ワーケーションは幸せな働き方の選択肢のひとつ【スマート会議術第 155 回】

ワーケーションは幸せな働き方の選択肢のひとつ【スマート会議術第 155 回】一般社団法人ワーケーション協会 倉富喜久子氏

釣りメディアの仕事がきっかけで海釣りが趣味になったという倉富喜久子氏。ご主人がサーフィン関係のデザインも手掛けていて環境意識が高めのサーファーの方々とご縁があったこと、環境リサイクル取り組む企業や専門家の方々と長年親交があることなどから、再生エネルギーの普及や海洋ゴミをはじめ環境活動にも取り組むように。気づいたら昨年9月、一般社団法人ワーケーション協会の理事を務めることになった。

なぜ海釣りから環境問題、そしてワーケーションなのか? ワーケーションとは、もともと有休消化促進のため・休みの旅先で仕事を行うことから始まった。ワーケーション協会では、ワーケーションの考えを受け継ぎ、「遊びながら仕事を」「旅をしながら仕事を」を掛け声に仕事の生産性を上げる働き方の実現を目指す。

コロナ禍の蔓延により働き方が見直され、非対面・テレワークなどのデジタル改革が進むいま、ワーケーションという考え方は働き方改革の重要なカギを握るに違いない。

協会を通じて、ワーケーションの価値や魅力を伝え広めるとともに、ライフワークである自然との共生、SDGsや環境問題などの活動にも積極的に取り組む倉富氏に、ワーケーションを通じて見えてくる働き方改革についてお話を伺った。

目次

ワーケーション実現のために超えるべき壁

――一般社団法人ワーケーション協会に関わるようになったきっかけを教えていただけますか。
私が所属するワーケーション協会の代表が、「ホビモ」という空き家活用の新しいプラットフォームをつくっていまして、それが主に「サーファー経営者の会」の方たちなんですね。ホビモの設立メンバーの方たちはもともとワーケーションという働き方をされていて、私も代表の小林(宜功)と親しかったのでいろいろお手伝いをしていました。私自身はサーファーではないですが、主人が若い頃サーファーで、サーフィン関係のデザインも手掛けています。釣りは、内外出版社の釣りメディア・ルアマガ+の仕事が関係で2年前に海釣りデビュー。協会では釣りというアクティビティや環境活動をワーケーションの中でどう考えていくかみたいなことをご提案できればという立ち位置です。

※ホビモ
https://www.hobimo.life/

※サーファー経営者の会
https://www.sankei.com/economy/news/190730/prl1907300015-n1.html

※ルアマガ+(内外出版社)
https://plus.luremaga.jp/

サーフィンをやる経営者の方たちで、全国に拠点が結構あるのですが、ただ住む場所ではなくて、サーフィンのポイントに近いとか、釣りがやりやすいとか、スキー場や牧場の近くとか、そういったところに空き家を置いて、そこに皆さんがサブスクリプションで住めるようなサービスを展開することから始まりました。
私自身はワーケーション協会や釣りメディアの関係で、海洋プラスチックごみの問題を解消する「BRING OCEAN」というプロジェクトに昨秋からジョインしています。環境問題へ関心が高まったのは、環境意識が高めのサーファーの方々と昔からご縁があったこと、主に衣類やプラスチックなどのリサイクル事業でオンリーワンの技術と仕組みを持つ日本環境設計株式会社の創業者が後輩で、環境問題に関わる企業や専門家の方々と長年交流してきたことがきっかけです。「BRING OCEAN」プロジェクトは、日本環境設計株式会社様と環境に優しい製品づくりに取り組む豊島株式会社という商社様が主催されています。

※「BRING OCEAN」プロジェクト
https://www.jeplan.co.jp/service/bring-ocean/
https://workation.or.jp/bringocean1/

ワーケーションと環境は切り離せないし、特にホビモはサーフィンをやるので海の美化もちゃんとやっていきたい。それで私の釣りというアクティビティと環境の視点からワーケーションに関わっていくことになりました。
ワーケーションの話は前から話題にはなっていたので、ホビモという会社は去年から立ち上げると協会の代表でもある小林が決めていました。みんなまだ「ワーケーションって何?」というレベルだとは思うので、まずはそこで情報発信をしましょうと。ホビモの理事の方たちはもともとワーケーションをされているので、そういった活動報告をしたり、メディアでこんなことが取り上げられているといったことも、どんどん自分たちが中心になって発信していったりする形をとっています。
――倉富さんご自身もワーケーションされているのですか。
“ときどきワーケーション”という感じですね。私は自分が経営者なので、やはり取材とか出張とかあると、そういった流れでやる形が多いです。あとは熱海や金沢で地方創生のプロジェクトにちょっと絡んでいます。行政もワーケーションに力を入れているので力を貸してくれないかということでお話を少しずつしている状況です。
――今後の活動は具体的にどのように進めていくのでしょうか。
ワーケーション協会としては非営利で動こうと思っていて、それで協力を仰いでいるような感じです。どちらかというと人と人をつなげたり、ワーケーションを企業側に啓蒙したりするような活動です。いまワーケーションは国とか県、町、市といった自治体が盛り上がっているんですね。あとは観光業。ホテルや旅館では流行っているんですけど、企業側が結構二の足を踏んでいるのですが、私たちはそこを非営利で、「何か一緒にやりませんか」とか「こういったことできますよ」と情報発信や啓蒙活動というかたちでサポートさせていただいている感じです。なので、ゴールとしてはワーケーションの普及とか、それにあたって地域の創生ができたらなと思っています。
――ワーケーションを啓蒙・普及していく上で、今後いろいろ障壁もあると思いますが、現時点である主な課題は何ですか。
労災ですね。現地で何かあった場合とか、誰がどこまで責任を持つか。自由にいろいろなところに行かれた場合に、それが結構ネックになっていることが大きいですね。レンタカーを借りてどこかへ行ったり、アクティビティに参加したりした場合、何もないかもしれないけれど、ちょっと読めない。保険制度もまだ十分整備されていない。協会のほうでもそういう保険をどこかがつくってくれないかとかアプローチはしているのですが、労災の範囲があまりにも広いので、ちょっとまだそこがクリアできていません。
本来、ワーケーションは幸せな働き方の選択肢のひとつなので、会社がワーケーションをするかしないか以前に、人間らしい幸せな働き方を、会社の組織として土台をどうつくっていくかといったところから見直すことが必要になってきます。ワーケーションを選ばない人もいるかもしれないですけれども、そもそもいままでは働く場所を選択する自由もなかった。テレワークで都心から離れることができれば家賃は下がるわけですよね。都心の事務所を縮小して、定期代を払わなくて良くなる。私の周りではコストが半分ぐらいになったという経営者も多い。経営する側からするとコスト削減になっているわけだから、テレワークはそういった意味ではメリットがある。
ただ労務管理という点では実際には評価もしにくいし、営業とか具体的に数字を出して結果を出す仕事であれば、そこができていればそれでいいところもあるんですけど、そういう仕事の方ばかりではないので、そのへんはいろいろメリット・デメリットがあり、ちょっとやりにくい部分もありますね。
ワーケーションによってエンゲージメントが上がったり、仕事の効率が上がったりといった話は出てはいるんです。実際に脳波を測ったりして数値測定してデータが出ていたりするのですが、まだ実証実験中のところもあるので様子見になっているところはありますね。そういったところを検証して、実際にワーケーションを導入した企業がワーケーションして全体の成果が上がったという実例が出てこないと難しい。ただ、それを進めていくのは、1つひとつ事例を積み上げて発信していくことが、増えていくことの足掛かりになるのかなっていうことは言っています。

ワーケーションは休み中に仕事をするのではない

――海外でのワーケーションの状況で目立った動きはあるのですか。
IT先進国のエストニアはワーケーションビザを出し始めているんですよね。年給いくら以上で、生活がちゃんとできる外貨を仕事としてリモートワークができるところであれば、1年間、年齢に関係なくビザ発行する。あとカリブ海のバルバドスでは昨年8月からワーケーション向けビザを発行しました。バリ(インドネシア)もワーケーションビザができるんじゃないかって噂になっています。
海外との比較で考えると、海外って仕事に人が就くじゃないですか。だから会社への愛着はあまりない。基本的に自分の評価でどんどん転職していく。でも日本はテレワークになるとチームワークとか会社への愛着みたいなものが失われるのを恐れる。どこでつながっていけるんだろうかと、人事の方とかは思うみたいなのでそのへんの判断が難しいですよね。それはそれで日本の企業ならではの良さみたいなところもあるので。
――ワーケーションをやってみることに働く側がまだピンとこなくて、「どういうメリットがあるのかな」という疑問があるように感じます。
ワーケーションは休み中に仕事をするのではなくて、仕事をする日に場所をリゾートに変えてやっていいよというのが基本です。休日を使うとなると、有給の消化があると結局休みの日は働かないほうがいいので、休日出勤になってしまう。そのあたりがまだ理解されていないのかもしれないですね。だから「休みをとってまで、そこで働くの?」ということになってしまう。
でもそうじゃなくて、平日の働く日にそういうところに行って働いていいよっていう考え方ですよね。働くだけじゃなくて、仕事が終わったら空いた時間は好きなことをしてもいいよということです。だから会社の規則としては、ワーケーションはまったく休日ではないんです。あくまでも仕事中でそういう環境もありますよってことです。ワーケーションの最初の定義は、じつは有給休暇を消化しない日本人のための消化が目的だったんですよ。だからワーケーションと言いながら、そんなにワーク中心には考えていない。
――そもそも有給休暇の権利すら使っていないのに、ワーケーションをやりましょうと言われてもなかなか浸透していかないでしょうね。
そうですね。そこが一番大きいです。できるだけ休みたいと思っている人とか、休暇を中心に考える暮らしをしている人は、結構すんなり入っていけるんですけど、やっぱり日本人でそういう人は少ない。でも、コロナ禍になって「自分たちってこのままで幸せになれる働き方、生き方だったんだろうか?」って疑問を抱いた人も多いと思います。たとえばモニターツアーをすると、「いままでそんな趣味とか、特にやりたいとか思わなかったけど、体験したらめちゃくちゃ楽しかった。自分の価値観が変わった」という声も出てきています。
そういう意味では、もし会社が社員に豊かな生き方をして欲しいと思うのであれば、ワーケーションを取り入れてそういう体験をあえてさせるとか、導入することで何か変わってくるのかなと思いますけどね。何でもまずはやりやすい形、テストでできるような流れをつくっていくことが大事なのかなって思います。私も仕事でたまたま釣りと出会わなければ海釣りにそんなにハマることもなかったと思うので(笑)。
――有給休暇があっても取らない。コロナ禍で家にいてもすることがないから会社に来ちゃう人もいるみたいですし、ワーケーションと言われても戸惑う人も多そうです。楽しみ方がわからないというか、何を楽しめばいいのっていう状況なのかなと。
SDGsとか環境のことの観点からいくと、いままで人間中心で全部をやってきたからおかしくなっちゃったっていうのがあるわけですよね。個人はこれまでの「あたりまえ」「すべき」「無理」を捨てて、自分の心に素直になり、まっさらな思考で仕事と向き合い、行動してみる。美しい自然や普段接しないヒト・モノ・コトとの出会いが、そのきっかけになる。そういった中で自然と向き合ってみたり、地方で全然違う文化に触れ合ってみたりすることで目線が変わることが、いまの社会の流れからもすごく必要なことだと感じます。

文・鈴木涼太
写真・大井成義

倉富 喜久子(くらとみ きくこ) 一般社団法人ワーケーション協会
一般社団法人ワーケーション協会理事。株式会社内外出版社外部プロデユーサー。合同会社クラトミデザイン代表。鹿児島県出身。鹿児島大学卒業後、森永製菓株式会社入社。退職後、TV番組制作会社、ベンチャー系広告代理店、編集プロダクションで、TV番組、広告・出版物のディレクションや企画・編集・執筆などのキャリアを積む。出産後10年のブランクを経て復帰。2011年通販支援専門 の広告代理店・株式会社ファインドスターに入社。媒体の仕入れ交渉をメインに担当。2013年より夫が20年営んできたクラトミデザインの経営とマネジメントの仕事に。オウンドメディア構築の株式会社しんがりのパートナーとして、ニフティの住まいメディアの立ち上げなども行う。2018年5月に法人化「合同会社クラトミデザイン」を設立。

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