決めるべき人が決めないから、会議がムダになる【スマート会議術 第19回】

決めるべき人が決めないから、会議がムダになる【スマート会議術 第19回】バレオコンマネジメントコンサルティング パートナー/アジアパシフィック代表 太田 信之氏

ソニーから多国籍コングロマリット企業のGEに転職し、経営コンサルティングファームとして、世界を舞台に活躍する太田信之氏。現在、太田氏がパートナー、アジアパシフィック代表を務めるバレオコンマネジメントコンサルティングは、ヨーロッパ、北米、アジアに拠点をもつグローバル企業だ。社名の「バレオコン」には、「お客さんと一緒に元気になる」という意味が込められているという。

長年グローバル企業に身を置き、世界各国のさまざまな企業の会議を見てきた太田氏は言う。「会議に規模や文化は関係ない。本質的なことは世界どこでも同じ」と。自らの経験から、会議のあるべき姿、日本企業にありがちな会議の問題点と改善案を語ってもらった。

日本のムダな会議を象徴する「スパーリング会議」

――ムダな会議が多いと悩む会社の実情を、どう見られていますか。
あまり文化論にしたくはないのですが、日本の会社は「意思決定」をしたくないという人が多いですね。会社にはだいたい決裁権限規定があって、部長が一人で決める権限をもっていたりするんです。でも、部長が自分の上司である本部長と本部会議をやるとします。すると部長が「こんなことを考えているんですけどね~」と部下につくらせた資料を見せて話をする。決定したことを報告するわけじゃないから、本部長も「いや、これはこうしたらいいんじゃないか」って言い出すんです。で、部長は「本部長にこう言われたよ」って戻ってくる。その本部長会議の場というのは、本来は決定権限をもつ部長が「これは私が決めたことなのでやろうと思います」と、言わなければいけないんです。
もちろん決定する前に調整や根回しをするのは必要です。一見、調整や根回しは日本的な慣習と思われがちですが、意外に外資系の会社のほうが丁寧にやっていたりするんです。
問題は、決めてもいいはずの人が決めずに生煮えのものをもってきてみんなで議論して、行ったり来たりすることなんです。そうすると本当に何のための会議かわからない、多重構造の会議になってしまうんです。
たとえば、「スパーリング会議」というものがあるのですが、部長が部下の経験になるからと言って、課長や次長に同席してもらう。本部長に話す練習として部長主催のスパーリング会議をやっているんですよ。
本部長会議でしくじらないためにやるだけだから、結局誰が決めるかわからない会議になるんです。会議資料の作成を指名された課長や次長が、それをさらに部下に振る。その部下との間でもまた同じような会議が行われていて、膨大な時間が使われる。部長がさくっと決めればいい内容を、部の全員で「あーでもない、こーでもない」と議論するんです。
――それは責任を負いたくないからですか?
そうだと思います。一言「決めました」と言えば終わるかもしれないし、文句を言われても、「それって営業部が決めることですよね」と言えるんですよ。決める人が決めない。これが一番多いんじゃないかと思います。
――そうすると「意思決定」まで時間がかかって、なかなか決まらないと。
最後に「本部長がいいって言っていたから、これでいこうよ」って。でも本来、本部長の仕事ではないんです。「これじゃ俺の仕事ができないじゃないか。お前、仕事していないぞ!」と言わないといけないんですが、本部長も相談されるとうれしいから、つい口を出してしまう(笑)。

「日本人だから」という文化ではなく、システムの問題

――「意思決定」をしたがらないのは、日本特有の文化なのでしょうか。
最初に文化論にしたくないと言ったのはまさにその点で、日本でも急成長しているスタートアップの多くはそうならないんです。バイトの人でも「これおかしいね、こうしましょうよ」って言って、「いいねそれ。お前やっておけよ」って普通にやっているんですよ。
日本人でもそういう環境に行けば意思決定ができないわけではない。「日本人だから」というのは、逃げ口上です。ヨーロッパは自分で考えて意思決定をしないと進まないし、そういう土壌があるのかもしれませんが。
――日本人もヨーロッパで働けば、ムダな会議はしないと?
日本企業の社員でも、ドイツやフランスに行くと、彼らと同じペースで仕事して、バケーションも取って、あまり残業しなくても問題ない。それは優秀かどうかじゃなくて、その環境に合わせて立ち回っているだけなんです。その会社のシステムに合わせていくと、残業をしなくても仕事はできるんです。余計な会議もないし、あと「決めること決めたのでこうしました」「そうかわかった。じゃあ受け取っておくよ」という流れが機能している。欧米では一人一人の責任がある程度明確になっているというのはありますね。
――組織の中の一個人の能力というよりも、その環境のシステムづくりが重要だと。
僕が勤めていたGEでは、買収した日本企業にGEのシステムを取り入れると、ちゃんと変わりました。だから、意思決定をしないというのは、単にシステムと出来上がった企業文化の問題だと思います。

日本のほうが上司に逆らえる土壌がある

――日本的な合議制と欧米的なトップダウン式では、それぞれどんなメリットとデメリットがありますか。
合議制は、下の人の意見が取り入れられることで、組織の納得感が高くなるメリットがあります。実は日本の会社は中間管理職からトップに反対ができるんです。「部長はそう言っているけど、俺は納得しない!」という人がいても、日本の会社では許される。米国の会社ではまずあり得ないし、ヨーロッパの会社でも自分のボスと議論した後に、決めたことと違うことをやったら、瞬殺とまでいかなくても、半年以内にその人は外されていると思います(笑)。
――一長一短ですね。ぐるぐる回って誰が責任者かわからないのも問題ですし。
トップダウン式の欧米の会社のヒエラルキーのほうが意思決定は早いけど、上の人に反対ができない。日本の会社は比較的上の人に自由に発言できるし、1回決まっても反対できる柔軟性は良いところなんだと思います。

会議のあり方を考える前に、コミュ二ケーションのあり方を考える

――会社の成長にとって、会議はどこまで効率化できるのでしょうか。
人が集まって、WHAT(何をすべきか)とHOW(どうすべきか)を決めて会社を動かしていくためには、コミュニケーションしないと何も始まりません。会議に限らず、普段から話ができているか、本当に議論しないといけないところで議論しているか、まったく違う意見を聞けているか。コミュニケーションをして理解しあっているかどうかが重要であって、会議をどうするかは、その大前提で考えなければ意味がありません。意思決定のやり方が、会議という場に象徴されている以上、会議はなくならないし、必要だと思います。問題は、会議をどうやってうまく使うかですね。

情報共有の会議は、なくても支障はない

――ムダな会議をなくすためには、やはり会議の数を減らしたり、時間を短くしたりすることは必要ですか。
本当はただ減らせばいいというわけではないのですが、現状は多すぎるのも事実です。とりあえず思い切って減らしてしまうのもいいでしょうね。そのときに、個々の会議やポジションを決めるなど、あるべき姿を考えておく必要はありますが。
――情報共有の会議についても同様ですか。
情報共有の会議は、特にムダが多いと思いますね。情報共有は大切ですが、それは日々クオリティの高いコミュニケーションを必要な人たちがしていればよいのです。会議で行う必要がある情報共有は、本当に限定的です。仕事の結果に大した影響はないんです。
情報共有の名のもとで集まって、意見交換をしていればまだいいですが、メールやチャットなど他の作業をしながら会議に出ている人もいる。これは本当にムダだと思います。

ファシリテーターは、自分がやりたいことをやってはいけない

――会議を円滑に進めるために、ファシリテーターに一番必要とされることは何ですか。
ファシリテーター自身のやりたいことが会議に反映されすぎてしまうのはダメですね。もともとファシリテーションの語源は、「ものごとを簡単にする」「ときほぐす」「やさしくする」という意味があるんです。そんな役目の人が、出しゃばって会議の場を混乱させては本末転倒です。
結論に落とそうとするあまり、ファシリテーターが主導で引っ張りすぎると、納得感も高まらないし、良い結果も生まれません。参加者が自分の考えを自由に発言できると思うことが、最低限必要だと思います。
――最後に、太田さんにとって、スマート会議とは?
必要最低限の時間で最も高い目的が達成できる会議です。

――ありがとうございました。
Profile:太田 信之(おおた のぶゆき)
国際基督教大学にて社会科学専修。同大学院行政学研究科にて行政学修士取得。英ロンドンスクールオブエコノミクス産業関係学科博士課程にて、組織論・社会心理学を研究。株主、経営者から中間管理職、生産ラインまで、組織内の幅広い階層で「フューチャープルーフ(未来への証明)」をテーマに顧客との共創型コンをサルティングを行う。最近ではテクノロジーと経営、イノベーションと新規事業、グローバル化とオペレーションモデル人財、プロセス(バリューチェーン)変革などのテーマが増えてきている。著書に『外資系コンサルが実践している 英語ファシリテーションの技術』(日本経済新聞出版社)がある。

文・鈴木涼太
写真・佐坂和也

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