ファシリテーションは人や組織をより良くして、より良い未来をつくること【スマート会議術第102回】

ファシリテーションは人や組織をより良くして、より良い未来をつくること【スマート会議術第102回】フューチャー·ファシリテーション合同会社 原由紀子氏

ファシリテーターとは、物事がうまく進むよう促す人のこと。会議などで参加者全員が迷走することなくゴールへと到達できるよう、伴走をしていくのがファシリテーターの役割だ。

“走るファシリテーター”を自負する原由紀子氏は、大阪を拠点に全国を駆け回り、企業の組織開発のサポートに尽力する。

原氏は「課題設定が間違っていては、解決しても意味がない」と言う。しかし、日本の会議には課題設定を誤った会議が横行していると警鐘を鳴らす。人や組織をより良くして、より良い未来をつくるためにファシリテーションは、果たしてどんな役割を果たすのか。原氏にファシリテーションの果たすべき使命と未来について語ってもらった。

目次

会議の問題はそもそもの課題設定が間違っていること

――原さんにとってのファシリテーションとは何ですか。
人や組織をより良くしていくのが、ファシリテーションだと思っています。ファシリテーションのファシルというのは英語で言うと「イージー」で、物事を容易に進めるというところから「促進する」となってファシリテーションとなったそうです。
人や組織がより良くなるのがファシリテーションの役割。いくら会議がうまくいってスムーズに解決策が見つかったとしても、そもそも課題設定が間違っていると、また問題しか生まれません。
だから、ファシリテーターがその課題設定で本当にいいのか、その組織をより良くするものなのかを参加者の方と一緒に考えることも必要ですよね。最終的には、人や組織をより良くしていくこと、より良い未来をつくっていけることが、ファシリテーションだと思っています。
――ファシリテーターとして、会議を見てこられて何が一番課題だと考えられますか。
トップが本気で会議を変えようと思ってないことが、一番問題かと思いますね。
――変えなきゃいけない問題は、何が一番多いですか。
その会社によっていろいろ違いますが、まず会議の進め方です。すごく小さいところで言うと、何のためにその会議をしているのかがわからないままやっている。もっと大きいところで言うと、それは会議で本当に取り組むべき問題なのかと思うところはあります。
売上げが上がらないから営業会議するとか。本当にその売上げを上げないといけないのか。去年よりプラスにしないといけないのか。そもそもの課題設定が間違っているところがあると思います。
売上げが減ったとしても、もっと別のやり方ができるのではないか。仕事のやり方をそもそも変えなきゃいけないのではないか。そういう大筋を設定しなければいけないのに、「売上げが上がってない」「クレームがある」ということを課題にするところがあります。
――経営陣が近視眼的にしか未来が見られていないということですか。
そう思います。短期的に見れば成果が上がるかもしれないですが、長期的には上がらないだろうというところに目が行っているような気がしますね。
――長期的に見る体力や余裕がないとも言えませんか。
その通りです。そこをみんなで考えないといけないと思います。売上げを上げましょうという課題設定をするんじゃなくて、私たちがつくりたい組織、つくり出したいものは何なのか。どんな社会にしたいのかということをみんなで話し合って、どうあるべきかを考える。
細かい課題設定も必要ですが、その前にもっと大きなところで話をして、みんなの方向性を合わせてから個々のことをしないと、「開発はこう言うよね」「営業はこう言うよね」ってバラバラになってしまう。近視眼的に考えたらそうなりますよね。
その前に全体の方向性が一致していて、「あっちもそういう事情があるよね」「こっちもそういう事情があるよね」というのをすり合わせられていたらいいのでしょう。でも、3年後には会社がないかもしれないというのは確かにありますが。

みんなが進める会議になってすごく変わった

――ファシリテーション次第で会議は簡単に改善するものでしょうか。
ある看護学校で、先生たちと上司の間に問題があって、全然うまくいかないという事例がありました。もともと病院の組織開発をお手伝いさせていただいていたのですが、「隣接する看護学校にも問題があるから、ちょっと行って」ということになって行ったら、上司と先生方の間にすごく亀裂があったんです。休職する人が増えている、いわゆる「メンタルの不調でついていけない」みたいなことがありました。
会議も長くて、ずっと決まらないまま何時間もやっている。みんなそれが嫌で嫌で仕方ないということでしたので、まず会議の進め方から始めましょうと話をしました。行ったのは本当にスキル的なことです。
目的を決めましょうとか、時間を決めましょう。アジェンダを決めましょうといったところからスタートし、ホワイトボードを活用、会議を可視化していきました。スキル的なことをやっていくのと同時に、上司の方と何度も話をしました。
そうすると、会議がガラっと変わって、上司が一方的にしゃべっていた会議が、みんなが進める会議になって、状況が良くなりました。すごく変わったなと思いました。会議が変われば、人や組織が変わるというのはありますよね。
――形から変えることで、そういう人のスタンスというか、動きも変わるのですね。
まずファシリテーションの本を開けば書いてあるような基本的ことをやっただけなんですけど、すごく変わりましたね。
あれから数年経ちましたが、休職者も徐々に少なくなっていって改善されました。それは学校だけではなくて病院全体なんですけど、そういうことがありました。
――先日ある総合病院へ行ったら、医師も看護師もすごく神対応で感動したのですが、それはやはり教育面で何か違うのでしょうか。
それは働く環境の満足度が高いのかもしれませんね。コミュニケーションがいいのか、制度的に人数が足りているとか余裕がある。人の対応って資質もあるかもしれないけど、組織全体の仕組み、構造が引き起こしていることのほうが多いんです。
ぎりぎりの人数で自分のことも精いっぱいなのに患者さんのこともしないといけなくて、あれもこれもしないといけなくてというところで神対応っていうのは難しいでしょう。
介護現場も同じことが言えます。人数も足りていて、スタッフにも余裕があるから、人に優しくできるということもあります。余裕がなく、人数もきちきちだから、しんどくて大変で…。もともと志があって目指した仕事なのに、やる気がなくなってしまう、ということがあります。それは人の資質ではなく、仕組みに原因があるんですよね。仕組みって大事だと思います。

違いから新しいものを生み出すのが対話

大阪本町にあるフューチャー・ファシリテーション カフェ。
――会議の環境面で気をつけることはありますか。
大きい窓があって外からの光が入ってくるところが、私は好きです。そのほうが自由な気持ちになれるとか、アイデアが出るというか、そういうメリットがある気がします。
この前、尾和恵美加さんというBulldozer代表取締役をしている女性に会ったのですが、その人がすごく面白い方なんです。
独特の暮らしをしていて。車に住んでいたこともあるようです。大企業を辞め、「0から1を生み出すアート思考」ということをやっている方です。彼女が、社長になる人の考え方を学ぼうと、6人の社長の家に泊まりにいったんです。そうすると家に光が差し込むとか、大きな窓があるのが共通点だったそうなんです。そういう人はアイデアも独創的だしエネルギーにあふれている。あと瞑想しているとか、そういう共通点があったみたいなんです。
「大きな窓があって光が差し込むっていうのが共通点だったんですよ」というのを聞いて、やっぱりと思いました。窓が大きくて光が差し込むというのは大事なのかなと思ったところでした。
――今後、組織、もしくは個人としてやっていきたいビジョンがあればお教えください。
ビジョンはやはり教育に対話を入れていくっていうことをやっていきたいです。最終的には、ステークホルダーみんなで未来を描く、シナリオプランニングをやるのが大きな夢です。
地域のみんな、学校のみんなと、日本中で未来シナリオを描くということができたらいいけど、野望が大きすぎますかね(笑)。でも、地域のみんなで「こういう未来にしていきたいね」と未来のシナリオを描いていけたらいいなって思います。
――学校教育からやらなきゃダメだと感じた一番の理由は何ですか。
初めに思ったのは、中学生と話をしたときに「将来何になりたい?」って聞いたら、「お金持ちになりたい」とか、「大企業に入る」といったことを言っていたんです。これって多分大人が言うからだろうなって思いました。
子どもがもっと独創的で、もっと自分で未来を考えられるようになってほしい。そういう思考を身につけられたらいいと思ったんです。わたしたち大人も変わっていく必要もありますが、子どもたちが変わっていくほうが早い。
私が教育を受けたときも、いい高校に入りましょう、いい大学に入りましょう、大きい会社に入りましょう。それが幸せですよ、と教えられてきた。そうだ、とみんな思っているから、自分で未来をつくれるって思ってないんじゃないかなと思って。
でも、これからの世代は自分たちでつくっていかなきゃいけない。同じことを勉強して大学に入って大企業に入っても幸せになっていけるとは限らない時代ですよね。
私も大学では単位を取るためだけの勉強しかしていない。子どもたちにはもっと自分たちでつくり出してほしいなって思ったのが理由ですね。
教育では、アクティブラーニングも始まっています。ただ、現状は、単にグループで、お話をしているだけになっているところもあります。「対話」って実は難しいんですよね。ただお話するだけじゃないんです。
――どう教えていいかというのがありますよね。
対話は自分の意見もちゃんと言ったうえで、相手の意見も受け入れて、その違いを認めることからスタートします。その違いの中から新しいものを生み出すのが対話だと思っています。まさにこれからの時代に必要なリーダーシップだと思います。
相手の意見も「そうだね」って受け入れられるのは大事ですが、まずは自分の意見を持ち、発言するということが大事。そのためには、自分の意見をもつための知識を持たないといけないし、それを解釈する力も必要です。そこをサポートできるファシリテーターを増やしていきたいです。
実は、「対話」の前に「ディベート」ができないといけない、という声もあります。ディベートというのは、意見を戦わすのが目的ではなくて、全然違うほうから考えてみるのが目的のひとつなんです。だから、多面的に物事が見えるようになるということがすごく大事。さらにその先に、対話がちゃんとできるようになるんです。
人びとの対話を促し、そこから新しい視点でものごとが捉え、新しい未来を共に創造していける、そんな仕事を続けていきたいと思っています。

文・鈴木涼太
写真・大井成義

原 由紀子(はら ゆきこ)フューチャー・ファシリテーション合同会社
フューチャー・ファシリテーション合同会社 ファシリテーター。大学卒業後、大手英会話学校に勤務、営業管理、採用、人材育成に従事する。「人財づくりが組織づくりの鍵」と実感し、2007年に研修講師、ファシリテーターとして独立。一般企業、行政、教育分野でファシリテーション、体験学習を活かし、人材開発を手がける。2016年フューチャー・ファシリテーション合同会社に参画、「人びとの違いが活かされ、その人の願いや大切にしていることを互いに尊重できる社会」を目指し、未来を共創造するプログラム「シナリオプランニング」を提供し、人材開発、組織開発に取り組んでいる。特に2019年からは、「シナリオプランニング」の担当として大学で教鞭をとり、教育分野で「共創造力育成」の活動に力を入れている。

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