ダメ出しを恐れるな【スマート会議術第79回】

ダメ出しを恐れるな【スマート会議術第79回】株式会社ウサギ 代表取締役 高橋 晋平 氏

おもちゃクリエイターの高橋晋平氏は、東北大学でロボット技術、同大学院で情報科学を学んだ後、株式会社バンダイに入社。大ヒット商品となった「∞(むげん)プチプチ」など、玩具の企画開発・マーケティングに約10年携わった。

しかし、そんな彼も「ヒットする商品は1000分の1」と、それが決して簡単なことではないことを痛感してきた。

高橋氏は、なぜ毎年1000個ものアイデアを出し続けられるのか? どうやって斬新なアイデアを考えているのか? アイデアを生むために会議はどんな役割を果たすのか?

その秘訣は「ことごとくダメ出し」をされることだと言う。本当に良い企画なら「ダメ出し」を乗り越えられると。高橋氏はどのようにアイデアを考え、企画としてまとめているのか、その手法についてお話を伺った。

目次

大学ではモテたくて落語研究会に入った

――おもちゃクリエイターになられたきっかけをお聞かせください。
僕は高校までめちゃめちゃ暗い性格で、友達もほとんどいなかったんです。もちろん、女の子ともしゃべれない。他校の生徒に毎日カツアゲされるような弱々しい高校時代を送っていました(笑)。
でも、大学に進学すれば、そんな僕の過去を知る人はいなくなるから、大学でモテたいと思って落語研究会に入りました(笑)。そこで、お笑いとか落語をやっているうちに、人を笑わせるってこんなに素晴らしいんだという体験をしたんです。
工学部だったので、卒業後はメーカーを志望していたのですが、人を笑わせるプロダクトをつくる会社を探したら、おもちゃ会社に行き着いた。「これだ!」っていうことで、バンダイを受けて、いまの仕事に就きました。

企画を1000個出せば1個は必ず実現すると確信

――バンダイでは具体的にどのように企画を提案していたのですか。
入社1年目はいわゆる「1000本ノック」をガチでやっていました。1年間でアイデアを1000個出して、その中から商品化になったのは1個だけ。1000分の1です。でも、バンダイという大きな会社で商品化されたというのは、すごい感動でした。
1年でアイデアを1000個出すのは本当に大変でした。「もうこれ以上出ないよ!」って何回も諦めかけました。でも、1000個のアイデアを出して、そのうちの1個が商品になった。しかも、それが累計10万個近く売れた。それで、とりあえず企画を1000個出せばイケるんだという自信が持てたんです。
実際、そのあと約10年間のキャリアで5000個ぐらいの企画を出したんですが、商品化したのは50個ぐらい。うちヒットしたと言えるのは5個。つまり、ヒットした商品はやはり1000分の1なんです。商品化できたのが100分の1で、ヒットしたのが1000分の1。逆に言えば、企画を1000個出せば1個は当たるんだって思いましたね。もちろん、1000個出すのは死ぬほど辛かったですけど(笑)。
――実際にヒットした企画とボツになった企画で自分の中で違いはありましたか。
やはり売れた商品は、自分が努力した量がまったく違うんです。たとえば、一番売れた「∞(むげん)プチプチ」(累計335万個)という商品を作ったときもそうでした。僕の担当商品は販売計画の規模がキャラクター商品よりも小さいので、他にマーケティング担当の人員をなかなか割けないので、全部自分でやることが多いんです。イケる商品は自分で絶対にイケると信じているから、際限なく自分で動くんです。 アイデアを出した段階から、これはイケると思っていたら、自分でも止められない(笑)。
大企業だと、まず社内を通すのが大変なわけです。アイデアを通すのも命がけでやるし、そのあとの具現化もそう。結局、熱量というか自分がどのくらい信じているかで、結果は決まるんじゃないかと思っています。
たとえば、上司にプレゼンするときに、まとめて10個ぐらい出すんです。ほぼボツになるんですけど、「ああ、そうだよな」って納得する。でもたまに「いや、この企画はボツにしないでくれ!」と思うことがあるんです。ボツにされて悔しかったときに、初めて自分が確信を持っていたってわかる。
企画を出す前は、「どれでもいいから通ればいいな」みたいに思ったりしちゃうものなんです。その中でボツにされて、ここで終わるのは嫌だと思って反論がひとつでもできたものは、かなり良いアイデアだと思うんです。なので人にアイデアを話すのってすごく重要なんです。
――第三者との対話を通じてイケる、イケないとわかってくるのですね。
少なくとも僕は一人では選びきれないし、決めきれないです。だから、いまでもアイデアが出たらサクッと5~10人に意見を聞きます。

過去の成功事例ばかり追うのはナンセンス

――新人の頃と経験と実績を積まれた現在で、ヒットするかしないかの感触は変わりましたか。
変わりましたね。入社1年目は人を笑わせたいという思いしかなく、勘違いをしていました。いつも会議で上司や同僚を笑わせるネタばかりを考えていたんです。全然大間違いでしたね。
――笑わせることとヒット商品を企画することは違うと?
商品だから、世間に買ってもらわなきゃいけない。だけど、会議室でウケを狙って爪痕を残すみたいなことばかりやっていました。若い頃は人を笑わせたいという気持ちがあったから、ネットでバズるようなアイデアこそが良いアイデアだと思っていたんです。ネットで取り上げられて話題になって、「やった、勝ったぜ!」と思っていたら、お店では全然売れない。そんなことを繰り返していました。ネットでバズることと商品が売れることはまったく違うんです。ネットで話題になってもまったく売れないってことを結構体験しました。
――ヒット商品を生んだ実績のない人でもヒット商品を見極める判断はできるものですか。
仮にどこかの会社で、「あなたはヒットを飛ばしたことがないからダメだ」っていうような発言があるなら、あまり良くないと思います。
僕はおもちゃ業界のことはずっと見てきて、散々失敗して一度も上手くいったことがないとか、上手くいきやすいみたいなことは知っているつもりです。でも、過去の実績にとらわれすぎてはいけない。流通も変わってきているし、子どもはYouTubeでおもちゃを見て買わずに満足しているような時代です。過去事例ばかり追っているのはまずい。だから、「ヒットを飛ばしたことないでしょ」みたいなのはナンセンスです。僕だって最初はまったくヒットを飛ばしたことなかったわけで、商品はみんなで作るべきです。
いま、僕が確信しているのは、「この商品は絶対に自分が買いたいから成功すると思う」っていうのを、100%本心で言っていたら成功確率が非常に高いということ。自分で思いついたからやりたいのか、本当に自分が欲しているからやりたいのかを明らかにさせないと失敗するということです。

しゃべらない人はしゃべらなくてもいい

――会議をするにあたって理想的な人数ってありますか。
前職の大企業では組織が大きいから10人くらいでやっていましたけど、理想は4~8人くらいでしょうか。参加者が他人事にならない人数がいい。20人くらいになると、他人事になる割合が増えすぎる。自分がプレイヤーでなければならないと思える人数がいいですね。その限界が10人くらいでしょうか。
しゃべらない人はしゃべらなくてもいいと、僕は思っています。しゃべりたい人は絶対にいるから、3人ぐらいがベラベラしゃべっていても、残りの人が当事者でいられる人数がいい。それが、多分5~6人です。自分がずっとしゃべらなきゃいけないプレッシャーがあっても、考えられなくなる。参加して何か言いたいことがあれば言えるぐらいの余裕が持てる人数がいいと思います。
――「あまりしゃべらなくてもいい」人はどういう役割を担えばいいですか。
考えることです。考えて意見を言う。「ブレストだから、みんなが次々意見を被せろよ」と言う人がいますが、被せられない人のほうが多い。だから、しゃべるのが苦手ならメモに書いておくことをお勧めします。言いたいことを忘れないように書いておく。せっかく言うタイミングが来ても、待っているうちに忘れちゃうから気づいたときに書く。人の意見にリアルタイムで応酬するのが苦手な人も多い。「みんなもっと話せよ、もっと話せよ」っていうのは良くないです。
――議事録というカタチではなく、全員がメモをとるほうがいいのですか。
全員じゃなくてもいいです。でも、全員がやっていいと思います。人間ってすぐ忘れちゃうんです。人がしゃべっているうちに忘れますから。議事録なんてあとで誰も読まないし。人が熱弁しているときに気づいたことは絶対に書いたほうがいいです。発言するタイミングがなく終わったとしても、あとで場に出してフィードバックすればいいわけだから。メモはとったほうがいいです。

アイデアは偶然にしか生まれない

――会議を円滑かつ効果的に進める上で一番大切なことは何ですか。
話し合う議題の責任者やプロジェクトリーダーなどが決まっているなら、他の人はその人の意思を固めるために存在する。だから、みんながいろいろなことを言う中で、その人の意思がより固まっていくのか、あるいは、より不安になっていくのかっていうことで、そのネタが良いか悪いかというのがわかっていく。
まずキーマン、そのプロジェクトを進めていく担当者がわかっている場合は、その人のためにみんなでブレストして話題を広げる。アイデアは偶然出てくるしかないというのが、僕の強く思っている持論なんです。
「計画的偶発性理論」*という、キャリア論の言葉があるのですが、アイデア出しにも当てはまるんです。良いアイデアは偶然でしか生まれないんです。それをコントロールはできない。だから、アイデアを出すまでのプロセスをどうやって計画するかがファシリテーターの役割とも言えるんです。
メンバーが6~7人いて、何か面白いアイデアを出さなきゃいけないときに、一人ひとりが意固地になって自分がやりたいことを言い続けていて、噛み合わないと何が良いかわからなくなる。偶然にしか生まれないんだから、誰かが思いつけばOK。適当なパスを投げて、「誰か何か思いつかないかな~」みたいなやり方をしていくのは良いんです。
だけど、そういう会議だという前提がないと、「こいつ、何わけわからんこと言ってんだ」とか、「こいつ意味わからない」と思われることもある。最初にその会議のゴールは共有すべきです。会議の目的によって違いますが、その日の目的と、「それが目的ならば、こういうふうに立ち振る舞うのはどうでしょうか?」っていう提案はします。

計画的偶発性理論*
スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授らが提案したキャリア論。個人のキャリアの8割は予想しない偶発的なことによって決定される。その偶然を計画的に設計し、自分のキャリアを良いものにしていこうという考え方。


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高橋 晋平(たかはし しんぺい)
株式会社ウサギ代表取締役。東北大学卒業、東北大学大学院修了後、2004年に株式会社バンダイに入社。第1回日本おもちゃ大賞を受賞した大ヒット玩具「∞プチプチ」など、アイデア玩具の企画開発・マーケティングに約10年間携わる。2014年より現職。各種企業の玩具雑貨・ゲーム開発に関するブレーンや、企画チーム作りに携わるなど幅広く活動。2013年には、TEDxTokyoにも登壇し、「新しいアイデアのつくり方」のスピーチを披露。高い評価を得る。講演、研修、セミナー多数実施。近著に『企画のメモ技』(あさ出版)がある。

文・鈴木涼太
写真・大井成義

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