会社を立て直すためには会議の変革が必然だった【スマート会議術第65回】

会社を立て直すためには会議の変革が必然だった【スマート会議術第65回】L.MASTERPLAN 稲垣 耕治 氏

東京で商社マンとして働いていたが、母が倒れ、急遽実家の印刷会社を継ぐことになった稲垣氏。

東京の商社と地方の印刷会社ではすべてが違っていた。しかも、印刷業界は不景気の真っ只中。そして、父親まで入院。自分には印刷の知識はまったくない。みんなに頑張ってもらうしかない。いつかは兄が跡を継ぐのだから、まず組織を強くして兄に渡そう。そう決意した。

そこで稲垣氏が出した結論が「会議」だった。会議を変革して社員を育成する仕組みづくりを徹底的に考えた。6年で新社屋を建設、特許を使って3億円の商材を開発し、軌道に乗ったところで兄にバトンタッチ。そして、家業で培ったノウハウをもとに起業することになる。

会議コンサルタントとして活躍する稲垣氏に、自らの信念とする「社長と社員の幸せな関係と会社の継続」について語ってもらった。

目次

会議がないと会社は成り立たない

――会議コンサルタントになられたきっかけは何だったのですか。
実家が小さな印刷会社を経営しているのですが、両親が倒れてしまい家業を手伝ったのがきっかけでした。兄が継ぐことは決まっていたのですが、兄はすぐに仕事を辞められなくて、私が取り急ぎ会社の常務となったんです。
それまで私は東京の専門商社に勤めていました。でも、地方の中小企業と東京の1000億規模の専門商社ではあまりにも違いがありました。本当に何から何まで違うのでカルチャーショックを受けました。
兄が戻ってきたときに、そのまま渡せるように会社自体に力がある状態にしたかった。それでひたすら会議や仕組みを考えてやり始めました。
――なぜ会議が重要だと思ったのですか。
引き継いだときに課題はかなりあったのですが、一番の問題は社長(父)がカリスマだったということでした。社員はみんな社長の顔ばかりを見ていて、横のつながりがなかったんです。
父のように私も社員を引っ張ろうと思えば引っ張れたと思うんです。でも、それでは意味がない。兄にバトンタッチをするのが前提でしたから。だから、私のあとに誰が来ても組織として成り立つようにするのが目的だったんです。トップダウンではなく、横のつながりを強化しなければならなかった。そのためには社員間のコミュニケーションを図らないといけない。コミュニケーションの時間を考えると、会議が最も多い。会議がないと会社は成り立たないんです。
会議がないと社員が何をやっているかわからない。会社の方向性もわからない。会議って普通みんな嫌いですよね。好きな人は誰もいない。でも「会議は嫌いだ」と言っていては、会社は破綻するんです。

理想を掲げても、現場が動かなければ意味はない

――会議の変革はどのように進めたのですか。
実はすごく簡単なことで、「話を聞いてもらうことだけ」なんです。それをこれまでできていなかっただけなんです。逆に言うと、現場の人たちができることをやれるような仕組みと会議の構築さえすれば動いてくれるんです。経営者や幹部が理想を掲げても、現場が動かなければ結果は出ませんから。
会議は経営陣が考える戦略を戦術ベースに落として、現場が動きやすいようにしなければ何の意味もありません。経営者の仕事は、どんな方法を使ってでも現場に動いてもらことです。もちろん仕組みだけでは動かないので、マインドも変えていかないといけない。
フラットにしてマインドを変えるためには、階層を分ける必要があります。階層が違うのに無理に一緒にやると、話の接点がなくなってしまう。だから、階層ごとにちゃんとしたグルーピングをしていかないといけない。幹部なら幹部だけで、現場なら現場だけでグルーピングをする。レベルの差がある人たちが一緒にやるのは勧めません。
特に大人数で会議をやる場合は、シンプルなものしかやりません。全体会議でも複雑な話をする人がいるんですが、みんな頭に入らないです。人数が多ければすごくシンプルにしていかなきゃいけない。複雑なことを話したければ、幹部層だけでやってもらったほうがいい。
――実際、どのようにして動くようにしたのですか。
会議では、「なぜこれをするのか」ということをひたすら説明しました。なぜやるかがわかれば、「次はこういう理由でやるから、次はこうすればいいんだ」と進化していく。とにかく、目的をちゃんと説明しないとダメなんです。作業指示は誰でもしますが、目的や「なぜ」を説明しないと、あとで「なぜそんなことをしたんだ!」ということが起こるんです。
あとは成果に対して、「お前がやったからこんなに良いことがあったよ」って伝えてあげないといけない。私はお客様からいただいた感謝をいつも伝えるようにしていました。難しいのは現場なんです。工場の作業員にとって何がモチベーションなのかを考えて取り組まなければいけません。
「嫌ならやらなくていい。お客様に文句を言われたら断ってこい」と、社員にははっきり言いました。「そんな仕事でお前が人間的に否定されるぐらいなら断ってこい」と。単に、「お客様に喜んでもらったほうがうれしいよね」というシンプルな考えです。
――モチベーションが高いほうが、企業としては成長するということですか。
モチベーションはそんなに簡単に上がるものではありません。でも、経営者や上長としてのスタンスを見せることはすごく重要だと思います。「この人は信頼に足る人だ」と思ってもらう。

頭の良い人ほど新しいことに反対する

――信頼されるまで時間はかかりましたか。
現場で働く人たちに理解してもらうのに3年かかりました。それまで何を言っても反対しかされなかった。3年経ったときに、会議である優秀な社員が「常務はみんなのことを考えてやっているんだからやろうぜ」って言ってくれたんです。それまではその人が私のやり方に一番反対していたので、受け入れられたときには、うれしくて一人で泣いていました(笑)。
――反対する主な理由はあったんですか?
実は頭の良い人ほど新しいことに反対するんです。先が読めるので、苦労したり、初めてのことに手を出したりしないんです。頭が良くて保守的であれば、すぐに「それはうまくいかないんじゃないか」となってしまうんです。だからこそ、そういう人を前向きにさせたときに会社に力がつくと考えています。
――会社が危機的状況にあれば自ずと改革に着手するとは思いますが。
危ないほうが新しいことをしないです。なぜなら、よく「ゆでガエル」にたとえられますが、ゆっくり悪化していくので気づかないんです。景気が悪いとならさら判断を変えることはしません。過去の資産でゆっくりゆっくり下がっていく。底をついたときに気づくので、次の手を打とうと思っても手遅れになるのがほとんどです。
「たまたまいまは悪いけど、これでやってきたんだから大丈夫だろう」と考えてしまう。「いずれ上がるだろう」とさえ思っていない。単に前と同じ判断をしているだけのことが多いんです。
たとえば、マクドナルドに行ったらいつもチーズバーガーしか頼まない人っていますよね。どこに行っても同じものしか頼まない。新しいものが出ていてもまだ「チーズバーガー食べたい」って思っているみたいな。そんな感じなんじゃないですかね。人間は習慣のほうが優先されますので。

行動を習慣化していけば、売上げは上がる

――経営陣の理念や構想を理解したとして、現場が結果を出すためにどんなフォローをしていけばよいのですか。
結果を出すためには、まず行動です。よく数値にこだわる人がいるんですが、僕はお客様に「数字は無視してください」とよく言います。特に下の階層であればあるほど。「むしろ行動にフォーカスしてください」と言います。「ノルマの売上げを達成していない!」って叱っても、人を動かすのは難しいんです。だったら、「10件回れ」と言うほうがいいんです。行動のほうにフォーカスしてほしいです。
何をやればいいかわからないより、その人の行動にフォーカスして、売上げが上がらないのであれば、その行動をコントロールして、習慣化していけば、売上げは上がるんです。
多くの場合が、「自主性」という名の「無責任」になっているんです。放り出しているだけだからうまくいかない。どこが足りないか、その人のプロセスを分析してあげれば変わります。
――「仕事を10件取ってこい」と言うより、電話を30本するタスクがあれば、自ずと30本の電話のうち10件はアポが取れるということですか。
簡単に言うとそうです。ただ、電話を30本してもアポが取れるとは限らないので、中身を見なきゃいけない。「30本」という数字だけでなく、行動を見ないとダメなんです。それでも商品が悪かったり戦略が悪かったりして、結果が出ないときがあります。そのときは経営者が悪いんです。
――原因究明の場として、会議は大きな役目を果たすわけですね。
そうです。現場でそれをやってもらいます。経営陣から戦略が降りてきます。降りてきたら実行させる。数字の管理じゃなくて、行動の管理をしていく。行動の管理をしてみてアドバイスしてあげれば、ある程度結果は出ます。行動しているのに数字が出ないとなったら、一度経営陣に戻すんです。
それは経営陣にとってはすごく良い情報なんです。「こういう理由で、これだけの人がやったけど結果が出なかった」となれば、何に原因があるのかを経営陣で考えてもらいたいんです。
経営陣で決めている内容だから、現場で決める話ではない。現場の情報を回すのが会議だと思うんです。多くの場合は、経営陣と現場で分断されています。現場から経営陣に戻るルートがないことが多いのです。

不要な情報は要らない

――会議を一緒にやって、その場ですくい上げることはできないのですか。
すくい上げる時間がないと思います。「どうして結果が出ないんだ? ちゃんと結果を出せよ」で終わって、「次またやってこい」「はい」で終わりますから。どうして結果が出なかったのか、現場の情報を回さなければいけないんです。
――会議と会議をつなぐ体制づくりも重要になってきますね。
そこがすごく重要なんです。少なくとも、その流れの中にいないと、経営層がどうやって情報を取っているかもわからない。ただ、余計な情報は要らない。必要じゃない情報まで回すことは望ましくありません。
会議をたくさんやっていると、みんな「会議が多い」と文句を言いますが、会議を減らすと、「情報が足りない」と言うんです。でも半分は要らないんです。その棲み分けをしてちゃんと説明をする必要がありますね。
稲垣 耕治(いながき こうじ)
L.MASTERPLAN(マスタープラン)代表取締役社長。会議コンサルタント。
宮城県仙台市生まれ。1992年にカナダに留学。1995年、東京・京橋の専門商社勤務。1998年、常務取締役として家業の印刷会社(従業員60名)でを継ぐ。経営の再建のノウハウを元に2006年に仙台でマスタープランを設立。「会議(環境)を変えれば社風が変わる」を信条に企業の会議コンサルタントを始める。
https://l-masterplan.com/

文・鈴木涼太
写真・大井成義

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