プレゼンが決まったら、最初に取り組むこと【第5回】

プレゼンが決まったら、最初に取り組むこと【第5回】すごいプレゼン代表 松永俊彦

皆さんこんにちは。すごいプレゼン、代表プレゼンコーチの松永俊彦です。

想像してみてください。

今日は月初の営業日。来週の木曜日に社内にて新規事業のプレゼンを行うことになりました。準備にかけられる時間はそれほど多くありません。さぁ、あなたは何から準備を始めるでしょうか?

・とにもかくにも資料が必要なので、パワーポイントで資料を作る
・話す準備をするために、原稿を作る
上記の質問をすると、こういった回答をいただくことが多くあります。一概に悪いとは言えませんが、個人的にはどちらも最初にやることではないと考えています。
別の例で考えてみます。たとえば、あなたは今日の夕飯を作るとしましょう。何から始めますか?
いきなりコンロの火はつけませんよね。まだ材料を準備していないですから。
いきなりスーパーにいきませんよね。何を作るか決めていませんから。
そうです。まずは「何を作るか?」を決めますよ。ここが料理の一丁目一番地です。
話を戻しましょう。
ではプレゼン準備の一丁目一番地は何なのか。それは、「誰に対して、何を伝えて、どんな行動をしてもらいたいのか」というプレゼンの背骨を作ることです。実際に何から手を付けていけばいいのかについては、ここから順を追って一緒に確認していきます。
①誰に対して
まずは、プレゼンを一番聞いてほしいターゲットを明確にします。このときに一番良くないのが、「その場にいる人全員」という回答です。確かに話を聞いてくださるのはその場にいる全員です。しかし、その中で一人にしか聞いてもらえないとしたら誰に聞いてほしいのか?というターゲットを明確にしておくのです。
通常、営業の場面でも社内稟議の場面でも、聞き手は3種類に分類できます。
A)意思決定権者
B)影響者
C)その他
です。
あなたのプレゼンを一番聞いてほしい、行動してほしい方は、恐らくA)の意思決定権者のはずです。この人が誰なのかを特定することで、プレゼンの組み立て方が大きく変わります。
社長に話すとの、事業部長に話すのと、直属の上司に話すのでは、恐らく相手の意思決定のポイントも違いますし、最も興味を持って聞きたい箇所も異なるでしょう。相手の知りたいことに合わせてプレゼンを作成する必要がありますので、ターゲットの明確化は必須の作業となります。
「一度も会ったことのない人に対して話す場合、誰が意思決定権者なのかわからなくないですか?」というご意見を頂くことがあります。確かにそうですね。その場合は、ターゲットを以下のように具体化してみましょう。
〇〇に課題を抱えて困っている、△△で□□な方
こうしておくと、具体的なターゲットを想像しながらプレゼンを作ることができるため、ただ漠然と考えるよりもあるかにターゲットの心の琴線に触れるメッセージを打ち出すことが可能となります。ちなみに私のこのコラムですが、ターゲットは「プレゼンに苦手意識を感じている20代から40代のビジネスパーソン。および、教養としてプレゼンに興味のある方全般」としています。すると、どのような部分でうなずきやすいか、どんな情報を知りたいかを想像しながらお届けすることができるのです。
②何を伝えるか
実際に、プレゼンの骨子と全体の構造を作成します。建築でたとえると、設計図を作るという段階です。設計図として、「何を」「どの順番で」伝えるかを考えます。
「何を」については、付箋を活用して構成要素を洗い出していく方法をお勧めします。このときのコツは、聞き手が聞きたいであろう質問を、疑問型で書き出していくことです。
たとえば新規事業であれば、
・誰のどんなニーズを解決する?
・どれくらいの人が困っている?
・どんなサービスで解決を目指す?
・なぜそのサービスを選んだ?
・実際に同様のサービスは存在する?
・同様のサービスとは何が異なる?
・どれくらいの利益が見込める?
・なぜそう言える?
・コストはどれくらいかかる?
・開発期間はどれくらいかかる?
・新規参入障壁は高い?
・いつまでにどれくらいの成果が出ていなければ撤退する?
このあたりを付箋に書き出していきます。そうして、今度は別の色の付箋でこれらの質問に対する答えを簡単に書いていきます。現時点でわからない場合は、何を調べれば答えが出せそうかなどのメモを記入し、疑問を書いた付箋の下に張っておきます。
プレゼンは自分が話したいことを話すものではありません。あくまでも聞き手が知りたいことに対して答えていくものです。ですから、聞き手のすべての疑問に回答できればよいのです。「何を」のフェーズで漏れがないように疑問を洗い出し、場合によっては他の人に「新規事業の提案の際に知りたいことって他にある?」と聞いてみて、要素を追加してみましょう。
その後、「どの順番で」のステップに移ります。順番については先ほどの付箋を並び替えていきます。どの順番で伝えていくと聞き手が最も聞きやすいか、ストーリーを組み立てながら並び替えを行います。順番にイメージがわかない人は、プレゼンの一般的なテンプレートを活用してもいいでしょう。
新規事業提案であれば、「オープニング⇒課題⇒原因⇒解決策⇒効果⇒想定リスクと対策⇒クロージング」といったように、プレゼンの流れの型が存在します。いきなりオリジナルに走るよりも、同様のプレゼン動画や資料を読み込んで研究してみる方が早道だと思います。
ここまで完了すれば、あとは資料に落とし込むだけなので非常に作業が楽になります。私もかつてそうでしたが、パワーポイントを開いたまま、何をつくろうか考えて手が止まってしまうという方がいらっしゃると思います。上記の作業を行っておくことで、伝えたいメッセージとそれに必要な情報がすべて想定できるので、圧倒的にこの先の作業が楽になります。
③どんな行動をしてもらいたいのか
最後に、プレゼンが終わった後、聞き手にどのような行動をとってもらいたいのかを明確にしておきます。この行程を飛ばす人が多いのですが、非常にもったいないです。
プレゼンが終わって、「いい話だったよ!」と声をかけられたとしても意味がありません。いい話だったかどうかではなく、プレゼンの目的を果たすことができたか否かがすべてだからです。そして、その目的というのが何なのかは事前に決めておく必要があります。
・この場で事業開発の承認を行ってほしい
・新規事業を立ち上げるための人的リソースを確保したい
・来月のプレゼン本番に向けて、不足している情報を指摘してほしい
など、目的によって最後のメッセージはまったく変わってきます。はっきりと聞き手に対してリクエストを行わなければ、プレゼンを聞いている人も、「で、私は何をすればいいの?」と疑問に感じてしまいかねません。いつまでに、何を、どうしてほしいのか? という、期待する相手の行動をはっきりと決めることで、プレゼンのゴールを明確にすることができるのです。
以上が、プレゼンが決まったら最初に取り組むべき準備です。
ここまでの作業が完了してから、実際にパワーポイントを立ち上げて資料作成に入っていきます。これまで勢いあまってパワーポイントを開いていた人は、PCを閉じてノートとポストイットとペンを用意することから取り組んでみてください。
※当コラムは著書『感動させて→行動させる エモいプレゼン』を基に補筆したものです。
松永俊彦(まつなが としひこ)
すごいプレゼン代表。プレゼンコーチ。塾教師として入社初年度から生徒支持率95%以上という驚異的な成績を誇り、多くの生徒を地域トップ高校をはじめとする難関校合格へと導いた。学力だけにとどまることなく人間力を成長させる指導は生徒、保護者から絶大な支持を得た。その後、教師育成だけにとどまらず、ビジネス領域の一般企業研修、営業指導領域でもHPPMの効果を実証し、セミナーや研修を通じて世の中に輩出したプレゼン生徒数は1500名を超える。著書に『感動させて→行動させる エモいプレゼン』(すばる舎)がある

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