人生に合わせて働き方や暮らし方を選べる社会にしたい【スマート会議術第139回】

人生に合わせて働き方や暮らし方を選べる社会にしたい【スマート会議術第139回】株式会社tsumug 代表取締役 牧田恵里氏

TiNK(ティンク)」という鍵のデバイスから始まったスタートアップのtsumug。コネクティッドロック「TiNK」は単体でLTE通信ができる電子錠。そして、「TiNK」を皮切りに、空室利活用サービス「TiNK Desk」と「TiNK Office」を展開。そこには単にシェアオフィス、コワーキングスペースという枠に収まらない理念があった。

「そもそも1社でできることは少ないので、いろいろなパートナー企業と縁をつむいで、一緒に新しい価値を創造する」

tsumugの創業者・牧田恵里氏はそう語る。社名のtsumugは、着物の「紬(つむぎ)」という言葉から生まれたという。

コロナ禍の影響でリモートワークが進む今日、リモートワーカーやフリーランス、学生などが時間単位で使えるセルフワークスペース「TiNK Desk」」と空間全体を一企業やプロジェクトメンバーと専有して使える空間サービス「TiNK Office」は、そういった人たちが企業や組織という枠にとらわれず自由につながって働ける場を提供する。

「多種多様な人たちが心地よいと感じるものをどんどん生み出していこうという考えで空間サービス「TiNK」を進めています」

長く続く日本企業の停滞。それを打破するために提唱された働き方改革。果たしてリモートワークは働き方にどんな影響をもたらすのか。牧田氏が考える未来の働き方についてお話を伺った。

目次

生き残るのは「変化を恐れない企業」

――牧田さん自身がこれまでお仕事されてきた中で、理想とするワークスタイルはありますか。
個々人の関心に応じた役割分担ができるようになっていけばいいと思っています。たとえばルーティンワークが得意な人とか、事務作業が苦手な人とか、それぞれが関心を持っていることに近い役割分担ができると、もっと仕事を楽しめるし、自分の人生をかける意味が持ちやすくなるかなと思っています。
もともと「TiNK Desk」をつくろうと思ったきっかけが、フリーランスの方たちがどんどん増えてきていて、フリーランスの方たちの市場が世界的にもどんどん大きくなっている現状があったからです。日本のフリーランスの市場規模は2018年には20兆円を超え、年々成長しています(アメリカは154兆円https://www.lancers.co.jp/news/pr/14679/)。
フリーランスが増えてくると働き方もどんどん多様化していく状態になりますよね。たとえば、ハードウェアエンジニアにとっても、これまで製造になると工場にあるような専門的な機器が必要になるんですけど、DMM.make AKIBA(モノづくりのためのコワーキングスペース)のように個人で利用できる場所ができると、そのような機器を扱えるエンジニアや、作り手も増えてきますよね。これまでは大手メーカーにいないと作れなかったようなものも作れるとなると、それだけでも働き方も変わりそうです。
また、フリーランスや複業の方たちのあるように「一社だけに所属する」という意識も変わってくるかもしれません。これまでの“所属する”という考え方から、自分の関心に応じて働くことが選びやすくなったのかなって感じます。
たとえばtsumugは、いわゆる雇用の人はいません。ほとんどが業務委託でそれぞれのメンバーに権限と予算を渡しています。自分の専門領域は、その権限の範囲内であれば自分で選んで作業していい。自分の報酬額を満額にするケースもあるし、他のプロジェクトで忙しい月は仕事を半分にして半分の金額でアルバイト採用するとか。そういったことも選べる形にしています。
こうすると所属という考え方がまた少し変わったりしますよね。正規雇用だから、社員だからという条件で会社に所属するわけじゃなく、それぞれの関心に応じてプロジェクト単位で役割分担して関わってもらっているのです。
――最近、副業の副(サブ)ではなくて、複数の複で複業って言い方されますね。
tsumugも副(サブ)は使わないですね。複業って言っています。それぞれのメンバーが関心に応じていろいろなプロジェクトに関わるというのは、だいぶ考えやすくなってきている気はしますね。
リモートワークもコロナ禍でガラッと変わってきた。複業という考え方に関しては、いま大企業さんも変わってきています。たとえば、tsumugが4月に発足した「New Norm Consortium」というコンソーシアムがあるんですけど、いま34社(8月現在)の方々にご賛同いただいていて、上場されている大企業も多いんです。こういった方たちが、コロナ禍の中で職住環境がどうなっていくのか社会実装までやりましょうっていうのを目指しているコンソーシアムなんです。
こういったコンソーシアムに賛同いただいて、実際にワークグループでディスカッションをされていて、さらにそこから新しい事業も生まれ、法人化する例なども出ているんです。大企業の方たちもこの環境下で変化することにすごくポジティブなので、今後どんどん変わっていくんじゃないかと思います。
――働き方と暮らしを変える意識の高い会社はリモートワークでもいろいろ考えられたりしていると思います。今後リモートワークがうまく使える企業もあれば、うまく使えない企業も出てくると思います。勝敗の分かれ目はどこにあると思いますか。
言い方が難しいですけど、私の中の言葉では「変化を恐れない企業」になるかなって思います。新しい流れをどう捉えていくか、新しいことを社内でどう展開していくか。「これまで通りに会社に通勤して働くことに企業形成の価値があるんだ」と言う会社で従業員の方たちはリモートワークしたいって言っていたけど、上の方たちがそれを認めてくださらなかった。そんな中、コロナの感染者が出てしまって会社を封鎖することになったという例もあります。
価値として「こういうもの!」と思っていても、現状は外的環境とかの変化に対してどう動くべきなのかとか、どんな判断をしても、それが合っているか間違っているかというのは、結果が出てみなきゃわからない。ただ、変化に対応しないで停滞するとちょっと難しくなるのかなと感じています。

オンラインが限りなくリアルになるのは時間の問題

――オンラインでうまくコミュニケーションする方法はありますか。
私自身、いろいろトライしていますが、プレゼンテーションが変わってくるだろうなと考えています。7月末にIVS(インフィニティ―ベンチャーズサミット)という国内最大級のスタートアップカンファレンスインターネット協会のイベントがあって、そのスタートアップの甲子園みたいな「IVS LaunchPad」というプレゼンテーション大会にファイナリストとして登壇したのですが、オンライン環境での参加ということもあり、通信環境や音声がどう届くかなど、すごくセンシティブに考えました。
通信が切れないようにすることはもちろん、どのスピーカーマイクでやるのが音声が一番いいのか、表情がよく見えるためにはカメラをどう配置するのか、照明の構成をどうするのか、結構いろいろなことを試しながら当日を迎えたんですけど、それぐらいプレゼンテーションは変わってくるだろうなと思いました。顔を出すとか、どんなツールを使うかというところで、自分としていろいろなコツを体感したのはプレゼンテーションですね。これはもうどんどん変わっていくと思います。動画の出し方もEvernoteの創業者がつくったmmhmm(ビデオ会議ツール:https://www.mmhmm.app)もそうですけど、プレゼンテーションの仕方やオンラインミーティングが変わっていくんだろうなと実感しています。
株主総会や表情が重要になってくるようなプレゼンテーションのセットをどう整えるか。Zoomでも画面を出さないメンバーが多いときには、発言以外でどうやってコミュニケーションをとるか。うちはSlack、Zoom、esaといったドキュメントツールなど、基本的にリモートワークをしても問題がないようにさまざまなコミュニケーションツールを使っています。コミュニケーションという意味でいえば、映像と音声とテキストは全部同等のツールだと思っています。顔を出さないメンバーも顔を出さないから悪いってことではなくって、情報量が少ないからそのメンバーの情報量を増やすにはどうしたらいい? みたいな感じのコミュニケーションでいいかなって。
たとえばDiscord(ゲーマー向けチャットツール)のような別のツールを使ったりもしています。もともとはオンラインゲームの対戦者同士とか、オンラインゲームで一緒に戦っているメンバーがコミュニケーションをとるためのツールとして使われているので、オンラインでのコミュニケーションのしやすさが発達しているんです。Discordのように、いままでオンラインゲームのコミュニケーションで使われていたものがゲーム以外で便利に活用されそうですよね。
テキストベースや音声で特定の人の声が大きくなるとか。複数人で話していても一部だけ2人で会話できるような状態にしたりとか。そういったリアルに近いコミュニケーションがとれるツールが増えてくるので、そのへんはtsumugに合う形を考えながら積極的にどんどん試していきたいです。
――雑談や居酒屋などで大人数のときにでも、結局しゃべる相手は近くにいる2~3人になりますね。いまはオンラインだと平等だからかぶせづらい。でもそういう問題が解決するのも近そうですね。
そうですね。本当におすすめなんですけど、六本木にawabarというバーがあるんですけど、そのオンライン版でawabar.onlineというのがあって、Discordを体感できるんですよ。本当のバーでその場にいる人たちと会話をするのですが、みんなの声がかぶっても聞こえるので、しゃべりたい人の音声を大きくすると、その人と会話できたりします。これawabar.onlineで体験できるのでぜひ試してみてほしいです。本当に居酒屋行った感じが体験できますよ。awabar.onlineはDiscordを一番ラフに体験できる場所かもしれません。
――tsumugとして、今後どういうふうに成長していきたいというふうに考えていらっしゃいますか。
働き方や暮らし方を自分たちの人生の時間に合わせて選んでいただける、選ぶ選択肢が増えていく世の中になったらいいなぁって思っています。tsumugは「それぞれの心地よい居場所で世界を埋め尽くす」というビジョンを掲げているのですが、多種多様な人たちが心地よいと感じるものをどんどん生み出していこうという考えで空間サービス「TiNK」を進めていこうと思っています。
――事業としては、周りから見たら「えっ、突然なにこれ?」っていう意外なサービスが生まれる可能性がありそうですね。
そうですね。基本的には空間サービスとか鍵っていうテーマに紐づくものっていうのをやってくんですけど、直近でいうと、もっと自宅に寄り添っていく働き方に重きを置いているので、そこを広げていって使われる人たちを増やしていこうとしてます。コロナ離婚じゃないですけど、家に長いこといるから夫婦仲が悪くなったみたいな人たちをつくらないように(笑)。空間サービス「TiNK」があるから、「家族と長く過ごせて幸せ」っていうことがたくさん生まれたらなって思っています。
牧田恵里(まきた えり)
東京理科大学卒業。新卒でサイボウズ入社。サイバーエージェントアメリカ、不動産勤務を経てMOVIDAJAPAN(現Mistletoe)に入社。孫泰蔵氏とともにPiccolo(現VIVITA)事業を立ち上げる。2015年tsumugを設立し代表取締役に就任。空室物件など、遊休空間を活かした分散専有型のマイクロオフィスサービス「TiNK Office」、15分から使える時間貸しセルフワークスペース「TiNK Desk」、セキュリティシステムとつながることで最高レベルの安全を約束するカギデバイス「TiNK」などの事業や、「つくる人」と「つかう人」のこだわりを追求するメディア「tsumug edge」を運営。

文・鈴木涼太

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