火を囲むとなぜ泣くのか?【スマート会議術第146回】

火を囲むとなぜ泣くのか?【スマート会議術第146回】株式会社スコラ・コンサルト代表取締役 辰巳和正氏

これまで、数多くの企業風土改革を支援してきた株式会社スコラ・コンサルトが、有限会社きたもっくと提携し、ビジネス研修・合宿施設“TAKIVIVA(タキビバ)”を始めた。TAKIVIVAは、「火を中心とした場づくり」をコンセプトに北軽井沢に設計された宿泊型ミーティング施設だ。

創業以来、1000以上の組織をオフサイトミーティングで変革してきたスコラ・コンサルトが、なぜいま“焚き火研修”を始めたのか?

焚き火を体験したことある方なら、想像できるかもしれない――火を囲んだとき、人は自分を見つめ、心が解き放たれ、本音で語らい合えることを。

スコラ・コンサルト代表の辰巳和正氏はそこに目をつけた。

同社が提唱するオフサイトミーティングは環境と切っても切り離せない相互関係がある。オフサイトミーティングが目指す環境とは、安心して本音で語り合える時間と空間があることだ。その格好の場が焚き火だった。そこはまさに、組織が健全に機能するコミュニケーションに変えていくため、ビジネス上の立場や肩書から離れて個人が素顔で向き合える環境だったのだ。

辰巳氏はいかにして焚き火に惹かれ、チームビルディング、組織改革の手段としてTAKIVIVAを生み出すに至ったのか? “焚き火コミュニケーション”の持つ力とその効用についてお話を伺った。

目次

きっかけは「焚き火を囲んで話せば変わるんだよ」というひと言

――近年は「第三次キャンプブーム」と言われるほど、キャンプが人気となっています。そんな中で始まった焚き火を使った社員研修の「TAKIVIVA」プロジェクトは、どんな経緯で誕生したのでしょうか。
信州大学に都市部で働いている人を地域に呼んでくるという「100年企業創出プログラム」というのがあるのですが、その講師として招かれて参加者の皆さんにお話をさせていただいたんです。そのときに信州大学の中嶋聞多教授とお会いする機会がありました。中嶋先生に「辰巳さんに紹介したい方がいらっしゃるんですよ」と言われて、ご紹介いただいたのが有限会社きたもっくの福嶋誠さんなんです。福嶋誠さんが運営する北軽井沢スウィートグラスキャンプ場は、全国アウトドア誌の人気キャンプ場ランキング過去6年で4回1位に輝く日本有数のキャンプ場です。
そのときにはまだ「TAKIVIVA」という名前はありませんでしたが、福嶋さんは「焚き火×対話」のコンセプトをすでに持っていたんです。「焚き火を囲んで話せば人と人の関係性ってがらっと変わるんだよ」と初めてお会いしたときに語ってくれました。福嶋さんは25年間キャンプ場を運営しているのですが、「僕らはキャンプ業をやっていたんじゃない。”家族の再生”をやっていたんだってわかったんです」と言うんです。家族って何となく家族でいるけど、 抱えている悩みやお互いの思いなど、お互いのことや関係性をしっかり問い直したりする機会ってあんまりないじゃないですか? でも焚き火を囲みながら一緒に時間を過ごすことで、家族があるべき家族の姿に自然と戻っていくんだと。そういうことを体感されて、「これを企業・組織でもやっていこうかと思っているんです」とおっしゃったんです。
私たちはオフサイトミーティングを軸にコンサルティングをしている中で、話し合う場所(環境)を変えるというのが非常に効果的だと考えているのですが、それまで私たちが思い描く理想の場所はどこにもなかったんです。いろいろなところを探して、貸し会議室の会社の社長さんとお会いしたり、オフサイトミーティングハウスを一緒につくりませんかといった提携の話もしたりしていたんですね。
でも、どういう社会をつくりたいのか、何が必要なのかっていう私たちの理念と合うところがなかなか見つからなかったんです。でも福嶋さんと会って、私たちの求めている場所と、福嶋さんの考え方がピタっと合ったんですね。それで一緒に何かやっていきませんかと、TAKIVIVAが立ち上がりました。
いまTAKIVIVAは1カ所ですけど、福嶋さんは300カ所はつくりたいとおっしゃっていたんです。企業で働かれている方々が、立ち止まって会社の課題や未来のありたい姿について本音で話し合いたいと思ったときに、その目的を実現できるような会議の場所やあり方を社会に提案しようと。私自身、そういうことが気軽にできる場をつくりたいと思って、手を握ってTAKIVIVAを始めました。

「安心とゆらぎのバランスをとっていく」という話し合いの奥義

――「焚き火」という環境が決定打となった理由は何ですか。
いろいろな科学的な証明もありますけど、私は実証主義なので、やっぱり火を見て話した実体験をもとにつくっていくということが大きかったですね。火を囲んで話したときに初めて、よりお互いの関係がフラットになりやすくなる、その場がうまくいく。実際、私がコーディネイトしたオフサイトミーティングを撮影したTAKIVIVAの動画があって、火を真ん中に置いてみんなで話しているシーンがあるんですが、私自身の経験上、コーディネートが一番やりやすかったんです。
素直になるというか、自然になるというか、とても良い場だと実感しました。他にもいろいろ要因はあるんですけど、火を囲むことでいい話し合いができるという体感ができたのが一番大きかったと思います。この動画には私が左にいると思うんですけど(笑)、リアルにオフサイトミーティングをやっているんです。実際、焚き火をやる中で得られたことは多いなあと思います。
太古の歴史からの人と火の関係によるものも多いと思いますが、火には、火を見ただけで感じる安心感があるし、ゆらぎがあります。私たちには「話し合いの奥義」というのがあるのですが、それは「安心とゆらぎのバランスをとっていく」ことなんです。安心感というのは気持ちのいいものですが、本音での対話をしているうちに、本当に大切なことを話すときってやっぱり人の心はゆらぐんですね。現状を問い直す本質的な話し合いや、未来を切り拓いていくための深い対話は、ニューノーマル時代には特に必要になってくると考えています。そういった意味からも、安心とゆらぎを促進させる焚き火を囲む場という環境の価値は高いと感じています。
また、オフサイトミーティングでもうひとつ大切にしていることが「円になって話す」ことです。通常、企業におけるコミュニケーションは自分と相手が言うことのどちらが正しいかという議論が多く、特に日本では、自分の意見の前に周りの意見はどうなのかって比較しながら話すことも、多いのではないかと感じています。
私たちが話し合いの中で大切にするのは、相手や周りの意見との比較ではなく、そもそも「自分がこうありたいから、どうしたいのか」ということ。だから、誰かに向かって話すのではなく「円になって話す」ことの効果が大きいと感じています。対立や比較しやすい構造をつくらないのです。特に「安心とゆらぎ」のある焚き火の周りを円になって囲んで焚火を見て話すことで深い内省がしやすくなります。周りの意見がどうかではなくて、自分が本来どうしたいと思っているかって話をするときに、焚き火を囲んでの話し合いは有効だと思うんです。
――『星の王子さま』の作者のサン=テグジュペリが言った「愛はお互いを見つめ合うことではなく、ともに同じ方向を見つめることである」みたいですね(笑)。
確かに(笑)。そういう意味ではタバコ部屋の理論というのもありますよね。普段仕事ではあまり接点のない者同士がタバコ部屋で親しくなるという。あれはタバコ部屋が重要なんじゃなくて、じつはあの灰皿がいいんじゃないかって説があるんです(笑)。お互いの顔を見ながら話していたら対立構造があるんですけど、灰皿を見ながら「でさ~」ってやっているあの状況がいいんじゃないかと。相手を見て話すんじゃなくて、同じものを見て話す。私自身の体験上でも、円になって真ん中に焚き火を囲んで話すのは対立構造を避けるのにいいのではないかと感じます。
――火を囲むとなぜか沈黙が結構許される気がします。そうすると自分に素直に向き合える時間がつくれる。焚き火を囲むと静かにしゃべる印象があります。
そうですね。沈黙は確かに保てますね。沈黙は話し合いの中で結構重要です。私たちはオフサイトミーティングでは沈黙をすごく大切にしています。沈黙が耐えられずに間を埋めてくような議論ではなく、自然と言葉が出てくるような話し合いができるのはすごくいいと思います。薪のパチパチって音がすごくいいんですよ。きたもっくさんがつくっている薪なんですけど、質がすごく高くて、いい音といい匂いがするんですよね。そういうのを見ながら、聞きながらやるとすごくいい。リモートで対話をするときも、焚き火の動画を真ん中に置いて話すこともあるんですけど、これも結構いいですよ(笑)。

「事実を受け入れる」ことからすべては始まる

―――実際にTAKIVIVAの研修制度TAKIBIcationを利用した方の事例があればお教えください。
TAKIBIcationでは事前準備と事後フォローの2つをやっています。事前準備では、TAKIBIcationを利用される方が、なぜ、話し合いの場を持ちたいと思われたのか?をしっかりお伺いするところから始めます。その組織にあった話し合いの最適なプログラムを考えるために大変重要なことなので。
たとえばある会社さんでは経営を含めた開発職の中で対立が結構あった。まず開発部隊がバラバラ。新しくヘッドハントした方もいてチームがまとまらず、部分最適な仕事ばかりという課題がありました。しかも経営者と開発部隊との関係もあまりよくない。これを何とかしたいということでした。
ここでご提案したのは、いきなり話し合う前にTAKIVIVAという環境を活かしたアイスブレイク。まず何人かのチームに分かれ最初に大きな太い木に火を起こすチャレンジをやってもらったんです。
傾向として、女性はパッと集まってすぐに話せることが多いんですけど、男性は何か共通の目的がないとうまく話せないことが多い。何か目的とか、やることがあったらチームになりやすくなるので、一緒に火をつけて勝負しながらチームのコミュニケーションを高めていくようなアイスブレイクをして、それからオフサイトミーティングの動画を使って対話をしてもらいました。こんなことができるのもTAKIVIVAという場所ならではと思います。そして、オフサイトミーティングでは「ジブンガタリ」の時間を長めにとって、お互いの苦労とか、仕事や組織に対して、どういう思いを持っているかを語ってもらいました。いままで気づかなかった相手の人となりを知り、深く話を聞き合うことで、お互いの関係も変わってくるものです。
あとは経営者と社員の距離感について。経営者の方は2代目の後継者で30代後半と若い方でした。でも社員は社長より年上ばかり。こんな構造を持たれている会社はじつは多いのではないかと思います。社長として頑張らなきゃならないんだけど、パワーバランスが悪いんですよ。社長は社長なりにいろいろなものを背負って戦っているんですね。だから等身大の自分の弱いところを社員に見せられずに、次第に本音のコミュニケーションが減ってしまい、どんどんと距離感が生まれてしまう。そういう状況を変えてあげないとずっと関係性は変わらないので、経営者が自ら着込んだ鎧を捨てて、弱みや悩みも話し合えるようなアプローチを大切にし、関係性を緩やかに変えていきます。
開発職の人たちは結構年配の方も多かったのですが、お互いのことや、悩み弱みを率直に話し合う中で、何人かの人が感極まって泣いちゃったらしいんです。それぐらいインパクトがあったみたいです。私たちも参加者の方が泣かれるシーンに遭遇することはあるんですけど、何人も同時にというのはちょっと衝撃的で、何があったんだ!? って逆に聞きたいぐらいでした(笑)。
話し合いのコーディネートに入る担当者の方には、社長自身の苦しさや葛藤も全部聞いてあげてくださいっていうことで送り出したんですね。そういうことをしっかりやってもらう中で、みんなが本音で話せることになって、感情的にいろいろ極まって泣かれる人が多かったっていうことなんだろうと思います。
あと、TAKIVIVAは1組のお客様への貸し切り施設なので、合宿をされる方の目的や思いを、事前に私たちがTAKIVIVAの施設メンバーに共有し、そのメンバーが当日の運営をしっかりサポートしてくれるということも効果的なのだと思います。
――そういう体験は会社に戻って冷静になると、夜中に熱くなってラブレターを書いたみたいに「恥ずかしい」となって、1回きりで終わってしまうことはありませんか。
お客様のニーズ次第ですが、話したことを次につなげていくことが重要なので、TAKIBIcationのプランでは事後フォローは1カ月以内にやりましょうと提案しています。それがないと「楽しかったね」「あれって何だったの?」で終わってしまって予定調和の元の組織に戻ってしまうんですよね。放っておくと元の状態よりも悪くなってしまうことすらある。だから早めに手を打つのはセットになっています。
――コロナ禍の状況を生き抜いていくために御社ができることと、企業に提言していきたいことはありますか。
当たり前のことだけど難しいのが、「事実を受け入れる」ことだと思うんですね。事実を受け入れるって結構重要で、たとえばいまのコロナ禍という現実を政治家が悪いとか、誰のせいだとか言っても仕方がないですよね。会社でも会社が直面する問題を、経営の問題や現場の問題、環境の問題のせいにしても仕方がない。それは自分の責任ではないとは言っているだけで、会社の問題は何もよくならないんです。大切なことは、起きている現状を事実だと捉えること。できることはその事実をあるがままに受け入れて、じゃあどうするかを考えることしかない。批判や愚痴は飲み屋でやればいいけど、あるがままの事実を受け入れて、冷静にこの事態をどう乗り切っていくかに知恵を出していくことのほうが大切なんじゃないかなと思います。
でも、あたりまえと言えば当たり前だけど、組織の中では、これが実際難しい。ですから、何が悪い、誰が正しいとかの議論は終わりにして、本当は何が起こっているのか? お互いにどんな問題を抱えているのか? そういう事実を話し合い、受け止め合えることが一番重要だと思います。そのうえで、どうやってその現実をより良くしていくのか? がようやく話し合えるのです。
その当たり前でとっても難しいことを実現するためにも、自然に本音で語らい合えるTAKIVIVAという環境をご提供していければと思います。ぜひ、うまく活用いただけたらうれしいです。

文・鈴木涼太
写真・大井成義

辰巳 和正(たつみ かずまさ) 株式会社スコラ・コンサルト
株式会社スコラ・コンサルト代表取締役。大手生命保険会社の管理部門および営業企画部門でマネジャー職を務め、管理部門時代には社内改善コンテストで2年連続1位の評価を得る。また経営企画部門では全社変革展開に取り組んだ経験を持つ。スコラ・コンサルトでは2012年、チームワークの状態を定量で測るアセスメントツール「ワークコラボレーション・レビュー」を開発。翌年にはWEBで無料提供を開始し、1年で延べ80以上の組織、6000人に利用されるツールに成長させた。2013年には、「つながる職場づくりラボ」を立ち上げる。産業カウンセラーとしての経験を生かしながら組織のメンタルヘルス問題にも取り組む。社会全体の機能不全の課題にも関心を持ち、行動している。2012年、自らの子育て経験で小さい子を持つ親が孤立していることに問題を感じ、親同士が互いにつながり助け合うためのSNS「パパママルーム」を立ち上げた。この取り組みは、リソウル株式会社が運営する社会起業大学ソーシャルビジネスグランプリで「リソウル大賞」を受賞。現在400名が参加している。2019年、有限会社きたもっくと協業で焚き火を使ったビジネス研修・合宿施設TAKIVIVAを設立。

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