アマゾンの成功メソッドを入れただけでは何も変わらない【スマート会議術第88回】

アマゾンの成功メソッドを入れただけでは何も変わらない【スマート会議術第88回】エバーグローイングパートナーズ株式会社 代表取締役 佐藤 将之 氏

2000年の日本上陸以来、驚異的なスピードと他の追随を許さないサービスを生み出し続けているアマゾン。

佐藤将之氏は、そんなアマゾンジャパンの創生期を支えてきたひとりだ。誇りを持って自らを“アマゾニアン”と呼ぶアマゾンの社員たちは、いったいどのような働き方をしているのか。そこには、アマゾンをアマゾンたらしめている“憲法”のOLP(Our Leadership Principle/リーダーシップ理念)という考えがあった。

15年にわたってアマゾンを見つめ続けてきた佐藤氏に、OLPが生まれた背景と、会議におけるOLPの役割について語ってもらった。

目次

学び、すべてのことに好奇心を持つ

――OLP(リーダーシップ理念)の中身は一部途中で変わっていますが、時代によって変わる可能性があるということですか。
変わります。実際に4年前に1回変わっています。それまでにあったものが1つなくなって、新しいものが追加されました。「Learn and Be Curious」という「学んですべてのことに興味を持ちなさい」という言葉が入っているのですが、これは以前はありませんでした。
僕の解釈では、「Learn and Be Curious」が追加されたのは、会社が大きくなってスペシャリストの中途採用が増えてきたからだと思います。昔はいろいろなことができるゼネラリストが採用されて、いろいろなことをやっていた。それでアマゾンは大きくなってきた。
でも、いま採用されている人は、専門の業務をやることで評価されるわけです。ジェフ・ベゾスはそれに対して危機感を持っているのだと思います。「自分の専門の仕事だけをやっていればいい」と考える人が増えていくと、新しい芽が何も出なくなるからです。
ベゾスはこれからアマゾンのビジネスを支える、新しいイノベーションが起きなくなるだろうと懸念しているわけです。そのイノベーションを起こすためには、いろいろなことに興味を持って、いろいろなことを学ぶ社員がいないと困るよねと。
特にマネージャーは、自分の仕事だけをやっているのが役目ではない。いろいろなことに興味を持って、いろいろなことを学んで、新たなアマゾンのビジネスの種をまき続けなさいというのが、ベゾスの考え方としてあったと思います。だから、その危機感に対して、「Learn and Be Curious」という言葉を入れたとのだと思います。
アマゾンに入ってきたからには、さらにビジネスを発展させるためのリーダーたるべく人として雇われている。その仕事は当然やらなきゃいけないけど、「もっと会社を大きくして新しいことができるようにするためには、いろいろなことに興味を持って学ばないとダメ」というのがベゾスの中にあったと思います。
――「俺の仕事じゃないし関係ない」というのは許されないわけですね。
許されないです。それはオーナーシップの理念にも関わってきます。そもそもオーナーシップの理念でいえば、経営者は「それは私の仕事じゃない」と言わないですよね。「それは私の仕事じゃない」と言った瞬間に、オーナーシップを放棄しちゃっているのと一緒です。だから、「私の仕事じゃないと言いません」というのが、オーナーシップの中に含まれています。
たとえば、OLPに「Invent and Simplify」というのがありますが、イノベーションというのは、新しいことを発明するだけじゃない。「シンプルにすることが大切だ」とベゾスはよく言っています。その流れからナラティブ(物語性)という文化に移していったというのがあります。

日本人はPDCAのPlanとDoばかりやっている

――「アマゾンの会議ではパワーポイントを使わない」とか「理想の会議は無言で終わる」とか、そのユニークさが注目されますが、会議に臨む基本的な考え方があるのですか。
「うちもパワーポイントを廃止します」と言うのはいいですし、やるのも構わないです。でも、そもそもの考えができていないのに、上っ面だけをやっても多分成功しないでしょう。根本のOLPが前提として理解されていないと意味がありません。会議の仕方であったり、オーナーシップの持たせ方であったり、組織のあり方であったり、そういうOLPの土台ができて初めて成り立つんです。テクニックだけを持ってやっても、あまり機能しないと思います。
アマゾンのメソッドをただ入れただけでは何も変わらない。そもそもの根本的な仕事の仕方とかを変えていかないと間に合わなくなっちゃうよ、というところかと思います。
――日本の会議の問題点として、「ゴールを決めない」「結論が出ない」というのがよく出てきますが、なぜ決められないのでしょうか。
これもOLPに紐づくんですけど、「Deliver Results」の欠如だと思います。「Deliver Results」では結果を出すことが最終的に全部求められます。「結果って何?」ということが数字になっていないと、本来その人のパフォーマンスを測ることはできない。でも日本の会議では、それを曖昧にするんです。
たとえば、「このビジネスをやります。このぐらいの売上です」というのはあります。でも、「このぐらいの売上です」ってすごく曖昧な目標ですよね。「何月何日までにいくらで、この週からいくらずつ売上を立てています」というプランができていなければ、そもそもプランじゃない。そういう細かな目標がすごく曖昧にプロジェクトが進んでしまっていることが往々にしてあります。
日本人はPDCAのPlanとDoは得意なんです。Plan⇢Do⇢Plan⇢Doばかりやっているんです。Check⇢Actが全然動いていないです。Check⇢Actを動かすためには絶対に指標が必要です。
だから、アマゾンはメトリックスという指標に全部落とし込みます。「このプロジェクトの「Measure of Success(成功の指標)」って何?」っていうことが必ず書いてある。「Measure of Successは何ですか?」「新規顧客何万人」とか、「売上いくら」とか、「コストダウンいくら」とか全部書いてあるわけです。ゴールとしてそのプロジェクトが進んでいくので、それが達成できていなかったら成功じゃない。でも、ゴールがあるから、みんなそこに向けて修正していくんです。
だけど、それがすごく曖昧になっている。成功したのかしていないかよくわからない。だから、プロジェクトのチームが解散したあとに、「なかなか売上伸びないです」と悩むパターンが多い。
――それは責任の所在を明らかにしたくないからですか。
オーナーシップがないんです。いろいろな人が中途半端にオーナーシップを持ち合わせているので、責任のなすりつけ合いが始まるわけです。最後には「誰が最終的に貧乏くじ引くの?」みたいな話になってくる。
――「これ、なんで失敗したの?」と言ったときに、自分だけじゃないというアリバイづくりが始まる。
これもOLPが絡んでくるんです。1つは「Vocally Self Critical」。これは「Learn and Be Curious」が入ったときになくなったんですけど、「人から信頼を得るためには、自分が間違っているということを、自分の声を出して表明できることが大事だ」ということ。
「お前、間違っているじゃないか」「いやいやいや、うちのせいじゃないし」とやってはダメ。「間違っている」と言われたら、まずは受け止めなさい。本当に間違っていないかを検証して、間違えていないなら『間違えていないです』って言いなさい。『間違っている』と言われるということは何か理由があるはず。自分たちが間違えていないかどうかを確認して、間違えているならそれを即座に修正しなさい。あと、『ごめんなさい』を言いなさい」というのがあります。
もう1つが「Leaders Are Right – A Lot」。これは、「多くの場合、リーダーは正しい」という意味です。「いつも正しい」のではない。多くの場合正しい。アマゾンではミスを許容しているんです。「ミスをすることは悪い」と言っていない。1つのプロジェクトをやろうとして、常にPDCAを回して何とか努力をしている。だけど、市場の関係とかいろいろな要因でどうしてもそこに到達しないことはあるわけです。だけど、結果が出なかったことだけを捉えて、「お前はダメだ」と言わない。「マネージャーはそういうときもある。間違えることもある。でも「多くの場合は正しいんだから、正しい判断をしなさい」と。もちろん、努力もせずに放置して「結果が出ませんでした」はダメです。
――日本ではとかく1回の失敗が許されない空気が強いですよね。
もちろん、失敗には理由があります。何度も失敗する人というのは、多分同じ間違いを何回もしている。それはダメです。1回失敗したとか、何かの理由でもう1回失敗することもあると思いますが、そこまでにきちんと対応をして、ただ数字がいかなかったということもあるだろうし。結果だけじゃなく、そこまでのプロセスを大事にするんです。
佐藤 将之(さとう まさゆき)
エバーグローイングパートナーズ株式会社 代表取締役。1993年米国ウェストバージニア州立大学卒。1994年 セガ・エンタープライゼス(現セガホールディングス)入社。生産管理部門にて家庭用ゲーム機のハードウェア、ソフトウェアの生産管理業務に従事。
1999年にSega of America, Inc.へ出向。2000年アマゾンジャパン入社。
サプライチェーン部門にてサイト立ち上げのための調達システムの立ち上げ、および物流設計を行う。2016年退社。現在は、経営コンサルタントとして企業の成長支援を中心に活動中。著書に『アマゾンのすごいルール』『アマゾンのすごい問題解決』『1日のタスクが1時間で片づく アマゾンのスピード仕事術』がある。

文・鈴木涼太
写真・大井成義

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