オンラインでも密にコミュニケーションをとる方法はいくらでもある【スマート会議術第137回】

オンラインでも密にコミュニケーションをとる方法はいくらでもある【スマート会議術第137回】ファイヤー株式会社代表 長田卓史氏

米国のギャラップ社の調査によると、日本人のワークエンゲージメント(仕事への熱意度)が高い人は6%しかおらず、これは世界139カ国中132位という。なぜ、今日の日本人はこれほど仕事への熱意を失ってしまったのか。

研修ファシリテーターの長田氏は、その原因はコミュニケーションがうまくいっていないことにあると言う。

コロナ禍の今日、人と人が直接会って話し合う機会は激減し、テレワークによってますますコミュニケーションがとりづらくなったという声も多い。しかし、長田氏は会議のフォームづくりと場づくりがちゃんとできれば、オンラインかリアルかという二律背反的な議論に意味はないと言う。

では、テレワークが推奨される時代、私たちはどうすればコミュニケーションを上手に図り、仕事への熱意度を上げていくことができるのか。

自ら率先して自宅のIT環境を整備し、“コミュニケーションの達人”として活躍する長田氏に、テレワーク時代のコミュニケーション術、そしてワークエンゲージメントの高め方についてお話を伺った。

目次

雑談が生まれづらい環境がイノベーションを阻害している

――いま、日本企業の多くが商品やサービスに付加価値をつけることに苦労しています。なぜでしょうか。
苦しんでいますね。付加価値をつけるためにはイノベーティブなアイデアを出していく環境が必要です。イノベーティブなアイデアは雑談から生まれることも多い。「これちょっと言ったらマズいかな」「こんなバカらしいアイデア、ちょっと職場で言うのははばかられるな」っていうことから、「あ、それ意外に面白いんじゃない?」「じゃあこうじゃない?」っていうような話をしていくことによって生まれると思うんですよね。
でも、みんな会議では正解しか言えないと思っているから、そういった雑談が生まれづらい環境になっている。1on1ミーティングも会議もそうですね。問題解決のための会議とブレストの会議をちゃんと分けてできている会社がどれだけあるのか。相当ごっちゃになっていますね。「いまは脱線する時間です」「発散させる時間です」「ここからは収束タイムです」ということを分けてやらないと、みんな混乱しますよね。
――オンライン会議はリアルな会議よりさらに雑談を生みにくい環境のような気がします。
私の感覚だと4人を超えたらまず脱線しないですね。そこはもう無理やり脱線させるしかないです。Zoomでいうブレイクアウトルームをうまく組み合わせて、「じゃあいまから発散させる時間だから分けますよ」って。分けたところからまた集まってきて、そこからみんなでさらにシェアしていきましょうというようなことをうまくファシリテーションしてあげる必要があります。
オンラインの機能をうまく使っている会社さんもありますけど、私の感覚だとまだ1割ぐらいかもしれないですね。オンラインで会議をうまくやっていく以前の問題だと思っています。ビデオ会議なのにいまだに顔出しをしないで音声だけで会議をしている会社が相当多いんですよ。IT部から「大勢が一斉に映ると回線が落ちるから映像は映すな」と言われるらしいんです。それがいまも続いている。たとえいまは大丈夫だとしても、いまさら映像を映してやろうというムードにもなっていない。そうするとおかしなもので、顔を映さないオンライン会議が当たり前になってくる。顔を映さないことが当たり前になるので、いつの間にか「化粧をしていない顔を出すのは嫌だ」と言う女性も出てくる(笑)。

会議のフォームづくりと場づくりが必要

――オンラインだからという以前に会議に臨む考え方に課題がありそうですね。
そうなんです。会議のフォームを覚えずに会議をやっている会社さんがすごく多いです。「報告の会議なのか」「情報収集の会議なのか」「承認の会議なのか」といった、会議のフレームワークが変わってくることを全員がわかってないといけない。いきなり背景説明なしで議論を始めてしまったり、会議の前にやっておくべきことを会議の中に入れたりと、集まってやるフェーズと事前に個々人でやっておくフェーズをしっかりと分けずに、とりあえず集まろうという状況になっている。
――「ちょっと出とけよ」って、理由がわからないまま出されることもあるとよく聞きます。
聞きますよね。だからきっちりとフォームを理解したうえで何をすべきかを決めなきゃいけない。あと場づくりですね。オンライン会議であれば、5分前に開場して予めみんなが話せる状況をつくれているのか。会議を見える化して一体感をつくっていく場のファシリテーションスキルですね。会議のフォームづくりと場づくり。この両方が必要だと思っています。
たとえばマズローの欲求5段階を会議に当てはめると、まず生理欲求とか安全欲求を満たすことが必要なわけです。上手な方は5分前とかに入ってきて「あ、〇〇さんおはようございまーす」とか「どうですか~?」って、そういうことをやっているんですよね。
――ダメな会議ほど偉い人が「先に進めておいて」と言いながら、最後に遅れて現れますよね。で、偉い人が現れると場に緊張感が走って、また一から説明し始めるとか(笑)。
そうなんです。本来はファシリテーターが実際に見えるか、聞こえるか、話せるか、と5分以内に全員公平に確認して話させるんです。直接話すかチャットでとりあえず書いてもらうことで、全員に「私は参加しているぞ」という意識を持ってもらいながら、安全欲求が満たされた状態で会議をやっていく。ここがやっぱりまだやれていない。
そして、挨拶とかお礼とか目的の提示とか時間枠の設定です。時間枠は口頭で大体やられていますが、挨拶や目的の提示は画面に映してやらないとわからなかったりします。わかったらうなずく、とか手で丸を描くとか。「わかりませーん」って手を挙げるとか。そういうノンバーバル(非言語)のコミュニケーションを意識的にやっていくことが、通常の会議のステップに加えたオンラインでやってくポイントだと思います。
――オンライン会議で発言しないとリアル以上に置いてきぼり感がありますよね。
まさにそこなんです。会議で黙ってしまう原因をファシリテーションでどうやってつかんでいくかがポイントになります。議論についていけない人、何かモヤモヤした思いがある人、言いたいことがあるけど遠慮している人、この人たちをどう巻き込んでいくか。「○○さんは何か言いたいことありますか?」「いまから2分間、時間をとりますので自分の考えをまとめましょう」ってこまめに質問をする。そういう時間をあえてとります。いきなり言われて発言できる人ってたぶん半分もいない。みんなしっかり思考してから発言したい。 
また、「自分の意見だ」となると発言しづらい。だけどグループの意見、「うちのグループではこういう意見が出ました」ってなれば言いやすい。1回ブレイクアウトに入れて、みんなで意見をまとめてもらって「どんな意見が出ました?」ってやると意見が出るんですよ。
これができる人がいると会議も変わっていきます。これを上司がやってもいいのですが、もしかして上司がやるとうまく機能しない可能性もありますから、部下からファシリテーターを育てるとか役割分担をしていく時代だと思います。
――そういうフォームをつくっていくと、各々の能力に差があっても平準化されやすいですね。
おっしゃる通りです。そうすることで面白いことが起きているんですよ。これまでリアルの会議では声が大きい人の意見が通りますよね。その声が大きい人が、リアルとネットの世界では違うんです。普段ネットが大好きで、オンラインでのコミュニケーションが大好きで、SNSとかYouTubeとかを見ている層がここで一気に力を出し始めたんですよ(笑)。
――Zoomは基本的に映り方や声の大きさが公平ですもんね。民主的という点は功を奏しているわけですね。
そうなんです。だからいままで発言に序列があったのが、オンラインになってなくなったって言われていますよね。でも、「Zoomの会議で部長の顔だけ大きくしてくれ」とか、「画面の並ぶ順番の優先順位をつけたい」といったリクエストをシステム会社にするところもあると聞きます。平等に並ぶのが気に入らないという人たちもいるわけです。まずはそういう意識改革からですね(笑)。

仕事に情熱と誇りを持たない日本人

――長田さんがモットーにされている「ワークエンゲージメント」の考え方についてお教えください。
仕事に情熱と誇りを感じ、働くことで自分がエネルギーをもらい、人生自体がハッピーになれるような状態をワークエンゲージメントと言います。仕事って本来、自分が情熱を感じるものだし、誇りを持てるものだと思うんです。だけどいまの日本では、ただ稼ぐための手段になっているせいなのか、心底情熱を捧げられるものになっていない。米国のギャラップ社が世界各国の企業を対象に実施した従業員のエンゲージメント(仕事への熱意度)調査(2017年)によると、日本ではワークエンゲージメントが高い人は6%しかいないそうなんです。139カ国中132位なんですよ。ほぼ最下位レベルです。世界で一番嫌々働いていると言ってもいいくらいです。それだけ日本人のワークエンゲージメントって低いんですね。
仕事からエネルギーをもらっていなくて、エネルギーを下げているケースが多い。その原因はコミュニケーションがうまくいっていないせいだと思うんですよね。本当の自分を出せていない、忖度してしまっている、妥協してしまっている。だけど本当に上司と部下が何をやりたいのかとか、お互いの本当の理想を追求していくことによってワークエンゲージメントって高まっていくと思っています。上司と部下がそういう話をしてみたらよくわかり合えたということも起こるわけですよね。そういう関係をつくっていきたいですね。
現在は、いかに生産的にやってくのか、いかにスピーディーにやっていくのかといった、効率とスピード重視でタスクだけ渡されるということが起きてきたんじゃないかと思います。よく言われるたとえにサグラダファミリアのレンガ積みの仕事がありますよね。「私はサグラダファミリアをつくるために働いている」っていう。だんだん、そういう意義や意味を語らなくなっていったんじゃないですかね。いま多くの企業が導入し始めている1on1ミーティングは、原点に立ち返って、仕事の意義や意味をしっかり対話していこうという流れの一環だと思います。
――現在は上司の役割も複雑になってきて大変ですね。
そうなんです。でもそういう話ができる上司が少ないので、どうやって彼らのキャリア支援をしていくのかということをトレーニングでやっています。
私はテレワークの良さをすごく感じているんですよね。世界中どこに行っても仕事ができますし、何より通勤がなくなったのが大きいです。テレワークは自分の人生を豊かに暮らしていくための手段のひとつだと思うんです。withコロナの時代にあって、ソーシャルディスタンスを保ちながらいかにコミュニケーションを密にするのかっていう、そのカギはITだと思うんですよ。そのITの技術を使いながらこういうソフト面のITとハード面のIT、全員でインフラを高めていけば、自由な人生が送れるはずなんです。
――リアルで会うことがコミュニケーションとしては一番で、オンラインでは直接会えないからコミュニケーションが犠牲になるという二律背反で語られること多いですが、一概にそうとは言えないということですか。
言えないと思います。ソーシャルディスタンスであろうが、オンラインであろうが、密にコミュニケーションをとる方法はいくらでもあると思います。私自身、仕事でリアルに会ったことがない人もいっぱいいますが、全然問題ないです。「あれ、会ったことありましたっけ?」「もしかしてリアルで会うのは初めてですよね?」というのは、つき合いが長くてもありますよ(笑)。リアルに会ったことがない人のほうが結構仲が良かったりすることもあります。

文・鈴木涼太
写真・大井成義

長田 卓史(ながた たくし)ファイヤー株式会社
ファイヤー株式会社代表。研修ファシリテーター/国際ボディランゲージ協会認定講師コーチ/ストレングス・コーチ。明治大学卒業。花王株式会社で東南アジア駐在、ビオレのマーケター、ボシュロムジャパン株式会社でブランドマネージャーを務めた後、金融ベンチャーのアニコムホールディング株式会社経営メンバーの一員として東証マザーズ・一部上場に貢献する。人生のテーマである「ワークエンゲージメント」(人々が仕事に誇りを持ち、情熱を燃やし、働くことで人生が充実する)を高める活動に注力するため、創業。現在は研修ファシリテーター・エグゼクティブコーチとして活躍中。研修テーマは、ワークエンゲージメント、コミュニケーション、OJTトレーナー育成など多数。ワークショップ(参加・体験)形式の研修デザインを得意とする。

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