優れたセミナーをするには「感情の動き」を設計せよ【スマート会議術第14回】

優れたセミナーをするには「感情の動き」を設計せよ【スマート会議術第14回】公益財団法人日本生産性本部 主席経営コンサルタント 寺沢 俊哉氏

多くの人の前で、話をしたり、何かを教えたりすることは得意ですか?
きっと、多くの人が「得意ではない」と答えるのではないでしょうか。ですが、現代のビジネスシーンにおいては、社内外問わず、大勢の前で話す機会は意外と多いものです。
今回のスマート会議術では、「人前で話す・教える技術 ライブメソッド5つの公式」(生産性出版)の著者・寺沢俊哉さんに、人前で話し、教える技術を伺いました。

目次

参加者の感情の動きをデザインせよ

――著書のタイトルにも入っている「ライブメソッド」とは、どのようなものなのでしょうか。
「ライブメソッド」とは、「対話を通じて心を動かし、発見を通じて行動を促す」技術のことです。
例えば、全体で2時間のセミナーの枠があったとします。前半の1時間で理論を話し、後半でグループワークをして終わるセミナーが多く見られますよね。そうした進行をして「盛り上がらない」と相談に来られる人が多いのですが、盛り上がらないのは当然です。
本来は、最初の1時間から対話を行い、盛り上がってから、グループワークに移るべきです。前半で理論を話すというのは、アイスブレイクどころか、場を凍らせているようなものです。
――「前半に理論を教え、後半で実践」というのは、理にかなった構成のようでもありますが。
確かにその構成であれば、知識面でのストーリーラインは設計できているのですが、感情面でのストーリーラインが考えられていないのです。ドラマと同じで、ピークは最後の一歩手前に持ってこないといけません。「前半に理論を教え、後半で実践する」という構成では、後半のグループワークでアイスブレイクをしただけで終わってしまいます。
最初にアイスブレイクを行い、そのあとで「実はさっきのアイスブレイクには大きな意味が込められていたんです」という導線を作らないといけないのです。
こうした知識と感情の両面でのストーリーラインの設計が、ライブメソッドの基本です。

ライブメソッドの基本「あついかみの対話」

――それではライブメソッドの「5つの公式」について教えていただけますでしょうか?
5つの公式のうち、覚えるのは、最初の公式「あついかみの対話」だけでいいと思います。残りの4つは技術の話ですので、自然と身に付いてきます。
あついかみの対話とは、これからお話しする6つの対話の頭文字を取ったものになります。
まずは「あ」。これは「あわせる対話」です。間違っても最初からセミナーの本題を話してはいけません。それは論文を朗読し始めるようなものです。そのために、興味を引くための「ネタ」を仕込むのですが、いきなりネタをやってしまうと滑ってしまうので、調子を合わせないといけません。
「今日は暑いですね」のような天気の話題でもいいですし、地方での講演ならローカルネタでもいい。その場に集まった人たちと共有できる話題で、講師と参加者の関係を築きましょう。場をチューニングするような時間ととらえてもいいでしょう。
続いての「つ」は「つかむ対話」。先ほど説明したネタによって、興味関心を持たせる対話です。意外性のある話やクイズを出すなどして、興味関心の薄い参加者を引き付けましょう。
「い」は「いかす対話」です。実はネタが、テーマにつながっていたというタネ明かしのことです。つかむ対話のネタに、裏の意図を持たせておくことが重要です。
例えば、クイズを出題したら、その答えや解法がセミナーの本題につながるようにするといいでしょう。単純にクイズをやってアイスブレイクするだけでなく、そこに今日の講演のテーマを潜ませておく。それが、興味関心を本来伝えたいテーマに結び付ける、いかす対話です。
ここまでの「あつい」が前半の1セットとなります。
――後半の「かみの」はどのような対話になるのでしょうか。
「か」は「かさねる対話」です。テーマに実感を持ってもらうことを目的に、テーマを自分に重ね、自分事化してもらうための対話です。
講師が、テーマにつながる自身の体験などを語り、それを呼び水として、参加者がみずからを研修テーマに重ねてもらいます。ここからは参加者同士をペアにするなどして、お互いの対話につなげてもいいでしょう。
「み」は「みつける対話」を指します。テーマに対する解決を促す質問を行い、参加者自身で対策を見つけてもらう時間です。みつける対話は特に重要で、アイディアや提案をみずから発見することで、行動への力が強まります。
最後の「の」は「のせる対話」です。セミナーの最後に、みつける対話で発見した解決法をそれぞれの参加者に発表してもらいます。ここで発表者は単なる「参加者」ではなく、ほかの参加者に対する「講師」になるのです。
学びの場だったはずが「自分もほかの人に貢献できた」という満足感が生まれる。その満足感こそが行動の動機付けとなるのです。
以上が、ライブメソッドの基本である、あついかみの対話です。
前半3つの「あつい」対話は講師が、後半3つの「かみの」対話はコンサルタントが得意とする領域ですが、この両方が得意という人はかなり少ない印象です。これを覚えて実践するだけで、セミナーの成果が大きく変わってくるはずです。

2018年、セミナーを取り巻く状況は大きく変わる?

――著書では、「ライブメソッド」は「対話を通じて心を動かし、発見を通じて行動を促す」技術だと説明されています。この方法論を生み出した経緯と狙いは?
講師というのは、「リピートされる人」と「1回きりで声がかからなくなる人」とに分かれてきます。
当然、何度も呼ばれたいですよね。ですが、大半の講師は、話を上手にできたとしても、いい話をしてそこで終わってしまいます。一方、何度も呼ばれる講師というのは、セミナーを通じて、参加者に行動を促せることが大きな価値になっています。
――それだけビジネスシーンが、具体的な成果を求めるようになってきたということでしょうか?
はい、そういうことです。また、今後知識を教えるだけの研修やセミナーは、ネットの動画配信で済んでしまうという予測も影響を与えています。
これまで、eラーニングはあまり普及してきませんでしたが、それは単純につまらなかったということが大きい。でも、現在のYouTuberや東進ハイスクールの隆盛を見ていると、あのノウハウがセミナー業界にやってきて、大きく変わることは想像に難くありません。さらに、ライブ配信のシステムが整ってきたことも大きいですね。
2018年は、大きくセミナー業界が動くことになると思います。よりライブ感のある話ができる講師が重宝されることになるでしょうね。そのためにはライザップのように、やる気にさせて実際に行動を促すことが重要だと思います。
――今回お話を伺っていて、聞き手の気持ちを想像することが大切なのだと感じました。
商品を売り込むにしても、スペックだけを言っても相手には伝わらないですよね。その商品が相手にとって、どんなメリットがあるのかを言わないといけない。そのためには相手のビフォーを知って、アフターを描かないといけないんです。
――しかし、セミナーでお客様のビフォーを知るというのは難しそうですが。
ですから、セミナーのチラシを作るにしても、どんな人に来てほしいかを考えて作らないといけないんです。
――募集の時点からセミナーは始まっているのですね。
会場に来たら、「目の前にとりあえず30人お客様が座っていました」という状態ではダメなんです。どういう人を集めるのかということは、見過ごされがちなポイントですので、ここに力を入れている人はイベント運営側からも重宝されるようになるでしょう。
まずは、セミナーで対話を試みる以前に、どんな人が参加者としてやって来るのかを調べましょう。そして、こちらで募集方法などに手を加えられるのであれば、「どんな人に来てほしいのか」を考えて募集をかけること。そうすることで、今回ご紹介したライブメソッドが、さらに効果的に働くようになるはずです。
寺沢さんが開発・監修した研修ゲームの「ザ・コンダクター」。トランプのように遊びながら、ファシリテーションやブレインストーミングのトレーニングができる。

文・写真:坂上春希

寺沢 俊哉(てらさわ としや)公益財団法人日本生産性本部
慶應義塾大学 理工学部管理工学科卒業後、株式会社パルコにて、新規事業開発やマーケティング等に従事。現在は公益財団法人日本生産性本部の主席経営コンサルタントとして、各種事業体の診断指導のほか、リーダーシップ、エグゼクティブコーチング、モチベーションアップなどのテーマで人材育成の任にあたる。著書に「感動の会議! リーダーが会議で『人を動かす』技術」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)「経営コンサルティング・ノウハウ7 人材育成」(中央経済社)「人前で話す 教える技術」(生産性出版)など多数。

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