「和」「場」「間」によって、日本が得るもの、失うもの【スマート会議術第45回】

「和」「場」「間」によって、日本が得るもの、失うもの【スマート会議術第45回】バレオコンマネジメントコンサルティング シニアマネージャー アーサー・ウッドラフ・バスティン 氏

バックパッカーとして来日したのを機に、日本と海外の橋渡しのビジネスに携わることになったアーサー・ウッドラフ・バスティン氏。大学では物理学、大学院ではMBAを修得。以来、電機メーカーや製薬会社など数多くのグローバルプロジェクトを手がけてきた。

バスティン氏は、ビジネスコンサルタントとして活動する傍ら、東京を拠点に日本特有の文化である「和」「場」「間」をテーマにワークショップを開催している。日本の会議は、まさにこの「和」「場」「間」の文化を象徴する場、だと氏は言う。

長年、日本企業の文化を支えてきた「和」「場」「間」は、はたして今日のグローバル社会において、吉と出るのか凶と出るのか。その行方を尋ねた。

缶詰工場で日本人と働いたのがきっかけで日本へ

――どんなきっかけで日本を拠点にビジネスをされることになったのですか。
大学の夏休みにアラスカの缶詰工場でアルバイトをしたとき、毎日、日本人と一緒に働いたんです。もちろん私は日本語が話せませんでしたが、すごく刺激的な環境だった。それで夏休みが終わってから、日本語の勉強を始めました。大学では物理学を専攻していたのですが、日本語を勉強するのはすごくリラックスできる。漢字は難しかったですが、物理より楽しかった(笑)。
大学卒業後、私は就職しないで、日本にバックパック旅行に行きました。そのまま6畳の部屋を借りて、日本に居着いてしまいました(笑)。以来、英語講師や新聞社でのアルバイトを経て、ブリヂストンに就職しました。ブリヂストン本社国際技術部では主に米国支社との橋渡しのような仕事をしていました。それが、いまのコンサルティングの仕事につながるきっかけでした。

会議における「和」「場」「間」

――コンサルティングの一環として行われているクロスカルチャートレーニングについてお教えください。
クロスカルチャートレーニングは、ブリヂストンにいる海外の人たちにブリヂストンの文化や技術を理解してためのコミュニケーションプログラムです。年2回、20人ぐらいで、1~2週間行っていました。その中で日本の文化である「和」「場」「間」について理解してもらう目的のものでした。
このプログラムを3年間行ってからフルタイムのタイヤ設計開発技師と技術リエゾンに転任しましたが、私はいつも「和」「場」「間」のコンセプトを使って国際コミュニケーションを推進してきました。そして5年前から、新たに独自のクロスカルチャートレーニングをデザインし、提供しています。
――「和」「場」「間」は具体的にはどんな内容ですか。
日本人の方はもちろん理解できると思いますが、「和」は平和。日本人は問題を解決するときにあまりケンカをしない。お互いの考え方を尊重し、批評しない。逆にアメリカ人は、問題を解決するために批評することが期待される。それは文化の違いです。
日本人は同じ方向を向いて問題を解決する。方向を調整しながら解決策を探る。スポーツにたとえるとボウリングです。一方、アメリカ人はテニスのようにボールを打ち合って問題を解決します。アイデアがあって、「そのアイデアはダメです。ダメです」と。そして、ラリーをしながら問題を解決していきます。
日本人は文化的に、アイデアがあっても、「アイデア=自分」になるので、そのアイデアを誰かに批評されると、自分自身が批判されたと受けるんです。私のアイデアが悪いから、私が悪いという考え方がある。
アメリカ人は、アイデアがあれば、批評をしてもアイデアに批評をしている。人を批判しないという考え方。それが違います。そういう考え方を身につけないと、欧米諸国との会議はやりにくいと思います。それを認識しておくことはすごく大事です。
「和」のいいところはたくさんありますが、日本人は「和」を重んじるとどうしてもグループシンキングになりがちです。会議で偉い人がある方向のことを言うと、他の人は違う意見をまず言わない。遠慮してしまう。グループに合わせることを重視するあまり、最適な結論、解決にいけないときがあるんです。 

ハイコンテクスト文化とローコンテクスト文化の違い

――「場」には、どういう意味が込められているのですか。
「場」は英語で言うロケーションです。「場」には、ハイコンテクスト文化とローコンテクスト文化のコミュニケーションがあります。
ハイコンテクスト文化は、文脈の共有性が高いことで、伝える努力やスキルがなくても、お互いに相手の意図を察しあうことで、なんとなく通じてしまう環境のことです。
ローコンテクスト文化は、文脈の共有性が低いため、直接的でわかりやすいシンプルな表現を好みます。また寡黙であることを評価しないため、質疑応答などで直接的に答えます。
日本人は「場」によって何を言うかが違うんです。ハイコンテクスト文化の日本人は「場」、つまり状況によって何を言うかが変わります。ローコンテクスト文化のアメリカ人は、「場」を無視します。どこにいても、誰と話をしても、目的と考え方は同じように言う。
日本人は会議中に言うことと、飲み会で言うことが全然違う。会議中に何も言わなくて飲み会で「ノー」と言ったら、アメリカ人はイライラする。「なぜ会議中に言わなかったの?」と。日本人は「場」の空気を読むんです。何も言わなくてもいろいろ伝えるんです。
日本は長い歴史があるからそれができる。米国は歴史が短い上に様々な文化背景を持つ移民の国なので、共通のコミュニケーションスタイルは言葉に頼らざるを得ない。それが大きな違いです。それが「場」の考え方です。
――「間」はどういう考え方ですか。
「間」は石庭のように、空間や空気が大事という考えです。逆にアメリカ人は会話をするときに、静かになったり、会話の「間」があったりすると、誰かが話す。「間」があまり居心地よくない。だから欧米の会議は、みんなケンカするみたいに話すんです。
たとえば、私が日本に来てブリヂストンの偉い人と会議をしたら、よく「しーん」とすることがあったんです。みんなが何を考えているのかわからない。「間」がいっぱいあったんです。最近は昔ほどではなく、「間」は少なくなっていると感じます。でも、海外と比べると、まだ日本人は「間」があります。

いまは「和」「場」「間」が通用する時代ではない

――いま、日本の生産労働性は、世界的に見てもかなり低いと言われています。「和」「場」「間」は、企業の成長戦略において障害になっていると思いますか。
バブル時代は、生産性やQCサークル、トヨタのカイゼンなど、いろいろ世界の最先端を走っていたものがあったんです。それらは「和」「場」「間」とすごく合っていたと思います。その時代は、世界中で使われて、すごく役に立ってきた。
日本はいまも経済的にわりといいと思います。東京に住んでいてもすごく快適な暮らしが送れます。みんな普通に学校を卒業して仕事ができる。だから「失われた20年」と言われるものの、あまり危機感がない。「いまのままでキープしていこう」と思っている人が多い。
でも、日本はもっとアグレッシブにならないとグローバル社会についていけない。グローバルリーダーにならないとちょっと大変です。日本だけを考えていたらうまくいかないと思います。
「和」「場」「間」を重視するボトムアップの日本の考え方は、ブレイクスルーするアイデアが出ないんです。少しずつ良くなるんです。GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)みたいに世界市場を変えるようなアイデアは出てこないんです。それは1つの問題ですね。
日本人はイノベーション(変革)はできるけど、ディスラプション(破壊)はあまりしない。ディスラプションは、いままでのものの価値がなくなり、新しいものを生み出す。少しずつ同じものを改善するのではなく、まったく別のものを生み出す。そして、そういうディスラプションの製品が出るまでの期間が短い。
ディスラプションには、「和」「場」「間」が合いません。いまディスラプションマーケティングがもっとも行われているのは、IT業界です。去年よりもう少し良い製品を出すより、まったく違うものを出す。日本にはそういう特徴がいまはない。全然ないわけではないが少ないです。
高度経済成長期やバブル時代は「和」「場」「間」がよく合っていたんです。でも、現在のディスラプションは、サイクルが速くなっている。製品のライフサイクルは、クルマだったら2~3年。コンピュータやモバイルのイノベーションのサイクルはもっと速い。

いまの日本は国内に集中しすぎて鎖国状態になっている

――国際化の必要性が叫ばれるものの、日本人の海外留学の人数も年々減っていますね。
アイデア交換が減っているのは問題の1つです。特に米国への留学生はこの10年で半分に減っています。いまはみんな国内で集中すれば十分。留学費用の高騰もありますが、海外に無理やり行かなくてもいい。大変だから東京で十分。あまりアグレッシブになっていない。それが大きいと思います。
しかし、日本国内だけ、日本文化だけに集中しすぎるとグローバルなアイデア交換が遅れます。日本は、いま国内に集中しすぎて鎖国状態になっています。欧米もアジア諸国ももっと世界とうまく交流しているから、いろいろなアイデアが出てくる。アイデアを交換する環境を増やすためにも国際交流はすごく大事です。そういうアイデアの燃料が必要です。国際化しないと、アイデアのプールが小さくなっていくと思います。

「和」「場」「間」の日本らしさは残すべき

――国際化の遅れは会議にも象徴されていますか。
はい。日本人は主張することを遠慮しがちなので。ただ、日本の文化の基盤はすごく強い。文化は大きく変えないほうがいいと思います。基盤が一番大事ですから。でもたまに、「和」「場」「間」のために、考えていることを言わないと、アイデアが出ないです。そういう問題もある。
――「和」「場」「間」の日本らしさは残すべきだが、同時に世界で生き残っていくためには不利でもあると。どうすればよいのですか。
まずは、欧米との異なる点を認識することです。例えば、問題の解決のプロセスの違い。日本人から見れば、外国人の議論はケンカのように映る。でも、実際には感情的なケンカではありません。テニスのようにボールを打ち合っているのです。問題解決のための一般的なコミュニケーションプロセスなんです。そうした認識を持つことが必要です。
つまり、日本人のグローバルな問題解決にあたってのポイントは、意見をより非個人化し、反対意見も建設的意見と捉えてみる[非-和], 場所や状況への依存度を低くして、より会話でコミュニケーションをとる [非-場], その上で、無秩序(同時多発的)なチームディスカッションをする[非-間]。 また、実体験に優るものはありませんが、コーチングやトレーニングを活用することでそうした能力や自信を高めることもおおいに可能です。
日本の現状を見る限り、グローバリゼーションにはまだ時間がかかると思います。ディスラプティブ=現状を打破する画期的なアイデアやグローバルリーダーシップ能力がほとんど育っていないから。でも、日本は文化のレベルがすごく高い。今は低迷していても、10年後はまた日本の強みが出るかもしれない。日本の「和」「場」「間」のニーズがあると思います。何でもそうですが、物事にはサイクルがあります。無理やり変えようとせず、自分たちの基盤をしっかり守って、その上で起こることを調整していければいいと思います。
Arthur Woodruff Bastian(あーさー うっどらふ ばすてぃん)
バレオコンマネジメントコンサルティング、シニア・マネジャー。ブリジストンでのR&Dエンジニアを務めた後、マッキンゼー&カンパニー、PRTM(現PwC)でハンズオンスタイルのコンサルティングを行う。シニアマネジメントと密に関わりながらグローバル企業のオペレーション変革を行う。製品開発とローンチエフェクティブネスのエキスパート。ロジスティクスやコスト改善にも精通。物理学学士、コーネル大学MBA。 日本在住30年。

文・鈴木涼太
写真・向山裕太

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