社長の仕事は人が活躍するフィールドを用意すること【スマート会議術第66回】

社長の仕事は人が活躍するフィールドを用意すること【スマート会議術第66回】L.MASTERPLAN 稲垣 耕治 氏

東京で商社マンとして働いていたが、母が倒れ、急遽実家の印刷会社を継ぐことになった稲垣氏。

東京の商社と地方の印刷会社ではすべてが違っていた。しかも、印刷業界は不景気の真っ只中。そして、父親まで入院。自分には印刷の知識はまったくない。みんなに頑張ってもらうしかない。いつかは兄が跡を継ぐのだから、まず組織を強くして兄に渡そう。そう決意した。

そこで稲垣氏が出した結論が「会議」だった。会議を変革して社員を育成する仕組みづくりを徹底的に考えた。6年で新社屋を建設、特許を使って3億円の商材を開発し、軌道に乗ったところで兄にバトンタッチ。そして、家業で培ったノウハウをもとに起業することになる。

会議コンサルタントとして活躍する稲垣氏に、自らの信念とする「社長と社員の幸せな関係と会社の継続」について語ってもらった。

目次

現場の会議は合議制であるべき

――GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)に代表されるように21世紀の世界のトップ企業は、カリスマ経営者のトップダウン経営が主流に見えます。日本のような合議制を主とした経営は時代遅れなのでしょうか。
経営陣の間ではトップダウンでいいんです。ソフトバンクの孫さんやユニクロの柳井さんが合議制に縛られることはない。彼らはいくらお金をつぎ込んで優秀な人を育成したり採用したりしても、ポスト孫やポスト柳井はなかなか出てきません。
しかし、現場の戦術ベースでは、みんなでやれるほうが間違いなくいいです。戦術ベースとは、トップが決めた戦略の範囲内でどうするかを考えて動くことです。それは合議制でやったほうがいいと思っています。また、そうしないといまは生き残れないと思います。
ただ人を増やして会社を大きくするというより、強い会社をつくっていく方向にいくと思います。強い会社をつくっていくためには、やはり組織力や人間性が求められます。
――具体的にはどうやって強い会社をつくっていくのですか。
会社で働く個人にフォーカスしなきゃいけないと思っています。個人にフォーカスした上で、忌憚のない意見をいかに言えるかということだと思うんです。
それが組織の強さだと思っています。もちろん、そういう社風をつくるのは簡単ではありません。まず「お前足りないよな」って言ったら「どこが足りないんですか?」ってカチンときますからね。
組織にはなぜ人がいっぱいいるかと言えば、それぞれの得意な役割があるからです。それなのに、同じ土俵で戦うのはおかしいと思うんです。
基本的に足が速いだけじゃお金はもらえない。だけど、野球場というフィールドがあれば、代走だけで1000万円もらえる可能性もある。経営者は人が活躍するフィールドをつくるのが仕事だと思っています。
会社に個性が生きるフィールドをつくっていってあげるという考えです。それが会議だったり、組織だったり、部署になってくる。ちゃんと各人の個性を見極めていく。その中で忌憚のない意見を言い合えるのが最重要ポイントだと考えています。
オールラウンダーを求めても意味がない。細分化している仕事に対してのエキスパートにならなきゃいけない面がとても多くなってきている。僕はギルドと呼んでいますが、専門家が集まっているのは必ずしも同じ会社じゃなくてもいい。1つの会社にこだわるカタチはなくなっていくと思います。1つの会社に入ることにメリットがなくなってくる。その代わり、利害を明確にしつつ価値観を合わせていくギルドが増えていくのではないでしょうか。

人は直接会わなければ衰退していく

――近年はITの発達でテレビ会議も普及していますが、テレビ会議はどんな役割を果たしていくと思いますか。
テレビ会議は重視しています。自分でも推し進めています。でも、それを初めからやることはほぼないです。大前提として関係性をつくってからしかやらないと決めています。用件だけで終わる場合、テレビ会議はすごく身近で便利です。便利でいいですけど、それ以外のことが必要なときには機能しづらいんです。要は社員教育にはならないということ。情報伝達ぐらいにしかならないのが現実じゃないですかね。
――育成というリアルな会議のほうがいいということですか。
実は、私の会社もスタッフは主婦の人がメインで在宅で働いてもらっています。週に1回来社してもらう程度です。そういうのはどんどん増えていると思うんです。わざわざ会社に来なくてもいい。でも、僕は週に1回は必ず来てもらっています。一緒にご飯を食べていろいろな話をするんです。そういうのがないと、人間って多分うまくいかないんです。
IBMやヤフーなど、米国の大企業が在宅ワークをやめたというニュースが話題になりました。その理由は記事で明確に伝えていませんが、多分うまく回らなくなったんでしょう。1、2年ならいいんです。でも、彼らは5年から10年のスパンでやっているので、そうなったときに劣化していくんじゃないですかね。日本は、まだそういう経験をしていないので「在宅ワークばんざい!」という流れですが…。
テレビ会議は反対はしていません。むしろ推奨しています。ただ、何をするためにそのテレビ会議をするかを考えることは重要だと思っています。
――人が組織で働くときに、顔を突き合わせることはどんなにITが進化しても必要ですか。
人が衰えていけば、まったく顔を合わせない世界は来ると思います。ITがそれを補ってくれるようになるので。でも、そうなると人は衰退していきますから。
――「衰退」と言うのは?
考えなくてよくなるし、面倒なことや苦痛なことをやらなくなるんです。いまやっていることはすべてそうなんです。
人と直接コミュニケーションをしなければ、人を見る目は衰えていきますよ。経験値が上がらないですから。「うわ、こういうやつ採用しちゃった、大丈夫?」ってならないんです。「専門家がやってくれるからいいよ」って行き過ぎるのもすごく危険だと思います。
――最近は、入社面談もAIでやっている会社が出てきていますね。
そうです。ということは、判断をする機会が減ってくるので、人間力は下がっていくんじゃないですかね。

会議がうまくいかなければ、まず環境を変えてみる

――会議をするときの理想的な環境はありますか。
会議は社長や経営陣が得たい結果を得るためにするんです。そうすると、得たい結果を得られる最も良い環境をつくるのがリーダーの仕事だと思っています。そうすると、会議を通して何を得たいかが重要なんです。時間や議論が重要だったら、そういうガチガチの環境をつくればいいし。
逆に飲み会もそういう場所になるかもしれません。飲み会議だとすれば、それは箱を飛び出したっていいわけです。どんな結果を得たくて会議をするのかが重要なんです。
会議は環境を変えたほうがいいです。お客様には「できるだけ外でやってくれ」「まったく別環境でやってくれ」と言っています。
狙いは明確で、いままでダメな会議をずっとしてきた同じ場所でやったら、同じダメな結果になるんです。イメージが悪いですから、その会議室に入った段階でそうなるんです。そうじゃなくて、「お、散歩してから始まるぞ!」とか「いつもと違うね!」という新鮮な中でやるんです。「いままでの会議を変えるぞ」と思ってやってほしいんです。
「今日はキャンプ場で会議しようぜ」と上司に言われたら、その上司を好きになりませんか。キャンプが嫌いでも、「いままでと変えるぞ」という意思が伝わるんです。「いつもあの監禁部屋に呼ばれる」と思うよりは、「何かが変わる」と思える環境に変えるほうがずっといいでしょう。
ブレストのための会議室、決断するための会議室を探してもつくってもいいと思います。何がしたいのか、どんな結果を得たいのか。目的に合った環境をつくるべきです。「目標をしっかり決めたい」と言って、拡散に向いているキャンプ場に行ってはダメなんです。
――スマート会議とはどんな会議だと思いますか。
私自身、どちらかというと泥臭く仕事をするほうなので“スマート”とはあまり縁がないのですが、「とにかく人がやらないものは全部クラウドに替えてくれ」と言っています。
情報伝達が早いですし、どこでも見られますし、顔ナビとかも絶対入れてくれって思います。個性を見ようと思えば、顔はもちろん、過去の変遷が見られて、その人のデータベースをつくってあげることが重要になってくるんです。
とにかく、人がやらなくていいことはすべてクラウドに任せる。人ができるパフォーマンスを最高に上げなければいけないと思っていますので。ムダな作業に時間を使うなら、接客に時間を使ったほうがいい。戦略をつくるところに時間を取ってもらったほうがいい。決断するのに時間を取ってもらったほうがいいんです。
稲垣 耕治(いながき こうじ)
L.MASTERPLAN(マスタープラン)代表取締役社長。会議コンサルタント。
宮城県仙台市生まれ。1992年にカナダに留学。1995年、東京・京橋の専門商社勤務。1998年、常務取締役として家業の印刷会社(従業員60名)でを継ぐ。経営の再建のノウハウを元に2006年に仙台でマスタープランを設立。「会議(環境)を変えれば社風が変わる」を信条に企業の会議コンサルタントを始める。
https://l-masterplan.com/

文・鈴木涼太
写真・大井成義

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