会議を編集しろ!【スマート会議術第68回】

会議を編集しろ!【スマート会議術第68回】株式会社ナガオ考務店 代表取締役社長 長尾 彰 氏

大学卒業後、アドベンチャー教育専門施設、大手玩具メーカーに勤務。のちに採用と組織開発のコンサルティングの会社を友人と立ち上げる。東日本大震災の復興支援に従事しながら、2012年にナガオ考務店を設立。

そして、企業のみならず、官公庁、スポーツチームなど、組織のジャンルを問わず定期的、継続的にチームビルディングに力を注いでいる。

チームビルディングとは何か? チームビルディングを通して、会議はどのように組み立てられていくのか? 組織開発ファシリテーターとして、さまざまな企業・団体を支援する長尾彰氏に、チームビルディングのポイントについて話を伺った。

目次

チーム作りを進める上で、議事録はもっと重視されるべき

――会議では、新人や若手が議事録をとることが多いですが、議事録を通して学ぶことはありますか。
チームビルディングの第1ステージはコミュニケーションの量が大事です。ここで言うコミュニケーションとは話す量ではありません。その組織や集団の中で流通する情報量を増やす、ということです。会議の議事録も情報を共有する手段の1つです。チームビルディングをする上で議事録をちゃんと残すことはすごく大事なことだと思っています。
よく「新人が議事録をとると、会議で話されていたことが可視化されて、全体像を見えるようになるから、新人教育としては良い手法だ」と言われますね。でも、議事録をとらせるだけではダメなんです。新人が書いた議事録を上司が編集をすることがすごく大事だと思います。
手直しをちゃんとして、量だけではなく質も向上させる行為がセットになって、初めて新人にとって良い教育になる。議事録をとらせっぱなしのところが多いですよね。「今日の話のポイントはここ」とちゃんと上司が手直しをしないと意味がありません。
みんな、やりっぱなしなんです。それはなぜかと言えば、議事録がそこまで優先順位の高い情報源になっていないからです。議事録は結構大事だというカルチャーができれば、上司がちゃんと編集して会議を通して事業の全体像を理解してもらうという「育成」ができるんです。

本を読むことで養われるまとめ力

――AbemaTVで橋下徹氏や西野亮廣氏のトーク番組があるのですが、それぞれアシスタントの学生が、彼らのトークを議事録やTwitterにまとめるのがすごく上手でネット上で話題になっていました。このまとめ力って、どうやって養われるものでしょうか。
まとめって言葉の置き換えだから、複数の言葉、具体度が高い複数の言葉を、1つの抽象度の高い言葉に置き換えるというのがまとめだと思うんです。抽象度を上げるためには、具体的な言葉をたくさん知っておかないといけない。そのアシスタントたちも、多分たくさん本を読んだりテキストに触れてきたりするんだと思います。物事を知らない、というのはつまり「言葉」を知らないということだと思うんです。やはり本を読むってすごく大事なことかなと思っています。
――たくさん本を読むことが、文脈を読む力に結びつくということですか。
本をたくさん読むと、なぜ文脈が読めるかと言うと、編集者が編集をしているからなんです。インターネットの記事でも、もちろん編集者がちゃんと編集している場合もありますが、インターネットの場合は玉石混交ですよね。でも、書籍は必ず編集者が入って、校正者がいて、「てにをは」が整って意味が通るものになっているから文脈が読めるのです。その作法をインストールするには、本を読むことがすごく大事だと思います。
すごく飛躍した極論ですけど、会議の質を上げたいのであれば、みんなで本を読もう、読書会議をやろうと言いたいです。一人で読む本と、みんなで読書会のように読む本と、方向性が2つあると思うんです。僕がすごく勧めたいのは、一人で読むのであれば古典。源氏物語とか枕草子とか。
古典を読むってすごく大事なことだと思っているんです。昔の言葉で書かれていたものですから、そもそも意味がわからない言葉が多用されている。それらを辞書を使って意味を調べながら読むことで、すごく言語能力が上がると思います。「わろし」っていう言葉の意味を調べなければいけないんです、日本語なのに。言葉の意味を考えること自体にすごく意味があると思っています。
――外国語を学ぶ感覚に近いですね。
はい。ひとつのセンテンスを1週間、2週間をかけて読み解くという時間や機会を持つことがすごく大事かなと。それを昔の人は「教養」と言ったんでしょうけど。
ここに書いてあることは次にどこにつながるのか。いまのネット社会では、読み解くという行為がどんどんなくなっている。たとえばTwitterというメディアなら、140文字の羅列で言葉が流れていく。フローなわけです。でも言葉ってストックしていかないといけない。ストックされている言葉があれば、すぐにまとめる必要がある場面で、ひょいとストックされている言葉で置き換えることができるんです。
ビジネスパーソンの読書って、どうしてもビジネス書とか自己啓発本に偏ってしまう印象があります。ですが、むしろ仕事とまったく関係ない古典文学などを「読み解く」ことにチャレンジしてみてはどうでしょうか。
――シェイクスピアでもいいんですね。
何でもいいです。ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』とか『罪と罰』を3年かけて読むとか。その体験そのものがフローの時代に生きる僕らには必要だと思います。
古典や難解な本を一人で読み続けるのはすごく大変なんです。だから読書会をやるとか、仲のいい友達と本を一緒に読み合って意味を考えるということもチームビルディングになると思います。みんなで読むときには、読む本は強いこだわりはいらないと思うのですが、最近では「アクティブ・ブック・ダイアログ」という読書を通じたワークショップが取り上げられるようになってきました。
進め方はシンプルです。一冊の本の内容を担当パートで割り振って、パートごとに読んで要約文をお互いに発表しあい、内容理解を深めるというものです。たとえば、10人いたら3人ずつに分かれて、この本を裁断する。裁断するのがもったいないなら、kindleで買ってプリントアウトして、「何ページから何ページまでは1班、何ページからは2班、何ページまでは3班」といった具合に、そこに書いてあることを3人で書かれている内容を話しながら、まとめをつくる。まとめができあがったら、「このグループが担当したページにはこんなことが書いてありました」と全体で共有をします。それぞれが発表した要約文についてお互いに問いを立てて、感想や疑問について話し合うということを繰り返す。
――どういう点でチームビルディングに役立つのですか。
それぞれが同じ文章を読んでいるのに、持っている感想は違う。当たり前の話ですけど。でも、お互いに同じものを読んでも持つ感想は違うんだという、「何が違っているのかが明確になる」ということが、すごく意味があることだと思っています。
また、「これ読んでおいてね」と言って「読んだよね」という関わり方と、「一緒に読んだよね」という関わり方が生み出す関係性にも大きな差が生まれるでしょう。そういう体験があるのとないのではまったく変わってくる。同じ本を読んでいるのに「お互いに見えているものが違う」という前提に立つことが、すごく大事なことだと思います。
考えたことを話し合う。だから、きっと「ダイアログ」という名前がついている。「カンバセーション」でも「ディスカッション」でも「ディベート」でもない。

対話なくして会議は成り立たない

――つまり、会議は対話(ダイアログ)であるべきだということですか。
意見をぶつけ交わし合う会議ももちろん重要ですが、グループがチームに発達するために心理的安全性を確保する、という視点においてはお互いの考えを聞きあうという「対話」が重要だと思います。
――対話は、関係性を構築するのが基本ですか。
対話とはお互いの話を聞き合うことです。「自分との対話」と言いますよね。「自然との対話」とも言う。「自分との会議」とは言わないし、「自然との会議」とも言わない。対話だから、自分の本当の心の声を聞くっていうのが自分との対話。自然との対話は、自然は言葉を発しないけど、それを見て、何かを自分の中でイメージをする。対話も、相手が話していることを、「なんでこの人はこんなことを言うのかな、何を言おうとしているのかな、その言葉の背景にあるものは何かな」と丁寧に聞くことが対話だと思うんです。
――会話は、極論するとお互いの話を聞いていなくても成立しますね。
対話を進めるための準備が会話だと思います。「おはよう」と言うと、「おはよう」と答える。「おはよう」と言ったら「ラーメン」と言ってしまったら意味が成立しなくなる。「こんにちは」と言ったら、「こんにちは」だし、「お疲れ」と言ったら「お疲れ」。意味が通じる人だなと確認しているわけです。
もし、会社で「おはよう」と言ったときに何も言わない人がいたら、「あ、この人社外の人かもしれない」と。コミュニティの外にいる人と判断するわけです。まずここは同じコミュニティの中にいる人だなと確認をしているのが会話。夫婦の会話がなくなるのが良くないのは、お互いがお互いのことを認識しなくなってきているということですから。そういうことですよね。
――確かに「夫婦の対話がなくなる」と言わないですね。
言わないです。お互いがお互いのことを、ちゃんと存在として認識するための道具が会話だから。会話も大事です。いきなり対話できるわけじゃないから。まずは会話から。
――そこからどんどん踏み込んでいくと、ディスカッション、ディベートになっていくイメージですか。
ディスカッションは、当事者がそこにいない感じです。たとえば顧客とのやりとりについての方法を決めなければならないときに、その会議の場には、お客様はいません。いわゆる「当事者不在」の状況です。それにも関わらず、これについてAがいいか、Bがいいか、Cがいいかみんなで話し合うというのが会議な感じですね。
ディスカッションの「ション」って、パーカッションの「ション」やセッションの「ション」と同じで、語義はこすり合わせるという意味なんです。意見をこすり合わせるというのがディスカッション。議題があって、それを論じるというのが議論。
ディベートは討論ですけど、そこで交わされる話のテーマの当事者は、聴衆です。たとえば、自民党の代表と、立憲民主党の代表がいて、党首討論をします。聴衆がいます。聴衆は国民。党首はお互いに本人はそう思っていなくても、党の立場で話す。それを聞いて良し悪しを決めるのは、聞いている聴衆たちや、競技ディベートの場合は審判というのがディベートです。そう考えると会社の中で、ディベートの機会があるというのは稀だと思います。
対話はもう少し深いレベルで、お互いのことをじっくりと聞き合う。違いがどこにあるかを探す。違うことが前提なのが対話な感じがします。議論というのは、同じにしなきゃいけない作業。こすり合わせて、ぶつけ合って同じにしなきゃいけない作業。対話は、対話をした結果、「やっぱり違うんだね」で終わってもOKだし、むしろ違うことがわかったら、関係性としてはすごく大きな進歩です。だからこそ、対話が本当に大事になっている。だから、「アクティブ・ブック・ダイアログ」が注目されているんでしょうね。

言葉の意味をすり合わせることは、関係を育む

――長尾さんにとって、理想とするスマート会議はどんな会議ですか。
僕の好きな考え方に「社会構成主義」というものがあります。ケネス・ガーゲンという社会学者が『あなたへの社会構成主義』という本などで提唱した考え方です。言葉の意味は、そもそも特定の個人がつくったものとか、与えられたものじゃない。辞書に書いてあるものをそのままインストールするものじゃなくて、そこにいる人たちが言葉の意味をつくっていく。
たとえば「痛い、痒い、熱い」の違いって、誰がいつ僕らに教えてくれたのでしょう。どんな出来事があって、「痛い、痒い、熱い」の違いがわかったんだろう。それは最初の体験を思い出すしかない。でも、思い出せない。きっと小さいときに、転んだときに、お母さんが、「ああ、痛かったね、痛かったね。痛いの痛いの飛んでいけ~」ってやってくれたり。蚊に刺されて「ああ、痒いね、痒いね」って言われたり。火傷したときに「熱かったね」って。母と子という関係性の中でその意味が生まれているわけですよね。
会社も会議も同じです。そこにいる人たちが意味をつくっていく。言葉の意味を一緒に作っていくことが、関係性を育んでいくんだということがわかってくると、会議の意味が変わってくるはずです。
そもそも、ある人にとっては必要なもの、ある人にとっては大事なもの、ある人にとっては苦しいもの、ある人にとっては楽しいもの、みんな持っているものはバラバラ。なので、まずは対話をして、みんなの持っている会議の意味をちゃんとすり合わせることがすごく大事だと。『あなたへの社会構成主義』は、そんなことが書いてある本です。
――たとえば「さす」という言葉ひとつとっても、「指す」「挿す」「差す」「点す」「注す」「射す」「刺す」と、意味が変わってきます。会議で「さす」と言ったとき、関係性が読めないと、どの「さす」なのかみんな理解が違ってくるということですよね。
そうです。言葉の意味が成り立つことで関係性が育まれていくから、言葉を大事にする必要があると思っています。つまり、チームビルディングを進める上で必要なのは、「関係をつくる」ということそのものだからです。
ファシリテーターが、「この場面での『さす』はこれなんだ」と関係性がわかるように編集してあげないと、会議体の質が高くならない。あえてキャッチコピーにするなら、「会議を編集しろ!」でしょうか。
長尾 彰(ながお あきら)
株式会社ナガオ考務店代表取締役社長。組織開発ファシリテーター。日本福祉大学卒業後、東京学芸大学大学院にて野外教育学を研究。企業、団体、教育現場など、15年以上にわたって2000回を超えるチームビルディングをファシリテーションする。文部科学省の熟議政策に、初の民間ファシリテーターとして登用され、復興庁政策調査官としても活動したほか、「エア社員」として複数の法人にファシリテーターとして事業に参画している。

文・鈴木涼太
写真・大井成義

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