コミュニケーションが発生する仕組みやルールを導入する【スマート会議術第162回】

コミュニケーションが発生する仕組みやルールを導入する【スマート会議術第162回】株式会社メンバーズ 執行役員 池田朋弘氏

いまやテレワークという言葉を知らない人はいない。テレワーク人口が急激に増え、「通勤がない」「時間ができた」というポジティブな声も多い。しかし一方で、「誰が何をしているかわからない」「生産性が下がった」「メンタル不調が増えた」といったテレワークならではの課題も顕在化してきた。

個々人に合わせた柔軟な働き方ができるテレワークは、基本的にはコロナ禍が収束した後も制度として残り、活用されていくだろう。しかし、企業によってその捉え方はさまざまだ。テレワークのメリットを最大限に活かして生産性の向上や業務の効率化に成功した企業も多い。

一方で、テレワークによって従業員が離れ離れになり、会社や社内のチームで一体感が失われることを懸念する声も少なくない。

たとえば、テレワークでは意図的に仕組みをつくらないと気軽に雑談をすることができない。雑談からは、さまざまなビジネスのアイデアが生まれることが多々ある。テレワークでこれらがなくなるとすると、「一体感がなくなる」という懸念もあるだろう。

5年以上にわたってテレワークでの組織運営・経営を経験してきた株式会社メンバーズの執行役員・池田朋弘氏が、自身が培ってきたノウハウを一冊の書籍『テレワーク環境でも成果を出す チームコミュニケーションの教科書』にまとめた。そんな池田氏にテレワークで成果を上げる秘訣について語ってもらった。

目次

テレワークができない会社は取り残される

――欧州の多くの先進国は労働時間が短くて、1人あたりの所得も高い。日本は同じ先進国でありながら労働時間はOECD加盟37カ国中22位、労働生産性はOECD加盟37カ国中21位。この数字をどう捉えますか。
かなり根深いですよね。そもそも多くの先進国は労働時間重視でなく付加価値重視の働き方になっていると推測します。教育もアクティブラーニングだったり、考えさせる力だったり、クリエイティブで付加価値の高い、自分の頭で解を出すような教育をしてきていると思います。必然的にそういう付加価値型は、たとえばAIにはできない正解がない問題を自分の見解で解いていくような仕事になりやすい。それまでの姿勢や培ってきた考え方が源泉になってきているので、そうなるといまの日本での労働時間を管理するやり方ではかなり厳しいと思います。
――今後、日本の企業はどうしていけばいいと思いますか。
テレワーク対応は必須だと思います。やっぱりテレワークがいま転職要件でも新卒の就職要件でも上位に上がってきているんですよね。働く側の7~8割はテレワークをしたいと思っている。一方、会社は今回の緊急事態宣言時のテレワークの動きを見ても、テレワークをやめて元に戻っちゃったところも多い。
会社の経営者層の考えていることとか捉え方、もしくはテレワークに関する感度と、現場で働いている人たちの感度には随分ギャップが出てきている。働く側から見ればテレワーク対応をしている企業のほうに行きやすくなる。優秀な人がテレワーク対応をしている企業に移りやすくなっていくと、採用競争力をつけるという意味において、テレワーク対応しないとまずいよねってなってくると思います。
会社としてはテレワークで働けるようにしていくのは時間がかかると思いますが、取り組んでいかないと、あるとき「御社みたいなテレワークはできないというオールドスタイルな会社は結構です」「あっちはテレワークで仕事できるし、仕事内容も面白そうなので給与が一緒ならそっちに行きます」と言われて、優秀な人に逃げられてしまい、負けることにならないとも限らない。
――テレワークはやはり通勤時間のムダが省けるメリットが大きいと感じた人は多いと思います。
働く側の視点で考えれば、通勤時間も業務時間ですよね。会社都合で拘束され、かつ肉体的な負荷も高い。1つの思考実験として、通勤時間も業務時間とする法律をつくればどうか、と思うこともあります。そうすれば、いま在宅で8時間働いているのが、通勤を仕事と見なすとたぶん拘束時間としては4時間ぐらいになる。通勤中にスマホを見たり本を読んだりはできますが、会社のために失っている時間であるのは間違いない。これまでは働いている時間とは認識されずに、移動するのが前提でその分が給料にも反映しないし、交通費だけが実費精算。一度テレワークを体験したら、もう通勤とか考えられないですよね(笑)。

テレワークは離職率の低下をもたらす?

――コロナ禍でオンライン授業になって、意外にも大学の中退者数が20%も減ったという統計が出てきました。テレワークは離職率にも影響していそうですね。
弊社も昨年250人ぐらい新卒採用しましたが、必然的に去年は最初からテレワークでした。リモート研修してニュースにもなったのですが、辞めたのが250人中1人だけでした。
コロナ禍で転職先が見つかりにくいという理由もあると思いますが、でも全然辞めていなくて何とかなっている。少なくともテレワークが無理だということにはなっていない。テレワークでコミュニケーションがちゃんととれるようになっていることは、結構重要な条件だと思っています。
テレワークで上司が部下の面倒をみるのはすごく大変だと思うし、悪気なくコミュニケーションの壁が高くなりすぎてしまって、結果的に部下も仕事もなかなか覚えられずにモチベーションも下がってしまう。そういうことはあり得るストーリーかなと思います。テレワーク適性があるか、つまり文章でコミュニケーションができそうか。そういうところを見ずに採用している場合は、結構厳しくなることはあると思います。
――会社を辞める理由として、やはり人間関係が一番多い。特に上司との関係は圧倒的ですね。
メンタルヘルスを崩す理由ですね。テレワークで逆にダメージが減るというのはよくある話です。仕事上、嫌でも会社の人と接しなきゃいけないけど、全員がお互いを好きになるとは限らない。
なんかコイツちょっと話したくないとか、普通にあるじゃないですか(笑)。相性が悪いとか。そういうときに出社を前提としなきゃいけないと、対面でその人とも接しなきゃいけないので、精神的なダメージが生まれる。一方テレワークになると、もちろん接しなきゃいけないけど、物理的距離ができるから圧力もゆるやかじゃないですか。ダメージが減るので、その分会社にいやすいというか、継続しやすいってことはありますよね。
――上司側もモニター越しに顔を真っ赤にして怒りづらいですよね。
それは意外とあると感じています(笑)。対面だったとしても、そもそも人間関係が希薄じゃなかったのかって話もありますよね。よっぽどコミュニケーション能力が高くて人間関係を築くことができる人もいれば、いたとしてもそれを構築するわけでもないし、むしろ対面だとネガティブな要素のほうが大きいケースもある。そのへんは人によって変わってきそうな気はしますよね。
――テレワークにおいて、上司やチームメンバーとの信頼関係つくるうえでは、どんなことが重要だと考えますか。
初期は密にコミュニケーションすることです。テレワークであってもコミュニケーションは重要で、姿が見えないと不安をかき立てるんですよね。最初に仕事を始めたときは、信頼の残高はゼロからスタートする。貯金がないからすぐにマイナスにも振れちゃう。そのときにコミュニケーションもペースが遅いとか、適切なことが報連相されないとか、上司から強要されたりとかすると、すぐマイナスになる。
1回マイナスに振れても会わないで放っておくとそれが加速するので、最初は意識的に密にコミュニケーションをとるようにしたほうがいい。文章が苦手だったらオンライン会議をしてもいいと思いますが、テレワークだからってコミュニケーションを怠るのではなくて、むしろわかってもらえないからこそちゃんとやらなくちゃいけないという意識で向き合うことが重要だと思います。

テレワークの課題は雑談の機会

――出社して物理的に顔を合わせていればコミュニケーションをとる機会は多いですが、テレワークだと意識的に話す機会をつくらないと仕事以外で話す機会がなくなりがちです。そういう意味で雑談をする機会はつくったほうがいいですよね。
重要だと思いますね。居場所って何だろうって考えたときに、要件のひとつとして継続的に接点を持つことが重要だと思います。会社は基本的には通勤が前提としてある。一方で仕事と関係ない友人や仲間は、あまり日々決まって会う居場所があるわけではない。やっぱり継続的に定期的に接点がある居場所として、物理的に集まるオフィスは結構重要なのかなと思います。物理的な居場所があることで何でもないことを話せたり、共有したりすることができる。雑談というのはテレワークだと意識しないと生まれないので、意識的に生むような形ができればいいと思いますね。
――夜に面白いテレビ見たら、それを翌日友だちに話したい(笑)。そういう場も無理やりつくらないと、オンライン会議でいきなりムダ話はしづらいし、メールでいきなり「昨日見た?」って送るのも気がひける。
なかなか厳しいですよね。でもオフィスに来ているからといって、たぶんそんなに話す機会もなくて、出社はしているけど一日誰とも話さずに帰宅することもあると思うんですよ。それは個人のコミュニケーション能力に依存しているわけですよね。でも会社というのは本来コミュニティ機能があるから、そのコミュニティとして会話の機会はあったほうがいい。
雑談が信頼関係を築いたり、ちょっとした相談もしやすくなったりして、業務効率に機能すると思うのであれば、単に個人のコミュニケーション能力に依存するような形で、場所だけを用意して終わりではなく、もっと定期的にコミュニケーションが発生する仕組みやルールを導入していくのは必要です。特にテレワークの場合は、そうしないと致命的にコミュニケーションがなくなってしまいますからね。
テレワークでしか働けない人もいる中で、テレワークでも働きやすい社会・環境ができることで助かる人が結構増えると思うんですよ。英語がしゃべれる人が増えると、英語しかしゃべれない人が快適になるのと同じです。テレワークのスキルを上げることが社会的にも重要だと思っています。だから、気づいた人から小さい規模でいいのでテレワーク的な働き方、コミュニケーションの考え方を習得していってほしい。そうすることで、結果的にテレワークで快適に働ける人が増えると思うので、このコロナ禍を機会に身につけていきましょうと言いたいです。テレワークはダイバーシティには必須な手法のひとつですね。

文・鈴木涼太

池田 朋弘(いけだ ともひろ) 株式会社メンバーズ
株式会社メンバーズ執行役員。株式会社ポップインサイト 創業者・元CEO。早稲田大学卒。2008年に株式会社ビービットに入社し、UXコンサルタントとして従事。2013年にポップインサイトを創業。クラウドソーシング事業を立ち上げ、リモート環境で数千人のメンバーを組織し、コンテンツ制作・AI向けデータ収集など多数のプロジェクトを実施。2020年4月にポップインサイト代表取締役を退任し、株式会社メンバーズ執行役員としてマーケティングを担当。日本初のリモートUXリサーチサービスを開発。リモートワークにおける組織マネジメントを試行錯誤し、50人以上の組織を運営し事業成長を牽引。2018年には、総務省のテレワーク先駆者百選を受賞。2020年11月、テレワークでの組織マネジメント経験をまとめた書籍『テレワーク環境でも成果を出す チームコミュニケーションの教科書』を上梓。

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