納得感を高める決め方の会議【第9回】

納得感を高める決め方の会議【第9回】人財育成家 沖本るり子

こんにちは。「5分会議」🄬を活用した人財育成家の沖本るり子です。

「会議に参加しています」という姿勢をみせたいのか、 意見は出さないのにメモをとることに一生懸命の人がいます。さらに、各自のメモがバラバラで、言った言わない論争に発展することもあります。そのため、メモも工夫が必要です。

各自のノートもメモ帳も不要
「5分会議」🄬では、会議にメモのためのノートや手帳を持ち込むのは禁止です。また、パソコンを開くこともNGです。
理由は2つあります。1つは会議に集中してもらいたいため。会議の目標に向け、人の話を聞くと同時に自分もよく考え、良案を出すことが参加者の使命です。メモ係がいるのに、わざわざ個人でメモを取る必要はありません。
そしてもう1つは、認識の相違を生まないようにするためです。メモというのは、個人差が生まれやすいものです。学生の頃、友達に授業のノートを見せてもらって、驚いたことはないですか? 同じ講義を受けていても、ポイントとする箇所やメモの内容は一人ひとり違ってきます。とくに口頭説明などでは、拾う部分は個人差が大きいものです。
会議で個々にメモを取ると、同じことが起こります。解釈の違いがメモの違いになり、お互い同じように理解していたつもりが実は違っていたなど、後々になって話がこじれる原因となるのです。ですから議事を振り返るときは、共通の記録を見る必要があります。それが、メモ係が一生懸命書いた会議の記録です。
ホワイトボードシートに書かれたメモは、書いたそばから参加者全員が見ていますから、理解度が揃います。もしメモの内容と発言の意図にズレがあるなら、そのときに指摘すればいいのです。ミニ会議では記録はメモ係に任せ、本来の役割を全うしましょう。
ちなみに、オンライン会議では、メモ係が意見の入力を行うので、各自のメモは不要です。
投票制度
「アイデア出し会議」から始まったミニ会議。最後のアイデアの「問題点への対策案」をひととおり出せたら、いよいよ採決の時間です。
一般的な会議では、採決に与えられるのは一人につき1票です。だいたい複数の案につき、挙手で意思を示し多数決で決めることが多いでしょう。でも「5分会議」🄬は違います。参加者は付箋を使い、それぞれの案に得点を入れていくのです。やり方は次のとおりです。
オンライン会議では、Excel のセルへ点数入力などで工夫しましょう。
投票の仕方
❶ これまでのミニ会議で書いてきたメモ(ホワイトボードシート)を、床に置く。「アイデア」から「いいところ」「問題点」「問題点への対策案」と横一列に並べ、アイデアの特徴を各自で比較検討する。
❷ 候補案の数だけ色の異なる付箋を用意。
6案から選ぶ場合は、付箋は6色が理想(付箋の大きさは短冊形のもので十分)。
❸ 案の数と同じ階層になるように得点を設定する(例:1位11点、2位9点、3位7点、……6位1点)。
案の数と同じ色数の付箋を揃えられたら、色と対応する順位を決める(色数を揃えられないときは、付箋に得点を書くなどして対応を。
揃えられない場合でも、できるだけたくさんの色の付箋を用意する)。
❹ 各色の付箋を1枚ずつ参加者に配布。
参加者は、付箋に印鑑を押す(印鑑がなければ1枚ずつ名前を書く)。
❺ 「いいところ」「問題点」「問題点への対策案」を見ながら、もっとも支持するアイデアに1位の付箋を貼る。
以下2位、3位……と続け、すべてのアイデアに付箋を貼っていく。
❻ 付箋を貼り終えたら、得点を集計。合計得点が高いものを採用する。
いかがでしょう?
すべてに得点を入れる作業は、どれか1つに絞り込むよりもどこか楽しそうな雰囲気がしませんか?
実際に「5分会議」🄬の研修でも、投票はみなさん、心持ち嬉しそうな表情を見せ、盛り上がります。
多数決にはない「自分たちで決めた」感覚を味わおう
「5分会議」🄬で得点を入れる投票を採用しているのは、何も楽しさだけを求めているわけではありません。すべての意見を認めるためです
「どれか1つだけ選ぶ」という行為は、見方を変えれば1つを除いて他はすべて捨てるというのと同じです。
しかし、「5分会議」🄬では、どのアイデアも実行を前提に練られています。現実的にすべてのアイデアを取り入れるのは難しいから、選んでいるに過ぎません。他のアイデアが悪いわけではないのです。ならば、すべてのアイデアを目に見える形で評価しましょう。たとえ最終的に漏れてしまったとしても、言い損にはなりません。
また、自分のアイデアでないものも、全員がいろいろな角度から検討してきました。順番で必ず意見を出しているからです。少なくとも、勝手に議論が進んで、自分が蚊帳の外にいるような会議のときよりも、1つひとつのアイデアに対し関心が生まれているはずです。
そして得点を入れるとき、全員が改めてすべてのアイデアに向き合う必要があります。ここで参加者は初めて、ここでの決定がこれから先の仕事の流れを左右すると考えるでしょう。自分たちの選択に責任を持つようになるのです。
これは多数決では得ることのできない感覚です。多数決の場合、支持したアイデアと違うものが採用された時点で、その人のモチベーションは減退傾向に。議論した件については一歩引いたスタンスになり、主体的に取り組めなくなってしまいがちです。
受け身の姿勢では、成果もなかなか上がりません。でも得点で決まった案は、自分が入れた得点も少なからず反映されています。「自分で決めた」という実感が湧くため、自然と貢献するように。成果を上げるだけでなく、組織力向上にもつながるのです。

※本記事は『期待以上に部下が育つ高速会議』から抜粋・再編集したものです。

沖本るり子(おきもと るりこ)
「5分会議」🄬を活用した人財育成家。1分トークコンサルタント。株式会社CHEERFUL代表取締役。「人財育成と組織改革」を柱に、企業向けコンサルタントや研修講師を務めており、台湾(労働部)主催の講演会でも登壇した。「5分会議」🄬はRKB毎日放送「今日感テレビ」で紹介された。著書に『相手が”期待以上”に動いてくれる! リーダーのコミュニケーションの教科書』(同文舘出版)、『生産性アップ!短時間で成果が上がるミーティングと会議』(明日香出版社)、『期待以上に人を動かす伝え方』(かんき出版)、『期待以上に部下が育つ高速会議』(かんき出版)など多数。
株式会社CHEERFUL

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