「収束と拡散」によって働き方を変える【スマート会議術第35回】

「収束と拡散」によって働き方を変える【スマート会議術第35回】日本スチールケース代表取締役社長 大野 計一 氏(左) ワークプレイスソリューションズ 代表取締役社長 越田 壮一郎 氏(右)

1912年創業の世界最大手の老舗オフィス家具メーカー、スチールケース。オフィスでの人の働き方を観察、理解、開発、製品化していくことを企業理念として、世界を視野に成長してきたグローバル企業である。

オフィス環境を変えることで満足度が上がり、満足度が上がることで生産性が上がる。そんな考え方に基づき、いま日本企業にも、オフィス環境、会議室、ひいては働き方の改革が必要だと提唱する。

はたして、いま日本企業はオフィス環境をどのように変えていくべきなのか。日本スチールケース代表取締役社長の大野計一氏と、販売代理店のワークプレイス ソリューションズ代表取締役社長の越田壮一郎氏にお話を伺った。

目次

オフィス環境を変えることでワークスタイルが変わる

――スチールケースのオフィスや会議室の環境づくりの考え方についてお教えください。
大野:社名のスチールケースは、創業者がオフィスでタバコの吸い殻による火事が多かった時代、主な原因だった木のゴミ箱をスチール(鉄)にしたことが語源です。社名には、オフィスを人間主体で観察し、理解し、試作品による度重なる検証の上で、それを製品化するという哲学が込められています。
弊社はオフィス設計において、観察や調査をするのが事業の骨幹にあり、国、世代、業種によって、どういう働き方をしているのか、どういう思考をしているのかを常にリサーチしています。リサーチ結果から仮説を立て、最終的に商品化します。
――オフィス環境を変えることでワークスタイルを変えるという発想は、IT企業を中心に少しずつ芽生えている気がしますが。
大野:そうですね。もともと日本と海外で、その発想が違っていました。特に欧米の大企業はオフィス環境を変えることでワークスタイルが変わるという意識が高い。ワークスタイルを変えると、生産性や創造性などが変わる。そこに価値を感じているんです。オフィス環境を変えることによって、会社の成長に貢献すると考えます。どういう働き方をすれば成長できるのかを考える。
一方、日本ではオフィスはあくまでも会社が与えてくれる箱という考え。日本は人より箱が先にあるんです。社員が500人いるから、あるスペースに500人分の机を並べましょうと。会議室ならなんとなくこれくらい必要だよねと。箱ができた、机を揃えた、これでいいよねというのが日本のオフィス環境の考え方です。ただスタートアップやIT企業が出てきて、若い経営者の考え方が「人ありき」に変わってきてはいますね。

オフィス環境を変える「5つの場所」

――今日、日本は世界的に見ても、労働生産性が非常に低いと言われています。その要因に、オフィス環境も関係しているのでしょうか。
越田:私たちは、これからの企業に重要な要因として創造性が挙げられると考えております。脳科学的に創造性をより高めるには、「拡散と集中」のバランスが重要となります。 会議室やコラボレーションスペースで拡散するのも必要ですが、その内容を集中して検討・検証する行為も非常に重要です。ともすると、会議やブレストをすること(拡散)が創造性を高めることと思いがちですが、集中のプロセスを省いて創造性を高めることは非常に難しいことです。この2つの行為をバランスよく繰り返すことで、会議や仕事の仕方が効率化して、生産性が上がっていくと考えています。それがスチールケースが提唱している働き方改革と言えます。
いまはどこも「働き方改革」という文脈でいろいろなことを考えていらっしゃるんですけれども、ルールだけ作って什器だけ変えてもダメなんです。どう働かせたいかという考えがあって初めて、場所がアシストすることができると考えています。
まずは会社をどのようにしていきたいか。どういうコミュニケーションを図りたいか。そこからテクノロジーだったり、レイアウトだったり、デスクや椅子の高さだったりと、環境をどう変えていくべきかを具体的に提案していきます。顔をつき合わせて話すのか、バーチャルで話すのか、そういうところを選択していくことで働き方が変わると思います。
改革を起こすなら、いままでやっていないことをやらなきゃいけない。それを従来の考え方でオフィスを作っても、新しいことは生まれにくいかと思います。
どういう形でオフィス環境のサポートができるかということで、スチールケースでは、具体的に「5つの場所」を提案しています。「フォーカス・スタジオ」(1人で没頭して作業に集中できる)、「メーカー・コモンズ」(アイデアの創造と共有を促進するオープンなでソーシャルなスペース)、「アイディエーション・ハブ」(チームによる生成型コラボレーションをサポート)、「レスバイト・ルーム」(1人での熟考または休息と活発なグループワーク混ぜたプライベートスペース)、「デュオ・スタジオ」(1人でのペアでの共創造の場)の5カ所を巡回することで、クリエイティブな働き方ができると提案させていただいています。
「レスバイト・ルーム」(上)と「デュオ・スタジオ」(下)
創造的なワーカーはこの5つの場を適宜利用することによって、自然と「拡散と集中」のバランスをとっていくことができます。
もちろん、お客さんの働き方を無視して、「5つの場所」だけを提案しても意味がないので、インタビューをはじめ、リサーチを徹底して商品開発やオフィス環境の設計をしています。たとえばセンサーを使って社員が効率よく働けるように、いまどこが混んでいるとか、オフィスがどのような使われ方をしているかということをリサーチします。

デスクだけ3万円から10万円にしたからといって、急に生産性が上がるわけではない

――オフィス家具を売るというより、ビジネスコンサル的な業務ですね。
越田:そうですね。椅子が欲しいというご要望に対して、椅子を売るというよりは、どんなところで、どんな用途で使う椅子なのかをお伺いするなど、まず働き方を前提にヒアリングをします。その働き方を助けられる椅子はどういう機能がいいのか、どういうタイプが使いやすいか、という形で提案・販売をしていきます。
大野:オフィス環境といっても、高いデスクを買えばいいという話じゃないんです。デスクだけ3万円から10万円にしたからといって、急に生産性が上がるわけではない。昔は長く働くほど、生産性が上がっていた時代もあったんです。でも、いまは仕事の内容が複雑化しているので、どれだけ効率よく仕事するかが最も重要なんです。
――デスクや椅子の用途や機能がそんなに変わったりするものですか。
越田:たとえば、最近はスマホやタブレットで仕事をする機会も増えています。そうすると、椅子もいままでになかった座り方が生まれたんですね。椅子もシートを倒したときやソファなどで半身になったりするときのようなスマホでゲーム等をするときの姿勢ですね。昔だったら姿勢が悪い、お行儀が悪いと言われるような姿勢です。でもスマホやタブレットで仕事をするときに一番ラクな姿勢であれば、この姿勢をサポートする椅子を作ったほうがいいよねという発想です。そうするとアームが360度ぐるぐる回って、この姿勢をサポートしてくれるものが生まれるんです。
スターバックス等でときどき若い人が足を前に投げ出して、背もたれに寝そべるような格好で仕事をしていますよね。昔はそんな座り方はだらしないと叱られましたが、いまはそれで生産性が上がればいいわけです。そうするとだらしない座り方をサポートしてあげる椅子を作ったほうが、より生産性の向上をサポートしてあげられるのではないかと。それも人間観察という哲学があってのことですね。

働き方改革は、時間だけでなく、コミュニケーションや環境の改革が必要。

――オフィス環境を改革していく上で、特に重要なことは何だと考えますか。
大野:仕事が複雑化している現代は、人とコミュニケーションを取りながら、人とコラボレーションしながら、仕事を進めていかなければならない。働き方改革と言われますが、時間が解決するものではないんです。時間だけでなく、コミュニケーションや環境の改革が必要なんです。
どんどん複雑化している仕事を、いままでと同じ環境でやろうとしたら大変なはずなんです。他のチームの人たちとミーティングをしたいと思ったときに、みんなの予定を見てスケジュールを押さえて、「次の会議っていつできるの?」「1週間後です」というのでは、間に合わないですよね。いまやそういうスピードでは置いていかれる。複雑化している仕事をどうやって効率よくするのか。いろいろな人たちと一緒に打ち合わせをしなきゃいけない。でも、いままで2週間かけていたものを、どうやって3日でできるようにするかを考えなきゃいけない。
世界ではアジャイルオフィスとかアジャイルワークという言い方が出てきています。アジャイルとは、元々ソフトウェアの開発で、より素早い開発を重視する方法の総称ですが、働き方も、どうやったら早くできるのか、早く集まれるのか、早く思った形にできるのかが、いま喫緊の課題になっています。

会議をしなくても話し合う場はどこにでもある。

――アジャイルオフィスは、具体的にはどのように作っていくのですか。
大野:たとえば会議でいえば、オープンエリアに打ち合わせスペースを作る。すべてが秘密の会議というわけではない。「オープンエリアでちょっといいですか」「3人ともいるじゃない。ちょっと10分いい?」と、いつでもコミュニケーションがとれる環境を作っていく。そのときにPCの情報があるなら、PCの情報をすぐ映せるとか、すぐ共有ができるとか。そういう機器の設置も必要になってきます。
みんなで会議をしたいのに、いつまでたってもそれができない。だから余計な仕事を一生懸命やらなきゃいけない。余計な資料を作らなきゃいけない。そんなことしないで集まって口頭で話して済むのか、1週間後の会議に出て、一生懸命作った資料を出して、「それじゃダメ」と言われるのか。どちらが効率的かは明らかですよね。
人が通り過ぎる、人が通り過ぎて気軽に「何やってるの?」って声をかけて、「ああ、こういう人知ってるよ」って情報があるだけで打開することがあるかもしれない。でも密閉された会議室でやっている限り、他の人たちの情報が一切入らない。ただ通り過ぎることはできるじゃないですか。どうせ社内を移動するときに通り過ぎるんですから。そのときに何かしていたら、ちょっと声をかけるだけで、新しい発想やアイデアが生まれてくるんですよね。

環境の満足度が高いことが、エンゲージメント(個人と会社がともに成長する)を高めることにつながる

――オフィス環境を変えたいとか会議室を作りたいと考えたとき、どういう課題が一番多いですか。
越田:オフィス環境を変えることで、どれだけ生産性が向上するかの指標を明確にすることがなかなか難しいことですね。日本の大手の会社さんは決まって「費用対効果を出してください」って言われるんです。「このオフィスにしたら売上げが倍になりますか?」と言われると、要素としてそれだけじゃないので難しい。でもそこを数値化しないと、会社の稟議は通らない。「この椅子を変えたらどれだけ儲かるんですか?」って、そこだけにフォーカスされてしまうと難しかったりしますね(笑)。
大野:ただ、オフィスにいる人たちの環境に対する満足度が高いことが、高いエンゲージメントにつながっているということは言えるんです。そしてエンゲージメントが高い社員が多くいる企業は、生産性や利益率が高いというようなことはデータで出ているんです。でも、そこも満足度みたいな形だけになると、曖昧な指標にはなりますね。「オフィスに満足を求めてどうするんだ!」という方もいますからね。「仕事をする場なんだから満足度なんて必要ない」と。「満足って昼寝するだけじゃないか」って(笑)。
Steelcase
1912年アメリカ・グランドラピッツに設立されたスチールケース社は、欧米で圧倒的シェアを誇る世界最大のオフィス家具メーカーです。
https://www.steelcase.com/asia-ja/

ワークプレイス ソリューションズ
WSIはワークプレイスのプロフェッショナルとして、世界中から優れたコンセプトや家具を提供しています。
https://www.wsi.jp/

文・鈴木涼太
写真・佐坂和也

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