いつでもどこでも誰とでも――場所と時間から解放された「働き方改革」【スマート会議術第69回】

いつでもどこでも誰とでも――場所と時間から解放された「働き方改革」【スマート会議術第69回】日本マイクロソフト株式会社 春日井 良隆 氏(左)、山本 築 氏(右)

労働生産性の低下、意志決定の遅さ、非効率なオフィス環境、紙資料によるムダなコスト、ダラダラ会議の多さ、長時間労働、離職率の高さなどなど…。
世界の最先端を走るガリバー企業・日本マイクロソフトとて、決して例外ではなかった。
それが大きく変わったのは、2011年2月の品川本社オフィスへの移転・統合、そして東日本大震災だった。

これらの課題を整理し解決するために、日本マイクロソフトが打ち出したのが「働き方改革NEXT」である。

そして、そのカギを握ったのはテレワークとフリーアドレスだった。テレワークによって会議の時間が解放され、フリーアドレスによって働く場が解放された。この2つの導入によって、社員は「時間」と「場所」から解放され、「いつでもどこでも誰とでも」自由に効率良く仕事に集中することができるようになったのだ。

いつでもどこでも誰とでも――それこそがまさに日本マイクロソフト流の働き方改革である。

エグゼクティブ プロダクトマネージャーの春日井良隆氏と働き方改革推進担当の山本築氏に、働き方改革、ひいてはかつて会議が抱えていた課題と改革に至った経緯について語ってもらった。

目次

「働き方改革NEXT」が掲げる3つのミッション

――日本マイクロソフトが掲げる「働き方改革NEXT」とは、どんな理念ですか。
山本:日本マイクロソフトのミッションは、「地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにする」ことが目指すところです。日本の社会変革にどう貢献するか。それが日本マイクロソフトの成功でもあると掲げています。
「働き方改革NEXT」には、大きく「インダストリーイノベーション」「ワークスタイルイノベーション」「ライフスタイルイノベーション」の3つの柱があります。この3つのイノベーションが生まれていくように、組織や企業文化をどう創り上げていくか、というところに注力しています。
まずデジタルテクノロジーで社員の創造性や洞察力に気づきを与えて、そこから「コ・クリエーション(共創)」する。ソリューションよりも、さらに一緒に共創していこうとするかに重点が置かれています。
人同士が会議で話をして、いかに共感から何かが生まれていくかという考え方です。そして、いままでの会議体とかルールからいかに脱却して、それぞれが融合していくというのが大事だと考えています。
――御社では2011年から働き方改革を提唱していますが、始めるきっかけは何だったのですか。
山本:2011年の東日本大震災以降、日本がいままさに、「新たな企業文化の醸成・空間の創出」から「社員の創造性・人の洞察とデジタルテクノロジーの共創」に移行しつつあります。いつでもどこでも誰とでも、いろいろなコミュニケーションやコラボレーションができること、ここからまず始めました。
国が1億総活躍社会や働き方改革を打ち出しているように、ようやく国も日本社会における国策としてやり始めています。そこで我々は「働き方改革NEXT」という理念を掲げているんです。
「働き方改革NEXT」のミッションとしては、「人づくり」「仕事づくり」「社会づくり」という3本を掲げています。多様性がいま非常に求められています。人はモチベーションをどう上げていくか、エンゲージメントを強めていくか。AIが台頭してくるといった話もあるので、いままでの職種だと全然足りない。
そういった新しい職種を日本マイクロソフトが率先して、どうつくっていくのかとか、それをお客様にどう提供できるのか。それがひいては「社会づくり」になり、国策、多様性を受け入れることになるという観点で、「人づくり」「仕事づくり」「社会づくり」の3つを掲げています。
その中で「働き方改革NEXT」のビジネス的な市場を見ているというのがあります。工場や最前線で働く人々へのITの投資、浸透。そしてミレニアム世代のモチベーションを企業としてどうやって上げていくか。最後は、教育です。学び方をどう改革していくか。この3つの柱でいま、取り組みをさせていただいています。
春日井:ちょうど今春、2020年用の小学校の教科書の検定が終了して、新しい教科書が決まりましたよね。
特に働き方という意味では、よく「学校の教育現場はブラック企業だ」と言われているようです。実際に話を聞くと、日々本当に大変であることがわかりました。そこでも日本マイクロソフトとしてはお手伝いをしていきたいと考えています。
――2020年の教育改革にはどのような期待をされていますか。
春日井:実は2020年の改革だけでは単に先生の負担が増えるだけなんです。ただ、一方で効率性が低かったり、文化的、ルール的に未整備だったりするところも結構あります。そういったところに貢献していければと考えています。

会社変革のカギとなったテレワークとフリーアドレス

――会議は、働き方改革の中でどのように位置づけられると考えますか。
春日井:会議は何のためにやるのかというのが一番大切だと思うんです。よく「とりあえず集まろう」とか、「とりあえず話しておこう」とか、「とりあえずこの人に話を通しておこう」みたいな会議は一番効率が良くないし、意味がないと思います。
テレワーク云々以前に、その会議はなぜ必要なのか、そもそも1時間必要なのか、30分でいいんじゃないか、10分でいいんじゃないか、というところは以前から取り組んでいる部分ではあると思います。何のために集まるのかということですよね。
――御社は、デジタルツールを武器に、自ら働き方改革を実践していますが、この数年で何か変わってきている手応えはありますか。
春日井:弊社はちょうど東日本大震災が起こる直前の2011年2月にいまのオフィスに引っ越しています。東京にいくつかあった拠点がここに集約されたタイミングで、個々人の座席がいわゆるフリーアドレスになったんですね。いまは、一部の部署を除いてほぼ全員がフリ-アドレスになっています。
あと、テレワークがかなり浸透しています。オフィスでリアルな場所にいなくてもよいという考え方も浸透し始めました。会議に関して言えば、会議室という場所に必ずいなければならないというのが、2011年からはかなり薄まったと思います。

紙資料が物理的制約を生む

――フリーアドレスを上手く使えていない会社も多いと思いますが、その原因は何だと思いますか。
山本:私がよく言っているのは紙です。まずは紙。紙があると、結局、そこに行く意味が出てしまう。モノが物理的にあると、そこにやはり行かざるを得ない環境になるんです。
弊社がオフィスを移転したときには徹底して紙をなくしました。紙があるとそこに行かざるを得ないし、そこじゃないと仕事ができないことがまだ残っているわけです。どこまで徹底的に人の業務を見つめ直して整理整頓できるか。ここが1つポイントかもしれません。
――テレワークでは、何が一番変わりましたか。
春日井:テレワークで話をすると、時間と場所の制約がなくなります。「何月何日の何時から何時にこの会議室に集まりましょう」と、5人の時間を調整しようとすると1カ月後になってしまう。ただ、「場所はどこでもよい」とか、「自宅からでもよい」となると明日集まれる。ここで1カ月も時間が短縮できます。いまの時代1カ月も決定事項を遅らせておいたら、そこでビジネスがなくなることも十分考えられる。そういうことがなくなったことが1つ挙げられます。
――テレワークは、リアルに会う会議と特に違いはないですか。
春日井:もちろん、リアルに集まるのがベストです。でも全員を集めるために1カ月、2カ月かかるということをしているのであれば、それを補うのには十分な効果はあると思います。弊社の場合、本社(米国)の人と話をしたり、ほかの国の人と話したりする機会もあるので、そこも完全に縮められるのが大きなメリットです。
山本:2011年に引っ越す前には、「会議室がほしい」というニーズが圧倒的に多かったそうなんです。そのために、ありとあらゆる人数に対応する会議室をたくさん用意しました。でもいまは、20人を一カ所に集める必要がほとんどなくなっている。会議室というものが5人ぐらいで十分になった。半分はこの場にいて、半分は別の場所から入ってくるというようなスタイルに大きく変わりましたね。
私もときどきワーケーションを行うのですが、ワーケーションはまだ誤解されていると感じることがあります。「高速インターネットがほしい」といった話がよく出てくるんです。でも、ワーケーションで大切なのは、その環境でしか得ない体験です。そこから自身がどのような学びを得て自身の仕事に生かすのか。このようなポイントが重要です。
――必ずしも、テレワークの映像の解像度とか、ハイテクなインフラが重要ということではないのですね。
山本:そうですね。これはマインドの問題です。まず経営の核と、それを支えるオフィス環境、ICT(報通信技術)環境があるのはもちろんですが、それを受け入れる文化や慣習が合わさってこないと全部進まないんです。
春日井:むしろテレワークは、地方のほうがもっと効果が出ると思います。テレワークを体感されていないお客様がまだすごく多いんです。弊社にはインサイドセールスという電話部隊のように見える組織があります。そこでは我々が普段やっている会議の状態を、さまざまなICTを活用して、お客様との間で実際に商談としてやるという部隊なんです。お客様とのミーティングも、テレワーク会議で、パソコンでつないで、顔を映しながら、北海道のお客様やエンジニアと、東京にいる営業が話すということを日々行っているんです。
やはり最初はお客様も「えっ?」っていう感じでしたが、いまでは「電話会議のほうがやりやすい」と言ってくださっています。半年に1回だけ、北海道に行って実際に顔を合わせて、もう少し内容を詰めることがあれば、お客様も「それで十分だ」と。
以前は、足繁く通ってくれる営業がいる会社がいい会社というイメージがあったと思うんです。でも、それ以上にメールやチャットツールでちょっと聞いたらすぐ返事が返ってくるほうが重宝される。いろいろなテクノロジーで返事がすぐに来るほうが、ケアされている気持ちになる。お客様も1回体験いただくと、それに使い慣れて商談が進むケースがここ2年でもものすごく増えています。

コミュニケーション・コラボレーションを目指して

――テレワークとフリーアドレスの推進は働く環境を変えるいい例だと思いますが、「働き方改革」と言っても、どこから手をつけたらいいか苦心している企業も多いと思います。
山本:働き方改革は何のためにするのか、何が改革なのかとか、実は揺れ動いているんです。いろいろな人の考え方があるので。日本マイクロソフトが目指すのは、「すぐ決めてすぐやる、早く決めて早くやる」。これだけです。それに対してのコミュニケーション・コラボレーションをするためのプラットフォームに我々は投資していくので。なので、コミュニケーション・コラボレーションのオフィスなんです。
春日井:現在、「Microsoft Teams」というコラボレーションツールを使ってコミュニケーションを取っているんですけど、それを導入すればいいというわけではありません。
そもそも、「なんで会議室に集まらないの?」という文化があるとダメです。営業は足で稼ぐという考え方があるじゃないですか。そういうのが残ったままだとせっかく便利なツールが入っても誰も使ってくれない。あるいは、「テレワークをするために事前申請が必要です」というルールがあったら、面倒くさくて誰もやらないですよね。ツールだけを入れたところで上手くいかないんです。
春日井 良隆(かすがい よしたか)
日本マイクロソフト株式会社 Microsoft 365 ビジネス本部
製品マーケティング部 エグゼクティブ プロダクトマネージャー 兼 文教担当部長
岐阜大学卒業。大沢商会、アドビ システムズを経て日本マイクロソフトに入社。ユーザーエクスペリエンスやHTML5、アカデミック分野のエバンジェリストを務めた後、Windows、Microsoft 365のマーケティング、および文教市場担当となる。

山本 築(やまもと きずく)
日本マイクロソフト株式会社 マーケティング&オペレーションズ部門
Microsoft 365 ビジネス本部
働き方改革推進担当
2015年日本マイクロソフト入社、日本企業に対してWindows10やセキュリティなどMicrosoftの製品提案を行う。2018年より日本マイクロソフトの働き方改革推進担当に着任、社内外問わず働き方改革NEXTを推し進める。

文・鈴木涼太
写真・佐坂和也

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