プレゼンで変わる!“伝え方”から働き方をアップデート

プレゼンで変わる!“伝え方”から働き方をアップデート

11月29日(金)、「会議HACK!」が協賛メディアとして参画する一般社団法人プレゼンテーション協会の会員向けイベントが行われました。

会場は六本木ミッドタウンタワーの「ワークスタイリング東京ミッドタウン」。ビデオ会議システムのZoomを使ってのオンライン聴講も同時に行われました。

今回のテーマは「プレゼンで変わる!“伝え方”から働き方をアップデート」。本質的な働き方改革につながるようなプレゼンの実践的な資料作成方法と、その考え方について約90分の講義となりました。

講師を務めるのは、プレゼンテーション協会の代表理事・前田鎌利氏。前田氏は、全国で年間200を超えるプレゼン・会議の企業研修・講演をこなすプレゼンテーションクリエイターです。

★前田鎌利プロフィール
https://www.katamari.co.jp/
★スマート会議術インタビュー記事
会議は「削る」「出ない」「出る」の3つに分類する【スマート会議術43回】
会議とは「一座建立」である。【スマート会議44回】
どんなに難しいことでもわかりやすく伝えなければならない。【スマート会議術第73回】
面倒くさいことをやめたら何も伝えられなくなる。【スマート会議術第74回】

目次

最も大切なのはスピード感

スライドにまず映されたのは“一座建立”という言葉。書家でもある前田氏が座右の銘にしている茶道の言葉で、「主客に一体感を生ずるほど充実した茶会となること」を意味しています。

つまり、プレゼンとはプレゼンターが一方的に伝えたいことをしゃべるのではなく、伝えるべき相手と一体化しないと意味がないという考えです。この考えを踏まえ、プレゼンの極意について話は進められました。

「俺はお前しかしゃべれないことを聞きたいんだ」

前田氏が現在プレゼンテーションクリエイターとなった大きなきっかけは、まだ新人の頃、とある営業先のお客様に言われたこの言葉だったそうです。

以来、常に「なぜこの仕事をやっているのか? なぜこれを売っているのか?」と自問自答しながら、ソフトバンク時代に孫正義氏のもとでプレゼンの極意を学んできたことなど、現在に至るまでの経歴を紹介。

続いて、なぜいまプレゼン力が求められるのか、その時代背景と現代のビジネスで最も大切なことについて説明をします。

少子高齢化、グローバル化、不確実性など、未来の予想がつかない、これまでの経験や常識が通用しない時代にあって、最も大切なのはスピード感だと言います。

生き残るためには、スピード感をもって結果を残すしかない。そして結果を残すためには、意思決定の回数を増やしていくしかない。

そして、会社にじっと留まって待っているだけでは置いていかれるだけ。社内外のネットワークを広げて自発的に“取りに行く”べきだと行動を促します。

決裁者にはチェックではなく、ジャッジをさせる

ビジネスに臨む“スピード感”と“取りに行く”姿勢を前提に、具体的に社内プレゼンを成功させるコツについて話は進みます。

まずプレゼンをするときに長い話は不要。概要を3分で説明して、あとはディスカッション(質疑応答)の時間に費やす。プレゼンをする相手が決裁者の場合は、ジャッジをしてもらわなければ意味がない。決裁者はジャッジをするために自分の疑問が払拭されなければなりません。だから不信感や不安感を質問して安心させることが目的になると言います。

また、限られた時間でしっかり説明して質問をさせるためには、プレゼン資料は5枚〜9枚で十分。ジョージ・ミラーが提唱する「7±2の法則」を勧めます。そのくらいの枚数が人が覚えられる限界だそうです。

そして、前田氏が実際に7枚のスライドで3分プレゼンを実演。

前田氏のまとめで最も印象的だったのは、「決裁者はチェックする人ではなく、ジャッジする人」というアドバイスでした。ジャッジしてもらうために特に注意したいのが、「資料に情報を埋め尽くすな」ということ。決裁者にとってプレゼンターががんばったかどうかはどうでもいいのです。

情報が多いと決裁者はチェックをしてしまいがちになる。チェックとは間違い探しのようなものなので、ジャッジを下すことが遠のくのです。だから、余計な情報は入れないで、相手に質問をさせる。それがジャッジにつながるということでした。

次に社内プレゼンで押えておくべき3つの条件について解説します。

3つの条件とは

・財務的視点
・実現可能性
・経営理念との整合性

そのプロジェクトや企画はどのくらいの予算が必要なのか、実施することでどれくらいの売上げや利益が見込めるのかなど、お金についてしっかり押えておく財務的視点が重要であると言います。

そして、そのプロジェクトが本当に実現可能なのか、論理的根拠が必要であること。どんなに夢のようなすごい企画でも絵に描いた餅では意味がありません。

最後に経営理念との整合性。腹落ちする理念が必要になります。会社の経営理念と結びつかない内容をいくら訴えても、その“念い”は相手に伝わりません。

プレゼン資料作成の基本テクニック

次は実際にプレゼン資料を作成する上で知っておきたい、基本的なテクニックについて説明。

【画面サイズ】
まず画面サイズ。プレゼンでは4:3と16:9の画角が主流です。社内資料などでは4:3で良いが、社外プレゼンやプロジェクターを使ったプレゼンでは16:9のほうがダイナミックさや臨場感が出やすいのでお勧めだとのこと。
【Zの法則】
2つめは「Zの法則」。横書きの資料では、人の目線は左上から右下に向かってZ字に動くという意味です。そのため資料のページ番号は右端に、登壇するときは向かって右側に立つ、時系列は過去(左)から未来(右)という流れになります。
【フォントの統一】
3つめはフォントの統一。できるだけ大きく視認性が高い太字で、メイリオのような多くの人が見慣れたフォントをお勧め。前田氏の経験上でも、フォントの違いでプレゼンが通るか通らないかは大きく変わるそうです。
【フォントサイズ】
4つめはフォントサイズ。最低でも30ポイントで、できれば50ポイントを推奨。特に強調したい、目立たせたいと思う文字は200ポイントくらいまで大きく使っていいと言います。
また、1枚のスライドに収める情報量は、20秒以内で理解できる程度にする。読むのに20秒以上かかるようなスライドは眠くなるので避ける。
【文字の配置】
5つめは文字の配置です。キーメッセージは常に少し上に置いて下に余白をつくる。強調したいメッセージが下のほうにあると遠くの人が見えない恐れがあります。
【13文字の法則】
6つめは「13文字の法則」。これは人が一瞬で理解できる限界の文字数だとのこと。Yahoo!ニュースをはじめ多くのメディアが使っていることで知られます。
【シグナル効果】
7つめはシグナル効果。ポジティブは青、ネガティブは赤にするのが定石。決裁者はうまくいっている事柄は細かいところまで確認はしません。ポジティブな青い箇所は流して、赤に注目して見るようになるとのこと。

他にもグラフは左、メッセージは右に配置する。主張したいことジャッジしてほしいことを強調したいときは一色に絞る。アンケートランキングなどは全部出さないでトップ5に絞るなど、見せ方の細かいノウハウについて説明が続きました。詳細は前田氏の著書に書かれていますので興味のある方はぜひ著書『プレゼン資料のデザイン図鑑』を読んでみてください。

プレゼン資料のデザイン図鑑
【仕上げ】
最後は仕上げ。アペンディクス(補足資料)を必ず用意すること。FAQもあると決裁者を説得するのに有効です。
資料ができたら一晩寝かせる。時間がなければいったん他の仕事をするなど少し間をあけて改めて見る。そして、人に見てもらう。直属の上司ではない第三者に見てもらうこと。最後に決裁者の視点で見る。できるだけ2つ上の役職の人の視点で見ることが肝心だと言います。
決裁者の視点で見るためには、会議で学ぶのが一番だそうです。他の人が言ったことに対して、上司がどう言うのか、どう判断するのかを見ながら、上司の立場でシミュレーションをします。若いときからそういう習慣を身につけておくことが大切だと言います。それが最初に大前提の姿勢として説明した“取りに行く”ということです。
とにかく日頃から視座を上げておく。そうすることで質問力も上がる。前田氏は、ソフトバンク時代に上司が言ったことに孫正義がどう言うか、どう判断するかを常にシミュレーションしていたそうです。
資料が完成したら最後に実写確認です。本番でどう見えるか実際にモニターなどに映して見てみる。完成したらいよいよ決裁者にプレゼンとなりますが、そのときに知っておくと役立つのがハーマンモデルです。ビジネスにおいて人は「堅実型」「感覚型」「論理型」「独創型」の4つのタイプに分かれるので、そのタイプに合った資料を作成し、プレゼンをすると通る可能性が非常に高くなるとのこと。
相手を知ることがプレゼンを通す鉄則。日頃からコミュニケーションをとることで相手の特性を知ることがプレゼンで勝つ近道だと言います。

聴講者が実際に3分プレゼンを披露

前田氏からプレゼン資料の作り方とプレゼンの仕方について説明が終わった後は、参加された2名の方が実際に3分プレゼンを披露。それを題材に前田氏が良かった点、改善すべき点などについて解説をします。

一人目のプレゼンターのテーマは「鳥取県ポジティブキャンペーン」。ターゲットは「鳥取県に訪れたことがない人」。ゴールは「年末年始に鳥取に行ってもらうこと」です。

プレゼンターは、まず鳥取県の3つの魅力について紹介します。

1. 星がキレイ(星取県)
星の見えやすさ全国1位
2. 食の都(蟹取県)
松葉ガニの産地
カニの水揚げ量と消費量が全国1位
3. 自然あふれる温泉地

そして、まだまだある魅力ランキングと題して、「自然の恵み」「若者世代住みたい町1位」など、鳥取県の魅力ポイントについて紹介して締めくくりました。

さて、前田氏の評価はいかがでしたでしょうか。

前田氏は「地方の魅力はたいてい「料理がうまい、温泉がある、自然がある」など似通っていて差別化が難しい。だから、あえて鳥取県であることは隠して、魅力ポイントだけをアピールしてみては?」と提言しました。

たとえば「日本で一番星がキレイな県は?」「カニの水揚げ量が日本一の県は?」とクイズ形式になれば、みんな興味を引きやすい。人は「めちゃうまいカレーライスが食べられる」と言われたら、それがどこであろうと食べに行きたくなる。そうやって出落ちを避けることも、聴く人の興味をひきつけるコツだそうです。

他にもランキングなどは、ネタバレ感がないように一枚のスライドに一覧表示するのではなく、アニメーションを使ったり、スライドを分けたりしてお楽しみ感を出す。写真は大胆に全画面にしてインパクトを出す。一枚のスライドに文字はたくさん入れない。写真と文字が被って見づらいときは帯透過の手法を入れるなどして読みやすくするなど、見せ方のポイントをいろいろアドバイスしました。 

2人目のプレゼンターはビデオ会議システムZoomでの参加。テーマは「自己紹介」。ゴールは「皆さんに自分を知ってもらうこと」。

スライドにはまず「睡眠」「数学」「TVドラマ」の3つのキーワードが並びます。プレゼンターの得意なジャンルだそうです。そして今回は、この中から「数学」について紹介。次に表示されたのは「7」「4」「3万」という数字。プレゼンターはクイズ形式で数字の意味を問います。7は数学講師歴が7年間、4は中学時代の成績評価(5段階)、そして、最後の「3万」は、これまで教えてきた生徒の数。その数のインパクトに会場からどよめきが起こりました。そして、プレゼンターがいかに数学に情熱を持っているかを訴えて締めくくりました。

とてもシンプルなプレゼンでしたが、前田氏の講義で学んだノウハウを生かした内容に前田氏も感心。アドバイスは、フォントが細くて弱々しいのでメイリオなど視認性の高い太字の見えやすいフォントに変える、キーワードの配置方法などテクニカルな点が中心でした。リアルタイムでその場でプレゼンターがスライドの修正をすることで、会場でもアドバイスによるスライドの変化に歓声が起きました。

赤ちゃんのように伝えよう

前田氏の含蓄とユーモアに富んだ90分の講義は、あっという間に終了の時間を迎えました。前田氏は最後に自身の理念である“念いを伝える”を締めくくりの言葉としました。

「赤ちゃんのときは泣けば伝わります。赤ちゃんの“念い”は叶ったのではなく、人が叶えてくれた。でも、大人は泣くだけでは誰も叶えてくれません。今日は自分の“念い”を叶えてもらうための泣き方を伝えました。

もちろん、シチュエーションによって泣き方は千差万別です。同じなのは限られた時間でやらなければならないということ。世の中にはコーヒーがほしいのに、水しか出てこないようなプレゼンがとても多い。皆さんには、赤ちゃんのように伝えたいことが伝わるようにがんばってもらいたいと思います」

イベント協力:三井不動産・ベネッセコーポレーション

一般社団法人 プレゼンテーション協会
一般社団法人 プレゼンテーション協会は「社内プレゼンの資料作成術」「プレゼン資料のデザイン図鑑」(ダイヤモンド社)などの著者で、年間200社以上に講演・研修を開催する前田鎌利氏が設立し、2019年11月よりビジネスや教育現場でのプレゼンテーションスキルの向上および普及を目的とした団体。ビジネスパーソンをはじめ、ご自身が伝えたいことを相手に伝えるようにするために、多くの参画企業と共に日本のプレゼンテーションを高めるためのスキルの普及・啓発を行います。
HP:https://presen.or.jp/

文・写真:鈴木涼太

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