ファシリテーションは問題を解決するのではなく、価値を創造すること 【スマート会議術第109回】

ファシリテーションは問題を解決するのではなく、価値を創造すること 【スマート会議術第109回】株式会社ピープルフォーカス・コンサルティング 田村洋一氏(左)/松村卓朗氏(右)

2019年の法案施行後、各社が働き方改革に本格的に取り組みを進めている。しかし、その成果は各社さまざまだ。成果が出る会社と出ない会社の違いはどこにあるのか。それは会議のやり方に如実に表れるという。会議は企業の「効率化・活性化・創造化」が図られているかどうかを見極めるリトマス紙だからだ。

ピープルフォーカス・コンサルティングは、会議にとどまらず、社名を構成する「ピープル」「フォーカス」「コンサルティング」という3つの言葉にその経営理念を反映した経営コンサルティング会社だ。ピープルすなわち人と、人の集合体としての組織にフォーカスし、真の変革を共に目指す。メンバーの持つ情熱、夢、想い、アイデアを最大限に引き出し、一人ひとりのメンバーが主役となって変革を進めるよう後押しをしていく。

同社の代表である松村卓朗氏と顧問を務める田村洋一氏に、働き方改革における会議、ひいてはファシリテーションの重要性について語ってもらった。

目次

ファシリテーションでわかる企業の「効率化・活性化・創造化」

――働き方改革が進む中、なぜファシリテーションの重要性が問われるのでしょうか。
松村:同心円と異心円という言葉がありますが、かつては上司の経験や考えといった能力は、上司が答えを全部わかっていて同心円の大きな円の中にいました。まだ経験や知恵が浅かったりする部下は小さい円の中にいます。そうすると当然、部下たちの知恵や経験を聞いたところで、この範囲の中だからあまり意味がない。上司の言うことに従っているほうが効率がいいということだったと思うんです。
でも、いまは異心円で中堅や新人の部下は上司に比べると経験も知恵も小さいけど、少なくともはみ出た範囲は、上司には考えつかないようなアイデアが出るはずなんです。このほうが、より面積も大きくなってくる。こういう考え方が、むしろ必要なんじゃないかという流れです。正解が誰もわからない。一人の経験だけでは通用しない時代になってきたからなんだと思います。 
――そのときにファシリテーションは、どう生かされていくのですか。
松村:上司が答えをすべて持っているという前提ではなくて、経験の豊富な、あるいは知恵も能力もより大きいものを持っているかもしれない上司も、虚心坦懐に部下たちのアイデア、考えを聞く。そこに純粋にヒントがある。みんなで話し合う。そういう場にできるかが、ファシリテーションに求められることなんだと思います。 
田村:もちろん、昔から会議をどう運営するかという考え方・やり方はありました。ミーティングマネジメントとかロバート議事法*1とか、昔からあったんです。ただ、ファシリテーションというのはちょっと違うところがあって、ミーティングをいかに効率的に創造的に生産的にするかではなくて、そもそもチームや組織で仕事をするときに、何か成果を生み出す。それはプロジェクトの最初であれば、「何を求めてやるか」「どういうアイデアでやるか」「どういうふうにやろうか」というアイデアの段階で、それをプランニングして実行して、結果を出すという段階になっていく。
そうすると、ファシリテーションは単にミーティングマネジメントではなくて、いかにつくり出すかっていうことなんですよね。だから、従来の会議運営とかミーティングマネジメントとファシリテーションというのは、そこがちょっと違うんですよね。
――ミーティングマネジメントというのは、何が最終目標なのですか。
田村:従来の伝統的なミーティングマネジメントは目的を明確に定義して、それを共有して、時間や制約の中でしかるべき成果を上げる。これがミーティングマネジメントです。ファシリテーションは会議のマネジメントではなくて、もっと大きな範囲になります。プロジェクトや組織で、ひとつの仕事のユニット、仕事の単位が会議であるということです。だから会議をやらないというのも、ひとつの手段ですよね。
松村:あと、ミーティングマネジメントとの違いで言うと、いい会議のイメージがちょっと違うのだと思います。いい会議に出たことがないので、いい会議のイメージが湧かないと言う人が多い。いい会議というのは、「効率化・活性化・創造化」なんです。
ミーティングマネジメントだと考えている人は、効率的な会議をすることがいい会議だと思い込んでいるふしがあります。でも、納得感を得るためには、ちょっとぐらい効率化を横に置いといても時間延長してでも、みんなが言いたいことを言い尽くすというのも必要です。それが活性化です。
それからもうひとつ、何か新しいことが会議を通じて生まれる。それが創造化。何も生まれない会議は少なくないですからね。

ロバート議事法*1
1876年に米国陸軍少佐ヘンリー・マーティン・ロバートによって発表された4つの権利と4つの原則で構成される会議のルール。

「問題解決病」に蝕まれた会議

――「効率化・活性化・創造化」 の3つの要素の中で、特に弱いという傾向はありますか。
松村:典型的な日本の大企業の多くは活性化に問題意識を持っています。発言が出ないとか、偉い人だけがしゃべっているとか、そういう企業はすごく多いです。ただ、働き方改革の文脈で言うと、多くの企業が効率化に関心を持っている気はします。
田村:日本の企業に限らないかもしれないですけど、特に日本的な「空気を読む」とか上下関係とか人間関係にすごく気を遣うところで、活性化が起きていないのは顕著ですね。それと、いつまでたっても終わらないとか、時間がかかるという効率の問題。これが目立った問題として目の前にあるので、創造化は後回しになっているんですよね。効率が悪かったり、みんなの活気がなかったりすれば、創造化どころじゃないっていうことで後回しになっている。
でも、「効率化・活性化・創造化」 は三位一体なんです。まず効率的にして、それから創造性じゃなくて、会議が本当に生み出す場になれば、みんな活性化するし、効率も上がるはずです。盛り上げていこうとか、何か生み出していこうとか、つくり上げていこうってみんなが思ったら自ずと活性化しますよね。創造性は根本的には個人の中から出てきて、それが集団の中でもまれて一人ひとりの総和以上のものになっていくものです。一人ひとりが活性化して、その場にエンゲージして打ち込んでいれば、それは創造性になる。
だから、現状を分析すると、「効率は悪い、活気もない」となるのですが、分析のために分けて考えるのではなくて、実際にやるときは3つが一緒だと思います。
――創造化は難しいから後回しになりがちということですか。
田村:そこまで頭が回っていない人が多いのだと思います。会議が何かクリエイティブなことを生み出すというのは、大半の人にとって経験をしたことがない。「クリエイティブ」というと、クリエイターと呼ばれるような業種の人たちの話で、自分たちとは関係ないと思っている人が多いんじゃないですか。ところが違うんですよ。別に特殊な職業、クリエイターだけがクリエイティブであるわけじゃなくて、みんなクリエイティブであるべきなんです。
ずっと同じ環境にいるから、違う世界があるということがわからない。だから会議の間、眠くなる。いかに眠らないか、いかに適当に内職するかっていう感じですよね。
松村:企業の会議を具体的に分析してみるとよくわかるのですが、多くの会議のうち8割が説明なんですよ。誰かが説明している時間が8分あると、ディスカッションが2分ぐらい。この繰り返し。会議の時間が長くなる一番の原因は、報告・情報の共有が多いからです。
たとえば、エンジニアが出てきて50分ぐらい説明します。役員がずらっと並んでいるのですが、専門的な話が延々と続いて半分くらいは居眠りしてるんですね。それで50分経ったあと、役員が「ところでさぁ、あれはどうなってるの?」と聞いてくる。プレゼンで話していないことを聞いてくる。知りたいことだけ必要なことだけを共有すればいいのに、自分がどれだけ頑張ってるのか、この製品をつくるのにどれだけ大変だったということを延々と説明し続けるという、ちぐはぐなことをやっている。
――でも、エンジニアは会議で説明しろと言われて、ちゃんと準備して真面目にやっているわけですよね。
松村:そうです。30ページぐらいの準備をして…。だから、誰も聞いていないような「お経のような」情報共有・報告をどうやって減らすかが、時間の効率化のキモだと思います。問いをちゃんと設定するのが、ファシリテーターの仕事。最初に「問いは5個です」と決めればいい。コストがどれぐらい必要なのか、追加投資はどれぐらい必要なのかとか、判断するのが5個だけだとわかっていれば、それに必要な情報だけを出せばいい話なんです。問いがちゃんと設定されてない。
田村:いわゆる「問題解決病」です。問題があると、解決したくなるじゃないですか。問題って、叩けば無限に出てくるものです。ちゃんとプレゼンしようと思うと、無限にやることがあるんですよ。だから、制限された時間の中で盛りだくさんのことをやってしまう。
でも、ここでは「イエス」か「ノー」が出ればいいわけです。ここまで絞ってやれば、エンジニアも役員もみんなそこにフォーカスできる。だけど、みんな知識や経験とかアイデアとかがあるから、知りたいこと、わからないことにどんどん向かっていくんです。問題があると解決したくなるという意味で「問題解決病」って呼んでいるのですが、そうじゃなくて何をつくり出したいかなんです。これはまったく違う姿勢なんですよね。
松村:解決より問題設定のほうが重要だと思います。問いが不明確なのに、解決しようとしてしまっていることが多い。働き方改革の文脈で言うと、生産性が低い原因のひとつがムダな忖度だと思っています。
たとえば株主総会や国会もそうですが、会議のときに上司に恥をかかせないように想定質問を事前に用意しておくのが優秀な部下だと思って、忖度するわけですね。だから事前に夜遅くまで頑張って資料を作って、「よくやったな」と言われる。本当は上司が「どんな質問が来ても、その場で答えるよ」と言ってしまえばいいだけの話なんです。

会議で意見を言うことは上司の仕事ではない

――ムダな忖度を避けるにはどうすればよいですか。
松村:いくつかの会社でファシリテーションとセットでよく取り組むのですが、「上司が会議に出ない」という会議をやるんです。上司の仕事は問いを設定するだけ。この会議では何の問いに答えればいいか。たとえばクレームが起こっていて、「クレームを何とかしろ!」と言われて困っている。
問いが明確じゃないのに会議を招集して、上司もその場にいる。みんな意見も言いにくくて、何も解決されない会議が多いわけです。「クレームを何とかしろ!」と上司は言うけれど、クレームを3割ぐらい減らせばいいのか、7割ぐらい減らさなきゃいけないのか、解決したイメージがわからない。
だから、ファシリテーターが事前にどうなったら問題が解けたことになるのかということを上司と詰めます。これをやってから「わかりました。じゃあ7割ぐらい減らす、コストはこれぐらいかけていい、という解決策ならいいですね」と言って合意して、問いを明確にしてから会議に入る。
上司の仕事は、会議でしたり顔でちょろちょろと意見を言うことじゃないんです。全員がいる場で、全員の時間を取ってやる必要はない。「7割のクレームを解決する策を考えてくれ」ということだったら、「それがクリアできなかったら、もう一回考えろ」でいいんです。
――上司は具体的に問われないと、往々にして何をどうすればいいのか考えていないことはありそうですね。
松村:「なんかクレーム多いぞ。ちょっと何とかしてくれ」と言って、「わかりました」って会議して、「何だっけ?」みたいになるっていうね。すごく多いです。
田村:会議のやり方以前に、仕事に対する姿勢なんです。クレームが多いとか、トラブルが多いとか、問題に対して反応する。それで反応が良ければ解決する。これがほとんどの仕事になってしまっているマネージャーが多いですけれども、本来マネジメントは価値を生み出すことです。
クレームがあったら、クレームから何かを学んで、価値のあるサービスなり、ビジネスなり、関係なりを生み出すことですよね。ですから、問いの設定が間違っているんです。設定すらしていないということかもしれないですよね。
田村:問題解決よりも問題発見をするのは、それは火がついているから消すのではない。どの火を消すのか、何をやるのかって選択する、フォーカスするっていう意味では一歩前進だと思います。
でも、本来ビジネスでやるべきことは問題解決じゃなくて、価値の創造です。ピーター・ドラッカーは「ビジネスの目的は何か。利益を生み出すことじゃない。顧客の創造だ」と言っています。だから、ビジネスをすることで顧客が生まれるわけで、顧客がいてビジネス、顧客に対応してビジネスをやるんじゃない。ビジネスをやることの目的は顧客の創造です。
何か問題があるからやろうではなくて、これをやったら、お客さんがいたり市場があったりして、そこで新たな需要が喚起されて、新たなビジネスになる。ビジネスを提供した会社は報酬をもらい、使った人たちはメリットを享受する。まさに価値の創造をやっているわけです。これは営業や事業開発だけじゃなく、経理だろうが総務だろうが人事だろうがシステムだろうが全部同じです。

文・鈴木涼太

松村 卓朗(まつむら たくお) 株式会社ピープルフォーカス・コンサルティング
株式会社ピープルフォーカス・コンサルティング代表取締役。横浜国立大学経済学部卒業。2003年、ピープルフォーカス・コンサルティング(PFC)に入社。経営幹部のリーダーシップ開発を伴う組織開発や、理念浸透を軸とした組織変革支援等のプロジェクトなど、その設計から運営支援まで、数多くの案件を手がけてきた。また、若手から経営陣までの幅広い層を対象に、リーダーシップやファシリテーションなどをテーマとした研修を提供している。2012年、代表取締役に就任。 PFC入社前は、ブーズ・アレン・ハミルトン社およびジェミニ・コンサルティング社の東京事務所でシニア・コンサルタントを歴任。化学・電機・製薬・建設・電力・食品・通信・コンピューター・アパレルにまで多岐にわたる分野での変革支援実績をもつ。主な著書に『勝利のチームマネジメント サッカー日本代表監督から学ぶ組織開発・人材開発』(竹書房)『組織開発ハンドブック』(共著/東洋経済新報社)『グローバル組織開発ハンドブック』(共著/東洋経済新報社)ほか。
田村 洋一(たむら よういち) 株式会社ピープルフォーカス・コンサルティング
メタノイア・リミテッド代表。上智大学外国語学部卒業。バージニア大学ビジネススクール経営学修士(MBA)。野村総合研究所、シティバンク等でプロジェクトマネジメントを担当、外資系経営戦略コンサルティング会社で、企業、政府機関のプロジェクト組織運営に携わる。新規事業立ち上げ、戦略的人材育成・スキル開発に造詣が深い。現在はエグゼクティブコーチングやマネジメント・トレーニングを通じてリーダーシップ開発、人材育成、組織開発、企業人育成に携わる一方、システム思考やディベート教育などの研究活動にも力を入れている。著書に『プロファシリテーターのどんな話もまとまる技術』(インプレス)『組織の「当たり前」を変える』(ファーストプレス)『人生をマスターする方法』(ライブリー・パブリッシング)『ディベート道場――思考と対話の稽古』(Evolving)、翻訳書に『偉大な組織の最小抵抗経路 リーダーのための組織デザイン法則』(Evolving)ほか。

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