小さな一歩を踏み出さない限り、未来は変わらない【スマート会議術第154回】

小さな一歩を踏み出さない限り、未来は変わらない【スマート会議術第154回】イーディーエル株式会社代表取締役 平塚知真子氏

Google 認定トレーナーであり、 Google 研修パートナー企業の経営者でもある平塚知真子氏。現在、Googleが認定する研修専門パートナー企業のうち「上級」に認定されているのは世界30社で日本国内ではたった2社。そのうちの1社が平塚氏が経営するイーディーエルである。

そんな平塚氏が昨年秋、『Google式10Xリモート仕事術――あなたはまだホントのGoogleを知らない』を上梓した。10X(テンエックス)とは、「10%改善するより10倍にするほうがカンタン」と、未来から逆算するGoogleの10X(テンエックス)思考のことで、Googleの急成長の秘密とされている。

コロナ禍を踏まえリモート環境下で、成果を10倍にするGoogle式10Xリモート仕事術についてお話を伺った。

目次

10Xはイノベーティブな小さな一歩が大事

――企業は普通、毎年10%ずつの売上げアップといった目標を立てると思いますが、10X(テンエックス)の考え方はどれだけ現実的なのでしょうか。
10Xは、ただやみくもに大きな目標を立てればいいというものではありません。イノベーションを確実に起こしていくための仕掛けといえます。だから、極めて現実的な考え方だと思いますよ。
10Xはバックキャストとも呼ばれています。バックキャストとは、目標となる未来を定めた上で、そこを起点にいまを振り返り、いま何をすべきか考える未来起点の発想法です。現実からスタートすると、時間もない、お金もない、人もいない、経験もない、となる。そうすると「こんな私に何ができるの?」ってなっちゃうんですね。だけど「本当はどうなりたかったの?」「どうなったら一番ハッピーなの?」と考えたときに、やっぱり理想はあるわけですよね。
「もしそれが実現するとしたら、どんな気持ちになるのか?」「もしあなたに実現できる力があると言われたら、それにチャレンジする価値はあると思うか?」とバックキャストして、じゃあ実現するために今日やらなきゃいけないことは何だろうって考える。
いまのつらい現状は一切見ないで、「こうなるためにはいま何をしなければいけないか」「じゃあそれをやろう」となれば一歩踏み出せます。昨日とは違う明日を、今日つくっていこう。それが、Googleのイノベーションの考え方だと思うんです。
自分でビジョンを掲げていないと、なんでこうなっているんだろうと考えてしまう。ずっと足元を見て歩いているうちに、いつの間にかどこの山頂を目指すのかわからなくなっちゃった感じですよね。だからたまに顔を上げて「あっちの山頂に行くんだったよね」ってやらないと、足元ばっかり見て歩いて、泥とか水たまりとか、木の枝とかよけているうちに、違う方向に行っちゃっていることはよくあるんです(笑)。
顔をたまに上げようというのも10Xのもたらす効果です。10Xは思考のトレーニングだと思っています。10Xを考えるのに、なぜ自分は10倍の目標を立てるに値しないとか、能力がないとか、いろいろ考えちゃうんでしょうね。誰にも迷惑かけないし、タダだし、ワクワクすること考えたっていいじゃん。そんなノリで未来をイメージする力、さらに小さな一歩を踏み出す、行動につながる発想法みたいなものをトレーニングできると思います。
――10Xはそのための手法というか、導くための考え方ということでしょうか。
そう、公式みたいなものです。そこに当てはめて考えてみて、うーんうーん唸りながら来年の目標を書いて、そこにエイヤッ!と10倍にしてみる。するともう「絶対無理じゃん!」っていう目標になっちゃうわけですよ。でも「もしこれが達成できるとしたら?」を真剣に考えてみるんです。
じゃあ、その10倍の目標って、もし達成したら、誰をどういうふうに幸せにするのかなって。これが実現できたら、いったい何が起こるのかなって、これを社内みんなで思考の訓練としてやってみる。毎日頑張っているのに結果が出なかったり、うまく伝わらなかったりしたときに、すごく有効じゃないかなと思っています。自分にとって当たり前でも、他の人にとっては当たり前じゃないこともある。同じことを言っているようで見ているものやビジョンが違うと、イメージすることが違うんですよね。
10Xの夢を見ると、周りから結構ネガティブな反応があったり、自分自身が壁だって言ったりする方がすごく多いんです。たぶん自分のためだけの10Xだったら、そうなりがちなのもわかります。だけど、自分は誰かを幸せにしようと思っていて、それによって自分も幸せになりたい。そもそも働くって「傍(はた)を楽(らく)にする」、周りにいる人を楽にしたり楽しませたりするっていうのが日本民俗学的な語源で、私はその言葉が好きなんです。昔だと「お母ちゃんを楽にさせてやりたい」とか、「美味しいものを食べさせてやりたい」とかあったじゃないですか。ああいうのって能力の問題じゃなくて、想いの問題かなって思います。Googleがなぜ強いかっていうと、全社員が10Xを叩き込まれるからなんです。
Googleではほとんどの新入社員が、他社から転職してくるんですね。そういう人たちが全員10Xのトレーニングを受ける新人研修が必ずあるって聞いています。私もシドニーでその研修を受けたんです。そのときにバーンと大きい目標を描いて、次にキュッと小さく絞る。すごく大きいこと考えたあとに現実に今日できる小さい一歩は何?といって実行できるようにするんです。ここでたくさん失敗して早く成功の秘訣を発見することが推奨されます。
10Xは大きな目標さえ掲げればいいと勘違いされている傾向がありますが、そうじゃないんです。自分の人生の10Xでも、家族の中の10Xでも、とにかく“Start small”でいいんですよ。10Xにつながる小さい一歩。ただし、昨日とは違う明日をつくるために、昨日はやってなかったイノベーティブな小さな一歩です。

行動しないと未来は変わらない

――会議は企業のチームビルディングの体現の場だと思うのですが、会議でどのように10Xが使えると考えられますか。
いろいろなアプローチがあって、正解は1つじゃない。会議に出席される一人ひとりの方が、自分なりの10Xを実際に一歩踏み出すことができたら成功かもしれない。
会議における10 Xで私が思い出すのはGoogleの会議室です。会議室の壁にペンキがブシャーっと飛び散っているんですよ。アートな感じなんですけど、それは「汚していい」という意味で、白だと緊張したり、間違えちゃいけないって感じがあったりするけど、カラフルなペンキが飛び散っているとなんだか安心します。そのメッセージを視覚的に訴えていて、やっぱりそれってGoogleが社員に伝えたいメッセージを体現しているんだろうなと思います。
経営者の方が10倍という目標だけ掲げても行動しないと未来は変わらない。自分以外の誰かを巻き込んで、自分の苦手なところをサポートしてもらわないと、10Xの目標は実現しない。だから経営層とか管理職の方が、そういう覚悟を決められるかどうかで結果が変わってくると思います。だから正解は1つじゃないし、大事なのはみなさんの想いの強さ。本気でやる気があるかどうか。何のためにやるのか、誰のためにやるのか。
――大企業ほど築き上げてきた資産も大きいから、イノベーションのジレンマを抱えることになりますよね。
全体を一気に動かそうと思ったら、それは間違いなく失敗します。だから、たとえば全体の10%ずつ3つぐらいの事業を立ち上げて、どれがうまくいくかを徹底的に“Start small(小さく始める)”で“Fail fast(さっさと失敗する)”させて、10Xをイメージして一番うまくいきそうなところから始める。100%を一気に10Xというのはやめたほうがいいんじゃないかなって思います。だって危ないですよね(笑)。
――大きな会社になればなるほど、いきなりすべてをGoogleのアプリに切り替えるというのは難しいと思いますが、10X的な発想で上手に活用する方法はありますか。
そうですね。やっぱり一気にやるというのは難しいので、たとえばGoogleを使ってみるプロジェクトを立ち上げて、やる気のあるメンバーで集まって始めてみるのもいいかもしれません。まずは“Think big” “Start small”で小さく始める。とにかく今日できる小さな一歩を踏み出さない限り、未来は変わらないので、まず小さく始める。
ただしその小さい一歩は必ず10Xの目標にダイレクトに結びついていないとダメなんですよね。10 Xなので、それが3年かかったり、5年かかったり、下手すると10年かかる可能性もあるんですよ。でも1年後、3年後、5年後の10 Xが見えてくればそれでいいんです。まずは今日できる小さい一歩からですね。
10%増だとベストで頑張っても10%増なんですよね。だけど10 Xで考えると10倍なので、うまくいかなくても30~40%ぐらいいきそうじゃないですか。どんなに失敗といっても30%ぐらいいきそうなので、そうするとすでに10%より上がっちゃうんですよね。だから必ずしも10倍を短期間で達成させるっていうことが目的じゃなくて、ここをイメージしてモチベーションを上げるとか、何のためにという原点、自分たちが向かっているゴールを意識する。
――時間軸にはあまり縛られていないのですね。
そこは正解がないですね。10 Xの目標を立てて1年で達成なんてゼッタイ無理でしょ~ってなれば5年の目標にしてもいいですし。1年本気で10倍やるぞってやって、結果、どこまで近づけたかでもいい。やってみて初めて見えてくる景色もあるでしょう。10 Xのためにいままで全然連携したことがない人と組んだり、やったことがないアイデアを試したりってことができていればイノベーションが起きているので、少なくとも一歩は踏み出せているんです。
そういう自分たちに対して、YES!って言う。そのイノベーションで踏み出した結果、マーケットから違うって言われたら、Fail bell(失敗の鐘)を鳴らして、「はい次」ってスピーディーにやる。
――10 Xというとどうしてもハイリスク・ハイリターンの印象がありますが、そういうことではないのですね。
そうですね。ハイリスクハイリターンというのは、「虎穴に入らずんば虎子を得ず」というような危険を冒すという意味でしょうけれど、別にリスクが高いかどうかではなく、単純にスケールさせて(規模を大きくさせて)考える、というのが10Xなんだと思います。
目的が大事なので、売上げというよりは自分たちが幸せにしたい人を1万人にしようとか、自分たちのつくったコンテンツの動画を1万人から10万人にしようとした場合、10万人に見てもらうとどういうことが実現する?って描くと、広告の収益も上がるだろうし、その動画を見ることによって勇気づけられた人が、1日笑顔で仕事ができるようになるかもしれないとか、そういう考え方もある。
自分たちが一番納得度の高い、「この目標のためにこそ、自分たちは毎日仕事をしているんだ、頑張れるんだ」という目標であれば、必ずしも売上げじゃなくてもいいと私は理解してます。
失敗に対しても、それをリスクだと考えるのは、失敗を「ダメなこと」「よくないこと」だと考える世間の常識に当てはめるからで、自分たちが生み出したいものにフォーカスした結果、マーケットから受け入れられたかどうか、という「確認」作業だと定義すれば、リスクではなくなる気がします。
一人では辿り着けないとわかれば協力せざるを得ない。そのときに一番有効なツールがGoogleのアプリなわけですね。Googleのアプリは、コラボレーション最強のツールなんです。
そして、世界で一番イノベーションを起こしているGoogleという会社の社員たちが毎日使っているアプリだから、それを私たちがタダで使えるのに使わない手はない。いまの時代、Googleぐらいは使えるようになっていたほうがいいんじゃないかって思います。
Googleって派手に見えるんですけど、やっていることはめちゃくちゃ地味。最初本を書いたときに「平塚さんが書いているのはイワシの大群ですね」って言われました(笑)。1匹1匹が小さいって意味だと思うんですけど、そういうことの積み重ねでこそ、10Xが成し遂げられるというのが私の実感です。

文・鈴木涼太
写真・大井成義

平塚 知真子(ひらつか ちまこ) イーディーエル株式会社
イーディーエル株式会社代表取締役。早稲田大学第一文学部(教育学専修)卒。筑波大学大学院教育研究科修了(教育学修士)。筑波大学大学院非常勤講師。「Google 認定トレーナー」及び「Google Cloud Partner Specialization Education」の2つを保有する国内唯一の女性トレーナー経営者。数時間でITスキルを劇的に引き上げる指導に定評があり、「Google 最高位パートナー」と呼ばれる。出版社勤務を経て専業主婦になるも、学習欲が高じて大学院に進学。在学中に事業欲が高まり、教育会社を起業し、現在に至る。「日本に最高のITスキルを伝え、広める」を信条に、教育関連者やビジネスパーソンへ最新のITおよびクラウドスキルを指導中。パソコンやタブレットを四六時中見ているため、月に1回はデジタル断捨離し、温泉をめぐることが趣味。近著に『Google式10Xリモート仕事術――あなたはまだホントのGoogleを知らない』がある。

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