プレゼンは相手の反応を見ながらつくるストーリーが必要【スマート会議術第118回】

プレゼンは相手の反応を見ながらつくるストーリーが必要【スマート会議術第118回】株式会社アンド・クリエイト代表取締役社長 清水久三子氏

年齢・性別に関係なく、誰もが自己肯定感と充実感を持って活躍する社会の実現。それが清水久三子氏の考えるダイバーシティ(多様性)だ。清水氏は人材育成コンサルタントとして、個人には望むキャリアを実現し、切り拓く力をつけるプログラムを提供。法人には多様な人材が生き生きと働ける環境と成果に結びつけるためのダイバーシティ&インクルージョンプログラムを提供。

ダイバーシティ&インクルージョンとは、性別、年齢、国籍、人種、民族、宗教、社会的地位、障がいの有無、性的指向・性自認、価値観、働き方等の多様性を互いに尊重し、認めあい、共に活躍・成長することができる職場環境・風土づくりを進めることだ。

ダイバーシティが進む時代、人はバックグラウンドの違う人たちに何かを伝え、コミュニケーションを通じて、相互理解をするためにプレゼンを行わなければならない。では、相手に伝わる理想的なプレゼンとはどんなプレゼンだろうか。自らも「プレゼンは大の苦手だった」と語る清水氏が見つけたプレゼンの極意について語ってもらった。

目次

求められるダイバーシティ

――独立されてからのコンサルティングではどういったニーズが一番多いですか。
私はもともとプライスウォーターハウスクーパースというコンサルティング会社で、企業変革戦略や人材育成を専門としてやっていました。2002年にIBMにグローバルで吸収統合されて、以来IBMでコンサルタント、人材育成部門を経て、2013年に独立していまに至ります。
テーマとして大きいのはダイバーシティ(多様性)、ワークライフバランス、生産性向上というのが、この数年間のトレンドですね。特にダイバーシティというテーマが結構大きくて、その文脈で女性の活用と生産性向上が大きな流れになっています。
――ダイバーシティのニーズが増えた理由にはどんな背景があったと思われますか。
直接的には安倍政権が推進する「すべての女性が輝く社会づくり」が大きいと思います。あとは外国人の方と働く機会が増えたり、男女を問わずフルタイムで働けない方も増えてきたりしているので、そういった方たちをどうマネジメントしていくのか、活用していくのかというところが、企業としての課題になってきたという傾向があります。
また、育児や介護を抱えている方も増えてきて、いままでのように均一に働ける方がどんどん減ってきている。彼らをどう評価し、どのように働いてもらったらいいのかというのが課題になってきたことがあると思います。

プレゼンのあとは必ずフィードバックをもらう

――著書『話しベタさんでも伝わるプレゼン』に、「プレゼンはそんなハードルの高いものじゃないという意識を持って」というくだりがありましたが、話すのは苦手という人が誤解しがちなことは何ですか。
話が流暢だから上手いという話ではまったくなくて、話の中身がしっかりしているかどうかが、話し方以前の問題としてあります。話し下手な方って、話が散らかってしまう方が結構多い。こっちの話、こっちの話、ああ、これもいま思いついちゃったみたいな感じで、むしろ言葉数が多い人でもいるんですよ。
本当に話し上手な人って、実は言葉の数とかすごく少なかったりするんです。伝えることがシンプルに凝縮されているので、たくさん話さなくても大丈夫なように準備されているのが、話し上手な方だと思います。話し下手な方は、そこを凝縮してまとめきれていないので「ああでもない」「こうでもない」と、長くなりがちというところがあります。
――口数の少ない人は話すのが苦手、口数が多い人は話すのが得意という意識がある気もします。
本当に話が上手い、得意と思っている方でも大抵はできてないので、そこは気にしないことです。あとは、話が下手であってもプレゼンの成功とは関係ないということを、まず意識として持つべきだと思います。
上手く話せたからプレゼンが成功した、全然口数が少なかったからプレゼンがダメだったという因果関係にはならない。口数は少なくてもいいとか、話は下手でもいいというわけではないですが、まずは話が得意ではなくても構わないと自覚することが大切だと思います。そこがスタート地点となって、いかに楽に話せるようになるかを考えていくことだと思います。
口数が多いけど話が散らかる人は、自分ではちゃんと話せているつもりになっていることが多い。でも、時間をオーバーしたり、自分ではちゃんと伝えたつもりなのに質問がやたら多いのは、伝え切れていないと自覚したほうがいいですね。ちゃんと伝わってないのであれこれ質問される。自分ではペラペラ話しているから大丈夫だと思っているかもしれないけど、実は時間を延長してしまう人は、話は上手くないと自覚したほうがいいです。
会議時間とか持ち時間とかもめいっぱい使って、さらに時間が足りなくなったというのは、話し上手とはいえない。時間が足りなくなってしまう方は、実は話し上手ではなく、話し下手です。まとまりがないということなので。
――流暢にペラペラ話せるけど、聞いていても全然頭に入ってこない人。でも、散らかってもいない。この人の話はなんでこんなにつまらないんだろうって、よく思うことがあります。そういう人はどのように捉えればいいですか。
たとえば商品を説明するときに商品の特徴だけの説明になっていると、聞き手にとってどんないいことがあるのか伝わらない。それはそうかもしれないけれど、面白くないとか、興味は持てないとなってしまう。相手の心を動かすためには、「これはおそらく相手にとっては当たり前だろうな」「これは普通だろうな」と、相手に伝えたときの反応を見ながらつくるストーリーが必要なんですよね。インパクトを与えなくちゃいけないとか、心を動かさなくちゃいけないということで初めて面白いストーリーになるので、プレゼンのストーリーも単に流れているからOKじゃなくて、ここでつかむとか、ここで揺さぶるみたいなことを考えないと、いくら流れるように話してもまったく残らず、すぅ~って逃げていくと思うんです。
――そういう人はどうすればいいですか。自分で下手だという自覚を持ちにくいと思うのですが。
そうですね。相手にとっての意味って何だろうと考えるのと、相手からフィードバックをもらうことを心がけたほうがいいと思います。講師をやっていると受講者からのアンケートでフィードバックをいただくのでそこでわかるんです。今回は響いていないとか、冗長だったなとか、ここはわかりにくいんだなということがわかるので、それで直していけるんですよね。話しただけで満足して終わってしまう人は、ほとんどフィードバックをもらってないと思います。プレゼンが終わったあとは、必ずフィードバックをもらったほうがいいです。

「届けたいのはこの人だ」と、自分の中で仮想の相手をつくる

――一対一と一対n(大勢)の場合でプレゼンの仕方は変わってきますか。
意識としては、少ない人に対してのほうが語りかけるという意識を強くもつところがポイントです。相手に向けて語るという意識が一番必要になってきます。
大勢になってくると、みんな興味関心がバラバラになるので手探りになってくるところがあります。なので、首をひねったなとか、小さな反応をつぶさに拾いながら、語りかけるというよりは探りながら次の言葉を探していくところが一番大きいところだと思います。
探りながらと言いつつも「届けたいのはこの人だ」と、自分の中で仮想の相手をつくっておいたほうがいいです。ただ、いろいろな人が来ているので、どういうところに興味がある人が多いのかなどは一応探るんですけど、それ以上に「私はこの人に届けたい。その人が役に立つものを届けたい」というところを絞っていけば、そんなにブレることはないと思います。
――聴衆が100人か10人かは関係なくブレなければターゲットを絞ったほうがいいのですね。
そうです。限られた時間内でのコンテンツになってくるので、「この人に届けたい」という思いが先にないと総花的な話になってしまうので、「この人に向けた、とっておきのエピソード」とテーマを絞って決めておくのが大切だと思います。
一応、意識は全体に向けつつ、「この人に届ける」というのがいいですね。「今日は時間がないので、これを中心に話します」と言いつつ、「もし違うことが聞きたいとか、もっとこういうことが聞きたいという場合は、終わったあとに質問してくださいね」という感じで、全体はフォローしたほうがいいです。その意識がちゃんと届いていますよというところは見せたほうがいいので、そう言いつつも、今日はこの話をするっていうふうに、絞ったところに持っていくって感じですね。

緊張と上手につきあう

――大勢の前で話すときはとかく緊張しがちです。この緊張はどう克服していけばいいですか。
数を重ねれば多少の慣れはあります。ただ、ほぼ毎日登壇する私でもまったく新しいテーマで話すときは、すごく緊張するんですよね。慣れている内容で話すのであればそれこそ場数なんですけど、新しいテーマを扱うときは初めてと同じぐらいに緊張します。同じテーマで慣れて話せるようになるのはもちろんありますが、やっぱり緊張はするものなので、慣れなきゃいけないということではないと思います。
――スポーツでもある程度の緊張感がある大舞台のほうがいい記録が出るという話はよく聞きます。緊張すること自体が悪いことではないということですよね。うまく緊張とつき合うにはどうすればいいですか。
緊張に翻弄されてしまうと良くない結果を生んでしまいます。予めどういう緊張症状が出るのかを把握しておくことです。たとえば頭が真っ白になる、声が震える、汗が出る、早口になるなど、自分はどういう緊張症状が出るのか。どういうシチュエーションだと緊張するのか。その両方を自分の中でわかっておくと、汗が出る人だったら当然ハンカチを持っていくといった準備ができますし、こういうシチュエーションは緊張するんだなと思ったら、できればそのシチュエーションを事前に何度か経験するようにリハーサルをしておくことです。
いきなり大勢の前に出ると緊張するというのはよくある話なんです。なので、始まる前になるべくその舞台に何度も立つようにしておく。場が違うと緊張するという話なのか、特定の相手に緊張するのかで対策も変わってきます。たとえば、怖い上司の前だと緊張するのか、大勢いると緊張するのか、場所が広いと緊張するのか、相手が女性だと緊張するのか。いろんなパターンがあるので、どういうシチュエーションは緊張するのか、どういう症状が出るのか。これを把握しておくのが大切です。
緊張にもパターンがあるので、ほかの人のプレゼンを見ても参考になると思います。研修でもよくやるんですけど、研修で普通に席に座って話すときは全然緊張しなくて、普通に話したり質問したりできるんですけど、「前に出てきて話してください」って言うと、とたんに緊張しちゃうんですよね。席に座っていれば緊張しない。前に出て立つと緊張するという方もすごく多いので、そういった方は前に出て声を出すというのをやっておかないとダメですね。ぶっつけ本番でやるっていうのは、かなりリスクが高いと思います。
清水久三子(しみず くみこ)
大手アパレル企業を経て、1998年にプライスウォーターハウスコンサルタント(現IBM)入社後、企業変革戦略コンサルティングチームのリーダーとして、多くの新規事業戦略立案・展開プロジェクトをリード。大規模・長期間の変革を得意とし、高い評価を得た。「人が変わらなければ変革は成し遂げられない」との思いから、専門領域を徐々に人材育成分野に移し、人事・人材育成の戦略策定・制度設計・導入支援などのプロジェクトをリード。IBM在職中に3冊の書籍を出版。第1作は産休取得前、第2作は育児休業中、第3作は復職後に執筆。10刷を超えるベストセラーとなる。2013年に独立。執筆・講演を中心に活動を開始。講師としては、大前研一ビジネス・ブレークスルー、世界最大動画教育プラットフォームUdemyなどでコースを多数持つ他、日本能率協会、宣伝会議、SMBCコンサルティング、三菱UFJリサーチ&コンサルティング、みずほ総合研究所など大手銀行系の研修提供会社で講師をつとめ、高い集客と満足度を得ている。

文・鈴木涼太
写真・大井成義

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