会議は五感で伝えるコミュニケーション【スマート会議術第72回】

会議は五感で伝えるコミュニケーション【スマート会議術第72回】バタフライボード株式会社 代表取締役 福島 英彦 氏

持ち歩けるノート型ホワイトボード「バタフライボード」。小さくてシンプルなボードなのに、これがあると会議が楽しくなりそうな気がするから不思議だ。「バタフライボード」は、アマゾンの人気ランキングの常連となるヒット商品となり、2018年にはグッドデザイン賞も受賞。

バタフライボードの名は“小さな事象が、さまざまな要因を引き起こし、だんだんと大きな現象へと変化する” というバタフライ効果と、小さなホワイトボードが蝶のように羽を広げているイメージから名づけられたという。アナログを徹底的に追求し、デジタルツールを凌駕する概念でクオリティの高いアウトプットを創出するバタフライボード。

バタフライボードは会議でどんな役割を果たすのか。ひいてはビジネスシーンでどんな影響をもたらしているのか。バタフライボードの開発者である福島英彦氏にお話を伺った。

目次

バタフライボードは、あくまでもコミュニケーションツール

――バタフライボードは2018年にグッドデザイン賞を受賞しましたが、どんな受賞理由だったのですか。
「コミュニケーションというものに変革を与えるプロダクトだ」というコメントをいただきました。僕自身、バタフライボードはただ書くための筆記ツールではなく、あくまでもコミュニケーションツールだということを訴求しているので、そこを評価されたのはうれしかったですね。書きながらしゃべって、それをお互いに共通認識を持っていくという、コミュニケーションツールということで評価していただきました
――開発されてから少しずつバージョンアップされてきたと思いますが、今後進化させていきたい具体的な構想はありますか。
お客様からのフィードバックは尽きないので、それに対して真摯に応えて製品に反映させていきたいとは思っています。でも、いろいろな意見がありすぎて1つに固まらないんです。10人いれば10通りの要望があるので(笑)。
――たとえばどんな要望がありますか。
いまはA3、A4、A5の3種類しかないのですが、方眼があったほうがいいのか、無地のほうがいいのか、横開きがいいのか、縦開きがいいのか、A4サイズがいいのか、B5サイズがいいのかって、人それぞれだというのがわかってきたんです。で、いまはロボットで作ることにトライしています。
――ロボットで?
大量生産用のマシンを導入してしまうと、簡単に仕様変更ができない。安くするために1つの仕様で大量に作るのではなく、ニーズに応じて改良を重ねていきたいんです。だから、お客様の声をすぐに反映させて商品化していくために、いまは「人協働ロボット」が人間のようにカスタマイズして作れるようにしていきたいと考えています。まだAIは導入していませんが、シール貼りなんてもうロボットでできるようになっているんです。

「手書き」と「アナログ」の利便性

――AbemaTVで「株式会社ニシノコンサル」という番組があったのですが、ビジネスのアイデアを出し合うのにみんな「手書き」にこだわっていて興味深かったんです。ブレストをする間、司会の西野亮廣さんはスケッチブックで絵を描き、ブレーンのSHOWROOMの前田社長は有名なメモ魔。アシスタントの学生がイラストを交えながら手書きでかわいい議事録をまとめる。 デジタルネイティブの人たちが、三人三様の「書く」というアナログ作業が重視されているところが、バタフライボードの発想と近いなと思いました。
それは、まさに僕が共通言語を探すのに苦労してホワイトボードに頼ったのと同じですね。ニシノコンサルに相談に来るクライアントは言葉のプロではないですよね。彼らの言葉を自分たちだけでなく、視聴者とも共有して理解しなければいけないですからね。絵や文字で可視化することは欠かせないんだと思います。
あと、やはり求められるスピード感でしょうか。短い時間の中、掛け合いしながらその場で可視化していくツールって、多分iPadでもできるんです。でも「電源どこだっけ?」「ペンどこだっけ?」というスピード感に追いつかないのかもしれません。コンマ何秒のことなのかもしれませんが、思った瞬間のものを書けるというメリットはアナログがまだまだ優っている。いずれ変わるでしょうけど、そこはデジタルがまだ追いついていない部分かと思います。
――最近は、スマホの自撮りや音楽の月額制ダウンロードが定着するとともに、チェキやレコードのようにアナログ感を楽しむ若い人たちも増えていますね。
SlackとかLINEとかで、デジタルのコミュニケーションツールがいろいろ出てきて、みんな使っていますよね。でもそれに疲れてきたんじゃないかと思うんです。
やはりデジタルではなかなか通じないことがある。「俺はこう思っているのに、相手はそう受け取ったか」と。全然怒っていないのに、怒ったように受け取られるのは、リアルな空間では起きないことじゃないですか。その空気感がまだまだ伝わらないことが多いと思うんです。
デジタルの良いところは当然あるんですけど、「直接会おうよ」「電話で話そうよ」というカタチでコミュニケーションが見直されているのかと思います。
――若い人たちが遅刻したり休んだりするときにLINEなどで連絡するケースが増えて、年配者と若者、上司の間にもなかなか埋まらない溝があるようですが。
そうですね。
――バタフライボードのようなアナログツールが介在することで、コミュニケーションが変わる可能性はあると思いますか。上司にプレゼンするときに、絵を描きながら説明したらきっとうまくコミュニケーションできるとか。
部下より、むしろ上司に書かせることが重要だと思います。自分が書いたものに対して上から書いてもらう。当然、言葉だけだと伝わらないものがあるし。上司が書くということは、一方通行でなく上司も参加しているんです。そういう意味で、上司と部下のコミュニケーションには非常に良いツールなのかなと思います。
――絵を使ってコミュニケーションするって、石器時代への先祖返りみたいな感じですね。
よく会議でホワイトボードに書いた内容を撮影してあとで共有することがありますよね。僕もそれをずっとやっていますが、その中には空気感が残っているんです。どの位置に誰が書いたかとか。文字の書き方だったり、書いた位置だったり。それをテキストにしちゃうと、その空気感がなくなってしまうんです。
だから、もう1回思い起こそうとしたときに、その空気感、テキストだけではない情報というものが含まれているので、それを見たときに「あのときああ言っていたよね」ということが思い起こされる。そういう意味でも、テキストに残さずにそのまま写真で共有するというやり方は非常に良いと思います。デジタル化したことでアナログ的なメリットが浮かび上がってきた感じだと思います。

会議のスタイルが少しずつ変わってきている

――いろいろな会議に参加されてきた中で変わってきていると感じることはありますか。
会議って会社それぞれでまったく違う文化があるんです。僕は3社で働いてきましたが、エンジニアだったときの会議は1つの課題に対して、これをどうやってエンジニアのアプローチをしようか、というのが大半でした。事業開発になると、部署が違う人たちがいるので、会議の質が全然違ってきます。共通認識をみんなが持っていないんです。そういう意味ではとても苦労しました。その苦労がなければ、バタフライボードは生まれなかったかもしれませんが(笑)。
――お客さんからも「もっとこうしてほしい」というフィードバックはありますか。
いろいろありますが、印象に残っているのが「立って書けるものがあったらいいよね」というご意見です。「座ってやる会議よりも、立ってやる会議のほうが効率が良い」というお客様がいて、そういう意味でも会議のスタイル自体が少しずつ変わってきている印象です。「ちょっといい?ちょっと3人集まってよ」という感じで、何時から何時までの定例会議が減っている気がしますね。

会議でアイデアを出す3つのポイント

――音響メーカーでスピーカーの開発をされていたことと、バタフライボードの開発には、何か共通する考え方があるのですか。
スピーカーって五感で感じるアナログなものなんです。要は空気をいかに振動させて相手に伝えるかというところで超アナログなんです。そこは進化しても変わっていない。スピーカーもバタフライボードもコミュニケーションを五感で伝えているところは同じなのかなと思います。だから、自分の思いを伝えていくという意味では、似ていると思っています。
――今後、ビジネスシーンで、バタフライボードをどのように役立ててもらいたいですか。
会議って1対多や上下という関係性で成り立っているシーンが多いですよね。ファシリテーターがいて参加者がいる。上司がいて部下がいる。そういう感じではなく、全員がお互いにフラットに意見が言い合えるような環境をつくっていくことが重要かと思っています。なんじゃこりゃ?ということをやって、新たなものが出てくるのが会議だと思うんです。
たとえば、僕はアイデアを出す会議には3つのポイントがあると思っています。
まずホワイトボードのような広いキャンバスがあること。誰もがすぐに書ける状態にあるということ。次は多様性。男性であり、女性であり、年配であり、若い人であり、という人が、いっぱい集まったほうが絶対にいいアイデアが出るので。あとは会議室のように閉じこもった空間だけではなく、外でやるとか環境をいろいろ変えること。
この3つを満たしていけば、重い会議でも重くならない気がするんです。重大な決定をしなきゃいけないクローズドなミーティングだとしても、もうちょっと広げて、いろいろな人がしゃべれる場をつくる。いろいろな人が会議に参加できることが重要かなと。環境が変わることも重要ですし、誰もがホワイトボードに書けるという状況にあるのがスマートなのかなと思います。
――ホワイトボードは人間関係の壁も取り除いてくれそうですよね。
そうですね。無人格化するという意味でも。僕もよく役員会に出て説明しなきゃいけないときなんか、非難ごうごうを浴びることがあります。「お前は知らないくせにそんなこと偉そうに言うなよ」って言われるんです。でも、書き始めると変わるんですよ。自分の意見から人格が離れるんです。だから、僕に対する意見ではなく、コトに対する意見になってくる。重い会議ほど可視化するのはすごく重要だなと思います。
――会議はどうしてもしゃべることに依存しがちになるので、そこをもっと絵を描いたり、文字を書いたりする行為によってバランス良くということですね。
そうですね。
――だから、逆にそうでないから絵が描けないという人はもったいないからホワイトボードを使う。
スキを見せるというか、相手に意見を言える場所をつくってあげるのが大切だと思います。社長が絵を描き始めたらかなり雰囲気が変わりますよ。どーんと座って動かずにしゃべっているより。社長に直接意見は言えなくても、書いたものに対しては意見を言えるんです。書いたものに対しては「これは違うじゃないですか?」と言いやすい。むしろ決定権がある人が書くということが重要かもしれませんね。

文・鈴木涼太
写真・大井成義

福島 英彦(ふくしま ひでひこ)バタフライボード株式会社
バタフライボード株式会社代表取締役。高等専門学校卒業後、国内メーカーと外資系音響メーカーでスピーカーの開発者として16年務める。エンジニアを経て、マーケター、事業開発のブランドマネージャーも務める。2015年に第1 弾のクラウドファンディングで初代バタフライボードを発表。たった一人のメーカー”が生んだノート型ホワイトボードとして注目され、国内外で高い評価を獲得。世界39カ国のユーザーの声を取り入れながら製品の改良を行う。クラウドファンディングで累計約4000万円の資金調達に成功した。2018 年度グッドデザイン賞受賞。

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