会議にコメンテーターは要らない【スマート会議術第52回】

会議にコメンテーターは要らない【スマート会議術第52回】アビームコンサルティング株式会社 執行役員プリンシパル 斎藤 岳 氏

アビームコンサルティング株式会社で、執行役員プリンシパルを務める斎藤岳氏。同社は企業のBPR(ビジネスプロセスリエンジニアリング)からグローバル展開まで、企業の成長をサポートする35年の歴史を持つ総合コンサルティング会社だ。

斎藤氏は時代に先駆けて、著書『1回の会議・打ち合わせで必ず結論を出す技術』で、会議の効率化を通して、早くから働き方改革の必要性を訴えていた。

1回の会議・打ち合わせで必ず結論を出す技術

20年以上にわたって経営コンサルタントとして、日本、そして世界のビジネスシーンを見てきた斎藤氏に、企業が生き残るための会議術についてお話を伺った。

目次

コメント合戦が会議をムダにする

――著書の中で、「空中戦と思考停止」という話がありました。これが起こり得る原因は何ですか。
「いいことを言ったコメンテーターが偉い」と評価されるような風潮があるのですが、これが一番問題です。たとえば、表面的な意見にのみフォーカスし、具体例を示さないようなコメントをして、アクションにつながらない発言をされる方がときどきいます。特に「こういう場合はできないんじゃないか?」とか、「こういう場合はどうしたらいいんだ?」といったような解決策を伴わない否定的な姿勢は会議を進める上では望ましくありません。
――一見、頭が良さそうに見えて、何も生産的なことを言っていないんですね。
それはただのコメントであり決め事ではないんです。会議は本来、「この判断基準によって決める」というとルールとゴールがなければいけない。
「そのコメントは何の判断基準に対するコメントなのか」をきちんと意識すれば、意味のある発言となります。事実の裏付けや判断基準もなく発言することが問題です。
――「空中戦」というのは、コメント合戦をやっているような状態ですか。
まさにコメント合戦になるのが「空中戦」や「思考停止」ですね。特に、難しい言葉、抽象的な言葉で、相手の思考を停止させてしまうケースが多い。それでは意味がない。結論を導くためには、具体的な、かつ判断基準に沿った話をする必要があります。

誰がその会議のオーナーなのかを明確にする

――コメント合戦にならないようゴールを決めるのは、どういう点で難しいのですか。
それが、決める会議なのか、共有する会議なのか、意見や論点を「発散」する会議なのかということを事前に考えておかなければならない。特に、「発散」してから「収束」する会議設計は難しく、会議を仕切った経験がないと、1回1時間の会議で「収束」できるかどうかイメージできないこともあると思います。
ただ、できるかできないかは別として「今日は発散しよう」なのか、「今日は決めよう」なのか、希望を出すだけでも効果があります。
――それを決めるのは、持ち回りでもいいのですか。
誰がやるとしても、その会議のオーナーが誰なのかは明確にするべきです。自分がオーナーとして参加者の時間(コスト)を使って、「このゴールを達成したいから、あなたたちを呼んだ」という目的意識と責任を持つ。それを持たない人が、会議招集とゴール設定をしても、進め方が曖昧になります。
――オーナーが決まっていれば、会議で決まったことがひっくり返ることも起きないですよね。
場合によっては、責任者が「あなたに権限委譲するのでやってくれ」ということも、もちろんあります。基本的には、会議の主催者がそこまで責任を持ったほうがいいですね。もちろん、権限委譲した人が「それがきちんと実行できているのか」を、責任を持って目を光らせておかなければいけません。
――定例会議も同様ですか。
定例会議が単に共有目的なら、開催する必要のない会議です。「メールをしてください。資料共有をしてください」と言えば済むことです。
――そういう共有の定例が一番多い気がしますが。
大切なのは「会議のゴールが何か」です。共有だけが目的であれば会議という形式をとる必要はありません。化学反応が起きるのか、行動につながるのかのどちらかがないのであれば、やめるべきでしょう。

会議の行方はホワイトボードの活かし方にかかっている

――著書を出版された10年前と会議が変わってきていると感じることはありますか。
10年前とは変わってきています。特に最近はホワイトボードを使うことが増えていますよね。昔はホワイトボードのペンがほとんどかすれていて、使ってないな、という状況が当たり前でした。最近はそれもほとんどなくなっているので、以前と比べると少しずつ良くなっているというのが実感です。
――逆にホワイトボードやモニタを使わない会議は減ってきている印象はありますね。
前回お話した「n対1」の関係をつくろうとしたときに、モニタに映すか、ホワイトボードを使うかしないので、使わないで進めるほうが難しいですね。
傾向として、同じような頭の良いタイプの方が揃っている企業の会議はホワイトボードを使わないんです。頭の中で整理しようとして、実際にはなかなか決まらない。一方で、たとえば多様な考えをもつフリーランスの方が多くいるような会議は、共通認識を持とうとして、ホワイトボードを必ず活用していますね。
また、昔は打ち合わせが2時間という企業が結構ありました。いまは2時間で設定することはほとんどないですよね。長くて1時間から1時間半。短く刻んでいるケースが増え、時間に対するコスト意識が高まっています。ただ、内容を聞くと共有が多かったりするので、そもそも1時間すらいらないと思うときがあります。
――共有会議だけでもやめれば、かなりの時間の節約が図れますね。
そうですね。当社の場合、共有会議はほとんどありません。代わりに軽い化学反応を起こすためのブレスト会議が15分単位とかで、毎日何十回とあります。ホワイトボードを使ってちょっとブレスト、という感じで進めると、相当効率的に回っていきます。

行動に関われば、自ずと緊張感と集中力は生まれる

――会議がダラダラと長時間続くと、緊張感も集中力もなくなってきますよね。
それは会議が報告会になってしまっているからではないでしょうか。決め事があると、その結果が次に行動しなければならないボリュームや内容に関わってきます。行動に関わると、当事者意識が生まれ、みんな真剣に参加するのです。
我々コンサルティングのお話で言うと、プロジェクトがあって、プロジェクトの作業スケジュールの中にキーとなる会議が入ってきます。その会議にゴールがなければ次のタスクに進みません。次の作業行程を考えると、会議での決定事項が非常に重要になります。この会議の結果次第で、次の1週間の作業が倍になったりする。その会議の1時間は、結局自分のタスクとして跳ね返ってくるので、全員が非常に緊張し、集中力を高めて取り組んでいます。

リーダーの条件を定めている会社は強い

――会議でゴールが定まらなかったり、決まらなかったりするのは、責任者の不在が原因だと思いますが。
リーダーの条件というものをしっかり定義づけられている企業と、そうでない企業があります。定義づけている企業は、リーダーシップの条件として問題解決能力が必要と考えます。 
会議は組織上の問題を解決するための1つの大きなツールです。リーダーは人の巻き込み方やトラブル対処、目標に向けて何をしていけばいいかというプロセスを早く回す教育を受けている。そういう人は、会議でもきちんと仕切ることができます。意思決定も一定のルールがあるので、必要な情報だけを集めてきます。
会議の中で出される、異なった意見に対しては、判断基準に即してどう違うのか、論点がずれたのか、上位者がそれをはっきり指摘できる企業だと早いですね。そういった組織としての力の差が出てきます。
何か決めなきゃいけない、たくさんアイデアを出すというゴールに対して、必ず論点があります。論点に集中して議論しているか、違う論点の話をしているのか。「その論点はずれていないか?」というのが全員の共通言語となっていると、あまり変な方向には向かわないと思います。重要な要素はゴールだけではなく、ゴールと論点です。
――それはブレストのような「発散」の会議でも同じですか。
「発散」の場合には、あえて論点をずらすことによって「あ、そういう論点もあるんだ」ということを出すこと自体が良いことなので、論点をずらしても問題ないです。
――「収束」のときに論点をずらすとノイズとして混じってきちゃうんですね。 
ゴールと関係ない話をしているというのがあります。そのゴールへの意識が低い人がバラバラの意見を繰り広げているのだと思います。ゴールに対する意識が企業として共通言語化されていれば、違う話をしたり、コメンテーターのようなことを言ったりする人が評価されないはずです。
――斎藤さんの考えるスマートな会議とは何ですか。
皆さんがゴールに向かって活動をしているのが、スマート会議の大前提です。ゴールのそもそもの設定が、共有ではなく、化学反応を起こすのか、行動につなげるのか。それを意識したゴール設定をして、必要な人を呼んで会議を行うことが重要です。
斎藤 岳 (さいとう がく)
執行役員プリンシパル、戦略ビジネスユニット グロース&イノベーションセグメント長。コンサルティングファームを経て、アビームコンサルティング株式会社に入社。製造業、情報通信業、サービス業、総合商社、小売・卸業、独立行政法人といった幅広い業種に対し、戦略策定および戦略実現支援のコンサルティング・プロジェクトを実施。著書に『1回の会議・打合せで必ず結論を出す技術』(東洋経済新報社)、『ロジカルセリング』(共著、東洋経済新報社)がある。

文・鈴木涼太
写真・大井成義

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