「目玉焼きに醤油」とは限らない【スマート会議術第64回】

「目玉焼きに醤油」とは限らない【スマート会議術第64回】Be-Nature School代表 森 雅浩 氏

自然と調和し、自然な存在としての人を増やしていきたいーーそんな願いを実現するために設立されたBe-Nature School。その代表を務めるのが森雅浩氏だ。

森氏にとってファシリテーションは、自然・人・社会のつながりを創造するために必然に生まれた考えだった。

ファシリテーションは、ビジネスに限らず、市民運動や地域活動、教育の現場でも求められている。森氏は言う。「多様化・複雑化する現代社会において、自然体でいきいきと、自分自身を社会に活かしていくことが大切」と。

そんな信念で活動を続ける森氏に、ファシリテーションの重要性と期待される役割について語ってもらった。

目次

ファシリテーションはコントロールすることではない

――ファシリテーションを教えていて難しいと思うのはどんな点ですか。
仕事のジャンルによっても違うのですが、教育系に関わる人は、一定の要項があって、教えなきゃいけないことが決まっている。だけど参加者主体で学びの場をつくると、一人ひとりのスペースが違います。だから、教えることと、自分たちで学ぶ場のギャップに悩まれることが多いようです。参加する教育系の人はみんなそう言いますね。主体をどちらに置くかです。いままでの学校の授業は主体が生徒じゃなくて先生なので。
ワークショップは先生がいても、「ちょっと話し合ってみて」となったら、そこでどんどん変わっていく。全部把握できるわけじゃない。学校で一方的に教えることに慣れている人が、これじゃダメだと思ってファシリテーションを学びに来られるのですが、自分のマインドが切り替えられなくて苦労している人が多いと思います。
――人をうまくコントロールするのか、うまく議論を運ぶのかという違いに戸惑うわけですね。
そういうことだと思います。ファシリテーションはコントロールすることではないんです。むしろコントロールができない前提です。「ファシリテーションってコントロールでしょ?」って言われる人が結構多いんですけど、じつはやっていることはまったく真逆です。
ファシリテーターは、「新しい何かを生み出しましょう」ということは言えると思うんです。でも、新しいものが何かということは、ファシリテーターが決めることじゃない。みんなで決めること。だから、「フレームだけを提示するので、中身はみなさんで決めてください」という姿勢でないといけない。それを権限のある偉い人がファシリテーションをやると、どうしても場をコントロールしてしまうんです。
――ファシリテーションに適性があるとしたらどんな人ですか。
予想外の展開を楽しめる人ですかね。想定外に対する許容があるというか。人前に立つことにストレスを感じない人のほうが、最初はハードルが低いかもしれません。「会議を始めます」という一言も言えない人はいますから。
ファシリテーターは、存在として矛盾しているところがあるんです。会議の進行役なので、自ずと力を持っちゃうわけです。コントロールしようと思えばできる権力を持っているんです。でも、コントロールしてはいけない。そこは矛盾を孕んでいるとも言えますね。

会議に必要な「OARR」(オール)

――会議を有意義に進めるために押さえておくべきことはありますか。
オリエンテーションの「OARR」(オール)というスキルがあります。米国のコンサルタント、デビッド・シベッツ氏がオリジナルですが、この「OARR」は、研修や会議で明確にすべきOutcome、Agenda、Role、Ruleの4つの項目の頭文字をとったものです。これを事前に決めて、しっかりと伝えるだけで、進行のしやすさは全然違います。参加者全員でオールを持って漕ぐイメージですね。
最初のOutcome(アウトカム)は、求める成果を明確にする。「今日はここまで決めましょう/ここまで行きましょう」というのを共有できれば、積極的な人も、それほどでもない人もそこを目指して参加することができます。ゴールイメージの共有と言ってもいいでしょう。
Agenda(アジェンダ)は、ここからここまではアイデアを出す時間、ここからここまでは絞り込む時間、ここからここまでは何をする時間と予め決めておくこと。アイデアを広げるときは自由にしゃべればいいのですが、絞るときにきたらどれが一番いいかというのを考える。そういう流れをつくっておくことです。
Role(ロール)は、そこにいる人の役割を明確にすること。ファシリテーターは進行はしますが、決めません。「決定権があるのはみなさんご自身です」「この会議の主役は皆さんです」といったようにこの会議おける役割を明確にしておきます。
最後のRule(ルール)は、文字通りにルールです。たとえば、いつもは声が大きい人や偉い人がずっと一人でしゃべり続けて、みんなが黙っている会議だったら「全員が話そう」とか「意見の違いを大切にしよう」「ここでの意見は皆対等」といったように、確かにそうだよね、と思えるようなルール、つまり「参加の心得」のようなものを会議の最初にあえて確認するわけです。
あと、意外と参加者の心理に影響するのは空間デザインです。一般的な会議室ならば、机と椅子の並べ方です。たとえば、いつもの会議室、机のレイアウトはいつもロの字方。そうすると誰も決めていないのに、暗黙に座る場所が決まってきてしまう。目上の人がここ、とかいうように。机や椅子の並べ方を変えて、あえてそういうことを壊してフラットな感じにする。椅子や机の並べ方を工夫することもファシリテーションの役割の一環です。
もうひとつはグループサイズを変えてみる。これは簡単かつ有効な手段です。会議メンバ-が仮に12名だとした場合は、通常は全員がひとつのグループで話しますよね。それをあえて、内容に対応して2人組や3人組、もしくは4人組で話す時間をつくってみる。少人数だと自然に会話は活性化します。
その結果をグループごとに共有して、また次の展開に進むといった感じです。

話す内容よりもプロセスに意識を向ける

――ファシリテーターとして、最低限心がけておくべきことはありますか。
ファシリテーターに限りませんが、参加する人たちが、まず自分のこだわりをいったん保留することですね。人って意外と思い込みが強いんです。単純に「目玉焼きだったら醤油でしょ」「ソースでしょ」「ケチャップでしょ」みたいなもので。自分が目玉焼きには醤油をかける人だったら、「目玉焼きにソースをかける人なんて信じられない!」と思う。自分は目玉焼きには醤油をかける派だが、世の中にはソースやケチャップをかける人もいるかもしれないと思うような思考トレーニングは役に立つと思います。
それに気がつくのって、話してみないとわからない。だから、そこで「あり得ない!」って拒むのではなく、「そういう意見もあるんだ」と思うようにする。あとは、人に興味を持てるかっていうのもあります。
――ファシリテーターが、参加者がどんな人かを知っておくことも重要ですか。
知っていたほうがいい場合もありますし、知らないほうがいい場合もあります。興味を持って聞くということをするためには、知っていなくても、知りたい気持ちが大事だということです。
ファシリテーションを学ぶ人にはよく言うのですが、話す内容だけでなく、プロセスにも意識を向けてほしいのです。たとえば、怒って言っているのか、にこやかに言っているのか、急いで言っているのか。乗ってきている感じがするとか、エネルギーが高まっているとか、ちょっと沈んでいるなあとか。僕がファシリテーターをしているときは、発言内容よりも、表情や仕草を見ることが多いですね。
大人数のワークショップで小グループで話し合ってもらっているときは、僕はあまり話を聞かないんです。グループごとにいろいろ聞いて回る人もいますが、すべて聞いて回れるわけじゃない。何かたまたま耳に入ってきた意見が代表みたいに自分が受け取ると怖い。だから僕は、あえて聞かない。全体的な雰囲気やエネルギー感を見て、この時間はそろそろ終わりにしようかとか、ちょっと延長しようかとか、そういう観察をしています。

拡散と収束の両方がある会議をデザイン

――会議に理想的な環境があればお教えください。
野外でホワイトボードを使って会議をファシリテートしたこともありますが、人は壁がないと意識が集中しないです。何か物事を決めるときには部屋を使ったほうがいいですね。ある意味当たり前ですけど。アイデアを広げたり、インスピレーションを得たりするには野外で会議をやるのもいいかもしれません。ただ、開かれた環境は拡散には向いているけど収束には向いていない。あと、いつも同じ会議室だと煮詰まってくるので、場所を変えることも有効だと思います。
「ビジネスキャンプ」という合宿型のビジョン会議のパッケージをつくったときは、あえて日常を離れた場所を使い、普通の屋内の会議室と野外を活用して拡散と収束の流れを工夫しました。集中して話すときは室内でやって、アイデアを広げるときには野外でやって、また戻って、という組み合わせで設計をして。
――キャンプというと、焚き火は集中力を高めるという話をよく聞きます。
そうですね。焚き火があると、人はすごく集中力を高めるんです。逆に寡黙にはなります。ムダな話をしなくなる。合宿型のチームビルディング研修をやるときは、焚き火は夜の本音トークみたいな場で設定したりすることはあります。焚き火を前にすると、小声でボソボソと大事なことを言ったりする感じになります。議論を戦わせるというよりは、本当に自分の心にある大切なものを人に聞いてもらったりするときにいいですね。「実はこんなことを思っていた」という場面としては、焚き火はいいと思います。ビジネス会議でも、ある場面でときどきそういう工夫をするのはいいと思います。
どんな環境でもいいのですが、わざわざ集まって話し合うのですから、日常業務に引きずられずに集中できるセッティングは大切だと思います。その一環としても、事前の準備をある程度しておくこと。これが会議の環境づくりには大切ですね。
森 雅浩(もり まさひろ)
Be-Nature School代表。早稲田大学社会科学部卒。海洋環境系団体に身を投じたのを機にBe-Nature Schoolを立ち上げ、以降企画・プロデュースを担当。NPO法人自然体験活動推進協議会(CONE)理事。著書に絵本『田んぼの気持ち』(ポプラ社)、編著に『おとなの自然塾』(岩波書店)、共著に『ファシリテーション 実践から学ぶスキルとこころ』(岩波書店)がある。

文・鈴木涼太
写真・大井成義

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