会議も予算も事業計画もすべてムダです。【スマート会議術第29回】

会議も予算も事業計画もすべてムダです。【スマート会議術第29回】株式会社メディアハーツ 代表取締役 三崎 優太 氏

FABIUSブランド「すっきりフルーツ青汁」を大ヒットさせ、メディアでは“青汁王子”とも呼ばれる三崎優太氏。高校卒業と同時にアフィリエイトで月に数百万円を稼ぎ、会社を設立。その後、数年は会社を休眠状態にし、部屋にこもってFXや株式投資に明け暮れていた。そんなとき美容通販事業を機に快進撃が始まった。

「会議も予算もムダ」と断言し、急成長を遂げたその経営スタイルは、既存の通例や慣習を打ち壊すものだった。なぜ彼はこれほどまでに、旧来の商習慣に立ち向かうのか。企業の生存をかけて、個性、多様性、シンギュラリティなどが叫ばれる昨今、三崎氏の経営哲学は、まさに日本が抱える旧態依然の悪習に楔を打つものだった。

目次

生きていくためには起業するしか選択がなかった

――現在の事業の元となるのは高校時代から始めたそうですね。
はい。高校時代は停学の末、退学になって、通信制の高校を卒業したんですけど、集団生活ができなかったんですよね。大学も行けないし、就職もできない。じゃあどうしようかなと思ったときに起業するしか選択がなかった。起業すれば、誰にも何も言われないので、それしかないんじゃないかと思いました。
――実際に起業されたものの、社員の人たちに裏切られたとのことですが。
そうです。当時、僕はまだ10代で相手が30歳くらい。そこで裏切られることがあって。実際、雇用するにしても年上ばかりなんですよ。仲間がいなくて、つらい思いをしましたね。
――それでしばらく開店休業されて、そのあとまた再開したわけですが、何かきっかけがあったのですか。
25歳になってから本気を出して会社を経営しようと思って始めました。25歳になってから今の事業を始めたので、同世代の感覚の近い人材が集まると思っていました。以前は自分が若すぎて、仲間がいなかった。10代で北海道から上京してきたので、相談できる相手もいなかったんですよね。
――25歳という年齢は大きかったのですね。
それまでの7年くらいの経験はとても大きかったですね。その間に株やFXも勉強しましたし、とても生かされました。
――事業の内容はいろいろ候補があって、そこから絞り込んでいったのですか。
そうですね。その間に株やFXをやっていたので、企業分析が得意になったんです。そこで何が一番いいのか考えたときに、今の業態がすごく伸びていたし、すごくいいってことに気づき、これしかないなと。
――そして「すっきりフルーツ青汁」が大ヒットしたわけですが、どんな経緯で生まれたんでしょうか。
もともと僕が美容に関心があって、青汁を飲んでいたんです。ただ、やっぱり青汁は飲みづらいじゃないですか。まずいなと思っていたんですよ。で、飲みやすい青汁が欲しいと思って考えました。僕は野菜をまったく食べないので、違う形で栄養を補いたいという思いもありました。青汁もただ美容のために義務感で飲んでいたので。
――思いついてから、商品化まで、どのくらい時間がかかりましたか。
結構早かったです。商品化に至るまで半年くらいですかね。ここが普通の企業と違うと思うんですけど、商品開発のプロセスでほとんど会議とか打ち合わせとかしないんです。一人で考えて一人で進めて、気づいたらできていた、みたいな。うちは会議をしない。ほとんど自分が決めたことを、トップダウンで決める。これこれこうだからこうしてくれ、みたいな。

日本の会社は常識に囚われてムダなことをしすぎている

――会議も打ち合わせもしない?
会議はしないです。現場では多少していると思いますよ。でも僕はしない。普通そんなに会議するものですか? 会議はもう時間のムダとしか思っていないんです。別に話すこともないし、長々時間を費やすのがもったいない。
――会議をしないで現場にはどのように意志を伝えるのですか?
チャットですね。コミュニケーションはチャットワークでやるから、会議は必要ないです。会社全体のチャットがあって、そこに用事をバンバン流す。あとは個別でやり取りをする感じです。部署は商品開発とプロモーションと、あとコールセンターとデザイン。それぞれスレッドが分かれていて、自分はそこに全部目を通してやり取りする感じですね。
――やり取りの中で、何か気づかれることはありますか。
会議をするのが本当にムダだと思うんですよ。疲れるだけ。いちいち時間を合わせて集まらなきゃいけない。意思決定が遅くなるから、チャットでやったほうがいい。いちいち会うのが面倒臭いし、社員たちも大変ですよ。疲れることはしないほうがいい。うちの社員にも疲れることはさせたくない。
日本の会社は労働生産性が低いって言われますが、当たり前ですよ。ムダなことばかりやって、忙しい忙しいって騒いでいる。だから儲からないんじゃないのかなと思っています。大手の家電メーカーも、軒並みダメになっていますよね。会議だの稟議だの調整だの忖度だの、ムダなことばかりやっている。だからムダに偉い人ばかり増えて、逆ピラミッド構造の大企業病になるんです。
――なぜそういうムダなことをやっていると思いますか。
常識に囚われる日本の文化がダメなんだと思います。くだらない常識に囚われていることが、企業の成長を妨げている。それは自分が起業してからすごく感じましたね。だから逆に楽です。みんな常識に囚われているから、ちょっと違うことをやればすぐに成果が出る。だから3年で130億円売上げられたし、利益も30億円出た。みんなが常識に囚われている間に、常識に囚われない、新しいことをどんどんやっていけば、それが競争力になりますから。

学びたい社員にお金を惜しむ理由はない

――その常識って、学校教育から培われている気もしますね。
それはあるかもしれないですね。僕はちゃんと学校教育を受けていないので、わからないですが、その文化に染まらなかったのかもしれませんね。
――常識に囚われた企業を実際に目の当たりにすることはありますか。
いっぱいありますよ。全体的な風習とか。たとえば社員教育とか、全員に同じことを同じ時間に教育するなんてムダだと思います。各社員それぞれが勉強したいことを個別にお金を出して勉強させればいい。社員のレベルはみんな違うし、社員のモチベーションも違う。自分でスキルアップしたいと思えば、そこは全部お金を出せばいい。うちは個別に勉強したいと言えばすべて出しています。そもそも教育費なんて、売上げに対してたいした出費じゃない。いくら出しても経営に微塵の影響もないですから。
――社員のスキルアップは、具体的にどんなことをされていますか。
スキルアップといっても、別に教育とか研修とかはしないですよ。でも自分が勉強したいときは、本でもセミナーでも何でもいい。会社でいくらでもお金を出すから勝手に行ってくれって感じです。勉強したいって言ったら全部OK。いくらでもOKです。勉強なんていくらでもやらせたらいいと思うんです。このセミナーあるから行ってきますとか、デザインの勉強がしたいから講習に通いますとか、そういうのはよくありますよ。米国に視察に行くとか。米国で美容商品の展示会があるから勉強に行きたいって、いつでもOKです。勉強した人がどうなるかっていう指標もないです。まったくない。ムダな税金を取られるんだったら、社員に使ってあげたい。社員のスキルアップをして、社員の人生を豊かにしてあげたい。そういう方針でやっています。
新規事業を立ち上げたいと言って、いいアイデアがあれば、そういうところも援助する。挑戦することをすごく評価したいと思っているので。日本の会社って失敗を許さないところがありますよね。もちろん仕事をさぼったり、怠けたりするのはダメですが、一生懸命頑張って失敗するのはいい。そもそも全部成功するわけがないんです。むしろ挑戦したことを褒めるべきなんですよ。でも日本の会社ってすぐ怒ったりするから、委縮して挑戦できない環境になるんです。だから変化していかない。取り残されていく。それはナンセンスだと思います。

予算なんて枠があったら、成長を妨げる

――新規事業をやらせたり、教育費を出したりする場合、予算の中でどれだけ出すかを考える必要はないのですか。
予算なんてないです。どの会社も予算をがちがちに決めて、予算会議とかやるじゃないですか。あれも本当に時間のムダだからやっていません。予算を決めても予算通りになるわけではないんだから、うちは予算がないです。常にベストな効率、常に流動的なので、流動的に動く中でベストな選択を選ぶ。だから予算がないんですよ。
――予算は失敗しないための事業計画の一環ですよね。
それが成長を妨げてるんですよ。予算通りやっていたら、予算以上いかないじゃないですか。予算120%達成とか多少の上ずれはあるかもしれないですけど。予算っていう固定概念に縛られちゃう。企業の予算って、年頭で120%アップとかありますけど、それを取っ払えば、いきなり5倍になることもあり得る。それでうちは3年で130億円を達成したんですよ。それは予算がなかったから。だから今後どれだけ大きくなっても上場は考えていません。上場したら予算だとかうるさく言われるから。誰にも口出しされたくないから上場もしないし、非上場の極みを目指したいです。
――教育以外で、社員の成長のために心がけていることはありますか。
長時間拘束して仕事をさせるのはナンセンスだと思っています。疲れていたら仕事の効率も上がらない。たとえば通勤時間もムダですね。だから、うちは会社のある渋谷から2駅以内に住んだら家賃補助が出る制度があります。通勤時間が長いのは疲れるし、ストレスの元凶です。プライベートを豊かにしてほしいんですよ。プライベートが豊かじゃないと業務にも支障が出ると思うので。プライベートも満喫してほしいから、会社の近くに住んで通勤時間を減らしてもらう。仕事は一生懸命やらないとダメだけど、疲れていては一生懸命できない。だからプライベートも一生懸命生きてくださいっていう意味で、そういう制度は必要です。
――三崎さんご自身が体現してきたことをみんなやってくれれば、幸せになれるよっていうメッセージですね。
そうです。そんな感じです。計画なんてないですよ。経営に計画っていらないと思っているので、事業計画を立てたこともないです。計画したって、流動的過ぎるので意味がない。経営は生き物だと思うんですよ。うちは非上場だし、上場する気はないので、非上場の極みを目指すっていう意味では、今のスタイルでいいと思っています。

ほかと同じことをしていても生き残れない

――会議もムダ、予算もムダと、かなり異色な経営スタイルでここまで成功してきたわけですが、今後もこのスタイルは続けていく?
確かに変わっているかもしれない。でもそれが逆にアドバンテージだと思っているんです。みんな「予算が!予算が!」って騒いでいるじゃないですか。でも、それで潰れていく会社はいくらでもある。だからいくら予算を立てたってみんなと同じじゃ意味がないんです。みんなと同じでは、競争力がないから潰れるんです。うちは逆に予算がないから、ある意味で競争力がすごくあると思うんですよ。他の会社と違うことやってないと、競争力が保てない。みんながやっていることは逆にやらないほうがいいですよ。

文・鈴木涼太
写真・佐坂和也

三崎 優太(みさき ゆうた)株式会社メディアハーツ
株式会社メディアハーツ代表取締役&投資家。18歳のときに株式会社メディアハーツを起業。2014年に美容通販事業を開始し、「すっきりフルーツ青汁」が累計1億6000万本以上を超える売上げとなっている。

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