共通言語を見つけるためにバタフライボードが必要だった【スマート会議術第71回】

共通言語を見つけるためにバタフライボードが必要だった【スマート会議術第71回】バタフライボード株式会社 代表取締役 福島 英彦 氏

デジタルツール全盛の時代。それはビジネスシーンでも例外ではない。リモート会議、チャットツール、TVモニタ、ペーパーレスなど、デジタルの進化によってあらゆる機器が小型化、ネットワーク化し、いつでも、どこでもコミュニケーションができるモバイル時代だ。

しかし、そんな時代にあって、ビジネスシーンに一石を投じたアナログツールがある。

その名も「バタフライボード」。名前の通り、大きなホワイトボードが小さくなって、解き放たれた蝶のように場所を選ばずあちこちを飛び交う。

バタフライボードはどのように誕生したのか。バタフライボードで会議はどう変わるのか。なぜいま、アナログツールなのか。ノートのように手軽に携帯できる「バタフライボード」を開発した福島英彦氏にお話を伺った。

目次

ホワイトボードの3つのメリット

――バタフライボードを開発するに至った経緯をお教えください。
元々は音響メーカーでエンジニアとして16年間、スピーカーの開発をしていました。でも、その会社でエンジニアの部署がなくなったんです。転職する選択もあったんですが、いい機会だったので同じ会社でマーケティングや事業開発をやってみようと決めました。
――まったく違う職種で戸惑いはありませんでしたか。
さっそく困ったのが会議でした。エンジニアって一人で完結する仕事が多かったんです。でも、マーケティングや事業開発は、絶えず人を巻き込みながら仕事を進めなければならない。そこで他の部署の人たちと会議をしても、共通言語がなくてコミュニケーションに苦労することが多かったんです。
そこでホワイトボードを使い始めると、すごくスムーズに会議が運ぶようになったんです。ただ、ホワイトボードは会議室にしかなかった。だから、持ち運べてどこでも使えるホワイトボードが欲しいと思ったんです。それがバタフライボードを開発するきっかけです。
――ご自身が会議で欲しくて自分で開発してしまったわけですね。
そうです。単純に自分の課題だったんです。自分はコミュニケーションが下手だったので、その中で上手くコミュニケーションをするにはホワイトボードしかなかったんです。持ち運べるホワイトボードなんて探してもなかった。じゃ、自分で作るしかないと思って、コツコツ作り始めました。
――ホワイトボードは具体的にどんな点で役に立ったのですか。
ホワイトボードの良さは3つあります。まず書くことによってみんなの意見が誘発されるんです。参加者が気軽に消したり上書きしたりするので、新たな発見ができます。2つ目は人格をなくす。ボードに書くことによって、人に対する意見じゃなくなって、コトに対する意見になるんです。3つ目は可視化することによって方向性が誘導できる点です。見えることによって「こうだよね? そうだよね?」ってお互いのコンセンサスを取りながら進められる。この3点ですね。
――同じ言葉で違う理解をしていて通じ合わないのが、なぜホワイトボードに書くことでわかるようになるのですか。
お互いに言っているレイヤーが違うことがよくあったんです。「あ、そのことを言っていたの?」と言葉だけでは通じないことがいっぱいあって。お互いに考えていることや立ち位置が違うわけです。そこで同じ位置にするには、やはり書いて、「ここのことだよね」ってやると、スムーズに進むというのがありますね。
――話すことが書かれるだけでそんなに違うものなんですね。
文字というよりは絵や図表が多いですね。「あなたは全体のここのことを言っていますよね? 僕は全体のことを言っているんですよ」って人によって見ている場所が違うんです。各論の細部の話に関して意見が集まっていくのと、全体を見て話している人と違うわけです。それを「いま、この中のここの部分ですよ」なのか、「いま全体の話をしているんですよ」というものを書き出していくと、お互いに「あ、そこのことね」と理解できるんです。絵を描くことで、同じ細部に入ったレイヤーなのか、上位のレイヤーを言っているのかということで、すれ違いがなくなってくる。
――共通言語のない会議がそんなに多かったのですか。
圧倒的に多いです。転職したときは特にそうでした。お互いに共通言語がないわけです。会社によって共通言語が全然違うことってありませんか。同じ業界の会社でも、「あれ? それ何のこと?」ということがあるんです。「いや、それはこういうことだよ」と可視化することで、「ああ、そのことね」ということがすぐにわかるので。そういう意味でも、可視化していくという重要性はすごく感じます。特に企業文化が違うところに入ってしまうと。

抽象概念を具体的にするためにビジュアルは欠かせない

――絵を描くことは得意だったのですか。
全然得意ではないです。むしろめちゃくちゃ下手くそです(笑)。
――でも、説明するときに、絵を描ことで伝わるようになった実感があったのですね。
ありました。絵が上手い下手ではないんです。「これ四象限で1回書いてみましょうか」というカタチで。「右が持ち運べる、こっちが固定型、こっちが人の人数だよね、バタフライボードってどの位置にありますか」と整理していく。それをお互いに共有しながら共通認識を持っていく。絵だけじゃなくてグラフだったり、図表だったり。そういうビジュアルで伝えるということです。
マーケティングって、抽象概念を具体的に落としていかなきゃいけない。だから、具体的に落とすときはやはり書いていかないとわからないのかなと思います。
以前、ワークショップをやられている方から言われたことがあります。「ジャンルがまったく違う人たちが1つのアウトプットを出さなきゃいけない。お坊さんであり、お医者さんであり、コンサルタントであり、エンジニアである。その人たちの共通言語はない。その中で1つのテーマに沿ったアウトプットを出さなきゃいけない。そういうときは書いて、お互いの共通言語を見つけていくんです」って。
そこで普通の模造紙だったら書かない人もいます。あくまでも参加して、その輪に入って共通認識、共通言語というものを掴んだ上でアウトプットを出していくことが、会議の役割だと思うんです。上司と部下でも、マーケティングとエンジニアでも共通言語は違いますよね。だから、それをお互いの共通認識で1つのゴールを目指すという意味では、やはり書いていく、ビジュアル化していくことが重要なのかなと。
そうすると、会議自体が活性化して良いアウトプットが出てくる。消化不良になる会議じゃなく、参加した意義がちゃんとそこに出るような会議になると思います。

ホワイトボードとバタフライボードの違い

――バタフライボードの開発を始めてからどういうプロセスを経て商品化に至ったのですか。
コツコツと手に入る素材で週末にプロトタイプを作りながら、「ああだこうだ」って考えながら、自分の中で完結していったというやり方です。
――ずっと一人でやられたのですか。
最初は一人です。まず自分が納得いくところまで作って、ある程度できたら、周りの人に見せながら、「どう思う?」って意見を聞いていった感じです。
――商品開発にあたって市場調査やリサーチはされましたか。
僕自身が明確な課題を持っていたので、自身が解決できればいいと思って、リサーチはまったくしていません。しかし、開発後はあらゆる市場の状況を調べてローンチしました。
――ご自身であった課題というのは何ですか。
ホワイトボードが良いのはわかっていたのですが、会議室にしかない。会議室が取り合いになるんです。会議室だけじゃなくて、オフィスにちょっとした打ち合わせ用の丸テーブルがあったりしますよね。そういう場でも大きなホワイトボードをガラガラ運んでいるのはナンセンスだなと。だから携帯できながらも、ホワイトボードならではの広い面積を維持できるものを作りたかった。
――バタフライボードにはA3、A4、A5サイズがありますが、つなげて大きくもできていろいろ拡張性もあります。使ってみて感じるホワイトボードとの一番の違いは何ですか。
違いは、1対多なのか、1対1なのかという点でしょうか。ホワイトボードの前に立つと、どうしても1対多の関係になってしまう。会議に参加するという意味では、机の上にバタフライボードを並べてみんなで囲んだほうがより意見が出やすくなるという感じですかね。ホワイトボードだとどうしても物理的に距離が遠くなります。「違うよ、こうだよ」ってやったほうが絶対に盛り上がるので。ホワイトボードと人との距離が近いのは重要だと思います。
――たとえば、「4人で会議をやりましょう」となったときに、どういう使い方をするのですか。
何を話し合うか内容次第ですが、たとえばアイデア出しだったら、各個人にボードを渡してアイデアを出して、みんなで集めて「これどう思う?」ということができます。1つのことをみんなでディスカッションをするなら、何枚も並べて大きく広げて、お互いに共通認識を持って進めていく。そんな使い方ができると思います。話し合われる内容に応じて、数枚のボードを分けたり、並べたりしてフレキシブルにカタチを変えられるのがポイントかと思います。

バタフライボードで生まれた新しい会議のスタイル

――会議でホワイトボードを使う慣習は定着してきていると思いますが、バタフライボードを使って、いままでなかったような使い方はありますか。
開発したときにはあまり想定していなかったのですが、ホワイトボードがある部屋で、バタフライボードに書いてもらったものを全部ホワイトボードに貼って並べていく。要は付箋のように使うのは新しい使い方だと思いました。
マグネットなので付箋みたいにホワイトボードにペタペタ貼りつけられるんです。アイデアを出して、みんなで話しながら並べていって、「これどう思う? どう思う?」っていうことができる。そういったカタチで、ホワイトボードも有効に使いながらバタフライボードを加える使い方もあるというのは新しい発見でしたね。
あと、手元にバタフライボードがあると、みんな何気に書き始めるんです。書くことが結構重要なことで、思っていること、考えていることを自然と表す習慣がついてくると思うんです。
あと、やっぱりすぐ消せるというのは大きいメリットですね。書くのが苦手な人も当然いますが、消せることで、字が下手、絵が下手というのは関係なくてどんどん書いてくる。すぐ消せるメリットはすごく大きいと思います。僕は絵も字もめちゃくちゃ下手くそなんです。紙に書こうとしたときに躊躇しちゃうんです。そのタイムラグがバタフライボードだとなくなる感じを受けるんです。
――紙に書くより抵抗が少ないのですか。
恥ずかしかったら消せばいいじゃんっていうところですよね。デジカメと一緒なのかなと。アナログのフィルムのカメラって、撮影を失敗できない感覚があるじゃないですか。でもデジタルになって、すぐに消せることでどんどん撮っていく。それと同じなのかなと。最近はInstagramやSnapchat、SNOWみたいに「すぐに消えてしまう」SNSが人気なのも同じ理由かもしれませんね。頭の中をアウトプットするのも同じで。消せるからどんどん出てくるのであって、躊躇がなくなるのは大きなメリットだと思います。

アナログだから生まれる対話

――病院や学校で高いニーズがあるということですが、どんなシーンで使われるのですか。
病院では介護されている方とかは、力がなくてもボードを軽く持って書けたり、視力が悪くても大きく書けたりすることで重宝されています。
看護師と患者さんの場合もあれば、先生と患者さんのやりとりの場面で使われます。難しいことを説明しなきゃいけないときに書いてあげるとわかりやすいんです。「胃のここの部分がね」と対話しながら説明すると非常にわかってもらえるし、安心してもらえる。業務的に説明するのではなく、人と人が会話するところの仲介役になっていると思っています。
――医者と患者の接し方も変わってきますよね。
そうです。先生が一方的に伝えるだけではなくて、患者さんが「いや、そうじゃないよ。ここが痛いのよ」という感じで、インタラクティブになっていくと思うんです。受け身だけじゃなくて自分も発せられるところが、アナログの良さだと思います。
福島 英彦(ふくしま ひでひこ)
バタフライボード株式会社代表取締役。高等専門学校卒業後、国内メーカーと外資系音響メーカーでスピーカーの開発者として16年務める。エンジニアを経て、マーケター、事業開発のブランドマネージャーも務める。2015年に第1 弾のクラウドファンディングで初代バタフライボードを発表。たった一人のメーカー”が生んだノート型ホワイトボードとして注目され、国内外で高い評価を獲得。世界39カ国のユーザーの声を取り入れながら製品の改良を行う。クラウドファンディングで累計約4000万円の資金調達に成功した。2018 年度グッドデザイン賞受賞。

文・鈴木涼太
写真・大井成義

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