一人ひとりが自然な状態であれば、世の中はもっと良くなる【スマート会議術第63回】

一人ひとりが自然な状態であれば、世の中はもっと良くなる【スマート会議術第63回】Be-Nature School代表 森 雅浩 氏

自然と調和し、自然な存在としての人を増やしていきたいーーそんな願いを実現するために設立されたBe-Nature School。その代表を務めるのが森雅浩氏だ。

森氏にとってファシリテーションは、自然・人・社会のつながりを創造するために必然に生まれた考えだった。

ファシリテーションは、ビジネスに限らず、市民運動や地域活動、教育の現場でも求められている。森氏は言う。「多様化・複雑化する現代社会において、自然体でいきいきと、自分自身を社会に活かしていくことが大切」と。

そんな信念で活動を続ける森氏に、ファシリテーションの重要性と期待される役割について語ってもらった。

目次

ファシリテーション元年だった2003年

――会議におけるファシリテーションの重要性が問われるようになったのはいつ頃からですか。
僕らがファシリテーション講座を最初に開いたのは2003年ですが、多分日本では一番早いほうだと思います。ファシリテーションの研修や講座をやっているところは、まだほとんどなかったと思います。
2003年は、一緒に講座を始めた中野民夫さんが『ファシリテーション革命』を出し、堀公俊さんという方が、日本ファシリテーション協会を設立して、『問題解決ファシリテーター』という本を出した年です。そういった意味でも、2003年が日本のファシリテーション元年かもしれません。
――近年、急にファシリテーションというキーワードが注目されている印象もあります。
確かにこの数年は、一般の人にも広く必要とされている印象はあります。働き方改革の掛け声もあって、「会議を改善しなきゃいけない」という意識でファシリテ-ション講座に来られる人がいますね。
この10数年の中ではIT系のシステムエンジニアの人が多かった時期もあります。IT業界は専門領域がいっぱいある。でも、専門的すぎて全体像を把握する人がいない。専門家を集めてチームをつくって納品しなくちゃいけないけど、話し合いがうまくいかない。それで、学びたいという人が結構多かったです。
あとは市民運動や住民参加など、そういう活動もあります。街づくりとか、市民の声を行政に反映させるような市民向けのワークショップをやる行政の人たちも結構いたりするんです。
うちは、ビジネスパーソンから市民ワークショップまで幅広く、どこでも使えるような汎用性の高いファシリテーションを教えていると思います。IT業界の人も多いですし、環境や国際協力団体の人も多いです。大学や幼稚園、保育園など教育関係の人も多くいらっしゃいます。

「Be-Nature」に込められた意味

――「Be-Naturel」という社名にはどんな意味が込められているのですか。
「Be-Nature」にしたのは、「あなた自身が自然な状態であるといいよね」という意味を込めています。自分自身も、あなた自身も。「一人ひとりが自然な状態であれば、世の中はもっと良くなるよね」と。人として自然な状態の自然体の人が増えていくといいなと思ったので。
そのためには、海や山、植物、動物など、自然とも触れ合って、自分とも対話して、仲間とも話し合いをする。だんだんナチュラルな人になっていくプロセスとして、ワークショップやプログラムを提供してきました。そのやり方がファシリテーションだったということです。人と自然と社会とのつながりをつくっていくというところが出発点でした。だから、最初はファシリテーションを謳ってはいませんでした。
東日本大震災以降、「つながり」という言葉がよく使われるようになりましたが、僕らは随分前から、現代社会はつながりが弱いというか、いろいろなものが分断されてしまっていると感じていたので。
――東日本大震災の前後で大きく変わったという実感はありますか。
一緒にやっているファシリテーション講座の講師陣は、被災地にものすごく通っていましたね。「これから街をどうしていけばいいのか」と話し合う機会が本当に増えたので、そういう意味ではファシリテーションは貢献していたと思います。

ファシリテーターとは「引き出し役」

――ファシリテーションは、本来どのような役割が期待されていると考えますか。
ファシリテートとは、もともと「ことを促進する」「ことを容易にする」という意味があります。たとえば、「○○が××することを容易にする」という言葉だとするなら、「会議のメンバーが結論を決定することを容易にする」とか「学生が新しい概念を理解することを容易にする」とか、そういうことなんです。それを名詞形にしたのがファシリテーションです。
よく「ファシリテーターって何者?」と問われるのですが、日本語でピンとくるものがあまりない。「進行促進役」とか「協働推進役」とか。だから、もっとシンプルに「引き出し役」という説明をすることもあります。
――そういう意味では、会議だけに限定されるものではなさそうですね。
クリエイティビティや学びの要素が強いのか、生み出す要素が強いのか。内向きか外向きかで、幅広い分野でファシリテーションは使われています。
ワークショップという意味では、アートやダンスといった場面でも使われます。アートやダンスを学ぶワークショップでは、その先生がファシリテーターということです。アートやダンスは「こういうふうにやりなさい」ということじゃない。その人自身をどう表現するかということなので、一方的に教えることが成立しづらいわけです。何か型があって、それをマネするだけであればいいですが、表現はその人そのもの。それは、何かを教え込むこととは逆ですよね。ファシリテーションは、主体が参加者なんです。
ワークショップとファシリテーションは対なんです。ワークショップが、開かれた場の名前で、それを運営する手法がファシリテーションと理解してもらうといいと思います。参加型の学びや創造の場をワークショップと呼んで、これをつくったり、取り回したりする手法をファシリテーションと説明することもできますね。

最適解を探すために、みんなで話し合っていかないと難しい時代

――なぜいま、ファシリテーションが求められているのですか。
社会的背景の中でトップダウンがなかなかうまくいかない。インターネットの登場で、世の中がフラット化してきて、有識者や上司の言うことを聞いていれば済む時代じゃなくなってきた。物事が非常に複雑化しているので、単純で、簡単で、明快な正解がなくなってきている。最適解をどう探していくかを、みんなで話し合っていかないと難しい時代なんでしょう。
単にビジネスだけじゃないと思います。市民活動でもそうです。圧倒的な正解がない。要するに解決できない問題だらけ。たとえば、地球温暖化や原発ってどうしたら解決すると思います?
――1+1=2という簡単なものがなくなってきている。
そう。そういう問題があるときには、みんなで知恵を出さなければいけないんです。みんなで知恵を出し合うときに、出し合った知恵をどう生かしていけばいいか。
多様性というのは、けっこう面倒臭いものなんです。意見の違う者同士が話し合うわけですから。その意見が違う者、考え方が違う者同士で意見を出し合って話し合ったりする中から、もっと新しい解決策や次のステップが生まれてくる可能性があると思うんです。そのときに、話し合いが決裂するよりは、お互いに創造的な成果が生まれたほうがいい。そのときにファシリテーションの手法は役に立つという話です。

いいものを積み上げて、紡いでいくプロセスをつくる

――会議にどんな課題をもって来られる方が多いですか。
「会議がひどいんです」と言って参加する受講生が結構多いです。よくあるのは「誰も意見を言わない」「みんなが勝手なことを言って意見がまとまらない」。どちらか極端な場合が多いですね。
会議が「つらい」「緊張する」「時間のムダ」と思っている人が多いんです。せっかく1~2時間使うのにもったいないですよね。でも、会議は必要なんです。情報も共有しなきゃいけないし、意思の共有もしなきゃいけない。だったら、もっと成果が上がるやり方をやったほうがいい。
――意見が出ないとか、みんなが勝手なことを言うのは、どういう原因で起こると考えますか。
日本の会議は定例会議が多いんです。集まったときに、そもそも何のために集まったか情報共有がない。誰も準備していない。たとえば、「今日の1時間は、こういうことを成果として定めて、こういう段取りで話し合いたいと思うんです」と、スタートの段階で目指すべき成果を共有しない。
なんとなく集まった会議は、効率も悪いし、みんなの気持ちがそこに向かうまで時間がかかってしまいます。ちゃんとした成果目標を明確にして共有しないと「つらい」「緊張する」「時間のムダ」という会議になってしまうんです。
そうならないためには、準備が必要です。運営側やファシリテーターは、求める成果を明確にしなければいけない。最初にそれをみんなに提示して、合意してからスタートする。それだけでも効果があるんです。会議は、最初にしっかり情報共有があって、次に意見を広げて、ある程度出しきったところで絞って共有をする。そういう流れがつくれるだけで、納得しやすい会議になると思います。
ある程度ステップを踏んで流れをつくっていく。流れをつくるけど意見は自由に出して、そこからいいものを積み上げて、紡いでいくプロセスをつくる。それがファシリテーションだと思います。そういう関わり方をするだけで随分良くなると思います。
森 雅浩(もり まさひろ)
Be-Nature School代表。早稲田大学社会科学部卒。海洋環境系団体に身を投じたのを機にBe-Nature Schoolを立ち上げ、以降企画・プロデュースを担当。NPO法人自然体験活動推進協議会(CONE)理事。著書に絵本『田んぼの気持ち』(ポプラ社)、編著に『おとなの自然塾』(岩波書店)、共著に『ファシリテーション 実践から学ぶスキルとこころ』(岩波書店)がある。

文・鈴木涼太
写真・大井成義

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