会議における3つの慣習の功罪【スマート会議術第46回】

会議における3つの慣習の功罪【スマート会議術第46回】バレオコンマネジメントコンサルティング シニアマネージャー アーサー・ウッドラフ・バスティン 氏

バックパッカーとして来日したのを機に、以来、日本と海外の橋渡しのビジネスに携わってきたアーサー・ウッドラフ・バスティン氏。大学では物理学、大学院ではMBAを修得。ブリヂストンをはじめ、電機メーカーや製薬会社などのグローバルプロジェクトを数多く手がけてきた。

バスティアン氏は、ボトムアップによる意思決定が通例の日本の企業には、日本特有の3つの慣習があると言う。

1. ポイント(結論)を先に言わない
2. 情報を共有したがる
3. 「根回し」が欠かせない

しかし、それは同時に、今日のグローバル社会において日本人のアキレス腱にもなる。長年、日本企業に根づいてきた3つの慣習の功罪についてお話を伺った。

プレゼンはPREPを守ることが肝心

――日本人はプレゼンが苦手と言われますが、原因はどこにあると思いますか。 
プレゼンをするとき、日本人はリスクを嫌います。そして、絶対に間違えてはいけないと考えます。日本や中国などアジア圏の文化は、最初に細部を説明して、ポイント(結論)は最後に言う傾向があります。
中国の知人に聞いたのですが、中国人が結論を最後にするのは、相手の反応をみたいからだそうです。あまり反応が良くなかったら調整して結論を変える。そして、リスクを避けるために結論を最後にする。日本人と同じような考え方ですね。
でもプレゼンで細部から入ると、「何の話?」ってなってしまう。最後まで結論を言わないので、みんなイライラしてしまうんです。これまで日本人同士なら通用してきたかもしれませんが、変革のスピードが速い現在のグローバル社会では厳しいですね。
私のワークショップでは、日本のビジネスパーソンに、会議やプレゼンで誰にでもすぐ伝わるPREPという方法を学んでもらっています。PREPのPはPoint(結論)。何を伝えたいかを最初に言います。その次にReason(理由)。なぜそう考えるのか。そして、Example(例)。具体的に例を提示する。最後に再びPoint(まとめ)を強調します。
ポイントを最初に言うのが大事です。お客さんや聴衆はまず何について話しているかが知りたい。PREPのワークショップではいろいろロールプレイするのですが、効果的・効率的なコミュニケーションをめざします。プレゼン用のスライド資料をパワーポイントで作るときも同様にPREPを使います。

何でも共有するのは責任回避

――PREPが求められるのはプレゼンだけではなさそうですね。
メールでも会議でも基本的には同じです。メールの題名はすごく短く明確にしないと、本文までちゃんと読んでもらえません。長くて曖昧だと、大事な要件かどうかもわからないので多忙な人はまず見ませんね。
最近は仕事の連絡もスマホを多用しますよね。そうすると「これは長いからあとで読む」となる。でも結局忘れられて、あとでも読まれない。特にスマホは画面が小さいので、ことさらタイトルと1行目の文章がコンパクトで明快でないと読まれません。急ぎで返信をもらいたいときは、本文に期限を明記すべきです。また2つの要件があったら、メールは2つに分けて出したほうがいいです。
――会議も同じですか。
日本人は会議で伝えたいことを遠慮して、ずっと黙ったままでいることが多い。だから私は、日本企業の会議では、「あと5分でまとめましましょう」と、結論を促します。「質問はありますか?」とか、「結論はこれですよ」と確認をして。
――結論に導くファシリテーターの役割がすごく重要になりますね。
ファシリテーターは、やはり空気を読む力が必要ですね。たとえば1時間の会議があるとします。ファシリテーターが、しゃべるのが得意な人に現場を任せっぱなしにすると、しゃべるのが苦手な人は発言するタイミングを逃してしまう。また、最後に突然「意見をください」と言うのもよくありません。できるだけ最初から短い時間で刻み、みんなが発言できるよう配分することが大事です。

日本人の会議は後出しジャンケンになりがち 

――グローバルスタンダードで見たとき、他に日本人特有の会議の進め方はありますか。
たとえばアメリカ人と日本人が会議をした場合、アメリカ人は会議で決めるのが当たり前と思っています。でも、日本人は会議をしても、次の日になって、「我々はこれは違うと思っています」と言い出す。アメリカ人が「なぜ会議のときにその話をしなかったのか」と聞くと、「話していいのかわからなかったし、あまり言い争いをしたくない。言いにくかったから言わなかった」と言います。アメリカ人は、日本人が会議でずけずけ発言するのが苦手だと認識していないんです。
――会議で決定する権利が与えられていないせいですか。
そうですね。日本人は会議で決める権限がない場合が多い。一方、アメリカ人は「会議は何かを決める場」と考えているので、会議に出る限り、決める権利があるものです。日本人は「はい、わかりました」と情報を持ち帰って、上司に伝えて「いいですね」、「違いますよ」と上司に判断を委ねることが多いですね。それは米国人から「何のための会議なんだ?」との不満の声をよく聞きます。
――会議の長さについてはどうですか。
議題や時間をちゃんと決めていれば、会議は短くできます。でも、企画やマーケティングの会議は、あまり時間をコントロールしないほうがいいこともあります。ある程度コントロールしたとしても、アイデアを出すような会議は、なるべく自由な議論が盛り上がるようにすることが重要です。
何について話をしているか次第で、会議の時間をコントロールする。もちろん、みんな忙しいから、他の仕事に影響が出ない範囲として2時間以内にとどめることは大切です。
――日本には「根回し」という言い方がありますが、「根回し」は不要ですか。
「根回し」は大事だと思います。ただ、私の言う「根回し」とは、前もって準備をするということです。少なくとも議題、問題点はどこにあるかを前もってわかっていれば会議はスムーズに進みます。
この議題は40分ぐらい必要そうとか、これは10分あれば十分とか。ファシリテーターは議題をすべて把握しておく。会議をコントロールする基本は「根回し」です。結論を前もって決めるわけではなく、疑問点を予め理解し、考えていく。自分の意見だけでなく、他からの意見が何かわかったら、それに対してどう答えるか、どう反対するかを準備しておきます。

責任の分散のための情報共有

――ムダな会議を減らすにはどうすればよいですか。
とにかく会議の目的をはっきりさせます。日本の会議は、「今日の議題はこれです」と話し合うことが目的になる。だから最後は曖昧なまま終わります。また、日本は会議が多すぎます。会議室があれば会議をする。会議室を増やしたら、会議室の数だけ会議も増える。会議が多すぎるんです。
――なぜ多いと思いますか?
「反対しなかったよね」っていうアリバイを作るためでしょう。責任の分散です。メールと同じですね。ccが多すぎる。日本人にはいつも「ccをやめなさい」と言っています。最低限必要な人にだけ送ればいい。想像してみてください。リーダーや忙しい人ほど、メールボックスが読む必要のないメールでいっぱいになり、メールを読むことに忙殺されてしまうんです。日本人はメールでccをしたがる。メールには、そういう問題がよくあります。会議もメールもとにかく責任分散のため。情報をムダに共有したがるのです。日本人と仕事をする欧米人は、このccメールの習慣やムダな会議が多いとよく文句を言います。
――どの程度だと会議が多いという印象ですか。
あるクライアントでは、役員クラスの人々は毎日、しかも一日中会議をしていました。これは多すぎます。だから毎週水曜日の午後は会議をしないというルールを作りました。会議室を使えないように鍵をかけるくらいです。会議をしない時間を作ることにみんな喜んで賛成しました。会議以外の実務をする時間が足りなくなっていたんですね。
ただ、会議がなくなればいいということではありません。コミュニケーションは大事です。特に部署間の横断的なコミュニケーションはすごく大事です。一概に会議はないほうがいいとは思っていません。会議自体に価値がないわけではなく、会議以外の時間も必要だということです。
どんなに会議をやっても、結論とか、価値があることが出なかったら意味がないです。会議の前に目的をはっきり定義して、それを結論にもっていけるまでファシリテーターと議長は集中しないといけません。

会議では発言をこまめに分散させることが大事

――日本の会議では議論を交わすというより、特定の人がずっと独占して話しがちです。
話せる人が評価される会社もありますからね。特にマーケティングやセールスはそうなりがちです。サイエンス系、エンジニア系の人たちは、合理的に決めるのであまり問題にはなりませんが、マーケティングやセールスの会議は、多くの場合、口の立つ人勝ちになりがちです。ファシリテーターより偉い立場の人がいたら、その偉い人はそれを認識してコントロールすることが大事ですね。ファシリテーターはあくまでも会議を進行管理する人。一番偉い人が会議の目的と時間内で決めるべきことを考えないといけません。それがその場で一番偉い人の責任です。
1人が話しすぎることもあるのですが、結構多いのは、2人だけで議論してしまうことです。10人が参加していても、2人にしか関係ない話で議論してしまうケースです。それは議題を作るときに気をつけなければいけません。みんなに関係ある話に限ったほうがいいです。「なぜいまここに私がいなければならないの?」という会議は結構あります。自分の話ばかりでなかなか解決できず、すごく時間がかかる。それは役員会議でも結構ありがちです。
会議が進められないことがわかったら、早めにやめる。みんなの時間をムダにしないためにもやめます。2人で解決した後にまた会議をします。準備の段階で、議長はみんなに関係のある議題を選ばなければなりません。会議は議題を含めた準備次第で良くも悪くもなるのです。
Arthur Woodruff Bastian(あーさー うっどらふ ばすてぃん)
バレオコンマネジメントコンサルティング、シニア・マネジャー。ブリジストンでのR&Dエンジニアを務めた後、マッキンゼー&カンパニー、PRTM(現PwC)でハンズオンスタイルのコンサルティングを行う。シニアマネジメントと密に関わりながらグローバル企業のオペレーション変革を行う。製品開発とローンチエフェクティブネスのエキスパート。ロジスティクスやコスト改善にも精通。物理学学士、コーネル大学MBA。 日本在住30年。

文・鈴木涼太
写真・向山裕太

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