集まって何かをするという会議の発想をすべて捨てる【スマート会議術第117回】

集まって何かをするという会議の発想をすべて捨てる【スマート会議術第117回】プロノイア・グループ株式会社 COO シニアコンサルタント 星野珠枝氏

プロノイアグループで、企業のイノベーションのサポートと文化づくりを支援するコンサルタントの星野珠枝氏。同社は、世界で最も優秀な人材が集まると言われるグーグルで人材育成やリーダーシップ開発に携わってきたピョートル・フェリクス・グジバチ氏が2015年に設立したコンサルタント会社だ。

星野氏はNECグループ勤務時代でのテレワークの推進プロジェクトリーダーの経験を生かし、コーチング、研修を通じ、組織づくりに携わる。中でも会議は組織における個々の能力を最大限に発揮するためのカギを握る重要な場である。

今日、働き方改革の一環で多くの企業が最初にメスを入れるのは会議である。しかし、“時短”ばかりがフォーカスされ、肝心の質について議論されることは少ない。なぜ日本の会議は遅々として改革が起きにくいのか。

星野氏は、「何がわからないのかがわからない状態のまま会議に入ること」にその大きな要因があると言う。では、いかにして「何がわからないのかがわからない状態」を解消して会議に臨めばよいのか。その要因と打開策についてお話を伺った。

目次

「状況・行動・影響」という3つの観点から聞き出す

――最近は情報共有の会議をする必要はないという意見も多いと思いますが、あえて情報共有の会議をするメリットはあると思いますか。
自分がやっている仕事を共有しようと思ったとき、いいところを見せがちになることがあると思うんですね。「うまくいっています」「こんな成果が出ました」と。ただ、それであれば集まって共有する必要はまったくないと思います。集まる意味があるとしたら、むしろバッドニュースの共有です。ここがスタックしているとか、あのお客さんが怒っているとか、そういう悪い情報、悪い事実は放っておいてはなかなか出てこない。責めるのではなくて「いま困っていることを率直に言ってほしい」と、正しい次の判断をみんなで考えられるように集まって、情報を共有するのは大きな意味があると思っています。
――あえて今日は悪いことだけを議題にしましょうとすれば、全員が競って出すような心理になるかもしれませんね。
そうですね。「いまここが出す場だよ」と心理的安全性を確保してあげる。もちろんバッドニュースだけを集める会議でもいいですし、次のステップに行くために情報を共有するという意味なら話し合ってもいいかもしれないです。
――会議を効率よく円滑に進めるために普段から意識しておくべきことはありますか。
何がわからないのかがわからない状態のまま会議に入るのが一番良くない。ダラダラ会議につながる。これは日常の業務からできることだと思います。具体的に何がスタックしていて、どんな影響が出ているのか分析できる状態にしておく。もっと詳しく知りたいのか、支援がほしいなのか。この「わからない状態」に対して「なんとなくうまくいってないんです。よくわかりません」といったことは、日頃のコミュニケーションの中でトレーニングすることはできると思います。
たとえば「お客さんに怒られました。カンカンになっています」という報告があったときに、「何やってるんだ、おまえ! このお客さん、めっちゃ大切なのにどうするつもりなんだ! 俺が謝りに行かなきゃいけないよ」となりがちです。そこで、その状況に対して批判をしたり、その人を責めたりしても、まったく次のアクションにはつながらない。
上司はまずは状況の事実をきちんと聞き出す。「そう。あのお客さんだね。一体なんで怒っている? なるほど。どれぐらい怒っている? それに対していま取っている行動はどんなこと?」「取りあえず1回おわびに行きました。これから次の対策プランというのをいま戻ってきて考えているところです」「なるほど。じゃあ、その行動を取った結果の次の影響はどうなる? まずはいま怒っている状況に対するバッドな影響というのは何か? あるいは対策をしたことによってチャンスにできるかもしれない」といった形で、「状況・行動・影響」という3つの観点から聞き出してあげる。
そうすることによって、いま自分が陥っているトラブルとか、「わからない」「スタックしている」ということに関してかなりクリアになってくる。解決の道が見えてくる。そういうことを日常的にやっていくことによって、いま自分が抱えている業務を明確に理解して、言語化できるような状態を常につくっておくことが大切です。
それがひいては会議に臨んだときに、「状況・行動・影響」という観点から整理して相手に伝えることができるようになります。そういう意味で、変えられる部分は、会話の仕方、情報の整理の仕方、言語化の仕方というところだと思います。
――そういうことを理屈でわかれば、ムダに怒ったり咎めたりしないで済みそうですね。
なくなると思います。人が怒るときのリスクや原因をつくっていて、行動レベルとか発言レベルぐらいであれば、人ってそこまで怒ることはない。人は考え方や価値観といったアイデンティティに近いところを突かれたり否定されたりすると怒るリスクが高まりますから。
その人の行動レベルで収まるような話で提示できるのであれば、そこまで感情的に怒られることはないでしょうけど、それが整理されないままだと変な話になる。「そもそも、このお客さんとは相性が悪いんです」とか、「一生懸命やったって、そんなに売り上げにつながらないじゃないですか」といった言い訳をすると、そこに余計なものが入ってくる。行動レベルを超えて仕事に対する考え方であったり、取り組む姿勢であったり、ひいては営業としての価値観そのものがおかしいんじゃないのという話になってくる。そこに対して真摯に取り組んでいれば、そこまで感情的な話になることもないはずです。
――目標は一緒なのにそこに至る過程でケンカするのは非生産的ですよね。
相手を責めたり相手の悪いところを突いたりやたらに攻撃を仕掛けるのは、自分の立場やステータスを保つためです。解決しなければいけない問題や敵は目の前の人ではなく、会議室の外にあるんだということを意識する必要があると思います。お互いの立場を守るために攻撃したり、自分を認めてほしいために議論を運んでいくのではなく、本当に生み出していかなければいけないものは一体何なのか、そのゴール設定が明確でないと変な方向にいってしまいます。
たとえば会議で偉い人が座ったところと離れて若手が座ったりします。なぜこの距離があるのかというと、ここでまず相対的な関係が生まれる。会議の中でそういう関係性が生まれていて、会議をやる目的が何なのかに目が向いてないから、相手に対して目が向いてしまうというのもあると思います。

これから求められるのはサーバントリーダー

――上司と部下だけでなく、部門間で役割が違うと自ずと対立構造になりがちですが、そういうときはどうすればいいですか。
すごく丁寧な作業になると思うんですけど、意図の裏にある意図が何かを掘り下げて聞いていきます。会話によってはうっとうしいと思われるかもしれないですけど、「なぜそういう話になるのですか? それはなぜですか?」というのを、別に嫌みで偉そうに聞くわけではなく、その主張の仕組みの背景を知りたい、ロジックを知りたい、そこがまだ理解できないから、ここに衝突があるんじゃないかなと思うから、なぜそれがいいと思うのかというのを教えてほしいと。やっぱり意図の裏にある意図っていうのを、きちんと丁寧に汲んでいくというのが大事だと思います。
仕事の仕方とか職種によって、もちろんプロセスも違ってくるし、それぞれのお約束があったりするので、そこをうまく配慮しながら、ベストなやり方をお互いに探していく姿勢が重要になってくると思います。
――仕事がデキると評価される人やおしゃべりが得意な人が、会議で相手を批判したり否定したり、攻撃的だったりすることって往々にしてありませんか。ただ正論を吐いていてもチームワークを崩すという負の面もあるのではないかと思います。
そうですね。やり手みたいな人って個人プレーのパフォーマンスは高くても、人が一人でできることって限界があるじゃないですか。これからのマネジメントはいろいろな知恵とかアイデアを取り込んで力にできないといけない。独りよがりから抜け出していかなければいけない。地位や内容に関係なく人が言うことに耳を傾けてみる。目の前にいるメンバーからどれだけ思いを引き出すことができるのかという力になってくる。これから求められる「デキる人」というのは、「俺が俺が」と自己主張ばかりする人ではなくて、いかに人を立てるか、いかに人の力を引き出していけるか、というサーバントリーダーだと思います。
会議で座ったときに、その場で臆することなく「それだったらこんな話があります」「こんなまとめ方ならいいと思います」「僕、ここに整理して書いてみますね」と安心して参加できるように日頃から人間関係の構築、信頼されている状態をつくっていくのはすごく大事だと思います。逆にこれまでワンマンプレーヤーだった人たちは淘汰されていくんじゃないかなと思います。
――これからはそういうサーバントリーダーが必要な大きな理由は何ですか。
いまはいろいろな集合知をつくって使いこなすことが求められていると思います。戦略的なカオスの状態がすごく必要で、すべての物事が上から下、右から左と整理されるわけではない。スピードも速いし、これまでならあり得なかったような話がビジネスモデルになっていったり、あり得ない人が経営者になったり、どんなディレクションで、一体何が起こるのかが見えてこない。ここにテクノロジーも掛け合わさってくると、そういうカオスな状態をいかに楽しめるか、あるいはあえて戦略的にそういうカオスをつくっていきながら、もっと面白さを膨らませることができるかどうかということだと思います。
いままでのハイパフォーマーの人たちは、ある方程式の中ではハイパフォーマンスを出すことができたと思うんです。営業マンであればひたすらお客さんに尽くして、ひたすらお客さんからかわいがられるという関係を構築していくとか、数字に関しては1円も間違えないような正確さをもっているとか、発言のプレゼンスの仕方としては明確な話しができるとか。そういった要素がある程度揃っていればハイパフォーマーだと言われていた。
けれど、いまはそうじゃなくなってきた。もっともっと複雑になってきている。お客さんの事業が急に変わったとしても、すぐに話についていけるのか。極端な話、お客さんが倒産してしまったときに、もうお客さんではなくなってしまうのか。そうなってくると、ハイパフォーマーの定義はもっと変化に対応できる人間になっていかなければいけない。
SNSみたいにいろいろな情報が次々と出てくる時代の中で、やはり集合知を使う必要性は出てきていると思います。Twitterだけでなく、Vチューバーとかユーチューバーとか本当におかしなことを言うとんがった人がいろいろ出てくる。言っていること自体はすごくおかしい。ちょっと変だなというぐらい飛んだ発想、飛んだことを言っているけど、その飛んだ発想とビジネスをつなげたら、何かそこに新しいものが出てくるかもしれない。そういうあり得ない組み合わせ、つなぎ合わせ、カオスをいかにつくっていけるか。最終的にはそれをファシリテートしてアウトプットしていく。これを楽しめるかどうかというところが、これからのハイパフォーマーやファシリテーターとしての人物像なのかなって思います。
ファシリテーターは会議のときに登場する役割の人と思われていますが、ファシリテートという言葉は、会議に限らず広い意味で集団活動をスムーズに進めたり、成果が上がるように支援したりすることなのでビジネス全般に必須の能力だと思います。

サーバントリーダー*
「サーバント」とは、もともと「使用人」「召使い」という意味で、アメリカのロバート・グリーンリーフ博士が提唱したリーダーシップ哲学で、「リーダーはまず相手に奉仕し、その後相手を導くものである」という考え方に基づく。

年上の経験値はキャラクターのひとつに過ぎなくなる

――年功序列も終身雇用制も崩れつつある時代に、ベテランは自らの経験値とどうつき合っていけばいいですか。
年齢差がアドバンテージ(優位)でもオーソリティ(権威)でもなくなる時代は、もう来ていると思います。特にテック系のスタートアップでは年の功はほぼ消えて、特にミレニアル世代はわりとフラットな関係がすごく好きな傾向が強い。逆に年齢を笠に着て偉そうに語ったり、人を動かしたりすることに拒絶反応を示すんですね。年功序列は本当にどんどん消えていくと思いますし、逆に年齢が上だからこそ持っている経験値というのは、敬われるというよりはキャラクターのひとつに過ぎなくなる。ダイバーシティ&インクルージョン*の考え方に変わってくるんじゃないかなと思います。
そうなったときに、昭和世代の人たちがそのマインドを変えて合わせていくのはすごくハードルが高いと思うんですね。いままでは年功序列できて、黙っていても年齢だけは自分のオーソリティを確保する手段としてあった。そこに伴う役職や給料があったので、それを急に引っぺがされるというのはすごく抵抗感あると思うんです。そういう変化にいかに対応できる柔軟性をもっているかは、結構カギになってくると思います。
――スマート会議にするためにこれから最も必要なことは何だと思いますか。
まず、価値を見出したい起点が何かというところだと思います。とにかく集まって何かをするという会議の発想をすべて捨てる。会議で何を生み出すのか。何のために生み出すのか。それを明確に持つことができれば、余計なものはどんどんなくなってくると思うんです。余計な感情的な葛藤もなくなるし、余計なインフォメーションもなくなるし、余計な会議もなくなってくる。そして、生産性がない会議はなくしていく。要らない会議をなくしていく。そうなってくると、本当に必要なものだけに収斂された思考のぶつかり合いや調和が生まれるようになると思うので、それこそが次代のスマート会議だと思います。

ダイバーシティ&インクルージョン*
人種や性別、年齢、宗教や価値観、性格、嗜好など個々のさまざまな違いを受け入れ、認め合い、生かしていくこと。

文・鈴木涼太

星野 珠枝(ほしの たまえ) プロノイア・グループ株式会社
プロノイア・グループ株式会社コンサルタント。元NECグループ会社で働き方改革、テレワークの推進プロジェクトリーダーを経験。自社実践に基づく企業、官公庁向けコンサルティングに従事。自社では、人事制度設計・組織開発コンサルティング、企業研修、セミナーを行う。

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