博報堂は会議が多く、しかも雑談だらけ…。その理由は?【スマート会議術第11回】

博報堂は会議が多く、しかも雑談だらけ…。その理由は?【スマート会議術第11回】博報堂ブランド・イノベーションデザイン局 ディレクター 岡田 庄生氏

博報堂といえば、広告業界を代表する、数多くのトップクリエイターが所属することで知られる大手広告会社です。
今回のスマート会議術では、書籍「博報堂のすごい打ち合わせ」(SBクリエイティブ)で初公開された、博報堂の社員が日々行っている打ち合わせ術について、同社ブランド・イノベーションデザイン局に所属する岡田庄生さんにお話を伺いました。
数々の広告を生み出してきた、博報堂の会議術とは?

目次

博報堂は「会議」が非常に多い会社である

――「博報堂のすごい打ち合わせ」によると、博報堂は非常に会議が多い会社だそうですね。
会議は大きく2つ、「ホウレンソウ的な会議」と「アイディアを出す会議」とに分けることができます。
前者は、進捗や数字の報告をしたり承認を得たりする会議ですね。後者は、誰も正解がわからないという状況で、対話をすることによって、新しい発想やアイディアを生む会議です。
博報堂はとても会議が多い会社ですが、アイディアを考える会議が、そのうちの大半を占めています。部署にもよりますが、私の場合は9割8分ほどがアイディアを出す会議となりますね。
博報堂のすごい打ち合わせ
――書籍のタイトルにもありますが「会議」と「打ち合わせ」という言葉を使い分けているそうですね。
はい。博報堂ではアイディアを出す会議を「打ち合わせ」と呼ぶことが多いですね。
ある役員は、打ち合わせについて「アイディアを考えてきて刀と刀をぶつけ合うもの。刀がぶつかると火花が散る。そこにアイディアが宿るんだ」と話していました。
――昨今、「ホウレンソウ的な会議はメールなどで済ませればいい」という意見もありますが、いかがでしょうか?
私としては、効率化できるなら、そうしたほうがいいと思います。
ただし、危険なのは「会議」というキーワードに引っ張られて、アイディア会議までなくしてしまうことです。それでは、アイディアやクリエイティビティが失われてしまうと思います。
――ちなみに役員会議は、アイディア会議とホウレンソウ会議のどちらに入るのでしょうか?
私自身、役員ではないので実際に見たことはないですが、ホウレンソウ会議だと思います。
ただ、経理の社員が、役員に対して数字を報告するシーンにおいて、積極的に若手に主導権を渡す取組みをしていると聞いたことがあります。博報堂では、若手が役員の前で緊張しながら数字を報告する中、むしろ、社長や役員が雑談を挟んで雰囲気を和らげるなど、少し変わった雰囲気で会議をやっているそうです。

どんなアイディアもリスペクトするのが博報堂の会議

――博報堂のアイディア会議ならではの特徴はありますか?
「アイディアを自分で考えてくる」ということが大前提としてありますが、もうひとつの前提が「自分のアイディアに固執しない」ということです。。自分が考えたアイディアはかわいいものですけど、ほかの人のアイディアをいいと思えば、素直に「いいね」と言うし、のっかれると思えば、のっかるようにするのが特徴です。
そして、自分の意見に対するほかの人のツッコミも素直に聞く。「自分のアイディアはあくまで叩き台で、叩かれてどんどん良くなっていく」という心構えが基本です。
――会議に関してよくある問題として、「毎回話す人が決まってきてしまう」というものがあると思いますが、博報堂の場合はどうでしょうか?
話さないということはないですね。というのも、企画の人間にとっては、会議は仕事であると同時に楽しい場であり、戦いの場でもあります。「打ち合わせの場で貢献できないと、居場所がなくなる」という意識はありますね。
ただ、それでも、話す人と話さない人に分かれてしまうのはしょうがない部分ではあります。
そういう場合は、事前に各自A4の紙に1枚1アイディアを書いて持ってくるようにしています。それをみんなの前に出す。そして、その束を全部説明し終わるまでは、どんな偉い人もその話を最後まで聞く。
「お前のアイディアはつまらないから、聞かなくていいんだよ」と言う人はいません。
アイディアを考えてきた人のことはリスペクトするんです。他人のアイディアの中に、自分への刺激や気付きがあるとわかっているので、しっかりと聞きますね。
――とはいえ、ダメなアイディアも出てきますよね?その場合はどうするのでしょうか?
博報堂では、どんなダメなものでも持ち上げようとする傾向がありますね。
例えば、アイディア自体はダメだけど、視点はおもしろいものがあったら、そこから連想を広げていく。出てきたものは、なんとかして材料として使おうとします。ある人は「なんとかして成仏させる」と表現していました(笑)。
そして、アイディアをどう引っ張れるかというのは、会議を仕切る人の手腕ですね。
出てきたアイディアが全部つまらないときは、持ってきた人が悪いのではなくて、そういう宿題を出した人や、出てきたアイディアに対して、のってあげられなかった主催者側の問題じゃないかと思います。

博報堂の会議は、雑談が非常に多い

――博報堂の会議の最大の特徴として、「雑談が多い」と伺っています。最近は効率化ということで、会議を短くする風潮があり、それとは反するようですが、いかがでしょうか?
博報堂は、広告やマーケティングを扱う会社なので、「人の気持ちをどう動かすのか」が、ほぼすべての会議の中心的な話題になります。
自分の経験を広げて、「こういう人もいる」ということを理解すればするほど、人の気持ちはつかみやすくなるのですが、一人ができる体験には限界がありますよね。そこで、いろいろな人の経験を聞いて、疑似体験する。そのため、雑談が重要になることをみんな知っているんです。
――岡田さんの著書の中では、「雑談が本音を引き出す助けになる」とありましたが、ここでいう「本音」とはどういったものなのでしょうか?
本音のことを、広告業界では「インサイト」といいますが、人を動かすのは、欲望というか、本能的なものなんですよね。そういうものに迫るためには、綺麗事じゃなくて「実際こうだよね」という話をする必要があると考えています。
――なるほど。そこには、すぐにアイディアにつながらなさそうな話題も含まれるということですか?
そうですね。アイディアを話すまえに、「ぶっちゃけこうだよね」という話の中から、人を動かすエッセンスを話すんです。最後に広告になるときには、もちろん言い方などは変わりますが、その根元にあるのはもっと人間らしいものです。
最初から表現にこだわってしまうと、そういう人間らしさは出てこないんです。だから「お酒を飲んでいるときの雰囲気を、昼間の会議室でいかに再現するか」ということは意識しています。

博報堂の会議は、真剣だからこそ楽しい

――博報堂のアイディア会議においては、どのような方がファシリテーターを務めるのでしょうか?
最初は決まっていないことが多いですね。プロジェクトによってデザイナー、コピーライター、マーケターなどがチームを組みますが、話し合いの中で徐々に中心人物が決まっていきます。
先ほど「打ち合わせは楽しくも戦いの場である」と言いましたが、企画のメインとなるコンセプトを誰が出すかという戦いでもあります。そのコンセプトを出した人間が中心人物になっていきます。
――そのポジションをみんな狙っているのでしょうか?
はい。博報堂は一部のデザイナー以外はみんな総合職採用で、入社後に配属が決まります。だから、基本的には、みんな世の中を動かす仕掛けがしたい人ばかり。「キャッチコピーだけ書きたい」「デジタル以外やりたくない」という人はあまりいません。ですので、誰がコンセプトを考えてもいいんです。
――本日は打ち合わせについての考え方や、雑談のメリットなどをお伺いしました。ただ、「それでも打ち合わせが多いのはたいへんそうだな」という印象も残りました。正直なところ、いかがでしょうか?
博報堂における打ち合わせというのは、メーカーにおける工場なんですよね。「アイディアを生み出す装置」イコール「打ち合わせ」なんです。だから、どうしても必要なものだと思っています。
もちろん、一人で企画を考えることもできますが、広告やマーケティングには正解がないので「本当にこの企画が正しいのか」と迷うタイミングが出てくるんです。
だから、「本当は一人でもできるけど、慣習だからやっている」というよりは「切実に君たちの知恵が必要だ!」という感じでやっていますね。むしろ、打ち合わせが少ないほうが「自分は必要とされてないのかな…」って不安になります(笑)。
――やはり、打ち合わせの場は、生存競争の場でもあるのでしょうか?
それはありますね。ただし、みんなそれが好きでやっているので、殺伐としている感じはありません。あの「笑点」だって本人たちは真剣に大喜利をやっているわけじゃないですか。僕らも「真剣だからこそ、楽しい」と思って打ち合わせに臨んでいますよ。

文・写真:坂上春希

岡田 庄生(おかだ しょうお)博報堂ブランド・イノベーションデザイン局
PR戦略局を経て、博報堂ブランド・イノベーションデザインに所属。さまざまなクライアントの経営・マーケティング戦略立案を支援。著書に「買わせる発想 相手の心を動かす3つの習慣」(講談社)、「お客様を買う気にさせる『価値』の見つけ方」(KADOKAWA)などがある。Webコラム「ブランドたまご」編集長。東京工業大学非常勤講師。日本大学非常勤講師。
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