「笑い」がなくては コミュニケーションではない【第4回】

「笑い」がなくては コミュニケーションではない【第4回】株式会社モダン・ボーイズ 竹中功
 
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コミュニケーションには「笑い」が必要。

私の持論である。

「笑いがなくてはコミュニケーションではない」ということで「笑門来福」だ。

大阪府東大阪市の枚岡神社では毎年年末に新しい注連縄(しめなわ)を鳥居に掛けるが、その時、その下で大声で笑い倒すイベントがある。これは「注連縄掛神事(通称:お笑い神事)」と呼ばれ、「1年間の色々な出来事とともに笑い笑って心の岩戸を開きましょう」というものだ。

宮司さんの厳かな笑い声(?)に始まって、ついには巫女さんも参拝者も全員が境内で笑い倒している。動画サイトにもあがっているので見てもらいたい。見ているだけでこっちまで笑えてくる。「笑い」は「笑い」を誘うのだ。そして色んな不安も忘れさせてくれる活力の源でもある。

そういう意味でも、コミュニケーションの話題のなかに「面白い」ことや「笑える」ものが含まれると、良い人間関係がスピーディに築かれる。

ぜひ進んで、笑顔で話し、進んで笑うことをお勧めする。その「お笑い神事」ではないが、無理矢理でもいい。笑いはじめると、本当に楽しくなってくるものだ。

最近、笑っていますか?

色々な場面で講師などをしている時に「最近、声をあげて笑ったことがありますか? それはどんなことでしたか?」などと質問する機会があるのだが、総じて男性は「最近、笑ってませんね、この20年ほど」といって私を笑わせてくれるが、実際に聞くと、「本当に自分の子どもが小さい時に笑ったぐらいかな?」などという。声をあげて笑った記憶がないそうだ。

対して女性陣はさすがによく笑っているようだ。

「スーパーのイケメン店員をおだてて値切ってみたんよ、アカンかったけど」と、ある女性が笑いながら話していた。先日、私が見た風景だが、大阪駅前のデパートで「孫にランドセルをプレゼントしたいねんけど、一番安いのなんぼ?」って聞いたおばちゃん二人、「6万円ほどのが人気ですね」と答える店員さんに、「私でもそんな高いカバン、持ってへんわ」といって、現物も見ずに笑いながら去って行った。恐るべき大阪のおばちゃん。値段を聞くのはタダ、笑って済ませる。女性はいつでもどこでもよく笑うのだ。

楽しい気持ちは共感を生む

「お笑い」を定義すると何ページあっても誌面が足りないのだが、コツをお伝えするといえば「他人と話す時に面白いと思うことをいうより、自分の失敗談をする。ユーモアを織り込む」などがあれば他人に楽しい人だと思われやすい。

この「楽しい気持ち」は安心や信頼、そして共感できる人という認識を持ってもらえ、他人との距離がすぐに近くなるのだが、声を上げて笑うということは脳内麻薬ともいわれているエンドルフィンの分泌を進めるそうだ。これは脳内の内在性鎮痛系に関わり、多幸感をもたらすといわれている。

何なら吉本興業の芸人のギャグをいってみたり、ちょっとおっちょこちょいなことをいっておどけてみせたり、たまには小さな失敗やもの知らずの自分を恥ずかしがらずに見せたら、親近感もわき、「誰にも失敗はある」という共感も覚えられる。

実は私は、野球やサッカーなどのスポーツに疎く、知っていることといえば野球は1チーム9人、サッカーは11人でやるということぐらいだ。サッカーのJリーグがどうやってJ1からJ2に落ちたり上がったりするのかというルールも知らなかった。

ミスや失敗を「自分は知らない」と照れずに認めることは、いい「自己表現」だといえる。

立場が上の者であろうがなかろうが、弱点をさらすことによって人間味を感じとってもらうことは、知識やいいところだけでなく、無知や失敗をも表現して共感を呼ぶ。

そういう意味でも、必要や不必要を問わず、会話のなかに「笑い」があることはとても意味があるのである。知らないことは知った人に教わればいいし、興味があることに出会ったら何歳になっても学習をすればいい。

緊張の緩和で「笑い」が生まれる

私が大学生の時、ある雑誌のインタビューで二代目桂枝雀に直接お会いした時に聞いた「緊張の緩和があった時こそ笑いが生まれる」という理論は、吉本興業に入社後、何度も目にした。「お笑い」は舞台の上でまず「緊張」を設定して物語を進め、その後、「緩和」を与えて、オチをつけるということが多い。

そういう意味ではダウンタウンの年末恒例『笑ってはいけないシリーズ』においては、タイトルからして「笑ってはいけない」のである。ということはそういう緊張感のなか、色んな芸人やタレント、俳優やスポーツ選手らが笑いの刺客人として登場し、まさに彼、彼女らが「緩和」の役割を担っているというわけである。

お笑いをネタにしよう

そこで私なら、何か共通の話題でもネタにして、関係を柔和にしていくだろう。吉本興業に長年勤めたからというわけではないが「お笑い」をネタにするといいと思う。

「最近、どのコンビの漫才が好き?」
「吉本新喜劇では誰が好き? どんなギャグが好き?」
「花月で生の漫才や落語、見たことある?」

なんてことから会話を始めると、人間間の距離が縮まり、一緒にいて楽しい人物だと認識が変わるようになる。

この「楽しい人間」と思ってもらうには、政治や経済、歴史などの話から入ってもなかなかたどり着けないが、「お笑い」の話題からだと罪もないし、楽しい話題を話すわけだから、楽しい会話になり、ひいては「楽しい人間像」が感じとられ、良好な関係を生むことになるのだ。

竹中 功(たけなか いさお)モダン・ボーイズ
株式会社モダン・ボーイズCOO。同志社大学卒業、同志社大学大学院修了。吉本興業株式会社入社後、宣伝広報室を設立。よしもとNSC(吉本総合芸能学院)の開校や心斎橋筋2丁目劇場、なんばグランド花月、ヨシモト∞ホールなどの開場に携わる。コンプライアンス・リスク管理委員、よしもとクリエイティブ・エージェンシー専務取締役、よしもとアドミニストレーション代表取締役などを経て、2015年退社。現在はビジネス人材の育成や広報、危機管理などに関するコンサルタント活動に加え、刑務所での改善指導を行うなど、その活動は多岐にわたる。著書に『謝罪力』(日経BP社)、『よい謝罪 仕事の危機を乗り切るための謝る技術』(日経BP社)、『他人(ひと)も自分も自然に動き出す 最高の「共感力」』(日本実業出版社)がある。

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