「口を閉じたままアイディアを出す」ことで会議が変わる【スマート会議術第7回】

「口を閉じたままアイディアを出す」ことで会議が変わる【スマート会議術第7回】株式会社つくるひと 代表 小野 ゆうこ氏

株式会社つくるひと代表の小野ゆうこさんは、10年間で延べ30,000人に関わり、「会議」で会社を変えてきた、まさに「会議の達人」。38のフレームワークと、5つの絶対ルール、目的別のさまざまな会議スタイルの紹介、シチュエーション別対処法などを教える著書「『結果を出す会議』に今すぐ変えるフレームワーク38」(日本実業出版社)を出版された小野さんに、スマートな会議術を伺いました。

『結果を出す会議』に今すぐ変えるフレームワーク38
目次

「芸術学」を背景に、Web制作から企業やプロジェクトのコンサルティングへ

――小野さんは、数々の企業やプロジェクトのコンサルティングをされていますが、コンサルティング会社出身ではないですよね?
はい。元々、つくるひと自体もWeb制作会社からスタートしました。ただし、Web制作だけをしていても、おおもとのブランディングがきちんとできていないと意味がないという問題意識は持っていました。
――それは、制作をしている上で生まれてきた思いだったのでしょうか?
私は、大学で芸術学を専攻していたのですが、芸術というのは、一人の芸術家が芸術作品を作ったといっても、“芸術作品”にはならないんですよね。芸術作品自体も、たくさんの人が関わって初めて作られます。さらに、その作品を売る人がいないといけないし、どういうメッセージを打ち出すかを考える人もいないといけない。
学生時代から、制作という行為だけでなく、作品に対するブランディングの重要性を考えていたのが、この仕事に行き着いた背景だと思っています。
――会議についての本を出すに至った経緯は?
普段の仕事で、いろいろな目的の会議があるのですが、その度に「付箋を使ってやってみよう」など、さまざまなやり方で会議を進めていたんです。それを見ていたクライアントから「その手法を社員に教えてほしい」と言われたのが10年ほどまえでした。そこから会議のファシリテートについてお話しする機会が増え、ノウハウが溜まってきたこともあり、本を出させていただくことになりました。
――そうした会議手法をご自身で編み出されていたのは、ビジネスにおいてそれだけ会議が重要だという実感があったからでしょうか?
はい。難しそうに会議といいますが、実際やっていることは「対話」なんです。人間は社会的動物なので、人との交流の中で物事を作り出したり、新しい発見をしたりしていくわけで、そうした場はものすごく大事なものだと考えます。
――会議がうまくいけば、結果にも結び付くと?
そうです。結果を変えたければ、「どういう過程を経て、そこに行くか」ということが大事になります。人は、見たいものしか見ない習性がありますので、同じデータを見ていても自分に都合のいいものだけ目についたりするんです。そういう思い込みをなくすことが、会議では重要だと思います。

会議ではうまく話す必要はない。話さなくてアイディアを出す方法とは?

――会議に必要な前提として「ほめる」「聴く」「受けとめる」「待つ」「楽しむ」という5つのグラウンドルールを著書にしるされていますが、これらが生まれた背景を教えていただけますか?
会議というのは自然としゃべる人が決まってしまい、黙っている人は「早く終わらないかな」と思っていたりする場になりがちです。それでは、話していない人にも可能性があるのに、もったいないと感じていたんです。
会議でしゃべれない人が出てくる理由には、意見を言ったらバカにされてしまうのではないかという不安や、「どうせあいつの意見に決まる」といったあきらめがあると現場で感じていました。そこで、気さくに話せる場を作ることが大事だと思い、心理的な安全性を確保するために5つのルールを導き出しました。
――テクニックの問題ではなく、心理的なものが大きい?
「うまく話さないといけない」という思い込みが、心理的なハードルになってしまっているのが大きいと思います。そもそも、司会者でもなければ政治家でもないので、うまく話す必要はないんです。ただし、中には小学生のときに恥ずかしい思いをしてしまったなど、深い悩みが原因でうまく話せない人もいると思います。ですから、私がファシリテートする会議では、それぞれが勝手に発言するというスタイルは取らないようにしています。
――では、どのように発言するのでしょうか?
何かアイディアがあるときは、必ず黙って付箋に書き出してもらいます。そうするとまず、無批判な状態を作ることができ、さらに全員に公平に発言権を与えることができる。これだけで、本来やろうとしていたことが実現できるんです。声に出すのはたいへんでも、アイディアを書き出すのは誰にでもできますから。
――「せっかくみんなで集まっているんだから」と全員で話すことが重要視される会議が多い中、個人でアイディアを出すことを尊重されているのはとても印象的です。
そのほうがスムーズにいくし、そのあとチームでの話し合いになったときに、おもしろいことが起きやすいんです。言葉だけが飛び交うと「これは○○さんの意見」とみんな意識してしまい、アイディアの掛け算が起きにくいのですが、書き出した付箋を前にすると「これとこれを合わせればおもしろいことが起きるのでは?」と、新しい発想が生まれやすいんです。情報を目で見て動かせる状態にするというのは、すごく大事ですね。
――個人で出したアイディアを、チームでまとめていくということですか?
はい。個人が出した意見やアイディアを、一人の力では到達できなかった意見やアイディアにしていくのが会議です

1時間を細かく分割することで「思考のレイヤー」を整える会議術

――小野さんが考える「会議参加者の望ましい人数」はありますか?
よく「少人数が望ましい」といわれますが、私は何人いても大丈夫だと思っています。もちろん、大人数だと進行がたいへんにはなりますが、100人の参加者がいたとしても問題ありません。3人1チームといった工夫をすることで、コンセプトを考えるタイプの会議などは問題なく進行できます。
――会議にかける時間についてはどうお考えでしょうか?
私はダラダラとした長い会議が苦手ということもあり、時間を短く刻むようにしています。例えば1時間の会議だとしたら、その1時間をそのまま使うのではなく、15分刻みの4セットと考えて、最初の15分でアイディアを詰めて分類。次の15分は分類したものを組み合わせたり、極端にしたりなどの変化を加える時間といったように、「今何をする時間なのか」をはっきりさせるようにしています。
――そのやり方だと、チームとしてのまとまりが出そうですね。
注力する集中ポイントがないままの1時間だと、参加者それぞれが「分解」や「取捨選択」など、別々の思考レイヤーに立ち、対話が成り立たないということも起こりがちです。ですが、「今は分解フェーズ」と決めれば、参加者全員の思考レイヤーがそろいますので、話が噛み合い効率的になります。
――会議に集めるメンバーはどのように選びますか?
そのテーマにふさわしい人たちを挙げてもらうようにしていますが、できるだけ性別や年代、部署など、多様な状態にしてもらうように心掛けています。アイディアも広がりますし、それまで交流の薄かった部署を混ぜることにより、お互いの理解が進みますので、行動フェーズに入ったときにスムーズなんです。会議はそれ自体ではなく、その後の行動が主題となりますので、行動への移しやすさや迅速さを生むということは意識しています。
――最後に、社外の会議室を使うことについてどう思いますか?
私自身、参加者が多くなり、社内のスペースが取れないときは社外の会議室を使うことがあります。また、気分転換などの目的から、いつもと違う環境で会議をしたいときに利用しています。
外で合宿をする場合もありますし、いつもと違う環境に行くというのは、長いプロジェクトを進めていく上で、重要なことだと思いますね。

文・写真:坂上春希

小野 裕子(おの ゆうこ)株式会社つくるひと
ツクリビト株式会社代表取締役。明治大学サービス創新研究所 客員研究員。日本大学大学院藝術学研究科修士課程修了。企画コンテンツ開発会社で事業開発ディレクションを経験後、2006年、ツクリビト株式会社を創業。問題解決力が認められ、商品、サービス、事業開発、業務プロセスの改善や新規事業開発の「現場」に関わる。売上高2億~7700億円規模の組織、業種業態を問わず、創業以来800を超えるプロジェクトに携わる。10年間で延べ3万人の現場会議をファシリテートし、現状打開や問題解決の現場を経験。「考え方を変えれば世界が変わる」をあらゆる仕事の軸としている。企画やチームビルディングなどでアイデアを掘り起こし、さらにそれを具体化できるようにと考えられた「イノベーションカード」を開発。著書に、38のフレームワークと、5つのグランドルール、目的別のさまざまな会議スタイルの紹介、シチュエーション別対処法などを教える「『結果を出す会議』に今すぐ変えるフレームワーク38」(日本実業出版社)がある。
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