マインドマップで会議を“見える化”する【スマート会議術第83回】

マインドマップで会議を“見える化”する【スマート会議術第83回】「塚原氏の作成した自己紹介のマインドマップ」
株式会社ヒューマン・リスペクト 代表取締役 塚原美樹氏

マインドマップーーそれは、頭の中を“見える化”して“整理"し、新たなアイデアを得ることができる思考ツールだ。イギリス人の著述家、トニー・ブザンが考案し、世界中で使われるようになった。日本でも近年、ビジネス界をはじめ、教育、医療業界でも注目を集めている。

生産性の向上が叫ばれ、さまざまなことが複雑化・スピード化し、“正解のない時代”と言われる現代社会。もはや、単純な経験値や知識だけでは厳しいビジネス社会で生き残れない。そんな時代背景の中、記憶力、創造力、集中力、思考力をサポートするマインドマップに期待が集まっている。

塚原美樹氏は、日本でいち早くトニー・ブザンのトレーニングコースに参加し、公認マインドマップ・インストラクターとなったマインドマップの先駆者でもある。

会議、ひいてはビジネスにおいて、マインドマップはどのように活用され、生産性の向上につなげるのか。塚原氏にマインドマップの有効性と、その使い方について話を伺った。

目次

問題解決はできるが、問題発見できない日本企業

――いま、ビジネスにおいてマインドップが求められるのはなぜですか。
日本企業の多くは「こういうものを作ってください」「こういうことをしてください」というオーダーを出したら、それをしっかりと正しく届けることができます。けれども、それだけでは通用しない時代になってきています。
たとえば、最近はIT系のシステム開発などにおいても、「仕様がなかなか決まらない」ということがよく起きていると思います。現場の人たちは「クライアントのほうで決めてくれないと仕事ができない」という風に考えがちですが、それでは仕事は前に進みません。つまり、指示を待っているだけではダメで、お客様と一緒になって問題を発見し、解決していくような仕事をしないと上手くいかなくなっているのです。
ところが、多くの日本企業では長年、「いま、わかっている問題を正しく解決する」ように人を育成してきました。「問題は上から与えられるものであり、その問題が問題であることに疑いはない」といった前提の中で仕事をするケースが多かったわけです。こうした環境の中で仕事をし続けていると、社員は「本当の問題は何だろうか?」と考えることをしなくなってしまいます。
こうした育成方法が採られてきた背景には、戦後の日本において、企業が置かれてきた立場というものもあります。たとえば、官公庁から仕事を委託されるような大手企業にとって、売上の源泉は国家予算であり、国民が支払った税金です。こうした仕事を担う場合には失敗は許されず、ある程度、見込み違いのない方法で、仕事を慎重に行わなくてはなりません。そのために、過去の経験から生み出された公式を当てはめて仕事をするような「正しい方法での問題解決」ができる人材を育成してきたわけです。
しかし、時代変化のスピードが速まり、過去の方法が通用しない時代になりつつあります。これまでのやり方を変えていかないと、生き残っていけないと、危機感を持っている企業も多いはずです。
しかし、危機感はあり、優秀な学生を採用しているのに、新たな問題を発見できるような人材をなかなか育成できていない。こういう場合には、背景に、自社が長年培ってきた文化や風土が影響していることを考える必要があるでしょう。

問題解決型から問題発見型の思考パターンへ

――そのような状況の中、マインドップは何に役に立つのですか。
新しい問題を発見する力が育たない背景のひとつに、思考のパターンが固まってしまっていることが挙げられます。思考パターンというのも、企業文化、風土のひとつになりえるでしょう。
与えられた問題をすでにわかっている方法で解決する場合、分解的な思考をすることが多いでしょう。分解的というのは、問題を要素分解して「ひとつずつ潰していけばこの問題は解決できる」という考え方です。この思考パターンは問題が明確であり、従来の方法で解決できるものであれば、スピードが出ます。しかし、新しい物の見方は生みにくいでしょう。
社会や組織に関わる問題はさまざまな要素が複雑に絡み合っており、時々刻々と変化してしまいます。こうした問題に向き合うときには、「分解」だけではなく、「統合」という考え方も取り入れる必要があります。
たとえばKJ法*は、野外科学の手法と言われますが、まず、現場を取材していろいろな情報を集めてきます。その混沌とした情報を見渡して、何かを見出せないか考えていくという仮説構築の方法です。新たな問題発見には非常に有効な手法です。しかし、KJ法を実際にしっかりとやろうとすると非常に時間がかかります。一方で、マインドマップを使うと、統合的な思考を簡単に行うことが可能なのです。

KJ法*
ブレストや取材などによって得られた情報を整理し、仮説構築、問題解決に結びつけていくための方法。KJ法という名は、考案した文化人類学者、川喜田二郎氏のアルファベット頭文字からとられた。

――なぜ、マインドマップを使うと統合的な思考を簡単にできるのですか。
マインドマップは360度方向に放射状に書いていくため、「全体を見渡しやすい」という非常に優れた特徴があります。そのために統合的な思考がしやすいのです。
まず、得られた情報や発想をどんどんマインドマップに書き出します。ある程度書き出したら、俯瞰します。俯瞰した際に、新たなつながりが発見できたり、全体のどこが重要かがわかったりすることがあります。そうしたら、そこに矢印を書き込んだり、クラウドマーク(雲の形のマーク)を書き入れたりします。こうした作業をしているうちに、自然と思考パターンが統合的になっていくのです。

「連想」「イメージ」「全体性」の3つの特徴

――マインドマップの特徴は他にもありますか。
マインドマップには、「連想」「イメージ」「全体性」の3つの特徴があります。
まず、「連想」についてですが、マインドマップは何を書いているかというと、脳が自然に行っている連想を書いているのです。ですので、マインドマップは思考の結果ではなく思考のプロセスを書いているものであるとも言えます。
マインドマップが思考の結果を書くものだと誤解してしまうと、構造的になっていないといけないと考えてしまいがちです。ところが、本来、脳はランダムに発想しており、最初から論理的な構造を作るようには思考していません。マインドマップはこうしたランダムな脳の働きを「見える化」しているようなノートなのです。
連想というのは、なんらかのきっかけに紐づいて、つながって、考えが浮かんでくるわけですが、どんどん連想が続いていくと、最初のきっかけからは、かけ離れた考えに変化してしまいます。
何かを考えようとしても考え続けられないのは、連想が持つ、「最初のきっかけからだんだん離れていってしまうことがある」という性質のためです。
ですので、マインドマップに連想を書いて、見えるようにすれば、考え続けるのが楽になるわけです。
人間の脳が自然に行っている連想を書いていく点が、マインドマップの大きな特徴です。
次に、「イメージ」についてですが、人間の脳はイメージを使って考えているということはおわかりいただけますでしょうか。たとえば、「りんご」という言葉を聞けば、頭の中に赤いりんごの様子が思い浮かんだり、りんごを食べた時の食感や味が浮かんだりします。
マインドマップはこのイメージを上手く活用しているツールでもあります。マインドマップそのものがイメージに見えますし、マインドマップの中には、イメージをふんだんに描き入れます。
イメージは人間の記憶に残りやすく、また直感的にわかりやすいという特徴を持っています。マインドマップが一目でわかりやすく感じたり、勉強などに役に立つのは、イメージを使っているからです。
最後に「全体性」です。マインドマップは360度方向に放射状に広げていく形で書いていくために全体を見渡しやすいということは、先ほどお話したとおりです。全体を見渡せるために、分解的ではなく、統合的な思考がしやすいのです。
マインドマップは、脳に自然な思考ツールです。脳がどのように働いているのかを理解し、脳が自然とやっていることを上手く活かしながら、考えることを楽にするツールと言えるでしょう。
記憶や勉強、発想など、いろいろなものに使えます。
――マインドマップは実際にはどのように使われているのか、事例をお聞かせください。
企業でもマインドマップを用いた思考法に関する研修などが増えています。また、学校でも、使いたいと考えている先生方がたくさんいます。小学校から大学まで勉強に役に立つということで、先生方が、うちのスクールに大勢いらしていますね。
――科目に関係なく使えるのですか。
理科や社会のような、覚えることが多い科目には非常に良いですね。あとはキャリア教育などにも、かなり役立つでしょう。
医療業界でも使われていますね。たとえば、カンファレンスでマインドマップを使うと、それぞれの専門家が持っている情報が一枚の中に一目で見える。そうすると、「この患者さんにどういうふうに対応したらいいか」を一緒になって考えやすい。これはひとつの会議ですよね。

全員の意見を反映させるグループマインドマップ

――マインドマップは一人で考えながら書くイメージがありますが、ブレストなど複数人で議論しながら書く場合はどうすればよいのですか。
その場合は、グループマインドマップを使います。グループマインドマップは、まさしく会議に使うマインドマップです。グループマインドマップの利点は、全体を俯瞰しやすいこと。また、色、形、矢印などを多用できるので、直感的にわかりやすい。
――ホワイトボードや模造紙を使ってやるのですか。
そうです。もし、会社の中に大きなホワイトボードがあれば、みんなでどんどん書けばいいですよね。マグネット式のホワイトボードを使い、鉄板の入った壁に貼るなどすると便利ですね。ない場合は模造紙で問題ありません。
まず、各自が自分の考えを各々のマインドマップに書きます。これはA4の用紙などを使い、ミニマインドマップという簡易的なもので構いません。次に、それぞれが書いたマインドマップの内容を1枚の大きなマインドマップに書き出します。これによって何も発言しない人がいなくなります。
こうして、全員の意見をマインドマップ上に“見える化”する。それを見ながら話し合いを進めていく感じです。非常に早く、全員の考えを“見える化”できるので、会議のスピードが上がります。マインドマップは、文章は使わず単語で書いていくので、文章が苦手という人でもとっつきやすいのです。

正解のない時代に求められるファシリテーター型のリーダー像

――会議でのマインドマップの活用法は、他にもありますか。
会議でマインドマップを使う別の方法として、ファシリテーターが板書として、マインドマップにみんなの意見を書いていくという方法もあります。ファシリテーターは、出てきた意見を、なるべくすべてマインドマップの上に書くようにし、書きこぼしがないようにすると良いでしょう。マインドマップの上に全員の意見が「見える化」し、話し合いがしやすくなるはずです。
会議を生産的なものにするには、参加者が「一緒に考える」場になっているということが何より大切です。話し合っている内容や各々の考えが共有されなければ、一緒に考えることは難しい。マインドマップを使えば、共有が非常に上手くいきます。
――会議では、リーダーの方がファシリテーター役を務めることが多いかと思いますが、ファシリテーターとして意識すると良いことはありますか。
ファシリテーターというのは、コンテンツ(話し合っている内容)ではなく、プロセスを管理するのが仕事です。プロセスとは、その場で起きていること。場の雰囲気なども含みます。たとえば、会議の最中、上の立場の人が下の立場の人に同調圧力をかけていないかなども観察します。同調圧力があるような場では、メンバーが一緒に考えることはできませんね。こういう場合には、ファシリテーターは介入します。チーム活動が適切に行われるように場を管理し、場に介入するのがファシリテーターの本来の役割です。
時々、ファシリテーターの役割を、会議を仕切ることであるように誤解しているケースが見られますが、会議を仕切るのはファシリテーターの仕事ではありません。ファシリテーターというのは、チーム活動の促進者ですから、主役はチームメンバーなのです。会議でマインドマップを使うと、視覚的にメンバー間の考えの共有が促進されますので、会議のプロセスがより良いものになっていくと考えられます。
また、現代においては、優れたファシリテーターは、優れたリーダーでもあります。昨今、多くの組織においてファシリテーター型のリーダーシップが求められています。その背景には、現代という時代が非常に環境変化の激しい時代であり、正解が見えなくなっていることがあります。
たとえば、現代社会はよくVUCA(ブーカ)の時代などと呼ばれています。
「VUCA(ブーカ)とは、
Volatility(変動性)
Uncertainty(不確実性)
Complexity(複雑性)
Ambiguity(曖昧性)
という4つのキーワードの頭文字から取った言葉で、今日の経営環境や個人のキャリアを取り巻く状況を表現するキーワードとして使われています。
つまり、現代社会は、非常に複雑で、また不確実で、環境変化が非常に早く、リーダーであっても正解がわからない時代ということです。こういう時代におけるリーダーは、みんなの力を集めて、みんなが持っている能力を引き出すようなことをしなくてはならない。全員がリーダーシップを発揮できる状態に持っていくのが、いまの時代のリーダーの役目です。それは、まさしくファシリテーターがやっている役割と同じと言えるでしょう。

文・鈴木涼太

塚原美樹(つかはら みき) 株式会社ヒューマン・リスペクト
株式会社ヒューマン・リスペクト 代表取締役。人材・組織開発コンサルタント、中小企業診断士。「マインドマップの学校」主催者。上智大学卒業後、メーカー勤務等を経て2004年に株式会社ヒューマン・リスペクトを創業。2006年、マインドマップの開発者であるトニー・ブザン氏のトレーニングコースに参加。日本におけるマインドマップ普及の黎明期からその活動に参加している。2019年、マスター・インストラクターに就任。日本におけるマインドマップ・インストラクター養成を担当する。著書に『マインドマップ戦略入門』がある。

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