本とセミナーの相乗効果が生み出す新しい発見【スマート会議術第32回】

本とセミナーの相乗効果が生み出す新しい発見【スマート会議術第32回】allWebクリエイター塾代表 大本あかね 氏

デジタルマーケティングコンサルタントであり、『ノンデザイナーでもわかる UX+理論で作るWebデザイン』の著者で知られる大本あかね氏。世界の第一人者を招き、UX・UIデザインについて学ぶイベント「UX DAYS TOKYO」を年1回開催。そのほか、UX・UIに関するセミナー・ワークショップを月に数回開催している。

UX・UIのコンサルタントとしてイベンターやセミナー開催者の視点から、失敗しないセミナーの方法について大本氏に語ってもらった。

目次

UXには「これだけやっておけばいい」という正解はない

――UXに関するセミナーを数多く開催されていますが、どんな形で進められていますか。
毎月定期的にやっているセミナーは3つあります。プロトタイプを作る講義と、UXの基本的な部分を学ぶものと、あとユーザビリティテストですね。これ以外に、自著の『ノンデザイナーでもわかる UX+理論で作るWebデザイン』をベースに、UXの考え方とか、ガイドラインのつくり方をやる方法を、ご紹介させていただいたりとかしています。
ノンデザイナーでもわかる UX+理論で作るWebデザイン
――ワークショップも一緒にやられるのですか。
そうですね。座学は1時間の講義を2~3枠やるのがいいのかなと思っています。ワークショップは実践形式で体験してもらうものをやっています。どうしても初歩的な触りの部分だけになるのですが、その中で持って帰ってもらえるようなものを構成してやっています。
――座学とワークショップで特に難しいと思うことはありますか。
参加者の中には「すごく良かった」と言われる方のほうが多いのですが、たまに「ここも勉強したかったのに」と言われることもあるので、そのさじ加減が難しいですね。あと、いろいろなレベルの方が来られるので、求められる基準をどこに合わせるかも難しいところです。手っ取り早くノウハウだけ勉強したいと思う方も結構いらっしゃるので。でも、実はUXには「これだけやっておけばいい」という正解やノウハウがほぼないんです。でもそれを理解しないで、すぐにベストプラクティス(ある結果を得るのに最も効率のよい技法)を求めたがる人がいる。
「で、そのベストプラクティスは?」と期待されるときは、「そういうことじゃないですよ」と毎回同じことを言わなきゃならない(笑)。「競合他社がこういうことをやっているけど」というようなマインドになっているんですよね。「そうじゃないですよ」って、毎回言うのも角が立つ。セミナーをやっている中で、なかなかハードルが高いなと思います。もちろん「これから勉強したいです」と言う方もいますが。

まずははてな顔を見つけ、対話を試みる

――セミナーを行うときは、どんな点に注意していますか。
長年やっていると、後ろから見ても「あ、はてな顔だな」っていうのがわかってくるんです。「?」が出てるなあ、みたいな。理解している人たちは、何かしら反応があります。相槌を打っていたり、メモをしていたりとか、何かしらわかるんです、後ろから見ていても。
そういう反応が少ないときは、もっと理解を深めるために、余談でも長く話をしたり、対話をもちかけたりします。終了後に名刺交換の列が長く並んだりすると効果があったなと感じますけどね。
――質疑応答ではどんな反応ですか。
たまにですが、セミナーの内容と関係なくて「今日話していないけど、どう回答したらいいのかな?」と思うときもあったりします。そういう場合はなるべくみんなの前ではなく、名刺交換などして個別に対応するようにします。たとえば、コンテクストの話をしているのに、唐突にペルソナの質問をするとか。ほかのオーディエンスに迷惑をかけたくないし、「そんなの、一言で言えないし」ということも結構ありますね(笑)。

本では学べないセミナー体験の意義

――本を読んで知識を蓄えることと、セミナーでリアルな場に参加することの一番の違いは何だと考えますか。
いろいろなケースがあるのですが、特に外国の本が翻訳された専門書は、表現がこなれていなくて難しいところが結構あるんです。翻訳もそうですが、背景がわかりにくいんです。たとえば「inclusive(インクルーシブ)」と「accesibilty(アクセスビリティ)」という言葉があったとしても、海外の文脈や状況が全然わからないので、別々の言語として考えてしまうんです。でもそれはほぼ同じ意味として使われる。「accesibilty(アクセスビリティ)」は、もともと障害者をターゲットに使いやすくするという意味。そこから「障害者だけでなく、全員が使えるようにしよう」というのが「inclusive(インクルーシブ)」。そういう背景がわからないことが多いんです。
その背景がわからずに読むと、すごく難しいんです。そこを私たちはセミナーをやりながら、ちょっとした言葉でわかりやすく補足説明ができる。あることを表現するときには、「テキストにするとこんなに長いんだけど、実は一言にするとこんなだよ」と。生で面と向かっているから伝わることが結構あるんです。
――逆にセミナーではできない本の役割は何ですか。
リアルと本の違いは明らかにあります。私がいくら言葉で言ったところで、本の内容を全部話すのは、何日もかかる。本はそういうメリットがあると思います。本だけやセミナーだけで勉強するよりも、人から聞いたもの、この人が書いたものと思って読むと、また理解の仕方が違うので両方欠かせないと思います。
会議もそうですけど、オンラインだけじゃやっぱりダメです。会って話をする会議と全然違うと思うので。対話にしろ、会話にしろ、議論にしろ、リアルに会うことはコミュニケーションを密にするためには欠かせません。米朝首脳会談じゃないですけど、とりあえずリアルに会うことは大切だと思います。

ワークショップは料理教室と同じで、実演しなければわからないことがある

――ワークショップはどのくらいの規模で行われるのですか。
だいたい30人から40人でやっています。ユーザビリティテストになると、やはり全部見られないので、20人規模ぐらいでまとめることが多いです。
ワークショップの人数も講義の内容によって変わってくるのですが、海外では100人単位のワークショップもあるんですよ。グループをつくる場合もありますし、実際には、本当にほぼ講義で、考えさせてアウトプットするだけ。個人のワークショップという感じのものもあります。実際にリアルで質問できるだけで、メリットを感じている方もいらっしゃいます。本当に講義内容によってすごく変わってきますね。
――ワークショップというリアル体験の最大のメリットは何ですか。
料理教室と一緒ですね。料理本をいくら読んでも、読むだけでは上手にならない。また、料理を作るのはあくまでも参加者。なので、美味しく作れないこともあったりするんです。即席のやり方を勉強しに来ているだけではダメなんです。火加減だとか包丁の使い方とか調味料のバランスとかがあるので。それを体験しながら「ここがこうだよ」ってアドバイスをもらうのが重要なポイントなんです。プロが作った料理と同じものがそのまま作れるかと言うと、やっぱり違う。でも、逆にこれが正しいという解答があるわけでもない。1回参加したからといって、スーパー人間になれるわけではない。自分で考えて、自分で試して、カラダで覚えることが大切なんです。
――逆に「こんなのができるわけない」と思っていたことが、その場でできちゃったという驚きもありませんか。
そうですね。もちろんそういう方のほうが多いです。聞いたあとで、ワークショップで学んだことをアウトプットしたいというモチベーションの高い方のほうが多いです。「自分の意見が合っているのか」「私の意見をちょっと話したいんだけど」って、盛り上がっている人のほうが多いです。そういう方は、自分で勝手にブログを書いたりしていることも多いですね。
Profile::大本あかね(おおもと あかね)
allWebクリエイター塾代表。2004年よりallWebクリエイター塾の元祖になる塾の発足者。 2007年にallWebクリエイター塾に改名し本格的に運営。当初のコンセプト通り習得したいWebスキルを短期間に習得できる講座を低額で提供し、分かりやすい講座のための企画・運営を行っている。共著に『ノンデザイナーでもわかる UX+理論で作るWebデザイン』がある。

文・鈴木涼太
写真・佐坂和也

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