社員が頭に汗をかき会議が活発化する6つのポイント(後編)

社員が頭に汗をかき会議が活発化する6つのポイント(後編)
目次

コロナ禍を経験した今こそ衆知を活かすベストなタイミング

私は「会議再生屋」として、これまで10年以上にわたり100を超える企業の経営者・リーダーから依頼を受け、みなさんと一緒に新商品や新事業を生み出してきました。
クライアントの業種は、エンターテイメントや製造、食品、建設、物流、通信、青果仲卸、フィットネス、飲食、観光、出版、金融、ITなど多様です。

私はそれぞれの業種に精通しているわけでもなく、クライアントになる企業のことも最初は全く知りません。それを人に話すと、「そんな状態でどうして新商品や新事業を生み出すことができるのか?」とよく疑問に思われます。

その答えを最初にお伝えするならば、それは組織から新商品や新事業を生み出すための
「頭の使い方」
「ディスカッションのやり方」
「会議の進め方」
を熟知しているからです。

コロナ禍を経験した今、テレワークやDX(デジタルトランスフォーメーション)によって、リアルに集まらなくても話し合える環境が整い、時間調整や移動時間の軽減によって思考に使える時間は増えました。また副業もこれまで以上に進んでいます。

このように人口と経済、働く環境、そして個人の考え方が大きく変化する中で、より強く求められるのが新たな顧客の創造であり、今こそ衆知を活かし新たな価値と顧客を生み出す会議へ再生するベストなタイミングだと私は考えています。

ということで、前回に続く、今回は新たな価値と顧客を生み出す源泉となるアイデアをいかにして引き出し、活かしていくかを見ていくことにしましょう。

ポイント4 出てきたアイデアを垂れ流さない

ある新商品の販売会議でのこと。会議では、小売店への採用が進まないことが問題に挙げられていました。
一人の営業から「今は商品の顧客認知を広げる段階であることから、採用に時間がかかる大きなチェーン店ばかり狙わず、小さい規模の店にも足を運び1店舗でも多くの店に採用されることを目指しませんか」と提案がありました。
ただ、他の営業はそのアイデアに対して誰も反応しませんでした。
私(高橋)はそういう考えもあると思い、「そのような活動もできるのであればやってみませんか?」と言い、「他の営業の方も提案できそうな店舗はありますか?」と聞くと、数名の営業から具体的な店名が出てきたので、「それじゃ、当たってみましょう」と伝えました。
実行してみると、商品を提案した先には全て採用されました。

せっかく新しいアイデアが出ても、それを使わなければ全く意味がありません。
逆に言えば、アイデアは使うことで価値が生まれます。私はムダなアイデアはないと思っています。
アイデアを価値に変えるのも変えないのもその人次第です。出てきたアイデアはそのままにしたり、流したりすることなく、取り込んで使うイメージを膨らませましょう。

ポイント5 イメージがわかない時は一旦会議をストップする

ある企業で商品イメージを固める会議に参加した時のことです。
会議中、私は社長に呼ばれ席を外しました。1時間後に会議室の前を通ると、まだ会議は続いていました。
私は「商品イメージは固まりましたか」とメンバーへ声をかけると、「なかなかイメージが膨らまず悩んでいました」と答えました。
私は「その原因を話し合いましたか」と聞くと、「いいえ、それは話していません」と言うので、「みなさんの頭の中にイメージができていないと思うので、今日は会議を終え、数日後、それぞれイメージを膨らませた上で会議を再開しませんか」と提案しました。
メンバーはほっとした表情で「誰かそう言い出してくれないかと思っていました」と話しました。

私が広告会社でしていたクリエイティブ会議は3時間、4時間になることは当たり前でした。他のチームでは12時間も会議をしていたなんて話を聞いたことがあります。
その時の経験から、今ではイメージが出てこなければ、さっさと会議を終わらせるようにしています。頭の中にイメージがないのに、いくら粘っても湧いてきません。

そのような状態をいつまでも続けるのは時間のムダです。必要なのは、欲しいイメージの方向性に沿ったインプットです。

そのような時は、会議で「次の会議でイメージを固めるために、こういう方向のイメージを膨らませてきてください」と伝え、それぞれネットの検索や参考になりそうな資料を読む、街を歩いてヒントを見つける、人と話して想像を膨らませる、ノートにイメージを描くといった作業をしてもらうよう提案しています。

ポイント6 方向性が怪しいと思ったまま会議を重ねない

ある会社で新商品の企画会議が行われていました。社長発案で企画の具体化が進められていましたが、顧客ニーズ、製造、価格などでクリアすべき問題が発生していました。
しかし企画メンバーは、社長発案の商品化に全力で動いていました。私は途中から企画会議に参加しましたが、本当にこの商品でいいのか疑問に思い社長に「想い」を確かめてみると、この商品は理想のイメージではないことがわかりました。
そこで、さらにイメージを聞き出すと全く別の商品であることがわかり、企画メンバーから「それなら実現できそうだ」と意見が出ました。
私は「今から企画する商品の方向を変えませんか」と伝えると、社長含めて全員の合意を得られました。後で企画リーダーから「このタイミングで商品の方向性を変えられるとは思ってもみませんでした」と言われました。

会議を重ねて考えを深めてしまうと、進む方向が間違っていたとしても突き進もうとして戻ることができなくなります。

いわゆる「コンコルド効果」と呼ばれるもので、時間やお金を費やしてしまうと、損失が出るとわかっていてもやめられない状態に陥ります。全員がこのような状態にある時に戻ることを提案するのは勇気がいることですが、怪しいと感じたら原因となるところまで戻りましょう。
先の例で言えば、「この商品で実現しようとする世界観」のイメージを聞き出しながら、その世界観と作るべき商品のズレを見つけ出しました。

これは、なかなか難しいことかもしれませんが、方向性が大きくズレたまま議論を重ねるほど無駄なことはありません。時には勇気を持って戻ることも大切です。

いかがでしょうか?2回にわたり普段の会議を活性化さえるポイントを紹介してきました。

「企業の目的は『顧客の創造』である」
これは経営の神様と言われるピーター・F・ドラッガーの言葉です。
価値観の多様化する現代において「どうすれば、人々を感動させる商品や事業を生み出せるのか?」。その答えは会議にあります。

今こそ衆知を活かし、会議を御社の武器にして、新たな顧客を創造していただければと思います。

※本記事は『メンバーの頭を動かし顧客を創造する 会議の強化書』の一部を改変して掲載しています。
高橋 輝行(たかはし てるゆき)
1973 年東京生まれ。東京大学大学院理学系研究科を修了後、博報堂にて教育エンタメ系企業の広告・PR・ブランディングを実施。その後、ベンチャー企業を経て経営共創基盤(IGPI)でぴあの経営再建を主導。2010 KANDO 株式会社を創業。従業員によって感動創造するワークショップ「Roles」を開発。中堅・中小企業を中心に100 社以上の新商品/ 新事業開発を推進。座右の銘は「知行合一」。桜美林大学大学院 MBA プログラム 非常勤講師、デジタルハリウッド大学メディアサイエンス研究所 客員研究員。 著書に『メンバーの頭を動かし顧客を創造する会議の強化書』(あさ出版)、『頭の悪い伝え方 頭のいい伝え方』(アスコム)他。

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