テレワーク時代は、創造力があればチャンスは大きい【スマート会議術第121回】

テレワーク時代は、創造力があればチャンスは大きい【スマート会議術第121回】CRMダイレクト株式会社 代表取締役社長 横田 伊佐男 氏

コロナ禍対策としてテレワークが推奨される昨今、テレワークのメリットをうまく生かしている企業がある一方、うまく活用できないで困惑する企業も少なくない。働き方改革が叫ばれる中、テレワークは果たして仕事の効率化や生産性の向上を加速させられるのだろうか。テレワークではコミュニケーションのとり方が難しいと感じている人も多いに違いない。

そんな中、10年以上にわたって自らテレワークを実践してきたマーケティングコンサルタントの横田伊佐男氏は、「テレワーク強者とテレワーク弱者が生まれてきている」と言う。

それはなぜか? テレワーク弱者が生き残るためにはどうすればいいのか? コミュニケーションのとり方が難しいのはなぜか? テレワークは会社が生き残るために本当に必要なのか? コロナ禍で多くの企業が苦境に喘ぐ中、キャンピングトレーラーでテレワーク中の横田氏にテレワーク時代を生き残る術について語ってもらった。

目次

テレワークの中にある小さな段差が、強者と弱者を分けていく

――テレワークを実践されている立場から、実感されるメリットとデメリットはありますか。
まずムダな距離の移動がなくなったというのがひとつ。出社しなくていい、会議室を往復しなくていい、といったことはすごく大きいです。ただ、それによってテレワーク強者と、テレワーク弱者の両者が出てきていて、この格差はもっと広まっていく気がします。
テレワーク強者は、どんどん使いこなしてモニター越しでもリアルと変わらないようなことができるようになっていく。一方、テレワーク弱者はリアルのときと同じようなことができない。両者の差はパソコンやスマホなどのデバイスを通じて、リアルの世界と近似したことができるかどうかの違いになってくると思います。
テレワークの中にある小さな段差が、強者と弱者を分けていく。小さな段差というのは、たとえばZoomの中で何かを見せるときに、ホワイトボードを用意したり、カメラを切り替えたりするときに、それがリアルの世界だと段差なく二本足で動いてできますよね。テレワークの中だと、自分の二足歩行ではできないので、頭の中でリアルの世界に置き換えて、この場合はこのアプリを立ち上げて、ここでカメラを切り替えて、とリアルの環境と同じようなことを想像できるかどうかということが、大きな違いになってくると思います。
――それはITリテラシーだけの問題ではなさそうですね。
もちろんITリテラシーの問題はあります。ITに苦手意識がある人はもちろんいますが、それ以上に想像力や発想力の問題じゃないでしょうか。「こんなふうにリアルになっていくんじゃないか」という想像力が大きなカギになると思います。あとはテレワークをやってみた上で、中高年のひがみみたいなのは出てくるかもしれませんね(笑)。たとえば、50歳を過ぎた世代で出世した人、あるいは出世の道が残っている人は、おしなべて声が大きいとか、部下をうまくこきつかえるとか、場の空気を読むのがうまいといった人たちでした。
でも、テレワークになって急にクラウドの中に押し込められると、会議室の一番上座で存在感をもって大きな声で話していた人が、均等割りのマスの中に入れられて存在感がなくなる、もしくは呼ばれなくなることはあるでしょうね。
会議室やオフィスにいたら、「みんなどこへ行ったんだ?」「なんで俺だけ呼ばれていないんだ?」とならないように忖度が働いていたのが、テレワークになったらどこでどういう会議が行われているかわからないことになりかねない。そうなると、引っ張りダコで呼ばれる人と、まったく呼ばれない人が出てきてもわからない。自分の存在感を発揮する場が奪われて、ますますITを使いこなすことから離れていくことはあると思います。
リモート会議でも存在意義が可視化されることで、「あの人、いなくていいじゃん」という状況が生まれつつあると思います。あと、いまはまだ「今日、Zoom会議を10本やったよ~」「朝からずっとテレカンだよ~」なんて言いながら満足している人が多い気がします。「いやーもうリモート疲れだよ」なんて言っているだけで、そのZoom会議で何が決まったとか、何が生み出されたとアジェンダの中身について言う人はまだほとんどいない印象です。
「土日まったくなし。1日3時間睡眠、24時間働いているよ~」なんて言いながら仕事自慢をする昭和のモーレツサラリーマンみたいな人は、いまや恥ずかしい存在になっていますが、同じノリで「いや~毎日リモート会議でさ、朝からずっとZoomだよ」と恍惚としている昭和おじさんは、とても多くなっている気がします(笑)。

テレワークはオフィスでできた雑談が形成されにくい

――テレワークを機に仕事が効率化しているとは言いがたいですか。
そうですね。僕はよく東京・福岡・札幌の3都市を1週間で回って講義をすることがあるのですが、受講者が20~30名しか入れなかった講義が、オンライン講義なら家から一歩も出ないで同時に100人くらいつないで同じようなことができる。また、「皆さん、今日の感想を一言述べてください」と、時間をかけて一人一人に発表してもらうようなことが、オンライン講義ではチャットで同時に出してもらえば、一気に100名分が出てきて、その何人かをつまんで共有することもできる。それゆえリアルより一体感が生まれることもあったりする。これはオンライン講義の新たな発見だったんですね。
僕は「オフラインではできなかったことがオンラインでこうなって良くなった」ということをなるべく発信しようとしていますが、まだあまりそういう人がいない。テレカン疲れ自慢みたいなことを言う人がまだ多く、テレワークのおかげで仕事が効率化したという人は少ない。まだテレワークの黎明期だからだとは思いますが…。
――テレワークのメリットが時間の短縮だけで、新しい価値を見出さなければ意味がないと思います。どうすれば価値を見出していけると考えますか。
じつは僕は「リアルやライブに勝るものなし」とも思っているんです。でも、テレワークとリアルを比較していくと、もろもろの時空的制約が取り除かれたのはすごくいいことだと思っています。場所の移動や入るキャパシティの制約が取り除かれたのはいいことです。たとえば、オンライン講座で1時間の講義をやると1000人くらいの募集があるのですが、いままでは多くても300人くらいの会場でやるのが限界でした。それが、自宅からオンラインでつなげば1000人くらいの人が集まることが可能になった。テレワークで時空的制約が除去できるということを武器として、いかにイマジネーションを働かせられるかがカギを握ると思います。
あと重要なのが、テレワークだとオフィスに出社することでできた“ムダな雑談”が形成されにくい気はしています。オフィスに出社すれば「最近どう?」「陽に灼けたね~」「ちょっと一服行かない?」といった、“ムダな雑談”からじつはさまざまな情報交換や肌感覚のコミュニケーションが生まれる。テレワークは時空的制約が少ないけど、いまはどうしても改まった形になりがちなので、どうやってテレワークで“ムダな雑談”の時間を取り入れていくのかが課題かもしれません。
また、それぞれの家からテレワークをする場合、家庭環境でいくつかのセグメントが出てくるかなと思います。独身で書斎を持っている人は非常に快適だと思いますが、家族持ちで、自分の部屋がなく、すぐ隣で子どもがうろちょろしている、猫がすり寄ってくる、なんていう人は、なかなか仕事のスイッチが入りにくい。だから、テレワークで同じ環境でないということもイメージして、同じ土俵に上げるための細やかな努力は必要になってくると思います。基本的にみんな環境が違うので、ファシリテートする会社側がなるべく土俵を共通にならす努力をする必要はありますよね。
――突然のコロナ禍によるテレワークで、いまはまだ社員の家庭環境に任せっぱなしの会社が多いかもしれませんね。
そうですね。テレビを観ていても初めはZoomでつないだ番組が多かったですが、画面が大きくなると粗くなるので、Zoomをやっている体だけど、じつはカメラマンが出向いてしっかり撮っているということもあると思うんです。見栄えから逆算して、現地の環境をどうやってくかということを考える。今後、オンライン会議をやる場合は、プロの制作会社や映像スタッフのようなマインドを持ってやらないといけないのかなと思いますね。ですので、意識が高い人の自宅は、どんどんスタジオ化していくんじゃないかと思います。
僕もいまはプロ用の照明を使って、三方からリングライトが当たるようにして、カメラも顔がちゃんと正面から映るようにセッティングしています。モニターはまだ1台しかないですが、三脚を置いて、話しながらパンに切り替えれば横にあるボードで図柄が見えるような形にするなど、いろいろ試しながらミニスタジオ化を進めているところです。
――本来、会社でテレワークを推奨するとしたら、会社が管理費、固定費として費用を負担するべきですよね。
そうですね。たとえば営業でも「あの人はいつもパリッとしていて清潔感がある」と見られていた人が、テレワークになったら「あの人は本当にいつもアナウンサーみたいなきれいな感じで声も良く届く」となることもあれば、「ビシッとスーツを着ているけど、いつも声が聞こえにくいし、表情がよく見えない」というように、環境の差で本人の素養以上に優劣が出てくることもある。
オフィスの中で、いままであった貸し会議室にもリモート会議用のスタジオとして使うところが出てくるかもしれませんね。いま苦境にあるカラオケルームもいつかはスタジオ化されて、非常にくっきりしたハイビジョンの中で、お客さんと話ができるという市場が出てくるんじゃないかなと思います。

テレワークで得られる自由と創造性

――横田さんは長い間キャンピングトレーラーを使いながらテレワークを実践されています。これまでの経験でどんなメリットがあると実感していますか。
僕はキャンピングトレーラーを仕事でも使うようになって11年になりますが、東京を拠点にしながらも、夏は東京から離れて湖畔に涼みに行って、冬はスキーをしに雪山に行くという生活を続けています。かつての文豪はどこかに投宿して集中して書いたと言われますが、僕も本を書くときなどは、ほとんど海や山へ行って新鮮な環境に身を置くようにしています。キャンピングトレーラーを走らせながら壮大な自然に身を置くと、イマジネーションが沸いてくるような感じもあって、いい仕事やいい作品ができていったという実感はあるんですよね。
季節毎にキャンピングトレーラーで全国を駆け回り、自然に囲まれながら仕事をする横田氏はまさにテレワーカーの理想形だ。
――テレワークを軸にしたことで、サラリーマン時代と比べて何が一番違うと感じますか。
やはり自由と創造性でしょうか。会社に拘束されるというのは、月曜日から金曜日まで、朝は9時半までに出社して、というルーティンがあった。でも、テレワークが中心になって会社の制約の中でやらなければいけないことがなくなった。もちろん、仕事のリスクは全部自分で負わなければならないし、補償もされない。でも、強制的に思考を拡大するような環境に身を置き続ければ、選択肢は狭まることはないという実感があります。
――コロナ禍という状況でなくても、今後の働き方改革の文脈の中で、やはりテレワークはやっていくべきなのでしょうか。
そうですね。僕みたいにキャンピングトレーラーで日本中を駆け回りながら仕事をするというのは極端な例ですが、会社員であれフリーランスであれ、テレワークという働き方自体のメリットは大きいと思います。何かを創造する上で、自由がきく人であればキャンピングトレーラーはすごくいい環境でもあります。あとは家の中でこういう環境がない場合も、自宅をスタジオ化できるという余地はあるかもしれないので、通信が5Gになってくる中、新たな使い方もできるかもしれませんね。
生活環境や物理的な側面だけではなく、働き方という点でも、いままでの会社に拘束されていれば給料がもらえるという時代から、何かの成果を届けて初めて評価や報酬が決まってくる時代になってくると思います。会社に出社すれば自動的に給料がもらえる時代がいつまで続くのかわかりません。たとえ会社員だとしても、会社に来なくていい、何をやってもいい。だけど成果、Job Description(仕事内容)で契約したことが達成できたら、もっともらえるし、逆にもっと下がるという時代になって、テレワークによる仕事の評価も大きく変わってくるのではないかと思います。
自分の創造力や責任にコミットできる力が上がれば上がるほど、どこにいても、何も言われることがないということなので、僕はチャンスのほうが大きいと思います。ただ、勝負は創造力や発想力など、自発的に考えられるかどうかにかかってきます。制約に縛られたほうが楽という人もいると思いますが、そういう人にとっては至難の時代になっていく気もします。
――働き方の選択肢は確実に増えていきそうですね。
増えると思います。ただし、すごく爆発的に増えていき、それが水を得た魚のようになる層と、非常にそれに不適合な層がいるので、1億総テレワーク時代ということにはならないけれども、大きな働き方を変えるうねりにはなっていくかと思います。
横田 伊佐男(よこた いさお)
横浜国立大学大学院博士課程前期経営学(MBA)修了。シティグループ、ベネッセグループにて、マーケティング部門・コンサルティング部門の責任者を歴任。大手企業でのコンサルティング経験を体系化し、2008年にCRMダイレクト株式会社(https://crm-direct.com/)を設立。横浜国立大学客員講師。横浜国立大学成長戦略研究センター研究員。主な著書に『迷えるリーダーがいますぐ持つべき 1枚の未来地図』(日経BP社)、『ムダゼロ会議術』(日経BP社)、『最強のコピーライティングバイブル』(ダイヤモンド社) 、『一流の人はなぜ、A3ノートを使うのか?』(学研パブリッシング)など多数。

文・鈴木涼太

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