優秀な人の能力が生かされるテレワーク【スマート会議術第150回】

優秀な人の能力が生かされるテレワーク【スマート会議術第150回】弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所 代表弁護士 藤井 総氏

ITサービスを提供する企業やIT関連部門、IT関連組織に顧問サービスを提供する法律事務所ファースト&タンデムスプリント法律事務所を運営する藤井聡弁護士。藤井氏は、『テレワークをはじめよう』『IT業界人事労務の教科書』などの著書もあり、日本では珍しいIT業界を専門とする弁護士である。

『テレワークをはじめよう』(技術評論社)

東京に拠点を構えながらも、業務にチャットを導入することで、東北、関東、関西、中部、九州など、全国に点在している顧問先とリアルタイムでサポートし、顧問サービスの導入企業数は約70社(2020年現在)。また、弁護士でありながら、企業が新たに立ち上げるビジネスを設計する際に必要な専門家を世界中につながったネットワークを通じて選定して監督する「ビジネスデザイナー」としても活動する。

自身、世界旅行が趣味という藤井氏。いまはコロナ禍で国内での活動になっているものの、自ら世界中を旅行しながら、テレワークはもちろん、ワーケーションも体現する藤井氏に、テレワークをめぐるビジネス環境と課題と展望について語ってもらった。

目次

テレワークは人の評価を二極化する

――IT化・テレワーク化の果たす役割をどのように捉えていますか。
IT化・テレワーク化がますます発達していくと、仕事ができる人、成果が出せる人、数字が出せる人はバリバリとその成果・数字で評価してもらえます。いままで「協調性がない」とか「きちんとみんなと仲良くしていない」とか思われていた人が、じつはすごく成果を出していたといったことがわかりますので、より評価される。そしてITを使って効率がアップすれば、当然空き時間ができますので、その空き時間を使って副業するなどして、ますますいろいろな会社と契約をして仕事を増やして、収入は上がっていきますし、経験も積んでいけると思います。
仕事ができる人にとっては、IT化・テレワーク化というのはすごく評価されるし、たくさんの契約を獲得できる時代になります。一方で、いままで何となく長時間労働や、仕事してる感を出していたことによって評価されてきた人は、テレワークのもとでは、きちんと成果を出していなかったことがわかる。そういった人は会社からリストラになったり、給料を下げられたりしますので、できる人とそうではない人が二極化していくのではないかなと思います。
みんな仲良く会社に出社して、仲良く仕事している感を出していれば、平等に評価されていた時代が終わります。これからはすごくシビアな時代になりますので、頑張って成果や数字などを出せるようにしなければならない。そして1社にしがみつくのではなくて、複数の会社と契約して、副業や兼業をして、いろいろな命綱というか保険をしっかりかけておくようにしないといけないのではないかなと思います。そういう意味でテレワークにはいい面もありますが、厳しい面もあるかなと思います。
――社内政治に長けた人が出世する時代は終わると。
そうですね。まず社内政治というのはテレワーク下においては使えないので、その能力はまったく発揮できなくなって評価されないですね。会議の何となくの雰囲気や、何となく裏で根回しをするなど、そういったところですよね。でもIT化してしまうと、全員がグループチャットの中で文字化したやりとりをしますので、何となく裏でこっそり耳うちとか、喫煙室で談笑する中で情報を獲得するとかができなくなりますので、社内政治だけの人はダメになると思います。
プレイヤーに関しても、いままで日本の会社はスゴロク的なランクアップがあった。「プレイヤーとして優秀だった君は部長ね」って自動的になっていましたけど、プレイヤーとしての能力とマネージメント能力はまったく別なので、これからはプレイヤーはプレイヤーとしてのスペシャリストの道を歩んで、マネージメントのスキルがある人はマネージメントの仕事するようになるのではないでしょうか。何となく年次が上がればランクが上がってマネージャーになるのではなく、プレイヤーの道を突き進むスペシャリストのルートの人と、マネージメントのほうに移行する人と分かれてくるのではないですかね。
でもプレイヤーが好きでマネージメントが嫌いな人にとっては、それはそれでハッピーかなとは思います。慣れていない、スキルもないマネージメントをするよりは、自分が好きなプレイヤーとしての道をずっと極めたほうが本人も楽しいですし、やりがいもありますしね。
優秀なプレイヤーが優秀なマネージャーとは限りませんからね。マネージメントは各自の適性を見極めて、各自にいい感じで仕事を配分・調整して、フォローアップをしてやる気を起こして、仕事させて、結果に返していく。こまめにフィードバックをするプロセスが必要。でも、優秀なプレイヤーがマネージメントすると往々にして「なんでこいつこれしかできないんだ」とか「なんでこんなこと細かく言わなきゃならないんだ」「だったら俺がやったほうが早いわ」ってなってしまって、結局自分でテンパってしまいますので、良いプレイヤー=良いマネージャーというわけではないですよね。
いままでの会社は階段が1つしかなくて、プレイヤーとして優秀だと次は課長、部長と1つしか道がなかった。これからは「マネージメントに進む道もあるし、プレイヤーとしての道を極める道もありますよ。あなたはどっちがいいですか?」と本人の意見も聞きながら、本人とディスカッションして道を選ばせるというのがいいのではないでしょうか。当然に上がるのではなくて、きちんと制度を用意してあげて、どっちがいいか選ばせてあげるのがいいかなと思います。

目的に応じてオンラインとオフラインを使い分ける

――会議は組織体がミニマムに集約されたユニットだと思うのですが、テレワークかリアルかを問わず会議が課題として抱えていることはありますか。
会議の位置づけを明確にするということですかね。何か課題があって、その課題に関して結論を出して、その結論に向けての道筋を決めるっていう課題解決型の会議であればオンラインでOKで、事前にアジェンダを決めて出席者が活発に議論してやるべきです。一方で何かアイデア出しをしようとか、決められたことをみんなで「頑張っていこう!」とモチベーションを上げるとか、そういうブレスト系だったりモチベーション上げる系ですと、やっぱりオンラインはいまいち発言しにくかったり、盛り上がりにくかったりするので、いまでもリアルで会ったほうがいいと思っています。
会議はオンラインが正解とか、オフラインが正解とかではなくて、課題解決型だったらオンラインのほうが適しているし、ブレストとかアイデア出し、チームワーク向上系であれば、たぶんリアルに会ったほうがいいので、目的に応じて会議を使い分けるのがいいのではないかなと思います。それを「オンラインが正義」「いや、オフラインがいい」と言うから議論がかみ合わないのではないかなと思います。
情報共有だったらそもそも会議すら要らないですよね。決められたことをチャットとかメールとか添付とかで流せば済む話なので。1時間拘束されて、結局A4のペライチで済むことをダラダラ読み上げているだけだったら不毛なので、データ送ってくれれば済む話ですよね。
会議の目的をきちんと見極めて、そもそも会議する必要があるのか、オンラインで済むのか、きちんとリアルでやったほうがいいのかっと振り分けるのが大事なのではないかなって思います。
――テレワークでは「便利になった」「効率が上がった」と言う人もいれば、「コミュニケーションがとりづらい」と言って使いたがらない人もいます。テレワークは決して二律背反ではないと思いますが、あえてその是非を問うとしたらどんなことがありますか。
オンラインミーティングだと音声と表情ぐらいしか伝わらなくて、ノンバーバル(非言語)なコミュニケーションの部分が伝わりにくいので、仲良くなったり、難しいテーマを話したりするときには使いにくいのは事実です。
「いやいや、オンラインミーティングツールはすごく便利なんだから、それを使えないお前はアナログだ」って言うのではなくて、やはり面談とか、ものによってはリアルでやったほうがいいものが残るのは間違いない。情報共有とか課題解決とかであればZoomでサクッと、そうではないものに関しては、確かに生のコミュニケーションが有効なものもありますので、適切に使い分けたらいいのではないかなということですね。新しく入ってきたメンバーの顔合わせとか、これからやるプロジェクトの立ち上げのキックオフとかは、やはりきちんと対面で面談したほうがいいと思います。
むしろ顔が見えない、自分の表情が相手に伝わらないほうが、自分の話していることがきちんと伝わっているのか心配がありますので、僕は必ずカメラをオンにしますよね。そうでないとただでさえ情報量が少なくなっているので、少しでも情報量を増やさないと、こちらの発言内容とか真意が伝わりにくい。オフにしたら伝わるものも伝わらなくなるので。
――現状のビデオチャットツールも含めて、Zoomみたいにノンバーバルも音声もテキストも使えるっていう、情報のボリュームや質も含めて、いろいろなチャネルを活用するに越したことはないってことですね。
そうですね。僕はチャットツールが一番使い勝手がいいですが、チャットツールばかりではなくて、テレビ会議、そしてときに会うことも併用していくのがいいのではないかなと思います。

テレワークですべての地方が活性化するわけではない

――テレワークによって自宅に限らず、コワーキングスペース、シェアオフィスなど働く環境にも変化が出てきていますが、こうした選択肢がある中で上手な使い方があればお教えください。
テレワークになって仕事自体は自分の家でできてしまうわけだから、オフィスに行くのはリアルに会って雑談したり、ブレストしたり、チームワークを高揚させたり、気軽に質問したりするための場としてこれからは位置づけられるようになるのではないかなと思います。作業場所ではなくて、そういった目的があって行く場所になるのがオフィスかなと。
自宅で仕事ができればそれは楽なのですが、問題は都心に住んでいて部屋があまり広くなくて、十分な机がありませんとか、家族がいて家だと子どもがうるさかったりして仕事ができませんっていう人もいますので、そういう人は自宅近くのコワーキングスペースを使って仕事をするのがいいかなと。だからオフィスはリアルに会う必要がある人が行く場で、仕事に関しては自宅でできる人は自宅ですればいいし、自宅が難しい人は自宅近くのコワーキングスペースを使えばいい。それぞれの場所のメリット・デメリットがあるので、使い分けていけばいいのではないでしょうか。
――そうなると会社のオフィスは今後ますます希少価値が出てきて、会社に行くほうが楽しみになるという現象も出てきそうですね。
そうなんですよ。僕も今回の取材はZoomでもできたのですが、いまはなかなか家から出るチャンスもないので、せっかくだったら「ここのコワーキングスペースってどんなものかな?」って興味もあって来ました(笑)。だから遊びに行く感じもありますよね。作業しに行く場ではなくて、コミュニケーションしに行く場としてのオフィスですよね。
――今年は特にコロナ禍で東京からの人口流出も起きているようですが、ただ地方のほうが単に物価が安いとか、自然が豊かだとか空気がきれいだとかだけでは住みたいという動機にはならない気もします。
地方も勝ち負けがはっきりするのではないかと思います。僕は旅行が大好きで、いまは海外に行けない分、日本の各地に旅行することが多いですが、やっぱり同じエリアでも人口が増えて盛り上がっているエリアと、そうではなくてパッとしないエリアって明暗がはっきりしていると感じます。たとえば博多とかすごく盛り上がっている感がありますしね。
海がきれい、空気がきれい、ごはんが美味しいって、それは日本のどの地方に行っても同じだったりする。都心以外は基本どこもそうなので、それだけをウリにしても人は定住しないですよね。福岡だったら博多に一極集中して非常に便利なコンパクトシティでありながら、海や山も隣接して、海外にも行きやすい、空港が整備されているとか、そういった魅力があるわけです。それがないとちょっと定住は難しいかもしれませんね。
だからIT企業の多くは博多に集まってきていますよね。優秀な人もいっぱいいますし、各地でいろいろなイベントもやっていますし、何より博多駅から大濠公園の中間にみんな密集しているので、生活するのは便利ですよね。
でもあれは、やはり空港が博多駅から近いし、他の都市が真似しようとしてもなかなか難しいです。あまり歴史がないエリアだからこそ都市開発がしやすかったりもする。歴史があって、各地にいろんなものが分散してしまっていると、いまから集約しようと思っても難しいので、あまり歴史がない人工都市のほうがいろいろと整備がしやすかったのではないですかね。
福岡はいいですよ(笑)。僕は今年の夏に半月ぐらい滞在していましたけど、非常に便利ですね。空港に近いし、ちょっと電車に乗れば糸島とか風景がいい田舎もありますし、美味しいごはんもいっぱいありますし。

文・鈴木涼太
写真・大井成義

藤井 総(ふじい そう) 弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所 代表弁護士。慶應義塾大学法学部法律学科卒業。「世界を便利にしてくれるITサービスをサポートする」ことを使命(ミッション)に掲げて、ITサービスを運営する企業に「法律顧問サービス」を提供している。2015年に弁護士法人ファースト法律事務所を開設。ITサービスを提供する企業やIT関連部門、IT関連組織が法律顧問サービスの主な導入企業になり、その業種はASPサービス事業者、ISP事業者、EDI事業、ハードウェアメーカー、コンサルティングファーム、海外政府系機関等、多様。中堅・上場企業だけでなく、ベンチャー企業もサポートしている。また、業務にチャットを導入することで、サービス提供エリアは全国。事務所所在地は東京(丸の内)でありながら、東北、関東、関西、中部、九州など、全国に点在している顧問先と、リアルタイムでのやり取りを可能にしている。2018年に弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所に名称変更。取扱業務は、コーポレート、契約書・Webサービスの利用規約(作成・審査・交渉サポート)、労働問題、債権回収、知的財産、経済特別法、訴訟など、企業法務全般に対応している。著書に『テレワークをはじめよう』『IT業界人事労務の教科書』など多数。

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