テレワークは福利厚生的な意識では根づかない【スマート会議術第148回】

テレワークは福利厚生的な意識では根づかない【スマート会議術第148回】ラウンズ株式会社 代表取締役 合田 翔吾氏

コロナ禍が世界を襲った2020年。人々の暮らしは様変わりした。それは仕事も例外ではなかった。多くの企業がテレワークを導入し、定着した企業もあれば、道半ばで頓挫した企業もあった。

その差はどこで生まれたのか?

「福利厚生的な意識がついてしまうと、テレワークの制度を使いづらくなるんですよね」

ビジネス専用音声コミュニケーションツール「roundz」を開発・提供するラウンズ株式会社の代表取締役・合田翔吾氏は、テレワークの成否を分けるのはその意識の違いだと言う。

roundzは「声のバーチャルオフィス」というキャッチフレーズが示す通り、声に特化したコミュニケーションツールだ。合田氏はテレワークにおけるコミュニケーションのあり方を常に考えてきた。その結果、たどり着いたのが「声」に特化したコミュニケーションツール「roundz」だった。

合田氏が考えるテレワークのコミュニケーションの質と量とは何か?

「roundz」開発のきっかけとなったテレワークへの思いを語ってもらった。

目次

多様化するコワーキングスペースの使い方

――合田さんはテレワークをしながら、コワーキングスペースも使われているとのことですが、ご自身の体験からコワーキングスペースの上手な使い方があればお教えください。
私自身はいま自宅が郊外にあるため、都内に出るときに使うコワーキングスペースと、子どもを送迎する保育園が家からちょっと遠いので、保育園の近くのコワーキングスペースと2カ所を使い分けています。どこでも働けるのであれば、子どもの生活に合わせて、子どもの近くで働くとか、何か自分の目的が別の場所にあって、その近くのコワーキングスペースで働くような使い方をされる方は、今後すごく増えるんじゃないかなと思います。
たとえば、サーフィンが大好きな私の知り合いには、朝すごく早い時間にサーフィンをして、始業時間前に仕事を開始するために、海の近くのコワーキングスペースで働いて、仕事が終わったら家に帰るという使い方をしている人もいます。何か別の目的で、ただ時間を合わせるためだけにコワーキングスペースで調整するといった使い方も増えると思います。家だと、夫婦ともにテレワークだとちょっと声が聞こえてやりづらいということもあるでしょうし、交互で使うという方もいらっしゃいます。いろいろな使い方があるのではないでしょうか。
――そういった物理的な距離で選ぶコワーキングスペースの使い方と、コワーキングスペース自体の環境というところで、最低限必要だと感じる条件はありますか。
調査の目的もあっていろいろなコワーキングスペースを見て回ってみるのですが、いい椅子を使っていなくて長時間仕事するのはきついところは結構ありますね(笑)。あと、人が多すぎるコワーキングスペースは、会議室がないと厳しいです。会話が他の方に聞こえてしまうのを気にして声がもごもごしてしまうと、お客様と話すときに印象も悪いですし。会議室が少ないコワーキングスペースは結構多いです。いつも埋まっていて使えないことが多いと、使い勝手が悪いと思われる方は多いかと思います。
――コロナ禍で、コワーキングスペースのつくりや使い方もいろいろ変わらざるを得ない状況になってきています。
そうですね。私が使っているコワーキングスペースは登録されている方は多いですが、いまはコロナ禍のため1~2人みたいなことも多いです。ただ、今後はテレワークももっと普及していくでしょうし、会社としての福利厚生的な意味で家の近くのコワーキングスペースをいつでも使えるような形で提供されていくことも増えると思います。利用者が増えてきたら、会議室が取れないとか、うるさくて集中できないとか、いろんな状況が出てきて、新しいコワーキングスペースの形が見直されるようになっていくのかなとは思います。

テレワークはあくまでも企業のメリットのためにある

――今後、テレワークが浸透してきたら、生活はどのように変わっていくと考えられますか。
まず、仕事を中心に設計してきたライフスタイルがガラッと変わるのがすごく大きいと思います。時間が経てば、家族が増えたり、やりたいことが変わったり、人生の中でいくつかステージが分かれてくるので、それぞれのステージのときに住みたい場所がどんどん変わっていく。そのときそのときで最適な自分の居場所を仕事ベースではなく、場所ベースで考えられるようになってきています。
「趣味のためにここに住みたい」とか「もっとのんびりした環境がいいから、山間部に住みたい」とか。「いまそこに仕事があるから、その半径〇キロメートル以内」といった基準で決めざるを得ない状況が変わっていくのはすごく大きいです。それが日本国内に限らず、海外でもいい。仕事を探す先が必ずしも日本国内である必要すらないので、日本にいながら海外、海外にいながら日本の仕事もどんどん増えるので、目標としてはそこまでいってほしいですね。
そうなれば、国外のリソースとか、いま国内にいる人たちも海外のリソースになってしまう可能性も大きくあるので、国内しか見ていない企業も優秀な人たちを雇っていくためには、柔軟な体制をつくっていかなきゃならないので、どんどん加速しながら変わっていくんじゃないかと考えています。
――逆に、課題として潰していかないと将来的にメリットを活かせないと思うことはありますか。
テレワーク自体は従業員の方にとっても、マネージャーや管理者の方にとっても、みんなにとってメリットはすごくあると思っています。ただ、企業はテレワークのメリットを享受するためには覚悟を決めてやらないと、大きな利益につながっていかないと思います。
テレワークできちんと仕事が回る環境までもっていかないと、海外や地方の優秀な人材を取り込むとか、オフィスコストをカットするために50%テレワークにして、社員の50%はオフィスにいる形にするとか、そこまで経営戦略としてテレワークを考えて、それを実現するために全員がテレワークをやるべきところまでちゃんともっていかないと、企業のメリットがなかなか出づらいんですよね。
――中途半端なテレワークだと、利益が出ないまま途中で頓挫しかねないですね。
そうです。「最終的に企業のメリットのために」という意識がない状態でテレワークを推進しようとすると、推進担当者の方が、上と下の板挟みになる。上はとりあえず「やれよ」と言いいつつもそんなに本気じゃないと、いろいろな情報を集めて「こうやりたい」と言っても、「え~面倒くさいなあ」となったりする(笑)。「テレワークはあなたたち従業員のためのもの」という福利厚生的な意識がついてしまうと、テレワークの制度は使いづらくなるんですよね。
自分が特別扱いされている、自分の利益のためにテレワークという制度を使わせてもらっているという感覚になると、「成果を出さないとこの環境は取り上げられるんじゃないか」と、申請もしないで仕事をひたすら続けて疲れてしまう。企業としてテレワークをすることは「会社の発展のためにテレワークをしている」という意識にならないと、テレワーク制度をつくっても、「なんかうまくいかないから、面倒くさいからやめちゃえ」となってもとに戻ってしまいます。せっかく投資したのにもとに戻るのはすごくもったいない。
――今回コロナで突然テレワークを導入せざるを得ない状況の会社も多かったので、そういう会社も出てきているでしょうね。
はい。やっぱりどうしても増えてしまっています。「もうちょっとやってみよう」と思っていただいて、ご相談いただければ、弊社としては全力でサポートしたいと思っています。
個人的な感覚ですけど、やはりコロナ禍でテレワークは5年ぐらい前倒しで進んだと思います。テレワークは昔から、1回やってみれば考えていたリスクがじつはそこまで大きくないと感じられると言われていました。このコロナ禍でみなさん体験するフェーズを一段超えたので、その先には進みやすくなっている状況なのは間違いありません。それをムダにしないように進んでいってほしいなと思います。

テレワークでは自分の空間にいるゆえの安心感が出てしまう

――信頼関係の構築において、オンラインでのコミュニケーションと対面コミュニケーションではどんな点で違いが出ると考えていますか。
通常の業務をするうえでの関係構築はオンラインで問題ないと思っています。ただ、重要な決断とか、仕事を何としても勝ちとりたいといった商談になってくると、結構オンラインでは厳しいと思っています。
非言語的なコミュニケーション、つまり見えない部分やちょっとしたタイムラグでのテンポの取り方の難しさがあったりしますが、さらには相手の注意の引き方がすごく難しいと感じています。やはり対面で実際に会っていると少なからず相手にプレッシャーがかけられるので、直接会っている人が目の前で携帯をいじったりすることはそんなにないと思いますが、リモートのWeb会議だとやられる方は結構いらっしゃいます(笑)。
興味ないと判断するとすぐにそういう行動をするので、その状態になったときに「もう1回見てください」「もう1回聞いてください」と言うのが非常に難しい。どうしても勝ちとりたい、説得したいという商談のときなどは、結構初期で決着がつく状態になって、再チャレンジができないという難しさが出てくると思います。
――エレベーターに乗っている間に数分でプレゼンして説得するエレベーターピッチみたいな緊張感があったほうがよさそうですね(笑)。
そうですね(笑)。最初の1~3分で相手の興味を引かなければ、その時点で負けが確定するみたいな、本当にそんなイメージに近いと思います。
――そういう意味では、オンラインで1時間だらだら説明するより、リアルな緊張感のあるエレベーターの密室の3分のほうが、コミュニケーションで相手に何か伝えたり、気を引いたりするためには、有利かもしれません。
強いと思います。伝えようと思ったときに、もしかしたら自分自身の緊張感が足りていないのかもしれないですけど、やはりテレワークでは自分の空間にいるゆえの安心感が出てしまうのかもしれませんね。
――合田さんにとってスマート会議とはどんな会議だと考えますか。
ちょっと前までは、よくテレワークのつくり方やコミュニケーションの仕方のガイドラインに、「トピックを決めないでいいから、とにかく週に1回みんなで集まる」「会議を設定して、そこでコミュニケーションを1週間分補充しましょう」といったやり方が推奨されていた時期があったのですが、それってすごく本末転倒だと思っています。
コミュニケーションというのはトータルの時間より、どちらかというと回数だったり、そのときの内容がいかに気軽なもので人の心に触れられたりするかが重要だと思っています。会議の考え方を30分とか1時間とかに区切ったものじゃなくて、1分会議、ちょっとした心の触れ合いというものを日々繰り返していくことのほうが、よっぽど重要なことじゃないかと考えています。
会議を「日々繰り返していくもの」と考えていくのも、テレワークの時代の中では、新しい考え方のひとつとしてあると思います。それをぜひ実践してみていただきたいなって思います。

文・鈴木涼太

合田 翔吾(ごうだ しょうご) ラウンズ株式会社
ラウンズ株式会社代表取締役。1986年生まれ。小学生の頃から兄のPCでプログラミングを開始。筑波大学にて音響計測の研究で工学修士を取得。修了後はシュルンベルジェ株式会社にソフトウェアエンジニア・アーキテクトにて7年間グローバルソフトウェア開発に従事、国をまたいだリモートチームでの開発を行う。その後、同僚と株式会社Parasolを共同創業。2018年、共働きでの乳幼児の子育て経験から、誰もがテレワークを選択できる社会の実現を求めて、「すべての人にテレワーク という選択肢を」をキーワードに、テレワークソリューションの開発を行う株式会社GOWiDE(現 ラウンズ株式会社)を創業。企業が安心して積極的にリモートワークの導入を推進する業績が認められて、2019年、2020年と2年連続で総務省「テレワーク先駆者100選」に認定。

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