自分の「Being=あり方」を知る【スマート会議術第169回】

自分の「Being=あり方」を知る【スマート会議術第169回】ツクリビト株式会社 代表取締役 小野裕子氏

Webサイト制作やシステム開発のディレクション業務を発端に、現在では企業のブランディングをはじめ、課題解決のためのフレームワークを用いて、さまざまな企業とのプロジェクトを行うブランディングディレクターの小野裕子氏。

会議ハック!では昨年12月に開催された「会議HACK!サミット~テレワーク時代の新しい働き方~DAY2開催!」にもご登壇いただいた。

小野氏のブランディングディレクターとしての考えは「Being=あり方」という思想を基軸にしている。「Being=あり方」とはどのように生まれた発想なのか。なぜ企業の成長に「Being=あり方」が求められるのか。その真意についてお話を伺った。

目次

「そもそも」から始まるフレームワーク

――最初はデザイナーとしてデザインのコンセプトや企画に関わっていたとのことですが、そこからどのようにチームビルディング、セルフブランディングといったコンサルティング事業にシフトされていったのですか。
そもそも話し合いの現場でデザインのコンセプトを決めることは、ブランディングの用語でいうとブランドアイデンティティを定めることとすごく似ているのです。何が自分たちの旗印になるのかを一言でまとめなければなりません。軸を決めることでもありますし、商品のUSP(Unique Selling Proposition【独自の強み】)を決めることでもあります。
サービス全体のことなのか、商品のことなのか、対象はいろいろありますが、何か重要な背骨を決めることは共通しているんですね。その背骨となるブランドアイデンティティを定めるところが評価されて、理念やマーケティングコンセプトや、新事業開発のコンセプトなどの背骨を決めることが仕事として増えていきました。
現場で考え方をクリアにすると、「そもそも何のためにこれをやっていたんだっけ?」とか、「そもそもこの商品ってお客さんのどんな役に立つんだっけ?」と、一度「そもそも」に戻っていくんです。「そもそも」を考え直すフレームワークをたくさんつくって、その場で皆さんに考えてもらったりするのですが、フレームワークがあると対話がしやすくなる。皆さんの思考のレイヤーが揃うので比較検討がしやすくなるんですね。
「いまは弱みについて考えましょう」とか、「いまは未来と過去というテーマについて考えましょう」とか、そういう簡単なフレームワークがあるだけで、それについて考えるので、「出されたものが同じチームでもこんなに違うんだ」「いままで理解し合っているつもりだったけど、ここにズレがあるね」と、お客さんが勝手にいろいろ発見してくださる。そういう対話の場をつくるのがだんだん仕事になっていきました。

オンラインでは五感に頼りすぎない

――最近はコロナ禍もあってオンラインによる会議や打ち合わせが多くなりました。特にオンラインでは初対面の相手との入り口の対話が難しいと思いますが、どのように工夫されていますか。
オンラインは事前の信頼関係ができていないと、なかなかうまく運ばないですよね。だから最初はできるだけリアルで会う時間を設けてもらっています。でもこういうご時世なので、参加人数を絞って、絞った中で密にならない形で対話していただきます。そういう対話を1回やってから、オンラインに切り替えていくという手順ですね。1回リアルに会ってしまえば関係性は構築できるので、そこからはオンラインになっても、ことさら問題なく進むことはできますね。
――オンラインにおける関係性構築のハードルの高さは何が一番大きい原因だと思われますか。
身体性が得にくいところでしょうか。会議や打ち合わせの場にいると、「なんとなく」感じるものがありますよね。「あの人、引っかかってそうだな」「あそこが対話の温度が低いな」という体感覚で得られる情報があるんですよね。その場にそーっと近寄っていって、しばらく立っていると、向こう側から質問をくれたり、「実はこういう思いがあるんです」と話してくれるんです。
オンラインの場合はその体感覚で得られる情報がすごく少ない。でも、オンラインに切り替わったときに、最初はリアルでの感覚が癖になっていて、どうしても五感で情報を取りにいこうとするので疲れてしまいます。だから、オンラインでは五感で情報を取りに行ってはダメだというのがわかりました。
――お客さんもオンラインになると、表情とか話す内容とかリアルで会って話すときと変わることがありますよね。
そうですね。見ているのがパソコンの画面なので、画面モードになってしまうんですよ。リアルに対話している感じではないので情報量もすごく少ない。しゃべるときの表情とか、これをどうしても説得したいというときの意気込みも浅く感じてしまうことはありますね。
――オンラインでは人数が多ければ多いほど、始まりと終わりもすごく難しいと感じます
そうですね。だからオンラインの場でもリアルと同じようにチェックイン・チェックアウトという段取りを踏みます。リアルの場合は椅子だけを内向きに丸く並べて、そこに参加している全員が、全身が見える状態をつくります。チェックインでは、いま感じていることを何でもいいから一言ずつ言っていく。「いま疲れちゃってて」という話をしてもいいし、「これから何が始まるかわからないから不安です」という話をしてもいい。
とにかくいま感じていることを一言ずつ言っていきましょう、それをチェックインにしましょうということでやります。チェックアウトも同じように円形に椅子を並べ直して、そこに全員が座って、今日のセッションを過ごしてどう感じたかとか、あるいはいまどういう思いをしているかということを話し合います。
チェックイン・チェックアウトはすごくいいという声が多いので、オンラインでもやるようにしています。オンラインだと全員のチェックイン・チェックアウトは画面的に厳しいので、ZoomやGoogle Meetならブレイクアウトセッション機能を使って、そこに集った人たちで、いまどう思っているかを話すようにしています。
――物理的に円陣をつくれなくてもチェックイン・チェックアウトはやったほうが効果的なのですね。
やったほうがいいですね。特にオンラインでは自分でどう感じているかを言わずに済んでしまうことのほうが多い。でも感じていることを話すのは、勇気でもあるし、その場の信頼でもあるんです。場が信頼できていなければ、いま自分が感じていることはなかなか言えないですよね。信頼感であるとか、よく言われる心理的安全性を形成していくときに、やっぱり有効だと思います。

セルフブランディングは自分を理解すること

――コミュニケーションという点で、会社や組織での上下間、世代間、部署間などでいろいろな溝があります。そういうときにセルフブランディングの視点からはどうやってコミュニケーションを図っていけばいいでしょうか。
セルフブランディングというと、自分の強みを打ち出していくことだと思われている方が多くいます。でもその前に、根本として自分の「Being=あり方」について自分と対話することが大事なんです。
自分の強みは、いわゆる得意とされていることだと皆さんは思われています。でも自分の得意なことが、自分にとって嫌なことでもあったりする。そうすると、得意なことをやっている自分が非常に嫌だという、二律背反の気持ちを抱えながら働くことになって、すごくつらいんですね。
――得意なことが嫌だというのは、たとえばどういうことですか。
たとえば人前で話すことがすごく嫌なのに、周りからは得意だと言われて人前で話す仕事ばかりやらされるとか。でも自分では全然得意だと思っていないし、むしろ嫌なこと。文章を書くのが得意だと思われているけど、すごく嫌だとか。嫌だと思う感覚が周りに伝えられないでいるのは、本人にとってすごくストレスなんですね。それがリアルで会っているときには、プロセスを見ることができるので「こういう嫌な仕事をやってくれてありがとう」とか、声がけができるんですけど、オンラインだとそういう感情のプロセスが見えない。
結果のやり取りだけになってしまうので、「私がやっていることが全然わかってもらえてない」「これはいつまで続くんだろう」「実はこっちの仕事がしてみたいのに、チャレンジさせてもらえない」と、自分を責めたり、会社を責めたりする。だからそれを知っておくために、自分がどうありたいのかを自分で理解するのがセルフブランディングのスタートなんです。
自己理解ができてから、どのようにしたいのかという順番があるのであって、いま自分がこれで評価されているからセルフブランディングになっているのではないのです。評価されていることをやっていくのがセルフブランディングだと思われがちですが、自分のあり方と乖離している場合もあるので、まずは自己理解するのが本当のスタートなんです。あまりにも自分の「Being=あり方」と離れたブランドだと持続もしないし、どこかで破たんが起きるわけです。

感情に左右されない自問自答

――働き方改革が叫ばれる昨今ですが、御社では企業がイノベーションを起こすためのツールとして「イノベーションカード」を開発されています。これは主にどのようなシチュエーションでどんな目的で使うのですか。
悩んだり、答えがわからないみたいという状況になっていたりするときは、ほとんどの人が自分に対する問いかけも凝り固まっているんですよ。「なんでダメなんだろう?」という言葉ばかりを自分に投げかけていたり、「どうせこうだよな」と問いかけしている自分の中で自分と対話している語彙が乏しくなっているんですね。
「イノベーションカード」
この語彙を強制的に変えていくことが必要なのですが、人から言われたら「あいつにあんなこと言われた」と、どうしても感情が先に動いてしまう。でもカードを引いただけなら感情の抵抗がないので自分の問いかけの語彙を増やしていくとか、問いかけの角度が変わるとか、そういうことが自然に起こるんです。
自分の考えをあっさり「そこは本当にゴール?」と言われたらカチンとくるかもしれません。でもカードを引くという属人性がないので、「これ、本当にゴールかな?」って考える機会を与えられるんです。
自分の中の問いかけを自然に変えてもらいたい。問いかけが変わると、考え方も変わるし、考え方が変われば、たどり着く結果も変わる。そういうふうに何かを変えていったり、イノベーションを起こしたりするときには、自分の中で凝り固まりがちな問いかけの言葉を変える必要があると思ったので開発しました。
たとえばセルフブランディングの個人セッションのときにカードをめくってもらいながら、自分の理解を深めてもらう、考えてもらうきっかけにするときもあります。チームビルディングのときには、何か発想を変えるのが必要なので、そのときにイノベーションカードを使って皆さんで対話をしてもらう。「対話デザイン」と呼んでいるのですが、カードを使った対話のデザインをしていって、皆さんの偏りがちなものの見方をどんどん変化させてもらうことに使っています。
――たとえば具体的にどのように進めるのですか。
たとえば「転職したい」がテーマだとして、適当に切って1枚パッとめくります。そうすると「そもそもの始まりは?」という問いが出るとします。「あれ、なんで転職したいと思い始めたのかな?」とか。こういうことがあったとか、自分の力が発揮できているとは思わないとか、カードをきっかけに感じることをたくさん書き出していく作業をやっていきます。
1枚目を書き出し終わったあとに、適当に引いて、そうすると「それはなぜ?」と出てくる。すると「給料が納得いかない」とか「仕事内容がイヤだから」と理由を言いますよね。でもそれは転職をすれば解決する問題なのかどうか、自分の中で新たな問いかけが生まれ始める。そうやってどんどん書き出してもらう。それを重ねていきます。
「これを一言で言うと?」といった問いに対して考えて、転職することで「新鮮さを味わいたい」とか「自分の可能性を感じたい」とか書き出していく。これを8回繰り返します。これは“8 Questions(エイト クエスチョンズ)”というやり方ですが、「自分にとって転職ってなんだろう?」という自己理解が進むんですね。そうすると「私、転職したいとしか思っていなかったけど、実は転職が必要なのではなくて、まずは上司にこういう仕事をさせてもらいたいって言えばいいんだ」と、いま優先させるべきことを選ぶ場合が非常に多いんですよね。
そういう形で折り合いをつけていって、「漠然と給料のことばかり言っていたけど、実はそうじゃなくて、自分の働き方を発見したかったんだ」「働き方についての本を読んだり、セミナーに出てみたりしないといけないな」といったことに気づいたりするのです。
転職したいというのは、実は漠然とした要望なんです。何の具体的なプランも入っていない。それが、働き方について調べてみようとか、上司に交渉してみようとか、このプロジェクトに参加させてもらえるように頼んでみようとか、具体的なアクションに落とされていく傾向があるんです。チームで取り組むときは3人1チームを単位にして、グループで対話を進めていきます。自分との対話と同様に、抽象的で漠然としていたことが、具体的なイメージが持てたり、解決糸口が発見できたりするんですよ。
――8回という回数にはどんな意味があるのですか。
これは私の感覚ですが、何かに対する自分との対話を続けようとして5回くらい違う問いかけを放り込むとイノベーションが起きやすいんですよ。1回や2回だと、まだやらされている感じで思考が進まないんです。それが5回ぐらいくると、ティッピングポイントみたいに変わるときが起きて、「あれ、なんかこれって……」と思い始めてから3回くらい重ねるとだいたい全体が見えてくる。
――企画や小説のプロットを考えたり、悩み相談的に使ったりもできそうですね。
そうですね。プロットを考えたり、企画書をつくるときに使ったり、お子さんと一緒に進学や進路を決めるときにやったりされたというお話をいただくこともあります。カードの解釈は人それぞれでいいんです。正解はない、自分自身が感じていることを捉えることは、曖昧さや複雑さが増している時代には大切なことだと思っています。

文・鈴木涼太
写真・大井成義

小野 裕子(おの ゆうこ) 株式会社つくるひと
ツクリビト株式会社代表取締役。明治大学サービス創新研究所 客員研究員。日本大学大学院藝術学研究科修士課程修了。企画コンテンツ開発会社で事業開発ディレクションを経験後、2006年、ツクリビト株式会社を創業。問題解決力が認められ、商品、サービス、事業開発、業務プロセスの改善や新規事業開発の「現場」に関わる。売上高2億~7700億円規模の組織、業種業態を問わず、創業以来800を超えるプロジェクトに携わる。10年間で延べ3万人の現場会議をファシリテートし、現状打開や問題解決の現場を経験。「考え方を変えれば世界が変わる」をあらゆる仕事の軸としている。企画やチームビルディングなどでアイデアを掘り起こし、さらにそれを具体化できるようにと考えられた「イノベーションカード」を開発。著書に、38のフレームワークと、5つのグランドルール、目的別のさまざまな会議スタイルの紹介、シチュエーション別対処法などを教える「『結果を出す会議』に今すぐ変えるフレームワーク38」(日本実業出版社)がある。

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