議論する前の準備運動【第6回】

議論する前の準備運動【第6回】人財育成家 沖本るり子

こんにちは。「5分会議」🄬を活用した人財育成家の沖本るり子です。

会議が始まって、参加者全員で名札つくりということが主体性を生む工夫の第一歩ですが、次に、参加者全員の時間の意識づけがあります。

自己紹介で時間感覚をつかむ
名札づくりが完了したところで、会議の始まりです! まずは自己紹介から行います。名札づくり同様、自己紹介も「5分会議」🄬のたびに必ず行います。全員が初対面の場合は、部署と名前、普段の担当業務などを順番に話してもらえばいいでしょう。
ここで大事なのが、全体進行役の人はキッチンタイマーで時間を計ること。制限時間は一人1分程度が目安です。さらにキッチンタイマーが鳴り出したら全員で思いきり拍手をし、話し手は途中であっても話を切り上げるのがルールです。すぐ次の人に回しましょう。
毎回自己紹介をするのは、参加者に時間の感覚をつかんでもらうためです。なぜなら、このあとに続くミニ会議も時間が決められた中で、発言をまとめなくてはいけないから。自己紹介は、ミニ会議の予行演習なのです。
そして聞き手のみなさんは、話が終わっていなかったとしても拍手を躊躇してはいけません。拍手には「お話ししてくれてありがとう」と「もう時間ですよ!」という2つの意味が込められています。話し手は自分の意見を最後まで言えなかったことや、時間内に収められなかったことに若干の負い目を感じているはずです。ですから拍手喝采にして、話を切り上げやすくしてあげるのです。
自分の声より拍手の音が勝っていたら、無理に話そうとはしないでしょう(一部の人はそれでも話そうとしますが)。途中だからといって安易にその人の発言時間を延ばしてしまうと、その後もズルズルと時間を無視して話す人が出てきてしまいます。ですからここは、ぜひ毅然とした態度で拍手をしましょう。
全体進行役は、あらかじめ参加者に、話し終わっていなくても時間になったらやめること、全員の拍手喝采で終えることを伝えておきます。この一言があるだけで、参加者は思いきって話を切ることができます。
自由なお題で組織活性化
部門会議や定例会議など参加者同士が顔なじみの場合は、部署や名前を改めて言う必要はありません。制限時間を15~20秒程度にして、「お題」を与えてコメントしてもらうのもよいでしょう。
お題は基本的に何でも構いません。「仕事や会社で最近気になること」でもいいですし、「休日の過ごし方」や「最近ハマっているランチのお店」など、個人的なことでもいいです。コメントから気づきを得たり、人となりや意外性が見えたりするお題がおすすめです。
自己紹介の時間は、意外なことに組織活性化につながります。というのも、コミュニケーションがうまく図れない関係は、相手のことをよく理解できていない段階で見られます。「この人にはこういうところもあるんだ」と、相手の性質に気づくと、工夫して接することができます。とくに共通の話題や趣味が見つかると、人は親近感を持つもの。なんとなくぎくしゃくしていた関係が、一気に親しくなるということもあるのです。
ちなみに、お題は事前には伝えず、当日、会議の席で発表します。その場で考えてすぐに伝えるアドリブ脳の状態にすることが、会議本編の活発な議論にもつながるからです。
方向性を揃えよう
私たちは同じ言葉に対する捉え方や感覚が異なっており、その程度には個人差があります。たとえば「子ども」について話そうとなったとき、あなたは「子ども」から何を思い浮かべるでしょうか?生まれたばかりの赤ちゃんを思う人もいるでしょうし、中高生など思春期の子どもたちを思い浮かべる人もいるでしょう。なかには、高齢の親に対するミドル世代の子どもとして捉える場合もあります。
また子どもの話題は育児に教育、健康、おもちゃや遊びなどの流行、食事(食育)、それに保育施設不足やシングルマザーと相対的貧困などの社会問題に至るまで、非常に多岐にわたります。これだけ考えが多様な状態で、話し合いを始めたらどうなるでしょう?お互いの頭の中は「?」でいっぱいになるはずです。つまり議論を進める前に議題や言葉の定義を示し、方向性を揃える作業が必要だということです。
カタカナ言葉は避けよう
ミニ会議を始める前には、会議の目的と目標、またルールや議論に必要な情報の共有と言葉の定義を行い、参加者同士の理解に齟齬が生じないようにします。
仕事上の会話でもよく用いられるカタカナ言葉ですが、実は日本語で表現しにくい言葉を示すのに便利である一方、曖昧な解釈になりがちでズレをもたらす要因になっています。
ですから私が「5分会議」🄬の研修をするときは、極力、カタカナ言葉は使わないことを決まりにし、冒頭で説明しています。社内で共通言語として十分に意思疎通が図れている場合や、商品名や外来語などカタカナでないと逆にわかりづらい言葉を除いては、できる限り日本語を使うようにしましょう。
たとえば「この前ペンディングになっていたAの件だけど、こっちでイニシアチブを握れば先方とコンセンサスを取れるはずだから、○日にフィックスってことで!」
……って、なんだか某芸能人みたいな話し方ですが、これも「この前保留にしていたAの件も、こちらが主導権をとって働きかければ、先方とも合意に達するはず。だから○日に確定させましょう」と、カタカナ言葉を使わずに説明できることです。
ほかにもシチュエーション→状況、ジョイン→参画する、アサイン→割り当てる、イシュー→課題、クロージング→(商談などにおいて)契約を決断させる、コアコンピタンス→他社にはない決定的な強み、フィジビリ→事前調査……など、いくらでも言い換えることはできるうえに、日本語のほうが明確になる傾向があります。

※本記事は『期待以上に部下が育つ高速会議』から抜粋・再編集したものです。

沖本るり子(おきもと るりこ)
「5分会議」🄬を活用した人財育成家。1分トークコンサルタント。株式会社CHEERFUL代表取締役。「人財育成と組織改革」を柱に、企業向けコンサルタントや研修講師を務めており、台湾(労働部)主催の講演会でも登壇した。「5分会議」🄬はRKB毎日放送「今日感テレビ」で紹介された。著書に『相手が”期待以上”に動いてくれる! リーダーのコミュニケーションの教科書』(同文舘出版)、『生産性アップ!短時間で成果が上がるミーティングと会議』(明日香出版社)、『期待以上に人を動かす伝え方』(かんき出版)、『期待以上に部下が育つ高速会議』(かんき出版)など多数。
株式会社CHEERFUL

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