孫正義氏のプレゼンを題材にしたソフトバンクの最先端のVRプレゼンテーション研修

孫正義氏のプレゼンを題材にしたソフトバンクの最先端のVRプレゼンテーション研修

2月18日(火)、「会議HACK!」が協賛メディアとして参画する一般社団法人プレゼンテーション協会が、ソフトバンクによる最先端のVRプレゼンテーション研修を開催しました。

ソフトバンクの社員教育制度「ソフトバンクユニバーシティ」では、「明日から使える!プレゼンテーション研修」というコースが用意されています。その研修に導入されたのが今回紹介するVR研修。実際にオーディエンスがいる感覚でプレゼンの練習ができるのが特徴です。

今回のVR研修では、ソフトバンク株式会社のVR研修の開発者である加藤欽一氏と、ソフトバンクユニバーシティ専属講師の海上博志氏に、VRを活用したプレゼンテーション研修、誕生秘話、研修の効果についてお話しいただきました。

目次

ソフトバンクユニバーシティとは?

冒頭は、いつものようにプレゼンテーション協会代表理事の前田鎌利氏による「プレゼンテーション」のライトニングトークでウォーミングアップ。

続いて、ソフトバンクユニバーシティ専属講師の海上博志氏による講演。携帯キャリアのイメージが強いソフトバンクですが、同社は現在「情報革命で人々を幸せに」を経営理念に幅広く事業を展開する会社です。ソフトバンクユニバーシティはそんな経営理念のもと、社員一人ひとりのスキルアップを狙って設立されました。モットーは自主性。押しつけではなく、あくまでも挙手制に基づいた研修機関とのことです。約120名の社内認定講師が研修を実施し、年間のべ1万人が受講しています。そして2年前からは外部向けにも門戸を開放し、多くのビジネスパーソンに研修を提供しています。

講義内容は、基本的なプレゼンテーションから資料作成などのビジネススキルをはじめ、デザインシンキング、プロジェクトマネジメント、タスク管理などバリエーションに富んだ内容となっています。

ソフトバンクユニバーシティ専属講師の海上博志氏

その中から今回はVRを使ったプレゼンテーションについてデモンストレーションを行います。

VR研修の主な特徴

次はソフトバンクユニバーシティの認定講師で、サービス企画本部の加藤欽一氏が、VR研修の実際の進め方の説明に入ります。加藤氏はソフトバンクでモバイルPJアワード受賞、ソフトバンクアカデミア1期生として2015年度首席をとるなど実績多数のベテラン。社内講師としても、プレゼン、リーダーシップ、キャリアビジョン、新規事業の研修を担当しており、VRを使って研修をどのようにアップデートできるか研究開発をしてきました。

ソフトバンク株式会社サービス企画本部の加藤欽一氏

加藤氏いわく、VRの特徴は3つ。

1. 映像が360度すべて見られる。
2. 立体的に見られる。
3. 自分の動きに合わせて視界の映像が変わる。

今回使うVR機器はOculusのヘッドセット。4~5万円で購入できるパソコンも不要の画期的なデバイスです。VRの主な用途はゲーム、スポーツのライブ配信、アーティストのライブなどコンシューマー用途をはじめ、企業の研修や手術のトレーニング、防災訓練などで使われているそうです。ほかにも受刑者向け、終活シミュレーション、バーチャルオフィス、VR美術館など海外で利用されているさまざまな事例を紹介。

VR研修ならではのメリットとして、ひとつは一人でも大勢とやっている感覚でできること。プレゼンの練習をする際に大人数の前でリハーサルをすることはほぼ不可能ですが、VRなら大人数のオーディエンスの前で疑似体験ができます。もうひとつは、参加者のスキルのレベルが違っても画一的なフィードバックをシステムからできる点。

今回紹介するソフトバンクユニバーシティのVR研修の特徴は、声の大きさ、話すスピード、アイコンタクト、ジェスチャーの4点について3段階評価で採点可能なこと。採点が高いとオーディエンスの拍手も大きくなり、採点が低いと拍手が小さいなど、本当にその場にいるような臨場感が伝わってくるのがユニークです。また、全員がヘッドセットとヘッドホンをつけてやるため、周囲を気にせずにできるので恥ずかしくない点。実際、みなさん研修になると普段出さないような大きな声で元気よく話し始めるそうです。しかも、VR研修後のアンケートでは、満足度も非常に高く満点の5点が多いとのこと。

開発にあたって特に工夫した点は以下の3つだそうです。

1. 既存のコンテンツに追加し、VR機器を使う体験は30分以内にコンパクトに収めた
2. 既存のドキュメントだけではなく受講者が自ら作ったドキュメントをVRに取り込んで使うことができる
3. できるだけリアルな臨場感を出すために150人のエキストラ(オーディエンス)を集めて実際に演技をしてもらった

さて、いよいよVR体験の時間です。

VR研修の既存コンテンツは、孫正義氏が300人のオーディエンスを前に実際に話したプレゼンが題材。参加者は孫氏になりきって実演します。

筆者もさっそく体験してみることにしました。

まずヘッドセットとヘッドホンを装着し、両手にはコントローラーを持ちます。コントローラーは手の動作を反映し評価します。スタートボタンをクリックすると、目の前に150名のオーディエンスが現れます。バーチャルとはいえ、リアルな映像にやや緊張感が襲ってきます。シナリオ原稿とオリジナル原稿の選択肢が現れるので、シナリオ原稿を選択すると孫氏が実際に話した原稿が表示されます。

緊張のなか、いよいよ原稿を読み始めます。棒読みでは評価が下がるので、できるだけ抑揚をつけて大きな声で話そうと試みます。しかし、やはり緊張と焦りでところどころ噛んでしまいます。半ば冷や汗をかきながらなんとか90秒間のシナリオを読み終わるとオーディエンスからの拍手喝采! モニターに4つの項目と総合評価として○△☓で採点が表示されます。

筆者は声の大きさ○、話すスピード☓、アイコンタクト△、ジェスチャー○で総合評価は△。緊張のせいにしたくはありませんが、微妙な評価に悔しさを拭いきれません。もう一度挑戦したい!という気持ちに駆り立てられます。

ヘッドセットを外すと、悔しそうな人、満足げな人、疲労感漂う人…みんなまるで遊園地のアトラクションを乗り終えたあとのような興奮と笑顔でわいわいがやがやと騒然としていたのが印象的でした。

MCの前田氏がみなさんに採点を尋ねると、総合評価で○となった方は1名のみ。ちょっとVR酔いをしたという人もちらほら。確かに慣れていない人は、初めてのバーチャル空間で時間内にうまく話さなければいけないという緊張感も手伝って酔ったのかもしれません。

プレゼン研修の未来はどうなるのか?

VR研修の体験後は、講師のお二人と代表の前田氏による「プレゼン研修の未来はどうなるのか?」をテーマに鼎談へと移ります。

前田:今後、VR研修のバリエーションを増やしていく構想はあるのですか?
加藤:VRを導入する際にどんな研修が一番生かされるかを考えると、たぶんロジカルシンキングではあまり意味がない。今回のプレゼンテーションのような実践的な研修やロールプレイなどは親和性が高いので、そのような研修があれば開発していきたいですね。
前田:今回は孫さんのプレゼンを題材に体験してもらいましたが、孫さんのプレゼンは何がすごいと思います?
海上:孫さんみたいにプレゼンでささやく経営者ってあまりいないですよね。たいてい声を張って大きな声で話す人が多い。しかし、孫さんはささやくようなトーンでありながら、抑揚が大きい。表情も柔らかい、和やかで笑顔が多い。心の底から話している感じが伝わってきますね。 
前田:孫さんみたいに難しい場面でも笑顔で話せるような胆力のある経営者はなかなかいないですからね。VRのテクノロジーは今後どんどん進化していくと思いますが、研修に導入していく上でどういった展開が期待されますか?
加藤:研修はみんなで集まってやるのが定番なので、本社以外の拠点の社員が距離を越えてVR上で集まるということがリアルタイムにできるようになると、いろいろ壁を乗り越えられる気がしますね。
前田:そういうインタラクティブ性は5Gにならないと難しいですか?
加藤:そうですね。やはり通信速度が速くないと厳しいです。
海上:もちろん、みんなが集合してがっつり学びたいというニーズはありますが、たとえば東京オリンピック・パラリンピックの期間は、各自在宅研修をするなど、いかに多様な学び方ができるかという点も考慮されていくでしょう。在宅勤務に合わせたオンライン系の研修において、VR機材を各自が持っていれば大勢が同時に同じ体験をすることも実現可能ですから、未来の研修は面白いですね。
前田:これまではどうしてもeラーニングみたいに流れてくる映像をずっと見るだけで、インタラクティブ性がなかったりしますが、VR技術で制作費が安価になって通信速度が上がってくるとコンテンツ自体も変わってきますかね?
加藤:VRの中での採点にAIが加わって評価がもっと多様化できると一気に枠が広がると想像できますね。コーチングの分野でデータが蓄積できればバーチャルコーチがクライアント相手にコーチングしてフィードバックもできるようになるとか。

鼎談の最後は参加者の方からの質疑応答の時間。参加者の方々からは次々と手が挙がりましたが、営業で商品のショールーム的な使い方とか、心拍数と脳波や、汗など4つの採点軸以外の評価軸もあるといいとか、つまらなかったら観客が途中退席したり眠ったりするなど観客の反応があるといいとか…みんなVR体験をして触発されたのか、質問にとどまらず、さまざまなアイデアが次々と飛び出してきました。

最後は会員のみなさんで恒例のフォトセッション。今回もプレゼンあり、VR体験あり、鼎談ありのてんこ盛りの内容であっという間の2時間でした。

★加藤欽一(かとう よしかず)
ソフトバンク株式会社サービス企画本部所属。ソフトバンクユニバーシティ認定講師。携帯エリア対策に20年従事し、役員直轄部門にて全国を統括した後、VR事業推進の部門を立ち上げ、新規事業開発を担当。地下鉄エリア化にてモバイルPJアワード受賞。ソフトバンクアカデミア(ソフトバンクグループの後継者育成・発掘機関)1期生、2015年度首席。現在10期目。プレゼン、リーダーシップなど社内講師を10年以上。The Bob Pike Group認定プロフェッショナルトレーナー。経験を活かしVRプレゼン研修を開発。ビジネス展示会(SoftBank World等)・イベント・セミナーでの講演や各教育機関(大学・高校・中学)での講義など多数。プレゼンテーション研修、リーダーシップ研修、新規事業コンセプト研修、キャリアビジョン研修など

★海上博志(うながみ ひろし)
ソフトバンクユニバーシティ専属講師。
大学卒業後4年間高等学校に教員として従事。その後人材派遣会社でのスタッフ教育を経て2007年にソフトバンク㈱に入社。社内認定講師制度の構築並びにコンテンツの内製化、社内講師育成に貢献。現在はソフトバンクユニバーシティの運営(PMO)、コンサル型研修で現場の課題解決に注力。人事として社員に直接面談を行い、現場の声を吸い上げ、業務直結型のコンテンツ開発と実施に勤しんでいる。教員時代から現在に至るまで、延べ20000人の人材を育成。大手電気通信事業会社、大手システム会社、大手食品メーカー、大手飲料メーカー、某特別民間法人など。プレゼンテーション 資料作成・話し方編、プロジェクトマネジメント 基礎・応用編、ロジカルシンキング、問題発見・解決、コンテンツの作り方、講師養成講座など多数

★前田鎌利(まえだ かまり)
https://www.katamari.co.jp/
★スマート会議術インタビュー記事
会議は「削る」「出ない」「出る」の3つに分類する【スマート会議術43回】
会議とは「一座建立」である。【スマート会議44回】
どんなに難しいことでもわかりやすく伝えなければならない。【スマート会議術第73回】
面倒くさいことをやめたら何も伝えられなくなる。【スマート会議術第74回】

会場:〒105-0021 東京都港区東新橋1丁目9-2 汐留住友ビル
汐留住友ビルディング14F ソフトバンク汐留キャンパス クラスルーム 

一般社団法人 プレゼンテーション協会
一般社団法人 プレゼンテーション協会は「社内プレゼンの資料作成術」「プレゼン資料のデザイン図鑑」(ダイヤモンド社)などの著者で、年間200社以上に講演・研修を開催する前田鎌利氏が設立し、2019年11月よりビジネスや教育現場でのプレゼンテーションスキルの向上および普及を目的とした団体。ビジネスパーソンをはじめ、ご自身が伝えたいことを相手に伝えるようにするために、多くの参画企業と共に日本のプレゼンテーションを高めるためのスキルの普及・啓発を行います。
HP:https://presen.or.jp/

文・写真:鈴木涼太

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