再現性の低い仕事に管理は必要ない【スマート会議術第85回】

再現性の低い仕事に管理は必要ない【スマート会議術第85回】株式会社ソニックガーデン 代表取締役社長 倉貫 義人 氏

ビジネスでは「ホウレンソウ」が、仕事の基本として教えられることが多い。「ホウレンソウ」とは、報告・連絡・相談のこと。しかし、そんな慣例を破る起業家がいる。株式会社ソニックガーデンの社長であり、『管理ゼロで成果はあがる』『ザッソウ 結果を出すチームの習慣』などの著者である倉貫義人氏だ。

同社はセルフマネジメントをはじめ、オフィスや管理職の廃止、リモート会議などのユニークな取り組みが評価され、「働きがいのある会社2018」にも選ばれた。

倉貫氏は、なぜこの常識破りな取り組みに成功したのか。働き方改革が叫ばれる中、ユニークな経営戦略で成長を遂げる倉貫氏にその秘訣を伺った。

目次

自分の上司は自分であるという「セルフマネジメント」

――著書のタイトルにもなっている「管理ゼロ」はどんな意図から生まれたのですか。
「管理ゼロ」というキーワードは、本を出すタイミングでタイトルをつけただけで、実は社内的には「管理ゼロ」とは言っていません。会社では「セルフマネジメント」という言い方をしています。セルフマネジメントというのは、自分の上司は自分であるということ。誰かが指示をしてくれたり、誰かが責任を取ってくれたりして仕事をするのではなく、自分で自分のことをマネジメントして成果を出していきましょうという考え方です。
セルフマネジメントと言うと、自分のことだけをやっていると思われがちですが、僕らが考えているセルフマネジメントは、自分の能力を最大化するためには、周りとのコラボレーションをしていかないとパフォーマンスは出ないということです。それも誰かに言われなくても自分でできるようになることがセルフマネジメントです。社員が増えても誰かを部長にするということもなく、全員がセルフマネジメントの状態を保ったまま、いまは40人ぐらいに増えてきている状態です
――セルフマネジメントは業種業態に関係なくできるものですか。
そうですね。社内にはマーケティングや新規事業をやっている人もいます。エンジニアだからできるということではないと思います。あえて言えば「再現性の低い仕事」、つまりクリエイティブな仕事でないと、そのスタイルの効果は薄いと思っています。昨日と今日と明日で同じ仕事をする人、もしくは、Aさん、Bさん、Cさんがいたときに、3人とも同じ仕事をする場合は再現性があるので、そういう人たちは管理したほうが、成果が出るかもしれません。
一方、再現性の低い仕事は、Aさん、Bさん、Cさんそれぞれが違う仕事、昨日と今日で違う仕事をしている。たとえばライターの仕事もそうですよね。毎回違う人に取材して、同じ内容は書かない。つまり、その時点で再現性が低いので、そういう仕事は均一的に管理することが難しいと思います。
コンピュータやロボットに置き換えられる仕事の特徴は再現性が高いということです。コンピュータやロボットに置き換えられない仕事は、管理しないやり方のほうが生産性が上がると僕らは考えています。
――それはご自身の体験から得られた実感ですか。
はい。私自身、元々はプログラマーやプロジェクトマネージャーをしてきましたが、そういう仕事は再現性が非常に低いです。自分自身の生産性や品質がどうやったら上がるのかを考えたときに、誰かに指示命令や管理されたからといって一生懸命頑張ったか?というと頑張らなかったなという感じがしていて。
むしろ本人がやりたくないことを外発的動機に頼ってやらせるということは、クリエイティブな仕事においては生産性を阻害しかねない 。自分自身がそう感じたので、自分が会社を経営したり、マネジメントをしたりするときには管理しないほうがいいという思いでやっています。

報告・連絡のために会議をする必要はない

――会議はどのようにされていますか。
そもそも社内で会議らしい会議はしていないです。会議といってもブレストをする打合せが多いです。いわゆる大企業でやっているような、部門の定例会議や、リーダーが集まって部長に対して毎週進捗の報告するような会議はありません。報告・連絡をするために会議をするのは時間がもったいない。報告・連絡は情報共有ツールで状況が見えるようになっています。全員に報告するものであれば人を集めなくても社内の情報共有ツールを使って全員に伝えればいい。報告・連絡のためにわざわざ会議をする必要がないという判断で、報告・連絡の会議はやっていません。
いわゆるホウレンソウ(報告・連絡・相談)の「相談」はします。とはいえ、相談のために会議を用意するというわけではありません。いま問題があるから相談したかったり、仕事を進めるために相談したかったりするのに、会議の予約をして明日とか明後日とか、1週間後とかにしてしまうと仕事が全然進まない。相談は必要だと思ったときにリアルタイムにできるようにしたいんです。
「来週1時間お時間ありますか?」と言われたら、それは悪い相談というか、嫌な気しかしない。「お時間ください」って、最悪のケースを思い浮かべませんか。その1週間やきもきして仕事が手につかなくなっちゃう(笑)。
相談はリアルタイムにもっと気軽にしたほうがいいと思います。とはいえ、いきなり「相談しましょう」っていうのも難しい。だから「ザッソウ」と言って、「雑談と相談でセットにしちゃおう」と言っているんです。「雑談しちゃダメ」と言わないことが大事。雑談をしてもいい空気になっていれば、放っておいても雑談はします。雑談をしていたらその中で相談することもある。相談している途中で、その話が脱線して雑談の話をすることもあるけど、それも別にダメと言う必要もない。
報告と連絡はいらないけど、相談をもっと円滑にするためには雑談があったほうがいい。雑談と相談をセットで「ザッソウ」ということにして、社内のコミュニケーションをもっとやりましょうねと。ザッソウは、わざわざ会議ではなくても、どの瞬間でも「ちょっとザッソウいいですか?」というふうにしていきましょうと社内で広めています。
――雑談と無駄話の境界線を引くのが難しそうですが。
みんな会社には仕事をするために来ているし、成果を出したいと思っている。そういう意味では、企業文化として「短い時間でたくさんの成果を出しましょう」というのが大前提です。基本的に残業はしないで稼ぐための時間をなるべく短くしようという会社なので。そうなると無駄話をしている場合じゃない。無駄話をしていたら成果は出ないです。成果が出ないと自分たちに跳ね返ってくる。短い時間で成果を出したいというのは、まず共通認識にあります。

相談は雑にしたほうがいい

――「ザッソウ」が特に重視されるのはどんな背景があるのですか。
僕らがやっている仕事の種類がまず変わってきているのがひとつです。再現性の低い仕事やクリエイティブな仕事が増えてきた。相談の重要性が非常に増していると思います。問題を解決するときに相談しないと解決しないことがたくさん出てきたときに、いきなり改まって相談するのは難しい。だから「雑談から入りましょう、ザッソウしましょう」と。
「ザッソウ」という言葉には、もうひとつ「雑に相談する」という意味があるんです。これも僕らが大事にしていることです。よくあるのが相談するときに、しっかり考えないで相談すると、たいてい「しっかり考えて持って来い」「なんでそんな状態で相談してくるんだ? 調べてから来い」って叱られる。そうすると、「しっかり考えて相談しなきゃ」と思って時間をかけてから相談するんです。しかし、今度は完璧に仕上げてから相談に持って来られると、相談を受ける側はダメ出しをしにくくなるんです。「いや、そんなんじゃダメだ」と思って、ひっくり返してしまうと、それまでやってきたことが無駄になる。もっと早い段階で相談にきてくれたら早く軌道修正できたかもしれない。しっかり考えて持って来られると実は無駄が多くなるんです。
いま正解がない時代になってきていることも大きいと思っています。レポートを書くのもそうだし、資料を作るのもそうかもしれない。お客様のために作る提案資料でも、正解がある仕事ではないですから。
――上司の経験値からの判断が必ずしも正解とは限らない。
そうです。部下が考えていることも正解ではないかもしれないし、上司が考えていることも正解ではないかもしれない。正解があれば、しっかり考えたうえで持って来られても「正解」もしくは「不正解」と言えるけど。正解かどうかわからないので、お互いキャッチボールをしながら作るしかない。キャッチボールで質を高めていくほうが、生産性も成果物も良いものになるというのがあります。
あとは、組織のカタチも変わってきたということですね。最近ティール*とか、ホラクラシー*が世の中で注目されています。従来の指示命令の組織の作り方で、ただ「良いレポートを書きなさい」「良い研究をしなさい」「イノベーションを起こしなさい」と言うだけだったら、それは上司の仕事としてどうかという話です。そんなことやって仕事ができたら苦労しない(笑)。指示命令では人を動かせなくなってきている。
フラットな組織を作ろうするとき、果たしてホウレンソウでいいのかという疑問が出てくる。雑談をしていく中で本人のやりたいことを知って、仕事をやってもらう。生産性を確実に上げるためには、そういうフラットな組織が求められてきているのだと思います。

ティール*
社長や上司がマイクロマネージメントをしなくても、目的のために進化を続ける組織のこと。指示系統がなく、メンバー一人ひとりが自分たちのルールや仕組みを理解して独自に工夫し、意思決定していくという特徴が見られる。

ホラクラシー*
社内に役職や階級のないフラットな組織形態のこと。意思決定権が組織内で分散される。それぞれが裁量をもち、自主的に仕事に取り組めるようになることが期待できる。

文・鈴木涼太
写真・大井成義

倉貫 義人(くらぬき よしひと)株式会社ソニックガーデン
株式会社ソニックガーデン 代表取締役社長
大手SIerにて経験を積んだのち、社内ベンチャーを立ち上げる。2011年にMBOを行い、株式会社ソニックガーデンを設立。月額定額&成果契約で顧問サービスを提供する「納品のない受託開発」を展開。全社員リモートワーク、オフィスの撤廃、管理のない会社経営など新しい取り組みも行っている。著書に『ザッソウ 結果を出すチームの習慣』『管理ゼロで成果はあがる』『「納品」をなくせばうまくいく』など。ブログhttps://kuranuki.sonicgarden.jp/

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