業務や考える時間に当てられるようになったのは大きいですね。データだけを見れば、わざわざ会議をしなくてもいいことも多く、問題があるときに会議をやればいい。うまくいっているときに定例会議をしてもそんなに実りのある話は出てこないので。最低でも週1回は情報を共有しないと不安になるメンバーもいましたが、そういう人たちの考え方も少しずつ変わってきていますね。
あと、会議体ごとに、LINE WORKSを入れているんですが、グループをつくって事前にアジェンダを送って目を通して会議に臨んでもらうようにしています。チャットのやりとりで済むことは済ませ、いらない会議をなくすようにしています。会議の時間が短くなり、意思決定の速度が上がってきた実感はありますね。
不動産業界は、まだまだアナログに頼るところが多いのが実情です。ただ、Fan'sでは効率化のために、ITをどんどん導入していく流れになっています。社員の意識も変わってきていて、無駄に大人数が入る会議も少なくなりました。

良い会議、良くない会議の違い

――良かった会議、良くなかった会議に見られる傾向はありますか。
トップの人間が話しすぎたときはあまり良くない会議が多いですね。「意思決定」の会議で社長が発言しすぎると、「それでいきましょう」という感じになってしまうことも過去にあったので。
特に社長や僕が話していて、止まらなくなってしまうときは、それを止められる人を会議に入れるのは大事かなと思います。
最終決定者が入る前に、プレ会議をする形はいいですね。たとえば、会議をするときに責任者の僕が最初から入っていると、細い部分でみんなが言いたいことを言えなかったり、僕が結局決めてしまったりするケースがあったんです。
でも、事前に会議をしたうえで、僕が入る形に変えてから、いろいろな意見が最初から出てきて、会議がスムーズに進むようになりました。僕が入る時間も短くなったし、自分たちで考えてアイデアを出さなきゃいけない、という意識も芽生えてきました。

スマート会議の実現に向けて

――スマート会議ができていると思うのは、どんなときですか。
ひとつは必要最低限の人数、短時間で行うという点。もうひとつは会議が始まる時点で参加者が何についての会議なのか理解していることですね。
――スマート会議の実現化に向けて一番難しいハードルがあるとしたらどんな点ですか。
やはりこの業界の古い慣習を打破していくのは、結構難しいです。不動産業界は営業のマンパワーに頼るところが大きく、他社さんがアナログな方式をとられているケースも多いので。「他の会社はみんなそうなのに、なんでうちだけそういうやり方をするの?」って、なりがちなので。
効率だけで割り切れない業界特有の慣習が障害かなとは思いますね。でも時代に合わせて変わっていかなければいけないと思います。
――逆に先行者であったほうが、のちのち強みになっていきますよね。
まずは、会社として目指している方向性を、しっかり理解してもらうまで落とし込む必要があると思いますね。
今後はさらに会議体のフォーマットを決めたいと思っています。もっと人数が少なく、短く、効率的なスマート会議をしようという認識で全員が動いていけばいいと思います。
そういう意識を徹底していけば、今より会議の効率化が図れると思っています。

文・鈴木涼太
写真・佐坂和也

田中 雄一郎(たなか ゆういちろう)株式会社Fan's
株式会社Fan's 取締役・企画本部本部長。横浜国立大学 教育人間科学部卒業。将来の独立を目指し、営業力を身につけるべく、Fan'sに入社。企画本部の前身となる営業推進部を自ら立ち上げ、新たな集客法を確立。Fan'sに変革を起こすひとり。

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