「越境学習」を通じて釜石を一緒に盛り上げてくれる企業に出会いたい【スマート会議術第182回】

「越境学習」を通じて釜石を一緒に盛り上げてくれる企業に出会いたい【スマート会議術第182回】株式会社かまいしDMC 代表取締役 河東英宜氏
三陸漁場の中心港として栄え、近代製鉄発祥の地として発展してきた釜石市。いわゆる観光地ではない同市が観光ビジョン策定にあたり目指したのが、「持続可能な観光地」だ。

では観光資源に乏しい釜石がなぜ「接続可能な観光地」として期待を寄せられているのか。そのカギを握るのが、「オープン・フィールド・ミュージアム構想」を推進し、釜石市の発展をサポートする株式会社かまいしDMC代表の河東英宜氏である。

そんな河東氏が中心となり、立ち上げた釜石ワーケーションはまさに観光だけに頼らない持続可能な形として注目を集めている。釜石ワーケーションは「学び」をテーマとしており、短期間の滞在でも、深く学び、楽しめる「濃い」プログラムを提供していることが、一番の特徴だ。一例として、震災を題材にしたプログラムでは「組織作り」や「リーダーシップ研修」など企業の課題やニーズに合わせ、内容を個別にアレンジして、参加者に揺らぎや気づきを与える「越境学習」として多くの企業から支持されている。

越境学習とは、普段勤務している会社や職場を離れ、まったく異なる環境に身を置くことで、予定調和や固定概念を崩して新たな視点などを得る未来志向の学びのこと。

全国を見渡しても、この越境学習を地域単位で体系立てて成功しているといえる地方はまだ少ない。ではなぜ釜石市が越境学習を成功させているのだろうか。その秘訣を河東氏に伺った。
目次

都市では当り前のことが地方では通用しない

——実際の越境学習で、企業さんがいろいろなことを学んで持ち帰っていかれると思いますが、河東さんご自身はどんな効果があると思われますか。
教科書通りのことを学んで、東京や首都圏でやっている延長線として来られた場合、往々にしてそれが地方だと通用しないことが多いんですよ。

地方ではもっとリアリティがあるというか、実態に近い。たとえばひとつのものをつくって売るにしても東京だといろいろな資材が集まりやすい。でも、地方だとその資材が集まらない。そこからスタートなんですよね。

どこかに委託してつくるにしても、委託する工場がないとか。売れる範囲も集まる情報も限られてきたりする。学んできた教科書通りにできないというのが、地方に来るとよくわかるんですよね。

何かをつくって売れる売れないの判断もものすごく早いので、販売するリアリティがすごくわかりますよね。そういうところがいわゆる「越境」で、自分の守備範囲じゃないアウェイに来て、どれだけ自分が役に立つのかというのがわかるんですよ。自分は結構できるつもりだったのに、できないことがわかるんですよね。

自分のバックグラウンドがない中でどれだけできるかっていうのが「越境」のいいところです。いままで考えていたものの角度を変えてみるとどう見えるかがわかる。その視点を持ったまま、もう1回ホームに戻ってみると、別の活躍ができるのが「越境」の良さだと思います。
――東京は競争が激しくて競合も多く、田舎は競争相手がいないから結構のんびりしているという認識があると思います。それも逆転の発想ですよね。
そうです。決してそうではないということが、来てみてわかるんですよ。あとはリアルの地方を見てみると、東京で想像していた地方創生とは違うということがわかったり、それが非常に面白かったりするようですね。
根浜クルーズの様子

越境学習を通じて「第二のふるさと」が生まれればいい

――河東さんにとって、越境学習を通じて何を伝えていきたいと考えていますか。
地方創生に関心がある企業さんには、ぜひ一緒に地方の課題に取り組めるようなプログラムを用意していきたいと思います。

自分はいま地方創生のDMO、地域づくりのために会社をどう運営したらいいかというアドバイスをするために全国行脚しています。釜石市はたまたま釜石市にいまある資産を使うと、越境学習を中心とした企業版ワーケーションがマッチするということでその選択をしただけであって、地域によってはそんなことをする必要がないところもあります。

たとえば黙っていても観光客が来るのであれば、どういう観光客を呼ぶのがふさわしいのかを考えるわけです。地方自治体によって持っている課題がまったく違うので、やることも違うんですよ。

地方が越境学習をやれば、皆うまくいくという話ではないんですよね。これがベストだという正解があるわけでもなく、たまたま越境学習のニーズがあって、釜石市がやっていることと合っているということです。

我々はあくまで地方創生の中で、企業さんに地方に関わってもらって、より強い関係が築けて、そこで何か関わって「第二のふるさと」になってくれればありがたいというところです。
――その選択肢のひとつとして越境学習はかなり効果的なんですね。
そうです。そういった手段のひとつという感じですね。
株式会社かまいしDMC 代表取締役 河東英宜氏
――釜石ワーケーションはいま急成長されていますが、今後どのように展開していきたいというビジョンがあればお教えください。
いま地方は一次産業がどこも弱まってきています。まずは研修に来ている企業さんと一次産業の強化ですね。あとは交通をはじめ、いろいろ社会課題が出てきていますので、そこを考えていって実証実験ができていければいいなと思います。

釜石市は規模感が社会実験をしていくのにちょうどいいと言われることがあります。大都市のような大きい街だとなかなかやりにくいんですけど、小さい規模感が実験していくのにやりやすいと表現をされた企業もありましたね。

東京でやるとなったらすごくお金もかかりますが、小さく実験する分にはお金があまりかからないで、ちょっと実験できるということですよね。

我々が進めているのは、トリプルボトムライン*といわれているところなので、我々の収益だけじゃなくて地域全体でサスティナブルにまわっていくという形です。社会的な過ごしやすさとか、そういうところに、特に若い人たちを中心に観点が移っていっているのかなって感じはしますよね。すごくお金儲けをしたかったら、地方には移住してこないと思いますよ(笑)。

トリプルボトムライン*
企業の社会的責任の観点から、企業経営に「環境」「社会」「経済」に配慮を求めることを意味する。 環境とは、原材料、エネルギー、水、生物多様性など指し、社会とは、人権、社会貢献活動などを指す。

文・鈴木涼太

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河東 英宜(かとう ひでたか)株式会社かまいしDMC
株式会社かまいしDMC 代表取締役。観光地域づくり法人として、地域の持つ観光資源および地域産品の魅力を最大限引き出し、地域経済を活性化することをミッションに運営。釜石市が観光振興ビジョンとして掲げる「オープン・フィールド・ミュージアム釜石」の構想を実現するため、より魅力的な観光地域づくりの手段として、世界持続可能観光協議会 (GSTC) 基準を取り入れる。
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