楽しく生きられる環境であるようにすることしか、僕にはできない。【スマート会議術第16回】

楽しく生きられる環境であるようにすることしか、僕にはできない。【スマート会議術第16回】Smappa! Group 会長 手塚 マキ氏

新宿・歌舞伎町を拠点にホストクラブやバーを経営するSmappa!Group(スマッパグループ)の会長・手塚マキ氏。

19歳でホストを始め、20代後半からは自らホストクラブを経営、ボランティア団体や書店を立ち上げるなど、積極的にホストのセカンドキャリアを考える活動を行ってきた。

手塚氏にとって、会社とは? 組織とは? 会議とは? それは「いつも楽しく生きられる環境であるようにすること」だと言う。

第2弾は、手塚氏が組織を成長させるためにしてきたこと、リーダー論、そして信念にしていることを伺った。

目次

質を高めるべきか、時流に乗るべきか、それが問題だ。

――改めてSmappa!Group(スマッパグループ)を振り返ると、どんなカルチャーをもっていると思いますか。
15年前に商売を始めたときから、戦わない経営にしちゃったんですよね。マーケット意識も全然なかったし。歌舞伎町のホスト業界のポジション取りに辟易していた。歌舞伎町のなかだけでなく、もっと広い大海原を見ながら生きていたほうが楽しいって思っていたので。
みんなでソムリエの資格を取ろうと叫んだり、サービスやマナー講習をやったり。本屋をやるのもそうです。昔から「みんなちゃんと勉強しよう」っていうことを言ってきた。業界の慣習にも合わせないし、他のホストクラブからは「あそこは別だよね」って思われるようになっていって。時流を読まずに勝手にやってきた会社でした。
それが拡大路線に乗せるという話になると、時流に合わせていかないと儲からない、ということになってくる。そうすると、昔みたいにマーケットや業界のニーズを無視したサービス業的な質上げに尽力している場合ではなくなってくる。そうやって、だんだん今の時流に合わせるようになってきた。
以前は求められていないサービスを過剰にしていた面もあった。それがなくなっていっても、元々もっていたSmappa!Groupの考えを踏襲しつつ、時流にどういうふうに合わせていくかを、現場を中心に、模索しているような状態です。
――自分たちの質を上げることをおざなりにしていると?
そうです。たとえば、今まででしたら、店舗に置くワインの銘柄をどんどん増やし、質もすごく上げ、そのうえでホスト全員にワインの知識をもってもらい、種類に合わせてさまざまなワイングラスで、丁寧なサービスをすることを良しとしてきました。
でも、そういったサービスに時間をかけるより、ホストがLINEのテクニックを磨いたり、LINEライブやツイキャス(動画)に力を入れるほうが、今は手っ取り早くお客さまを呼べるし、時流としてはそっちなんです。

For Today(今日のために)とCultivate(磨く、洗練する)の狭間で

――未来への投資より、今日のお金、ということだと思いますが、危機感を感じますか。
「For Today(今日のために)」の部分と、「Cultivate(耕す、洗練する)」の部分は分けて考える。そのバランスが大事だと思っています。そして、その比重が今どういう状況なのかがわかっていれば問題ないと思います。
何か新しいことをする際に「それはCultivateだよね、それはFor Todayだよね」って意識的に言っていかないと、何のためにやるのかわからなくなって、その一つひとつの施策のゴールもわからなくなってしまう。
そして、その両輪のさじ加減が重要で、「Cultivateばかりしていても、今日稼げなければ死んじゃう。For Todayばかりやっていれば、金だけ残って、カルチャー(Cultivateの名詞形)は何も残らないよ」と。
そのさじ加減って店も、組織も、人もそうだと思うんです。僕は現役時代から「Cultivate」に重きを置いてずっとやってきたけれど、最近では「For Today」によって生まれるものもあるんだと思うようにもなってきました。
周りのいかにも水商売らしい「For Today」に特化して拡大している同業他社に目を向けると、そのなかから個性的なホスト集団とかカルチャーが生まれたりしているんですよ。そうやって、がむしゃらに今日稼いでいることによって生まれるカルチャーもあるなと。それによって培われるものもあるんだなって。
僕自身は現役時代「Cultivate」を重視しなきゃいけないと思ってやってきましたし、それで生き残れた。でも、今経営者の立場になって多くのホストと接していると、それがみんなに合っているわけではないことを感じています。
会社としても、歌舞伎町のホストクラブを経営する会社としては異色と言われるような活動や意識づけなど「Cultivate」を重視してきました。でもステージによっては、特にダイナミックに成長していくことを考えるときならば、「For Today」を重視する人間たちで引っ張っていくことも大事なのかなという気が、今はしています。
特に今は、歌舞伎町の景気がいいので「拡大路線“For Today”重視で行け」っていう大きな方向性で指示をしています。ただ、これが何年続くかわからない。もちろん、好景気が終わったときに生き残るためには「Cultivate」もしておかなければいけませんが、今は攻め時かなと思いますけどね。
「Cultive」の一環で運営されている歌舞伎町ブックセンター。
――歌舞伎町ブックセンターをつくったのは、「Cultivate」ですよね?
そうですね。社内教育に関してもすぐに結果が出るものではありませんし、採用に関してもすぐに人が集まるとも思ってはいません。しかし、ちゃんと本屋を続けて、会社のフロントの位置に本屋の存在があることで、中からも外からも会社の見え方は変わっていくと思っています。

リーダーに求めるのは、人を見捨てないこと

――会長の立場で組織に求めることは何ですか。
水商売って基本トップダウンの組織が当たり前なんです。でもうちは一企業としての当たり前を目指していたので、下から意見を吸い上げる仕組みに切り替えたんです。吸い上げて、また下に降ろしていって、「みんなでルールを決めるよ」って。でも、ほとんどのホストが何をやっているのか理解していなかったかもしれません。僕に言えば何とかなると思って意見を言ってくる。「俺ひとりでは何も決められないんだよ」って言っても、「だって会長じゃないですか」「オーナーじゃないですか」ってなる。
でも数年経って、何人かのマネージャーたちが、それを理解してマネージメントしてくれるようになった。だから今は、僕が直接お店に対してルールを決めたり、指示したりすることもない。それを求められることも、もうほとんどなくなりましたね。
――今のマネージャーの方々が10年前に、まさか自分が会社を運営しているとは想像していなかったでしょうね。
そうかもしれませんね。
――手塚さんなりのリーダーに「こうあるべきだ」と求めることはありますか。
人を見捨てないで見ているかどうかに尽きます。やっぱり、何かあったときにはちゃんと叱れるやつなんですよね、リーダーは。本当に本人のことを思って叱るし、褒めるし、喜ぶし、悲しむ。一緒に寄り添ってあげられる人じゃないですかね、リーダーは。
うちはリーダーは自然に淘汰されたり、自然にみんなに認められて出世したりしています。でも今のステージではマネージメントのプロを入れて組織を大人にしなければいけないなとも思っています。僕自身も、会議のコンサルタントを入れて効率よい会議にしたいなって「会議HACK!」のサイトを見て思いました。
――第三者の意見は、カンフル剤として必要だと?
はい。従業員が僕や上司に近くなりすぎると、言うことを聞かなくなっちゃうんです。でも、同じことでも違う人が言うと素直に聞いたりする。そういう意味で、たまに外部のコンサルタントを使ったりはします。
下から吸い上げた意見で新しくルールが決まっても、なかには「何の意味があるの?」って、また一から説明しなきゃいけないこともよくあります。人が商品の会社なので「決まったから」で終わらすわけにはいきません。何かをやらせ、動かすことに対して、コンセンサスを取るのがすごく難しい。上司が言うからやるっていうことはほとんどないです。
でも、僕や上司の言うことは聞かないけど、お客さまの言うことは聞くということはたまにあるんです。だから、ルールを落とし込むうえで、先輩ホストがそのホストのお客さまの席について、お客さまに、ルールの説明をします。ホストにとってもお客さまにとってもプラスなんだと伝えて、お客さまからそのホストに説明してもらうこともあります。
社内でも、同じことを伝えるにしても「あいつが言ったほうがいい」とか、それもよくあります。
A店のホストがA店の店長の話は聞かないけど、B店の店長の話は聞くっていう。親は「エロ本なんか読むな」って言うけど、いとこのおじさんは「エロ本面白いよ」って言うから好き。みたいな関係性ってあるじゃないですか。そういう上手い使い方は、たぶんみんなしていると思います。「いとこのおじさん方式」は有効ですよ(笑)。

プライベートこそが会議の最も重要な議題

――前回のインタビューでSmappa!Groupでの会議の議題は「人の問題」とおっしゃっていました。仕事とプライベートを分けるのが難しいと思いますが。
プライベートな問題こそ大事です。うちは人が商品。人ありきでビジネスをしているので、毎日小さな会議をやっているようなものです。全員が会社に来て、誰かと話をするのが仕事で、大多数の人間がデスクワークなんてほとんどない。
――あるウェブ制作会社では、企画出しのトレーニングとして、毎日会議で順番にプライベートの悩みや課題を出すそうです。それをみんなでアイデアを出し合って解決策を考えるらしいのですが、そういう意味ではプライベートの話が日常的ということですね。
うちではそれが当たり前になっていますね。会議するときに、「引っ越した」とか「親が具合悪い」とか「あいつは誰々と最近よく遊んでいる」とか。こういうのは結構重要なキーワードなんです。普通の会社は、仕事とプライベートを分けていると思うんです。でも、僕たちは仕事とプライベートが重なっています。一長一短あると思いますが、分けるのが難しい。自分たちが商品である人間が多いので。
ホストクラブが軒を連ねる歌舞伎町の一角にある歌舞伎町ブックセンター。

楽しく生きられる環境であれ

――逆に定例で話し合いの場を設けている場合じゃない?
そうですね。何かあったら、すぐ呼んで「どういうことなの?」って話し合うというか。とにかく会議も、常に人に関わることばかりです。
――人が集まって話をするのが会議だとすれば、常に会議をやっている感じですね。
そうなんです。常に会議をしている。あとは、会社の健康状態が一番重要ということです。だから常にみんながお互いに見合える環境が必要なんです。
楽しく生きられる環境であるようにすることしか、僕にはできないかもしれないですね。それ以上でも以下でもない。ちゃんと観察する係。
そして、みんなの力で、より大きな組織になっていけば嬉しいですね。

文・鈴木涼太
写真・佐坂和也

手塚 マキ(てづか まき)Smappa! Group
ホストクラブ経営者、JSA認定ソムリエ、歌舞伎町振興組合理事。1977年生まれ。1997年から歌舞伎町で働き始め、ナンバーワンホストを経て、現在はホストクラブ、BAR、飲食店、美容、歌舞伎町初の書店など十数軒を運営するSmappa!Group会長を務める。また、歌舞伎町振興組合理事としてまちづくりにも携わり、表と裏から歌舞伎町の過去、現在、未来を最も知る人物である。ホストの教育や人間的成長を大事にし、マナー講座や資格取得、家族への感謝を伝えるプラットフォームの立ち上げなどを行う。ボランティア団体「夜鳥の界」を発足し、歌舞伎町のゴミ拾いなど地域活動も実施中。著書に『自分をあきらめるにはまだ早い 人生で大切なことはすべて歌舞伎町で学んだ』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。

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